ロシア軍の再建スピードは予想以上、NATOの残された時間は2年~3年

ロシア軍の再建スピードは予想以上、NATOの残された時間は2年~3年
https://grandfleet.info/european-region/russias-military-is-rebuilding-faster-than-expected-nato-has-only-two-to-three-years-left/

『2024.06.4

西側諸国は消耗したロシア軍の再建期間について「10年以上」と予想していたが、2023年末頃から「予想よりも早くロシア軍が再建されている」という指摘が相次ぎ、Bloombergも3日「ロシア軍再建にNATOが対応するための準備期間は2年~3年だ」と報じた。

参考:Norway Military Chief Sees Short Window to Boost NATO’s Defenses

ロシアの現在ペースが持続可能なものだとは到底思えないが、どの時点で持続不可能になるのかは分からない

ロシアとウクライナの本格的な戦争は2年以上が経過しても終わりが見えず、西側諸国は経済制裁が課されているロシアについて「軍の再建には10年以上かかるだろう」と予想していたが、ドイツ外交問題評議会(DGAP)は昨年11月「ロシアは経済制裁の回避に成功し、石油と天然ガスの収入を防衛産業や関連産業の拡張に投資して生産量を引き上げ、関連分野の労働者も生産現場にとどまり続けている。そのためロシア軍の再建スピードは6年から10年でNATOに残された対応時間は5年から9年だ」と指摘した。

出典:Минобороны России

ポーランドのヤチェク・シウィエラ国家安全保障局長はDGAPの予想について「楽観的過ぎる」と批判し「本当にロシアとの戦争を回避したいなら3年以内という時間枠を採用すべきだ」と主張、4月に入ると米欧州軍司令官のカボリ陸軍大将も「ロシア軍の再編スピードは予想を上回る」「戦力規模は侵攻前よりも15%ほど大きくなっている」と議会で証言、ドイツのピストリウス国防相も「ロシアの生産能力はウクライナでのニーズを上回り備蓄が積み上がっている」「備蓄に振り向けられた武器・弾薬はウクライナの次に備えたものだ」と言及。

Defense Newsの取材に応じた欧米の国防当局者やロシア軍関連の専門家も「予想よりも早くロシア軍が再建されている」「ロシアのGDPは縮小すると予測されていたにも関わらず2023年に3%も成長した」「ロシアは年1,200輌の戦車を供給することができ、最低でも300万発の砲弾やロケット弾を製造できる」「ロシアは毎月約3万人の新兵を採用して最前線の兵力を47万人まで増やすことに成功した」「この規模は侵攻前のロシア軍を上回る」などと述べ、ロシアの人的供給能力と産業界の生産能力はウクライナでの消耗分を上回り始めた可能性が浮上。

出典:Минобороны России

ノルウェー軍のエイリーク・クリストファーセン大将もBloombergの取材に「ロシア軍の再建には10年かかると予想していた人もいるが、稼働している産業力のお陰でロシア軍の再建は10年以下だ。NATO加盟国はウクライナ支援を継続しながら戦力と備蓄を再建するのに2年~3年の猶予があると思う」「NATOが合意した新しい防衛計画の実行を早める必要がある」と述べ、Bloombergも「ロシア軍再建にNATOが対応するための準備期間は2年~3年だ」と報じている。

勿論、ロシア軍の再建スピードは「ウクライナ占領地域での消耗」や「戦争がいつ終結するか」に影響を受けるものの、ロシアは2026年までに軍の規模を101万人から150万人に拡張するため、これが実現するとプーチン大統領は「ウクライナと戦争を継続するための戦力50万人」と「侵攻前に保有していた戦力100万人」の両方を手にすることができ、クリストファーセン大将が「2年~3年の猶予がある」と考えたのは「ロシア軍の150万人体制が口先だけのものではない」という意味だ。

出典:Минобороны России

因みにウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長も今年2月「ロシアは戦時体制へ移行するに必要な法律と政令を2022年夏までに可決した」「従業員の労働時間は大幅に増加してトリプルシフトを導入している企業もある」「ロシアは昨年200万発の砲弾を生産した」「今年は270万発生産するつもりだ」と、NATO関係者も「ロシアはシフトを追加して砲弾工場を年中無休で稼働させている」「防衛産業に従事する人間も侵攻前の250万人から350万人に増加した」と指摘したことがあり、現在の消耗レベルで「まもなくロシアの武器・弾薬は尽きる」と期待するのは止めたほうが良い。

英国のラダキン国防参謀総長も「ロシアの現在ペースが持続可能なものだとは到底思えないが、どの時点で持続不可能になるのかは分からない」と述べている。

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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 135 』

『 リック
2024年 6月 04日

返信 引用 

どうでしょうね
プーチンも本来は西側首脳と同じように「軍隊なんて生産性の無い無駄飯喰らいに金使うくらいなら他の事(経済)に回したいし、軍縮したい」
というスタンスの政治家だったはずです
プーチンは軍に金を使いすぎて亡国したソ連を強烈な反面教師としています
経済学者のベロウゾフを国防相においたのも野放図な軍の肥大を嫌っている証左です
欧米がウクライナに手を突っ込まなければ、弱いロシア軍のままでいてくれたのに
86

    犬の〆
    2024年 6月 04日
    返信 引用 

私も同感です。
そもそもプーチンは内政向きの政治家で、軍事については仰る通り、抑制の方向で今まで政権運営していたと認識しています。
今回のベロウゾフの任命も、同じようなロジックからでてきたものと解釈しています。

よくロシア脅威論として「次は~に攻め込むぞ」みたいなものを目にしますが、本当にそうかなと。
もちろんウクライナには決着をつけるでしょうが、その後も戦争を続けるとは思えません。
兵器は使わないで効果が上がるのが一番安上がりだと思うので、ある程度NATOとアメリカにロシアの沽券を見せつけられたら、ある程度の成果はあったとプーチンは判断すると思うのですがね。
希望的すぎますかね(脱毛)。
40
        general
        2024年 6月 04日
        返信 引用 

    さすがにそこまでロシアに希望的観測は抱けませんね
    機会があればフィンランド、ベッサラビア、バルト三国、ポーランドを併合ないし勢力圏下に引きずり込む位の事はしてくると思いますよ
    これらの地域は帝国時代の版図に含まれていたのでロシアが何かアクションを起こす心理的ハードルは低いでしょう
    ロシアはそういう国です
    20
            犬の〆
            2024年 6月 04日
            返信 引用 

        なるほどです。確かに領土的な野心は旺盛ですからね。
        でも、いまこの状況で引き金を引くかということについて、私は未だに懐疑的です。
        プーチンは自身の論文の中でウクライナとロシアの一体性について論じてはいますが、北欧などについてはちょっと記憶がありませんし、現実主義者のプーチンがこの時点でさらなる戦争に舵をきるとはロシアの継戦能力、経済、あとはプーチンの寿命から考えて現実的ではないように思います。。。

        まあ、プーチンがスターリンや毛沢東のように、覇権主義者の罠に既にはまっているということも考えられますし、私はプーチンの代弁者ではないので、おっさんの妄想程度と聞き流してください。
        25
                hoge
                2024年 6月 04日
                返信 引用 

            >いまこの状況で引き金を引くかということについて、私は未だに懐疑的です。
            >現実主義者のプーチンがこの時点でさらなる戦争に舵をきるとは

            それ、ウクライナ戦争が勃発する前も全く同じことが言われていたので…
            理由なんて、それこそ「外国から収奪しない限り経済の破綻は必至なので、国民を食わせるため」で十分では。
            17
                    犬の〆
                    2024年 6月 05日
                    返信 引用 

                ご意見ありがとうございます。
                まあ、難癖つけるのはいつものロシア仕草なので、ありえないとは言いきれませんが、、、

                >それ、ウクライナ戦争が勃発する前も全く同じことが言われていた
                この時点と、現在とは全く状況が違います。
                また、ウクライナについてはロシアは再三手札をきって、警告を出していました。
                そのシグナルを見誤ったことで現在の状況があると認識しています。

                しかし、翻って今はどうでしょうか。
                一部の方が指摘している通り、ロシアの継戦能力にも陰りが出始めています。
                現在の戦争もかろうじて勝てるか勝てないかくらいの勢いしかありません。
                この状況で対外戦争、しかもNATOやアメリカとやり合うメリットはどこにあるでしょうか?
                申し訳ありませんが、ちょっと私には想像つきません。

                何か補足できる情報などお持ちでしょうか。その情報次第で、ロシアの今後の動向も見えてくるはずです。』

『 Easy
2024年 6月 04日

返信 引用 

失業率が1%前後でほぼ完全雇用を達成しているそうで、治安も大きく改善されたとのこと。
何よりも仕事がたくさんあるので男連中が酒を飲む時間と量を減らして働いてカネを稼いでくるので、女性にとっては「プーチン様ありがとう」な状態なんだとか。
実は日本も太平洋戦争中は好景気で治安も良く、女性層がかなり戦争を支持する役割を果たしていたそうである。
63

    名無し
    2024年 6月 04日
    返信 引用 

本邦に限らず割とどこの国でも聞きますねそれ
アメリカやドイツもそういう傾向があったとか

勿論戦争に負け始めて本土がやられてくると話はかわってくるけど、ロシアの場合本土が深刻に脅かされる可能性は殆どないですから
ウクライナの西側特製高級単発花火ではどうにもならない
50
        たむごん
        2024年 6月 04日
        返信 引用 

    仰る通りです。
    完全雇用になると、みんな仕事に忙しく、暇ではなくなりますからね。

    インフレに要因ですが、人手不足のため賃金も上昇していきます。
    物不足・大規模な本土攻撃がなければ、社会不安も発生せず、大きく何か変わる事はないでしょうね。
    21 』

『 nimo
2024年 6月 04日

返信 引用 

驚異といいながら砲弾生産やる気ないのはなんでなの
14

    納豆
    2024年 6月 04日
    返信 引用 

弾薬生産ライン設備の圧倒的な不足の為。
西側は合理化重視で、平時の需要に合わせた生産設備しか無く、戦時の急激な需要増に追従出来ていません。
供給を増やす為には、工場・生産ラインの新設や増設 工員の確保 部品、原料の調達や物流(サプライチェーンの構築 マネージメント)等 凄まじいリソースが必要になります。
当然 お金も必要であり、砲弾メーカーも民間企業なので、利益が無ければ上記の様な大投資は出来ません。
大規模投資後、直ぐに戦争が集結したりで、需要が無くなると、下手すれば倒産危機になってしまいます。
ですので3〜5年位の各国需要だけでは無理。10〜20年の長期契約するか、採算度外視で国有企業設立が必要と言われてます。
簡単には、進まない様です。やる気があっても出来ないんです。

しかしそれをロシアは2年で戦時下にやり遂げたので、西側諸国が驚愕してるんですよ。
30
        マミー
        2024年 6月 04日
        返信 引用 

    冷戦の勝者は資本主義と自由主義だけど、次も勝てるとは決まって無いからね。
    20
            納豆
            2024年 6月 04日
            返信 引用 

        次の勝者かはわかりませんが…。
        只、危機管理としては、凄い。と感じました。
        平時から、砲弾メーカーに、生産量の50%以上の休止ラインを担保させる法律が有るそうです。
        我々から観ると、合理化とは真逆。「アタオカ」レベルです。
        よくもそんな無駄金を!
        (平時なんて、備蓄が済んでれば演習時の消費位でしょ。)
        と思いますが、戦時において、この結果です。まさしく驚愕です。

        ソース プライムニュース 9月18日
        BSフジ プライムニュース YouTube 24/03/28
        28』