カンボジア、前首相が上院議長に 外交復帰の見方
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM01CTA0R00C24A4000000/
『2024年4月3日 21:53
【ハノイ=新田祐司】カンボジア上院議会は3日、フン・セン前首相(71)を議長に選出した。フン・セン氏は議長として外交を最優先する方針を明らかにした。息子フン・マネット首相(46)の現内閣にも影響力を保持しており、フン・セン氏を頂点にした一族支配がより鮮明になる。
上院議員選挙は2月下旬に投開票し、与党のカンボジア人民党が58議席のうち55議席を獲得する圧勝をおさめた。上院選にはフン・セン氏も出馬…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『上院選にはフン・セン氏も出馬し、難なく当選した。
3日に選挙後初めての上院議会を開き、フン・セン氏を全会一致で議長に選出した。選挙で3議席を獲得した野党「クメール意思党」の議員も賛成に回った。
「国際協調を促進するための議会外交が優先事項になる」。議長選出後、フン・セン氏は議会でそう話し、外交復帰を宣言した。上院議会では外交経験があるフン・セン氏側近が2人の副議長に選ばれた。
前政権の副首相兼外務国際協力相だったプラク・ソコン氏と、外務国際協力省の長官を務めたオッチ・ボリット氏だ。
フン・マネット首相との外交の役割分担が想定される。フン・セン氏は首相在任時に中国優先の外交を続けた。中国が掲げる「一つの中国」原則を支持し、東南アジア諸国連合(ASEAN)会合でも中国の意向に沿った振るまいが目立った。
上院議長として、習近平(シー・ジンピン)国家主席との関係維持などを担う可能性がある。
独自の海外人脈もある。ミャンマーでは国軍トップのミンアウンフライン最高司令官とクーデター後で初の首脳会談に臨んだ。タイの現政権に影響力があるタクシン元首相とも親密だ。知日家でもあり、2日には植野篤志・駐カンボジア大使と面会し「上院議長を務めている間は日本、特に(日本の)国会との関係を強化する」と表明した。
一方のフン・マネット氏は米国や英国への留学経験がある。英語が堪能で米陸軍士官学校に学び、経済学の博士号も取得した。父親は強権政治家の印象が強い。中国以外の外国投資を増やすためにも、フン・マネット氏は欧米外交で力を発揮しそうだ。
フン・セン氏は昨年8月、約40年ぶりに首相を交代した。用意周到に息子への禅譲を準備した事実上の世襲だった。フン・セン政権の実力者だったサル・ケン内務相やティア・バン国防相らも同時に退任させた。フン・マネット首相の政権運営を盤石にした上で、自身は与党党首に残って権力を保持した。
さらに新内閣に多数の親族や側近を送り込んだ。そのため副首相と上級大臣は計30人を超え、今年2月には末子のフン・マニー公務員相までも副首相に追加している。与党、内閣、議会の実権を掌握し、カンボジア政治の「家族経営」を強固にする。
フン・セン氏は選挙制度の変更や法律改正を通じて、民主主義を装いながら事実上の独裁体制を敷く手法が巧みだ。弾圧と懐柔の繰り返しで、野党勢力を弱体化させた。権威主義に批判的な米国に背を向け、人民党支配を認める中国に近づいて経済成長も実現した。
一党支配を確立した強権政治は次第に、一族や側近を優遇する個人独裁へと進んだ。人民党内にも反発の芽がくすぶっている。新型コロナウイルス禍以降は中国人観光客の減少や中国資本の引き上げで一部地域の開発が止まるなど、中国に傾斜した経済運営も綻びが見えている。』