ロシア軍の再編スピードは予想以上、戦力規模は侵攻前よりも15%増加
https://grandfleet.info/us-related/the-speed-of-reorganization-of-the-russian-army-is-faster-than-expected-and-the-size-of-the-force-is-15-larger-than-before-the-invasion/
『2024.04.11
米欧州軍司令官とNATO最高司令官を兼任するクリストファー・カボリ陸軍大将は10日「ロシアの戦力再編は予想を上回るスピードで行われおり、戦力規模は侵攻前よりも15%ほど大きくなっている」と下院軍事委員会の公聴会で証言した。
参考:Russian Air Force Has Only Lost 10 Percent of Fleet in Ukraine, US Officials Say
カボリ陸軍大将は具体的なロシア軍の戦力回復について数値を提示、ロシア軍の戦力回復は予想を越えている
ロシアがウクライナ侵攻で経済的にも軍事的にも莫大な損失を被っており、カボリ陸軍大将は下院軍事委員会の公聴会で「これまでにロシア軍は2,000輌以上の戦車を失い31万5,000人の死傷者を出した」と、国防総省で安全保障問題を担当するワランダー国防次官補も「ロシアのウクライナ侵攻には現時点で2,110億ドルの費用がかかっている」と証言したが、カボリ陸軍大将は「ロシア軍は弱体化するどころか侵攻前より規模が大きくなっている」と指摘した。
出典:Dmitry Terekhov/CC BY-SA 2.0
“ロシアは短期的にウクライナでの消耗戦で優位に立とうとしているが、陸海空の戦力を統合するロシアの能力に限界がある。ウクライナに対する米国の軍事援助が停滞しているため、ロシアはウクライナの防空能力を圧倒しようと自爆型ドローンや長距離ミサイルを使用している。ロシアは生産し、備蓄し、数日おきに非常に大規模な攻撃を仕掛けてくる。さらにロシアの砲弾発射量はウクライナの5倍に達しているため、米国からの新たな軍事援助が届かなければロシアの優位は益々大きくなり、数週間のうちに10対1(ロシアとウクライナの砲弾発射量)になるだろう。これは仮定の話ではない”
“ロシアは長期的にグローバルな能力を強化しよう努力しているため核戦力に投資を行っている。さらに地上戦力の拡充も視野に入れているため徴兵年齢の上限を27歳から30歳に引き上げ、潜在的な徴兵対象者を200万人増加させた。ロシアはウクライナの占領地域やフィンランド方向に新たな部隊を配備するため地上部隊の再編を計画中だ。ロシアは予想を上回るスピードで戦力再編を行っているため戦力規模は侵攻前よりも15%ほど大きくなっている”
出典:Минобороны России
“ロシア軍の戦略戦力、長距離航空戦力、サイバー戦力、宇宙戦力、電磁スペクトル戦力は全く失われておらず、ウクライナで空軍が被った戦力の損失も10%程度だ。海軍は黒海で大きな損失を被ったものの、他の戦力(北方艦隊、太平洋艦隊、バルト艦隊、カスピ小艦隊)は無傷なのでグローバルな海上活動はピークに達している”
カボリ陸軍大将が言及した「徴兵年齢の上限を27歳から30歳に引き上げた」という部分は、年2回実施される義務的徴兵(大体15万人規模の徴兵が春と秋に行われる)の年齢上限のことで、1年間の徴兵を終えたロシア人男性は予備役に編入されるため「潜在的な人的動員人数が増加する」という意味になり、ウクライナ侵攻のための「強制動員」や「契約に基づく予備役の採用」と「義務的徴兵(徴兵者=新兵を国外の軍事作戦に参加させることは法律によって禁止されている)」は別なので注意が必要だ。
出典:Минобороны России
因みに証言を取り上げたAir&Space Forces Magazineも国防総省高官の話を引用して「ウクライナはA-50を2機撃墜するなど『ある程度の成功』を収めているが、ロシアもウクライナの地対空ミサイルが届かない範囲に留まることで適応してきた。ウクライナ空軍の能力を大きく拡張するF-16の到着は数ヶ月先(夏頃)の話だ。我々が戦争初期に目撃した(地対空ミサイルの射程内に侵入すると撃墜されるという)ルールにも変化が生じている。高高度から長距離兵器を使用するのではなく低空飛行と滑空爆弾を組み合わせた攻撃が増えている。これは戦争初期に見られなかった戦術だ」と指摘している。
欧州諸国の安全保障担当者が「ロシア軍の戦力回復は予想を越えている」と再三訴えてきたが、カボリ陸軍大将は「(ウクライナで損失を被っているにも関わらず)ロシア軍の戦力規模が侵攻前よりも15%ほど大きくなっている」と具体的な戦力回復の数値(15%の内訳は不明)を提示したため非常に興味深い。
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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 25 』