ゼレンスキー氏、新興国の支持低迷に危機感 アジア訪問

ゼレンスキー氏、新興国の支持低迷に危機感 アジア訪問
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『2024年6月2日 19:25

【シンガポール=藤田祐樹、ウィーン=田中孝幸】ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説した。ロシアのウクライナ侵略を巡る和平案を推進するための首脳会議「世界平和サミット」への参加を呼びかけた。

中国外務省は5月31日、平和サミットへの参加は困難と表明した。ゼレンスキー氏は6月2日の記者会見で「中国は各国に平和サミットに参加しないよう働きかけている」と非難…

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『ゼレンスキー氏は1日からシンガポールを訪れ、2日閉幕したシャングリラ会合に参加した。オースティン米国防長官ら各国要人とも会談した。

ウクライナは北東部ハリコフ州でロシア軍の猛攻にさらされ、徐々に支配地域を失っている。その中でも欧州域外への外遊に踏み切った背景には、グローバルサウスと呼ばれる新興国からの支持が伸び悩んでいることへの危機感がある。

「いくつかの国の指導者が参加を確認していないことを失望している」。ゼレンスキー氏は15〜16日にスイスで開く平和サミットへの参加を訴えた。

同氏は平和サミットを契機にロシアへの国際的な圧力を強め、同国の継戦能力を低下させる戦略を描いてきた。それだけに西側だけでなく新興国の参加国数の拡大を目指してきた。

ゼレンスキー氏によると、現地の大使の出席を含めて参加すると回答しているのは106カ国にのぼるという。

ただウクライナメディアによると何らかの形で参加すると自ら発表した国は5月末時点で37で、そのうち欧州諸国が29を占める。グローバルサウスの地域大国である南アフリカ、ブラジルは参加を見送る方針だ。

今回の会議をサミットと呼んではいるが、首脳級を派遣する国はさらに少なくなる見込みだ。

米ブルームバーグ通信はバイデン米大統領が6月13〜15日のイタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席後、大統領選の資金集めの行事のために平和サミットに参加せず帰国する見通しだと報じた。

ウクライナ戦争で中立を志向する新興国の中には、ウクライナが主導しロシアが参加しない平和サミットへの参加を避ける動きが出ていた。資源大国であるロシアから反発を受けてまで参加に踏み切る実利は乏しいとの計算もあった。

ウクライナの後ろ盾であるバイデン氏の欠席観測が広がったことで、平和サミットへの逆風が強まっているのは間違いない。参加国の中で派遣する代表者の格を大使などに落とす動きが出てくる可能性がある。

ロシアは各国に出席を控えるよう強く求めてきた。多くの新興国は平和サミットへの参加の有無や関与の度合いを、ロシアとの外交交渉の材料として使っている側面もある。

ロシアからの資源輸入を続けるインドのモディ首相は5月20日に公開されたインタビューで、同国が会議に参加すると表明した。一方で自身の出席を含めどのレベルの高官が出席するかは「日程などによって決まる」として明らかにしなかった。

ゼレンスキー氏は2日、オースティン氏と会談した。米国防総省は声明を発表し「オースティン氏はウクライナのニーズを満たすための米国の安全保障支援に関する最新情報を提供した」と明かした。

ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)でウクライナが必要とする項目を議論したと明かした。制限付きでロシア領内への米国製兵器の利用を認めたバイデン氏に謝意を示した。

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