どうなる?ロシア=ウクライナ戦争の行方について

どうなる?ロシア=ウクライナ戦争の行方について
https://kaiyoukokubou.jp/2024/05/14/russia-ukraine-war/

 ※ 今まで見た中で、最も「説得力のある」論稿だ…。

 ※ 特に、『ソ連はアメリカなどの西側諸国と戦わずに瓦解したため、冷戦に負けたという歴史的事実を受け入れられず、その現状にも納得できていません。』という部分は…。

 ※ 「まあ、そうだろうなあ。」という感じだ…。

 ※ 歴史上、しばしば、「パラダイムシフト」というものが、現実に起きる…。
  しかし、それを「社会の大多数の者」が、「受け入れる」かどうかは、また別の話しだ…。

 ※ そういう意味じゃ、「冷戦」→「ソ連、瓦解」の「尻ぬぐい」を目の当たりにしているんだろう…。

 ※ 『「ドローンを使った第一次世界大戦」と表現されるように、ロシア=ウクライナ戦争は塹壕を巡る攻防戦と最新技術を生かした砲兵戦になりましたが、それは地図上ではあまり変化のない停滞戦線を意味します。』…。

 ※ 『すなわち、どちらかが決定的勝利を収める可能性は低く、最終的には停戦・休戦協議に向けた機運が高まるでしょう。ただし、それは朝鮮戦争と同じ「休戦」であって、現状のままでは正式な終戦は望めません。

なぜならば、ロシアもウクライナも、終戦を実現できるほどの政治状況にないからです。
10万近い兵士と3,000以上の戦車を失ったロシアがいまの戦果で満足できるはずがなく、失地回復を目指すウクライナも現状の固定化は選べません。

厭戦気分の高まりで停戦・休戦協議まで持っていけるかもしれませんが、その先に待っているのは停戦ラインをはさんだ分断国家です。そして、それは朝鮮半島のような軍事境界線と緊張感の常態化をもたらし、「戦争再開」に向けた戦力回復期間にすぎません。

ともかく、この停戦ラインを少しでも自分たちに有利にすべく、引き続き攻防戦が繰り広げられるはずです。』…。

 ※ 『ロシア国民の根底にはかつての大国意識が潜んでおり、ソ連崩壊後に大転落したトラウマも残っています。しかも、ソ連はアメリカなどの西側諸国と戦わずに瓦解したため、冷戦に負けたという歴史的事実を受け入れられず、その現状にも納得できていません。

まさにプーチン大統領がこの典型例とはいえ、こうした意識は一般国民にも多かれ少なかれ存在します。

こういう空気では陰謀論がまかり通りやすく、ウクライナのネオナチ化やロシア滅亡を企らむNATOの策謀を本気で信じる者も多いです。

はっきり言ってしまえば、「本物の戦争」をしないまま自滅したせいで、その自意識を変にこじらせてしまったわけです。』…。

『厄介なことに、このような意識はセルフ治癒が難しく、明らかな敗戦といったような現実を突きつけるしかありません。』…。

『 contents

失敗した斬首作戦
膠着状態となった戦線
休戦と現状凍結化
ロシアの戦争責任について

失敗した斬首作戦

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、プーチン大統領がもくろんだ短期的な電撃戦ではなく、2年以上にわたる長期消耗戦になりました。

本来の特別軍事作戦は首都・キーウをすばやく落として、ゼレンスキー政権を瓦解させる「斬首作戦」が狙いでした。その後は親露派政権を樹立させるつもりだったようで、ロシア指導部は10日ほどで作戦目的を達成できると考えていた節があります。

ウクライナのゼレンスキー大統領ロシア軍が迫るなか、首都にとどまったゼレンスキー大統領

実際にはロシア軍の一部がキーウ近郊まで迫りながらも、ウクライナの反撃によって撤退に追い込まれました。この過程でゼレンスキー大統領が逃亡せず、首都に残って抵抗を呼びかけたことで、ウクライナ側の士気は高まり、ロシア軍の斬首作戦は失敗に終わります。

最初からキーウのみに全力投入すればいいものを、ウクライナ側の能力・意志を過小評価したあげく、領土欲しさから各方面に戦力分散させました。その結果、南部以外はあまり制圧できず、作戦計画が破綻しました。

膠着状態となった戦線

キーウ周辺からの撤退を強いられた時点で、ロシアがの望んだ電撃的勝利の可能性はなくなりました。その後、ウクライナ軍の善戦と2022年秋の反転攻勢を受けて、まともなロシア軍人たちは全面勝利も不可能と気付いたはずです。

一方、ウクライナ側が期待を込めた2023年の夏季攻勢も、ロシア軍の防衛線に阻まれて半年で20km弱しか進めず、目標であるアゾフ海へは未だ到達できていません。

破壊されたロシア戦車破壊されたロシア戦車の残骸(出典:ウクライナ軍)

反攻作戦の失敗でウクライナによる大逆転は難しくなるも、ロシア側の攻撃も少ない戦果と引き換えに損害だけが増えています。

これは地対空ミサイルが双方の航空優勢確保を防ぎ、地雷原や塹壕を中心とした防御陣地が「守る側」に有利なのが主な原因です。しかも、ここに観測ドローンを駆使した火力支援が加わり、ますます攻め手にとって不利になりました。

「ドローンを使った第一次世界大戦」と表現されるように、ロシア=ウクライナ戦争は塹壕を巡る攻防戦と最新技術を生かした砲兵戦になりましたが、それは地図上ではあまり変化のない停滞戦線を意味します。

休戦と現状凍結化

双方とも決め手を欠いたまま時間だけが過ぎるなか、膠着事態を打開できる展望はいまのところありません。

ウクライナが期待するF-16戦闘機が到着しても、それが圧倒的優位性につながるとは思えず、よほどのことがない限りは停滞が続きます。

すなわち、どちらかが決定的勝利を収める可能性は低く、最終的には停戦・休戦協議に向けた機運が高まるでしょう。ただし、それは朝鮮戦争と同じ「休戦」であって、現状のままでは正式な終戦は望めません。

なぜならば、ロシアもウクライナも、終戦を実現できるほどの政治状況にないからです。
10万近い兵士と3,000以上の戦車を失ったロシアがいまの戦果で満足できるはずがなく、失地回復を目指すウクライナも現状の固定化は選べません。

厭戦気分の高まりで停戦・休戦協議まで持っていけるかもしれませんが、その先に待っているのは停戦ラインをはさんだ分断国家です。そして、それは朝鮮半島のような軍事境界線と緊張感の常態化をもたらし、「戦争再開」に向けた戦力回復期間にすぎません。

ともかく、この停戦ラインを少しでも自分たちに有利にすべく、引き続き攻防戦が繰り広げられるはずです。』

『ロシアの戦争責任について

和平の展望がほとんど見出せないなか、ロシア国内で政治的変化が起きれば、事態は打開できるとされています。

言いかえれば、プーチン体制の崩壊を期待しているわけですが、これはいささか甘い見通しと言わざるをえません。

たしかに、この戦争の責任は言うまでもなくプーチン大統領にあって、彼の意志や歴史観、強硬姿勢に基づいて戦争は始められました。

しかし、透明性に欠けた選挙とはいえ、彼を20年以上も選び続けているのはロシア国民です。

いまも積極的に支持する人は多く、たとえプーチン大統領が倒れても、プーチン路線を継承する者がその座に就くでしょう。そして、ロシア国民の大多数は引き続きそれを受け入れると思われます。

こうした点をふまえると、今回の戦争ではロシア国民にも一定の責任はあります。

もちろん、国家指導者の戦争犯罪と国民ひとりの責任は同じではなく、個人にできるのは戦後賠償金の負担、そして過去の反省ぐらいです。

差し押さえられたロシアの在外資産に加えて、ロシア国民の一部血税もウクライナの復興に当然あてるべきです。これは第二次世界大戦後に日本とドイツに課せられたのと同じで、加害者側は何かしらの償いをせねばなりません。

ところが、誇り高きロシア国民が「自分たち=加害者側」という事実を受け入れるのは容易ではありません。

ロシア国民の根底にはかつての大国意識が潜んでおり、ソ連崩壊後に大転落したトラウマも残っています。しかも、ソ連はアメリカなどの西側諸国と戦わずに瓦解したため、冷戦に負けたという歴史的事実を受け入れられず、その現状にも納得できていません。

まさにプーチン大統領がこの典型例とはいえ、こうした意識は一般国民にも多かれ少なかれ存在します。

こういう空気では陰謀論がまかり通りやすく、ウクライナのネオナチ化やロシア滅亡を企らむNATOの策謀を本気で信じる者も多いです。

はっきり言ってしまえば、「本物の戦争」をしないまま自滅したせいで、その自意識を変にこじらせてしまったわけです。

それは第一次世界大戦の敗因が国内の政治的混乱によるもので、軍事的敗北ではないと強がっていた戦間期のドイツに似ています(背後からのひと突き論)。

厄介なことに、このような意識はセルフ治癒が難しく、明らかな敗戦といったような現実を突きつけるしかありません。 』