〈習近平に見切られたショルツ独首相〉閣僚まで同行した訪中で成果が得られなかったのはなぜか

〈習近平に見切られたショルツ独首相〉閣僚まで同行した訪中で成果が得られなかったのはなぜか
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/33848

『2024年5月20日

ドイツのショルツ首相の訪中について、2024年4月17日付の独FAZ 紙は「友好的だが難渋」と題する解説記事で、雰囲気は友好的であったが成果は乏しかったと報じている。
会談したドイツのショルツ首相(右)と中国の習近平国家主席。その成果は?(picture alliance/アフロ)

 ショルツ首相は重慶と上海を訪問した後、4月 16 日に北京入りした。習近平主席との会談は合計で3時間 20 分に及んだ。ショルツは全体会合の冒頭からロシアのウクライナ侵攻を取り上げた。

 ドイツは国際会議での前進を望んでいて、次回はスイスでの会合が予定されているが、それへの中国の出席は極めて疑問である。習近平はショルツに対してウクライナ問題を真剣に捉えていると示唆したが、実質的には一歩も譲らず、中国の発表では、習近平は全ての当事者が同等に参加し、ロシアとウクライナの双方に受け入れられる国際会議は支持すると発言した。プーチンがスイスでの会議へのロシアの出席の用意を示していないため、中国の出席もありえない。

 両者はイランのイスラエルへの攻撃も取り上げ、習近平は紛争のエスカレーションに警告したとされるが、大きなテーマとはならなかった。習近平は現在、対外関係の安定を望んでおり、これは一つには中国の現在の経済情勢が理由であるが、もう一つは、中国は米国大統領選挙の結果を待っているからである。

 中国側が重視したのは経済関係で、習近平は「両国は長期的、戦略的観点から関係を拡大すべきである」と発言した。この発言は、最も緊急の問題である中国の過剰生産能力を念頭に置いたものであるが、中国側は、不公平な国家補助金との批判は根拠がなく誤った情報であるとし、ショルツに対して何らの譲歩も示さなかった。』

『他でも北京での雰囲気は厳しくなっている。現地駐在のドイツ・メディアは以前と異なり迎賓館にも人民大会堂にもアクセスが認められず、ショルツと李強の記者会見では、前年の李強のベルリン訪問と同様に質問が許されなかった。中国側によれば李強は前任者と違って脚光を浴びることを好まないということだが、今や何事も習近平次第ということはよく知られている。

  •  *  *
    ウクライナ情勢、経済関係、環境・気候変動を重視も  今回の訪中はショルツにとり2回目で、地方訪問、閣僚同行(環境相、農業相、交通相で連立 3党から各1人)、経済人同行を伴う本格的訪問であった。が、報道を見る限り成果は極めて乏しかったと言わざるをえない。  ドイツ政府の説明では、ドイツが重視したのはウクライナ情勢、経済関係、環境・気候変動で、メディアの関心は前二者に集中したが、上掲解説記事にある通り、中国側の対応はほぼ「ゼロ回答」であった。ドイツにとっての最大関心事であるウクライナ情勢についても、特にドイツが今回重視していたとみられるスイスでの国際会議への出席の言質も得られなかった。  経済関係では両国間の貿易・投資の拡大という一般的なメッセージはともかく、公正な競争条件、過剰生産能力のような、より具体的問題についての中国側の態度は硬かったようである。  成果が見込めなかったにもかかわらず、本格的な訪問を実施し、しかも、ショルツがデカップリングを退ける一方で、デリスキングに言及しなかったとされることから、中国の種々の問題行動にもかかわらず、結局のところ、ドイツの主たる関心は中国との経済関係の維持・拡大にあるということが改めて浮き彫りになった。  さらに、中国贔屓とされた前任のメルケルでさえ、首脳会談で人権問題を取り上げたり、人権活動家と会合したりしたが、今回のショルツ訪中では、ドイツ側の発表でも人権問題の記述は皆無であり、また、日程にも人権活動家や NGO との会談は含まれていなかった。』

『台湾海峡や南・東シナ海にも全く言及がない。ショルツ政権は昨年7月に「中国戦略」を打ち出し、メルケル政権の中国政策の軌道修正に踏み込んだかの印象が広まったが、イメージ先行で内容が追い付いていないとの疑念が払拭できない。
中国が歩み寄りを見せなかった背景

 折しもショルツ訪中の直後、中国のためにスパイ活動を行った容疑で、まずは3人のドイツ人、次いで「ドイツのための選択肢(AfD)」欧州議会議員(6月の欧州議会選挙では同党の筆頭候補)のスタッフ(独国籍を有する中国人)が拘束された。さらに、この AfD 議員本人については中国からの資金を受け取っていたとの疑惑も生じている。このような事案が相次ぐ中で、果たしてショルツが今回の訪中におけるような宥和的と受け取られる対中姿勢を維持するのかが注目される。

 中国側が今回、全くと言ってよいほどドイツに歩み寄りを見せなかったのは、上掲解説記事にあるように、米国大統領選挙までは待ちの姿勢で臨むという考慮があったのかもしれないし、また、ドイツは突き放しても経済中心に擦り寄ってくると見切ったのかもしれない。ショルツは来年の連邦議会選挙までの一期限りの首相で終わるかもしれないとの計算が働いた可能性もある。』