ウクライナの防空体制は手に負えない状況、短期的にも解決不可能
https://grandfleet.info/us-related/ukraines-air-defense-situation-is-out-of-control-and-cannot-be-resolved-in-the-short-term/
『2024.05.25
ウクライナが要請するパトリオットシステム供給は行き詰まったままだが、Defense Newsは25日「米国の援助でウクライナの防空問題は解決できない。これはシステム本体ではなく迎撃ミサイルの供給問題で、短期的にウクライナのニーズを満たすのは物理的に不可能だ」と指摘した。
参考:Ukraine’s air defense woes can’t be fixed by American aid
もしワシントンがウクライナにとっての最善を望むなら『破滅』を促すべきではない
ゼレンスキー大統領は「ウクライナの空を保護するのに25セットのパトリオットシステムが必要」と明かし、ひとまず7セットの追加提供を西側諸国に要請しているものの、これに手を挙げたのはドイツとイタリア(SAMP/T)だけで、ルーマニアのヨハニス大統領は「提供を検討する」と表明したが「自国が防空システムなしで放置されるのも容認できない」と付け加えており、誰がパトリオットシステムを提供するのかは全く見通せておらず、この問題についてジェフ・ラミア氏はDefense Newsに寄稿した中で以下のように述べた。
出典:ДСНС України
“すでにウクライナの防空体制は手に負えない状況に直面しており、これはパトリオットシステムの追加提供だけで改善することはできない。
仮にパトリオットシステムが追加提供されても迎撃制限はシステム本体ではなく迎撃ミサイルの数に依存している。
そしてウクライナのニーズを満たす迎撃ミサイルの供給問題は短期的に解決不可能だ。米国は2024年と2025年に約300億ドルつづ防空分野に投資するが、資金さえ確保されれば迎撃ミサイルの増産が直ぐに実現できるわけではない”
“防空分野の基盤産業が衰退した原因はテロとの戦いで投資が減少したためで、何十年もかけて生じた基盤産業のギャップを埋めるには何年もかかるだろう。
ウクライナの戦場でエイブラムスが生き残れないと証明されたように、パトリオットシステムもウクライナが直面して深刻な脆弱性を解決する万能薬ではない。
ワシントンは軍事援助だけで戦争の結果を変えることも出来ないし、核戦争に発展するリスクなしで戦争への直接介入もできない”
出典:Минобороны России
“だからこそワシントンは外交力を活用して停戦を推進するか、最低でもウクライナとロシアを交渉のテーブルに着かせるための予備交渉を始めるべきだ。
現在のウクライナは悲惨な防空体制に加え、戦場における火力投射量でも大きな格差が生じ、手足を失った兵士の復帰が必要なほど前線での人的資源が逼迫し、ハルキウ方面では他戦線から戦力転用を行っている。
そのためロシアに対するウクライナの防衛力と交渉力は日に日に弱まっているが、交渉のテーブルに着くよう説得するには最も適した状況だ。もしワシントンがウクライナにとっての最善を望むなら『破滅』を促すべきではない”
この意見が正しいのかどうかは何と言えないが、パトリオットシステムで使用するPAC-3MSEの生産量は年550発、これを年650発に引き上げ取り組みが行われており、PAC-2GEM-Tの生産量は年240発(月20発)程度だが、ドイツ企業やスペイン企業の生産参加によって2027年までに生産量は年470発(月35発)まで増加する見込みだ。
逆に言えば米国を含むパトリオットシステム運用国とウクライナが必要とする迎撃ミサイルはこれだけしかない。
関連記事:ウクライナが要求するパトリオット追加提供、ルーマニアが提供を検討
関連記事:ウクライナが要求するパトリオット追加提供、イタリアがSAMP/T提供
関連記事:フランスは強制力を伴う戦時経済へ移行、最初の行政命令をMBDAに命じる予定
関連記事:イスラエルが手放すパトリオットシステム、ウクライナに向かう可能性は低い
関連記事:イスラエル軍、数ヶ月以内に埃を被っていたパトリオットと別れを告げる
関連記事:誰がパトリオット提供に応じるのか? ウクライナへの追加供給は行き詰まる
関連記事:スペインもパトリオットシステム提供を拒否、少数の迎撃弾提供に同意
関連記事:ギリシャ首相、パトリオットやS-300のウクライナ提供に応じないと断言
関連記事:誰がウクライナにパトリオットを提供するのか? ギリシャは提供に否定的
関連記事:ドイツ、新たなパトリオットシステムを直ちにウクライナへ提供すると発表
※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_info
Tweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it
投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 50 』
『
ak
2024年 5月 25日
返信 引用
何やら「朝鮮戦争休戦協定」の調印と似たような状況になっているようですな。
朝鮮戦争の時は、北進による半島全土の統一をひたすら強硬に叫び続けるだけの李承晩と、共産圏の影響を強める為の必要事項だとするスターリンの両者だけが休戦に反対し、
戦争当事者の米軍と中共軍は既に疲れ果てて停戦を望み、北朝鮮も南進による全土の統一は物理的に不可能だと理解して38度線で手を打つ事に方針転換して休戦に舵を切りました。
今回は政治的に絶対に敗北を認められないゼレンスキーと、そもそもこの戦争を焚きつけて拡大させロシアの弱体化を計るも引っ込みがつかない状況に陥っている欧米が、強硬に停戦に反対している訳ですが。
スターリンの死亡で一気に話が進んだ朝鮮戦争同様に、大統領選でバイデンが負ければ(イギリスは7月の選挙で現政権のボロ負けがほぼ決定してます)その瞬間に停戦協議が具体化しそうです。
李承晩同様に、頭の上で話がまとまり当事国である大統領本人の署名は必要無かった、なんて同じオチになるのかもしれませんけど。
38 』