タイ・タクシン元首相が政治活動再開 求心力低下に焦り

タイ・タクシン元首相が政治活動再開 求心力低下に焦り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS300W00Q4A330C2000000/

『2024年4月3日 20:54 (2024年4月3日 21:12更新)

【バンコク=井上航介】タイで仮釈放中のタクシン元首相が政治活動を本格的に再開した。自身が実質的指導者である最大与党「タイ貢献党」は政権獲得のために国軍と組んだことを批判されている。党の顔として政治活動を主導し、求心力の回復を急ぐ。

タクシン氏は3月中旬に出身地の北部チェンマイを訪れ、多くの支援者が出迎えた。地元入りはクーデターで首相の座を追われた2006年以来となる。24年2月に仮釈放された直後…

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『24年2月に仮釈放された直後に使っていた車椅子や腕のサポーターはなく、健在ぶりを見せた。

チェンマイでは次女で貢献党党首のペートンタン氏が同行したほか、同党に所属するセター首相も合流した。党内の主要人物が顔をそろえて地元重視の姿勢をアピールした。4月上旬に再び訪問する意向も示している。

3月下旬には帰国後初めてバンコクにある貢献党本部を訪れ、同党に所属する議員らに檄(げき)を飛ばした。ペートンタン氏は記者団に「タクシン氏は今後も本部を訪れて助言する」と述べた。

タクシン氏が貢献党の政治活動に積極的に関与する背景には自身への支持低下に焦りがあるもようだ。

タクシン氏は貢献党の前身「タイ愛国党」を率いて01〜06年まで首相を務めた。低額医療制度の導入などで低所得層から絶大な人気を得たが、クーデターで失脚。その後は海外で逃亡生活を送り、昨年8月に貢献党と国軍系政党の大連立に合わせて帰国した。

その後は汚職などの罪で禁錮8年の実刑判決を言い渡されたものの、国王から恩赦を与えられ今年2月に仮釈放された。一連の動きには貢献党と国軍の間で密約があったとみられている。貢献党はかねて反軍を訴えてきただけに政権を取るために妥協したとの批判を受けた。

タイ国立開発行政研究院(NIDA)が3月下旬に公表した首相の適任者に関する世論調査では最大野党「前進党」のピター前党首の支持率がトップの43%と、セター首相(18%)やペートンタン氏(6%)に大差をつけた。貢献党の人気は低迷している。

タクシン氏が巻き返しの切り札とみなすのが「赤シャツ」と呼ばれる市民団体だ。主義主張の異なる複数の団体で構成され、反軍政という共通理念でまとまっていた。貢献党の政権樹立によって一部の団体は民主派政党である前進党に流れた。

同氏の帰国前までは大規模な反政府デモの実施などで中心的な役割を果たした。「タクシン氏には赤シャツの動員力を支持者のまとめ上げに役立てたいとの思惑がある」(バンコクの外交筋)

3月末には海外に亡命していた赤シャツの中核団体「反独裁民主統一戦線(UDD)」指導者の一人、チャクラポップ氏が15年ぶりに帰国した。政界入り前は人気のテレビキャスターで、タクシン派のサマック政権では首相府相などを歴任した。

主要幹部であるチャクラポップ氏の帰国は赤シャツの再統一に向けた動きとみられている。赤シャツ幹部の一部は国軍の弾圧から逃れるために現在も国外で逃亡生活を送っている。 』