戦争は適応の芸術、米国製ドローンがウクライナで存在感を失った理由
https://grandfleet.info/us-related/war-is-the-art-of-adaptation-why-us-drones-have-lost-their-presence-in-ukraine/#comment_headline
※ フェニックス・ゴースト活躍の報を聞かないのも、ジャミングされてのことか…。
『2024.04.24
ウクライナ軍に3万機以上のドローンを供給してきた軍事援助ボランティア(Come Back Alive)は「米国の小型ドローンは未成熟だ」と明かし、Wall Street Journalは「ウクライナで米国製ドローンが存在感を失っているは当局の規制に原因がある」と報じた。
参考:How American Drones Failed to Turn the Tide in Ukraine
戦いの優劣は左右するのはシステムのスペックではなく適応へのスピード
AIを搭載した小型ドローン開発に挑戦しているスタートアップ企業らは「伝統的な大手企業が製造する軍事用ドローン」ではなく、早く安く供給できる商用ドローンの開発に照準を合わせており、米国を拠点とするドーロン関連企業(約300社)にも過去2年間で25億ドルの資金がベンチャーキャピタルから流れ込んでいるものの、ウクライナ当局は「米国製ドローンは壊れやすい上、ロシア軍の電子妨害やGPS妨害を克服出来ておらず、離陸することも、任務後に帰還することも、スペック通りの距離を飛行することも、ペイロードを運ぶことも出来ないことがある」と指摘。
出典:Photo by Cpl. Jennessaa Davey
3万機以上のドローンをウクライナ軍に供給してきた同国最大の軍事援助ボランティア(Come Back Alive)も「米国の小型ドローンは未成熟だ」と述べ、米ドローン企業の関係者も「電子戦システムがウクライナで広範囲に使用されると想像していなかった」「ドローンを構成する部品やテストは当局の規制によって制限を受けている」と明かし、AeroVironmentが提供したSwitchblade300もロシア軍の電子戦システムに直面して効果が低下したが、これは全てのドローンに共通する問題だ。
ウクライナで米国製ドローンのみ存在感を失っているのは「規制」が原因で、米当局はドローンのソフトウェア更新について厳格な承認手続きを課しているため、米国製ドローンは「変化する戦場環境への適応スピード」で競合に劣り、米政府の方針によって中国製部品の使用が禁止されているためドローンの製造コストも高騰し、ドローンは使い捨て前提の消耗品であるという戦場の実情にも適合せず、国防総省も前者の問題について「数日でソフトウェア更新を承認できるようプロセスの改善に努めている」と述べている。
ドローンの製造コストについては何とも言いようがないが、米陸軍から戦術用ドローン(RQ-28A)の契約を受注しているいSkydioは「GPSが拒否された環境下でも飛行可能で、電子妨害を受けても自動的に周波数を切り替えることが出来るSkydio X10(推定価格1.5万ドル)についてウクライナが数千機要求した」「戦場でX10を成功させることはSkydioにとっても米ドローン産業界にとっても非常に重要だ」「これに代替案はなく国としても今回のチャンスを見逃すわけには行かない」と述べており、ウクライナで存在感を取り戻すための挑戦が始まっているのだろう。
因みにウクライナの第3強襲旅団に所属する航空偵察大隊指揮官も「今必要とされているのは産業界の技術革新や適応力だ」「この周波数は機能しないので別の周波数に切替える必要があるといったニーズは前線で生まれ、これをいち早く報告して適応させる仕組みが必要だ」「戦争とは適応の芸術で、古代の人々は軽い剣で戦い、鎖帷子が登場すると重い剣が登場し、頑丈な鎧が登場するとハルバードが登場した。つまり昔も今も戦いの本質は変わっていない」と述べたことがある。
Russian wunderwaffe in action. https://t.co/JjvNujG6SH pic.twitter.com/szNl0uwu9d
— Clash Report (@clashreport) April 8, 2024
ロシア軍の電子妨害に直面したHIMARSの弾薬=GMLRS弾も影響を緩和するため米陸軍やロッキード・マーティンが調整を続けており、ロシア軍が鉄板で戦車全体を覆ったのも戦場環境への適応で、見た目のカッコ悪さだけで馬鹿にできない。
とにかく戦いの優劣は左右するのは「システムのスペック」ではなく「適応へのスピード」で、F-16とSu-35のスペックをあれこれ比較しても戦場の結果には結びつかないだろう。
関連記事:ウクライナ軍が必要とするFPVドローンの数、最低でも1個旅団に月1,000機
※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 20 』