ロボットには「柔術」は効かない、という話。
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『ボストンダイナミクス社は最新のヒト型ロボットの膝関節を前後のどちらにも自在に屈曲するように仕上げてきた。
この発想は合理的なものなので、おそらくあと1年もすれば、手指の全関節も、どちらの方向にも自在に屈曲するような、ヒト型ロボットができると思う。
たとえば、すっかり人間と見分けがつかないくらいに外装を調えた未来のヒト型ロボットが、地面に置かれていた純金の茶碗を掴み上げたとする。近くでチャンスを窺っていた不法移民の常習犯罪者が、その手首を上から掴んで、お宝をひったくろうとする。
だが、それは、誘いの罠であった。ロボットの五指が瞬時に反り返り、いままで「掌」だと思っていた面はたちまち手の「甲」と変わる。ロボット警察官だったのだ。犯罪者の手首は、今やガッチリとグリップされてしまった。ロボットの手がそのまま、手錠なのだ。
従来のSF作家はどういうわけか発想が貧困で、ヒト型ロボットの関節は、生身の人間と同じように不自由な制約があるものと、勝手に決め付けていた。
そんな制約が、未来にあるわけがないのである。』