欧州、権威主義勢力に勢い スロバキア大統領に親ロ派

欧州、権威主義勢力に勢い スロバキア大統領に親ロ派
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR071GD0X00C24A4000000/

『2024年4月8日 5:00

【ウィーン=田中孝幸】欧州で権威主義勢力の勢いが増している。中欧スロバキアで6日に投開票された大統領選では、親ロシアの強権的な現政権が推す候補が勝利した。2023年後半からポルトガルなど各国の総選挙でも極右政党の躍進が相次ぐ。

欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会が6月に選挙を実施するのを前に中道勢力には危機感が広がっている。

スロバキアの選挙管理当局によると、6日の大統領選決選投票ではフィ…

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『スロバキアの選挙管理当局によると、6日の大統領選決選投票ではフィツォ首相に近いペレグリニ元首相が約53%を得票し、親欧米のコルチョク元外務・欧州問題相を下した。

同国の大統領職の役割は儀礼的で、権限は乏しい。今回の選挙は23年10月の発足以来、汚職捜査を担う特別検察官事務所の廃止やウクライナへの武器支援の停止を打ち出した親ロ派のフィツォ政権の信任を問う意味で注目されていた。

1回目の投票で劣勢だったペレグリニ氏が逆転勝利した背景には、同氏の陣営がコルチョク氏のような親欧米の立場でウクライナ支援を続ければロシアとの戦争に巻き込まれると訴えたこともある。同氏は敗北を認めた演説で「決定的だったのは(戦争への)恐怖と憎しみの広がりだった」と語った。

欧州各国では昨年来、権威主義的な右派勢力の台頭も相次いでいる。3月のポルトガル総選挙では新興の極右政党「シェーガ」が議席を4倍に増やし、全体の2割を占めるに至った。

23年11月のオランダ下院選では、極右で反移民や反イスラムを掲げる自由党が事前予想を覆して第1党に躍進した。ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率で2位に上昇。12月には東部ザクセン州ピルナでAfDの候補が当選し、全国で同党出身の初の市長となった。

最近の各種世論調査によると、6月の欧州議会選ではオランダ自由党やシェーガ、AfDが属する欧州議会の会派「アイデンティティーと民主主義(ID)」が第3勢力に躍進する見込みだ。

選挙後にイタリアのメローニ首相が率いる「欧州保守改革(ECR)」と連合すれば初めて極右勢力が多数派を占める可能性がある。

欧州で主流派の座を占めてきた中道勢力は焦燥感を強める。

欧州議会で第1会派の中道右派、欧州人民党を率いるフォンデアライエン欧州委員長は極右が票田とする農村部の支持拡大を急ぐ。2月には農業者の不満を受け、30年までに化学農薬の使用量を50%削減するとした規則案の撤回を表明した。

ウクライナ支援を巡って強化を掲げるメローニ氏のECRと消極的なIDとの立場の隔たりは大きい。選挙後に統一会派が結成される公算は小さいものの、権威主義的な勢力の台頭により、LGBTなど多様性や法の支配、人権といったEUが重視してきた価値が損なわれる懸念がある。

リベラル色が比較的強い都市部の市民の中には危機感の高まりがみられる。

ハンガリーの首都ブダペストの中心部では6日、オルバン首相の権威主義的な統治に抗議する数万人規模のデモが発生した。集まった市民からはロシアや中国寄りの外交を続けるオルバン氏の即時辞任を求める声が上がった。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席フェロー
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貴重な体験談 3月にスロバキアの隣のチェコに行って意見交換をしてきてわかったのは、これらの旧共産圏諸国では、ソ連時代の抑圧に対する反発や懸念があると同時に、現在の経済や移民への不満を持つ層が混在していることです。

地方に住む高齢層は、かつての共産圏時代を「今のような貧富の差がなかった」「厳しい競争がなくみんな仲良く暮らせた」といって懐かしむ一方で、都市部に住む経済的に恵まれたリベラル層は、ウクライナ侵攻を行ったロシアへの懸念が高い傾向があります。

ですので、今回のスロバキアの選挙でみられるような分断が起こっているのでしょう。

これはアメリカの親トランプと反トランプの分断と共通するものといえます。

2024年4月8日 8:34 』