中国資本のカンボジアの運河建設計画により高まる地域の懸念
https://ipdefenseforum.com/ja/2024/04/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%B3%87%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%81%8B%E6%B2%B3%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E8%A8%88%E7%94%BB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E9%AB%98%E3%81%BE/

『4月 29, 2024
プノンペンとタイ湾を結ぶ全長180キロの運河建設計画は、中国が資金を提供することで経済的、環境的、人道的な懸念を引き起こしており、2,635億円(17億ドル)を投じたフナン・テチョ(Funan Techo)運河が建設されれば、中国軍の艦艇がカンボジア内陸部やカンボジアとベトナムの国境を航行できるようになるとの憶測を呼んでいる。,
このことから、移住を余儀なくされる可能性のあるカンボジアの人々は、補償に疑問を抱いている。 ベトナム政府は、浚渫された水路が完全にカンボジア国内にあり、プノンペンの現在の海上航路であるメコン川下流域から商船を引き離し、ベトナムを経由して国際水域に到達させることによる経済効果について検討している。 この運河はメコン川から水を引くことになると専門家は予測しており、メコン川流域に暮らすベトナムの稲作農家は作物の心配をしているという。
画像提供:FORUMスタッフ
複数の報道によると、幅100メートル、深さ5.4メートルのこの運河を経由し、中国政府の人民解放軍海軍の艦艇がカンボジア内陸部やベトナムの都市にアクセスする可能性があるという。 このプロジェクトの沿岸部の終着点であるケップは、シアヌークビルにあるカンボジアのリーム海軍基地から約100kmの距離にあり、同基地は最近、中国の資金で改修工事が行われたばかりである。
ブルームバーグ・ニュースによると、ベトナムの研究者らは、ベトナム政府が支援する研究所が2024年3月に発表した論評の中で、「フナン・テチョ運河は単なる社会経済開発プロジェクトではなく、大きな軍事的価値を持ち、地域全体の防衛と安全保障の状況に強い影響を与える」と述べている。
「空母の話ではないことは確かだ」と、ワシントンD.C.に拠点を置くスティムソン・センター(Stimson Center)の東南アジアプログラム・ディレクター、ブライアン・アイラー (Brian Eyler)氏は2024年1月、ラジオ・フリー・アジアに対し語っている。 また、「ただし、メコン川上流で中国から来る合同巡視船などは、あの運河を簡単に通り抜けられるだろう」とも述べている。
2024年4月、ストレーツ・タイムズ(The Straits Times)紙が報じたところによると、国営の中国架橋・道路公社(China Bridge and Road Corp)が運河建設に資金を提供し、50年間にわたり運営を管理し、利益を得るという。 プノンペンの港のすぐ下にあるメコン川支流と湾を結ぶ運河のルート沿いには、3つのダム、11の橋、208キロの歩道の設置が計画されている。
経済誌『ベトナム・ブリーフィング(Vietnam Briefing)』は2024年4月に、中国政府はこのプロジェクトへの中国の投資によって、プノンペンの重要な経済パートナーとしてなど、東南アジアにおける中国の影響力を強化することになると考えていると報じた。
カンボジアのフン・マネット(Hun Manet)首相が「この運河が中国軍艦の内陸部へのアクセスを可能にすることを否定し、カンボジアは他国が自国の領土を他国に対する軍事基地として使用することを認めていない」と述べたことを、シンガポールの放送局CNAは2024年4月に報じている。 首相はまた、「この運河は軍艦にとっては浅すぎる」とも述べている。
CNNは、カンボジア国防相のフェイスブックに掲載された写真を引用し、2023年12月に中国軍のフリゲート艦2隻がリーム海軍基地に停泊したと報じた。 カンボジア当局は、軍艦はカンボジア軍を訓練するために寄港したと述べている。
ディプロマット誌は2024年1月、マネット首相がベトナムのファム・ミン・チン(Pham Minh Chinh)首相に対し、予備調査では運河がメコン川下流域に与える影響は最小限であることを保証したと報じている。 両首脳は前月ハノイで会談している。
ブルームバーグ・ニュースが2024年4月に報じたところによると、マネット首相は「この運河は農作物に水を供給し、雨季の水管理を改善し、淡水漁業を促進する、などの効果がある」と述べたという。 また、ストレーツ・タイムズ紙によると、内陸部のカンポット州、カンダル州、タケオ州を通るルート沿いでは、推定160万人の雇用が創出されるという。
しかし、観測筋はこのプロジェクトに関する詳細が不足していると指摘している。 「カンボジアの人々は、近隣諸国やより広い地域の人々とともに、地域の水管理、農業の持続可能性、安全保障に影響を及ぼす可能性のある主要な事業の透明性を確保することで恩恵を受けるだろう」と在プノンペン米国大使館のウェスリー・ホルツァー(Wesley Holzer)広報官はブルームバーグ・ニュースに語っている。
また、ホルツァー広報官はカンボジア政府関係者に対し、「MRC(メコン川委員会)と加盟国が、プロジェクトがもたらす可能性のある影響を十分に理解し、評価し、それに備えることができるよう、適切な環境影響調査に全面的に参加すること」を求めたと、ブルームバーグ・ニュースは報じている。 MRCはカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムの代表で構成され、メコン川下流域の持続可能な開発を推進している。
2024年3月、独立カンボジアジャーナリスト連盟(independent Cambodian Journalists Alliance Association)は、生まれた時からカンダルに住み続けているヘング・ナン・エン(Heang Nang Eng)氏(60歳)が「運河プロジェクトで家が破壊されたらどこに行こうかと心配している」ことを報じた。 同氏はさらに「たくさんの土地を持っている人は、このプロジェクトの影響を受けても別の場所に移ることができるが、 私は他に土地を持っていない」と語った。』