新興国「自由より成長」 選挙×強権のオルタナ民主主義
Polar Shift サウスの論理(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM100BC0Q4A510C2000000/
『2024年5月27日 2:00
インドで6月4日の開票まで1カ月半かけて実施中の総選挙が終盤に入った。「民主主義に献身的に取り組んできた。それこそが私だ!」。18日に首都ニューデリーで遊説したモディ首相がダミ声で力を込めると会場は歓声に包まれた。
4月の選挙集会でイスラム教徒を「侵入者」と呼び物議を醸した。それでも遊説には数千人の支持者が集まり、圧倒的な人気を見せつけた。
インド総選挙の有権者は10億人近くに上る。投票は4月1…
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『権威的だとの批判にインドは反発してきた。欧米の調査会社が算出するインドの民主主義指数が大きく落ち込むと、独自の指数開発を探り始めた。』
『米調査会社モーニング・コンサルトの調べでは、5月初旬時点でモディ氏の支持率は74%に上った。日米欧・新興国24カ国の首脳で最高だった。
高い支持率が強気な姿勢を支える。米ピュー・リサーチ・センターによると、議会や司法のチェックを受けない指導体制を受け入れるとの回答がインドでは67%に達した。調査した24カ国の中央値である26%を大きく上回った。
背景にあるのは高成長による所得増だけではない。デリー首都圏は監視カメラの密度が世界最高との調査もある。ニューデリー近郊のスチタ・ムンダさんは「治安改善に役立つ」と捉える。プライバシー侵害といった批判は少ない。』
『グローバルサウスと呼ばれる新興国は経済発展で後れをとってきた。国民は豊かさなど生活改善を渇望する。
かつて世界経済の大半を占めた先進国は経済成長が鈍り、自由や平等を基本理念とした欧米型民主主義は社会の分断に伴う変質が目立ってきた。グローバルサウスは自らの力で成長するレールを敷く。』
『その一つとして選挙と強権を組み合わせた「オルタナ(代替)民主主義」が広がっている。
新興国は格差が大きい分、政治への要求や不満も振れが大きくなりやすい。選挙で選ばれた政治指導者は時に強権的な手法も使って最短ルートで成長を追い求めようとしている。』
『未来の経済大国と目されるインドネシアもその一つだ。ジョコ政権では与党連合の国会議席が8割を超えた。2022年の刑法改正で大統領や政府への侮辱を犯罪とし言論統制を強めた。
2月の大統領選で圧勝したプラボウォ国防相はジョコ氏の長男を副大統領候補とし、ジョコ氏支持層の票を取り込んだ。縁故主義への批判が一部にとどまったのは、大多数の国民が経済成長を実現し豊かな国に導く「強いリーダー」を求めるためだ。
ジョコ氏は資源輸出を制限して加工業を誘致した。高速鉄道などインフラも整備した。「45年に先進国入りする」との夢を国民に見せる同氏の支持率はインドネシアの調査会社によると7割を上回る。』
『「20世紀初頭のような繁栄した国になるため貢献したい」。アルゼンチンのミレイ大統領は23年12月の大統領就任前に何度も訴えた。高インフレや通貨安に苦しむ国民は衰退からの脱却を唱えるリーダーに未来を託した。
改革推進へ経済のドル化や中央銀行の廃止など過激な考えを持つ。国民に痛みを強いる補助金の削減は9日にゼネストへ発展したが「私は止まらない」。ミレイ氏はこんなメッセージが書かれた服の写真をSNSに投稿した。就任から半年近くたっても6割を超す支持率が同氏を支える。』
『グローバルサウスは国際関係の極が揺れ動く「ポーラーシフト」の世界を見据え、西側諸国とは異なる価値観で経済成長や社会の安定に挑む。「サウスの論理」を読み解き、強みや死角を探る。』
『多様な観点からニュースを考える
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説「オルタナ民主主義」は「民主主義」でなく「権威主義」。民主主義の後退。
2024年5月27日 11:53いいね
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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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分析・考察 周囲のインド人ビジネスパーソンに聞くとモディ首相には辛口な評価も外に選択肢も無い、という類の声が多いように思います。
どの国でも、もっと言えばどの企業や組織でもそうですが長期政権化するとある程度独裁ないしは独善的、強権的になったりディシプリンが緩んだりという事は古今東西枚挙に暇がないところはあるでしょうが、一方でインドは10億人を超える最大の民主主義国であるのみならず文化、言語、人種、経済格差、あらゆる意味でダイバーシティが高く、かつ州自治が強い事でも知られている故、それを総じて大過なく治めていくにはある程度強いリーダーシップでなければここまでの成果は挙げられなかった可能性はあるでしょう。
2024年5月27日 9:46』