フランスは強制力を伴う戦時経済へ移行、最初の行政命令をMBDAに命じる予定
https://grandfleet.info/european-region/france-moves-to-wartime-economy-with-coercive-powers-plans-to-issue-first-executive-order-to-mbda/
『2024.04.1
La Tribuneの取材に応じたフランスのルコルニュ国防相は「戦時経済を強化するため在庫保有の義務、契約の優先順位、人員・在庫・生産設備の徴発に関する政令が29日に発表された」「MBDAに十分な部品在庫を積み増すよう最初の行政命令を出す」と明かした。
参考:Sébastien Lecornu : « J’exige la constitution de stocks pour produire des munitions »
フランスの取り組みは西側諸国をリードするものと言えるだろう
フランスのマクロン大統領は2022年6月「戦時経済への移行」を産業界に要請、NexterはCaesarの納期短縮(30ヶ月間→15ヶ月間)と増産に取り組み、2024年までに月2輌だった生産量を月8輌まで引き上げ、MBDAもミストラルの生産ペースを倍増(月40発)させ、ThalesもGM200の納期短縮(18ヶ月間→6ヶ月間)に成功したが、ルコルニュ国防相はAster-15とAster-30の生産スピードについて不満を口にしていた。
EUNAVFOR ASPIDES 🇪🇺
Interception de 3 missiles balistiques en provenance du Yémen ciblant la position de la frégate 🇫🇷 et du porte-conteneurs qu’elle accompagnait.
De Suez à Ormuz, notre engagement au profit de la liberté de navigation et la sûreté maritime se poursuit. https://t.co/bTfrFx24ee pic.twitter.com/gODY0YifZn
— Armée française – Opérations militaires (@EtatMajorFR) March 21, 2024
ルコルニュ国防相は今年1月、Le Parisien紙とのインタビューの中で「Aster-15とAster-30は現在の私にとって最優先事項だ。この迎撃弾は紅海でフーシ派の無人機やミサイルを阻止するのに使用されており、ウクライナに提供されたSAMP/Tにも搭載されている。MBDAはAsterの生産に時間がかかり過ぎているため納期を半分にするよう要請した」と述べていたが、フランス海軍はフーシ派の攻撃阻止にAsterを22発(内6発が弾道弾迎撃に対応したAster-30)使用したため在庫状況に問題を抱えているらしい。
MBDAは納期を半分にするよう要請されているため、2023年1月に受注した9億ユーロ相当(約200発分)のAsterを2026年ではなく2024年後半に納品する必要があり、ルコルニュ国防相も26日「Asterの納期が遅れている。生産スピードに改善が見られない原因はジャスト・イン・タイムで仕事を進めたい誘惑に惑わされているためだ。企業は十分な原材料や部品の在庫を持たないことで固定化された財務リスクを負いたくないのだろう。しかし、ウクライナでの戦いを目の当たりにした後で改革を継続しないという選択肢はあり得ない」と指摘。
出典:MBDA
さらに「産業界の生産効率に改善が見られなければ権限を行使して元請け企業や下請け企業から人員、在庫、生産設備を徴発し、商業ニーズよりも防衛ニーズの契約を優先するよう強制する。MBDAの下請け企業に防衛ニーズを優先させるという考えは至極当然な話だ」と主張していたが、La Tribuneの取材に応じたフランスのルコルニュ国防相は「まもなく仏企業に部品在庫の積み増しに関する行政命令を出す」と明かした。
“仏産業界はフランス、ウクライナ、パートナーのニーズに合わせて生産を行っている。
最も大きなニーズはフランスからのもので2012年から2016年の間に95億ユーロの発注を行ったが、現在は2023年だけで200億ユーロもの発注を行い納品を待っている状況だ。
Asterに関して言えば2023年1月に約9億ユーロ(200発分)の発注が行われ、まもなくフランス軍向けとウクライナ支援向けの発注(200発分)が行われる予定だ”
出典:MBDA
“戦時経済を強化するため在庫保有の義務、契約の優先順位、人員・在庫・生産設備の徴発に関する政令(国防相権限)が29日に発表された。
私は装備総局に対してAster生産を加速させるための措置検討を指示している。
今のところ徴発の必要性は認められていないが、装備総局はMBDAに十分な部品在庫を積み増すよう最初の行政命令を出すだろう”
“MBDAはミストラルの生産効率を引き上げて生産量を倍増させることに成功した。
これはMBDAの努力のおかげだ。しかしSAMP/Tで使用するAsterは紅海やキーウの安全を守るためフランスとウクライナが必要としている。
さらに私はフランスが東欧諸国で多くの契約を失っていることに気がついている。
武器輸出を行うためには技術、価格、外交に長けてなければならないが、納期についても長けていなければならない。生産スピードは主権をもつ仏防衛産業モデルの存続にとって死活問題だ”
出典:Ministère des Armées
フランスの取り組みを「今更か」と感じるかもしれないが、日本を含む西側諸国の対応は飽くまで「ロシアのような強制力を伴う戦時体制」ではなく「民需や労働者を犠牲にしない範囲」に留まり、その中でも仏産業界の増産に対する取り組みはトップクラスの成果を挙げ、西側諸国の中で初めて強制力を伴う増産に乗り出そうとしている。
勿論、この取り組みはウクライナ支援だけでなく仏防衛産業モデルの存続=急増するニーズへの対応が含まれたものだが、それを差し引いてもフランスの取り組みは西側諸国をリードするものと言えるだろう。
出典:Kevin.B/CC BY-SA 4.0
因みにLa Tribuneの取材に応じたルコルニュ国防相は「ウクライナに提供したSAMP/T向けにAster-30の提供準備を進めている」「遠隔操作兵器も急ピッチで開発を進めており夏までにウクライナに届ける」「2025年初頭まで数百輌の装甲車両(フランス軍で使用されている古いタイプのもの)を提供するつもりだ」とも述べており、弾道ミサイル迎撃に対応したAster-30をウクライナに提供すると初めて認めた格好だが、これ以前にもAster-30を提供していたのか、Aster-15しか提供していなかったのかは不明だ。
追記:フランスがAsterの在庫に問題を抱えているのはウクライナへのAster供給(2023年1月の契約は提供分の埋め戻し分に相当し、イタリアと共同で最大700発のAsterを調達予定)に加え、紅海での作戦が何処まで続くか分からない=Asterの消耗量が予測できないという意味も加味されるため、22発消耗しただけで在庫状況に問題を抱えている訳では無い。
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※アイキャッチ画像の出典:MBDA
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 12 』