イラン「イスラエルが大使館空爆」 公館標的、緊迫増す

イラン「イスラエルが大使館空爆」 公館標的、緊迫増す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR01DE40R00C24A4000000/

『2024年4月2日 5:18

【ロンドン=岐部秀光】イランメディアは1日、イスラエルがシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆したと報じた。パレスチナ自治区ガザでの紛争をうけ、イスラエルはイランの代理勢力とも散発的に戦火を交えてきたが、公館を標的にした直接攻撃は異例となる。敵対勢力との紛争の緊迫度が増し、周辺国を巻き込み中東地域に広がっていく恐れがある。

イスラエルとイランの軍事的な挑発行動は、2023年10月のガ…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『ただし、大使館への空爆はこれまでの挑発や限定的な交戦とはレベルが異なる。イスラエル側は今回の事態についてコメントを拒否しているが、イラン側は自国の友好国シリアの首都でイラン大使館をねらい、革命防衛隊の幹部殺害を目的としたイスラエルの軍事作戦であると主張している。』

『ハマスとの戦いで手いっぱいのはずのイスラエルが、紛争の緊迫度を増す「エスカレーション戦略」に打って出たのだとしたら、その背景には内外からの圧力で孤立するネタニヤフ政権のあせりがある。』

『ハマスに連れ去られた人質の奪還交渉は進まず、ガザの一般市民の犠牲拡大でネタニヤフ氏に対する批判と退陣圧力が強まっていた。強硬路線によって国内の結束を強めるとともに、軍事的な抑止力を回復させたい意図がにじむ。イスラエルにはヒズボラやイエメンのフーシなど代理勢力の反応を瀬踏みするねらいもあった可能性がある。』

『イランは強力な報復をすると宣言した。「抵抗の枢軸」と呼ぶ武装勢力のネットワークをもつイランの作戦がどこでどのようなかたちで始まるか予測は困難だ。』

『イスラエルの生存権を守ることが外交の重大な柱である米国も、望まないかたちで中東の問題にさらに引き戻されていく可能性がある。』

『スラエル、イランの双方はなお直接の衝突を望んでいないとみられる。だがガザ衝突が長期化するなか、双方にとっての「レッドライン(越えてはならない一線)」は戦前に比べて大きく移動している可能性がある。偶発的な衝突の危険はかつてないほどに高まっている。

問題はイランにもイスラエルにも暴走を食い止めるような制御役が不在なことだ。イランとサウジアラビアの和解を仲介した中国の関心は機会主義的な利益の追求にあり、米国に代わって長期の中東地域の安定や和平を構築するような姿勢はうかがえない。』

『一方、米国のバイデン政権は、ガザで深刻な人道危機を引き起こしたイスラエルの軍事作戦へのいらだちを強め、溝が広がった。ネタニヤフ氏は大規模な退陣要求デモに直面するなど多くの国民の支持も失いつつある。

戦争のさなかにネタニヤフ氏を首相から退かせるのは困難だ。ユダヤ教超正統派などの支持を頼みに、追い込まれたネタニヤフ氏が一段と強硬路線に突き進む恐れもある。』

『多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
コメントメニュー

分析・考察 イラン大使館(領事館部分)を攻撃したのは国際法上、大問題ではあるが、すでに国際司法裁判所のいうことも聞かず、安保理決議も無視するイスラエルにとって、国際法の制約よりも、イランの脅威を排除することのほうが重要なんだろうと思う。

すでにイスラエルは革命防衛隊のハマスとのリエゾンをやっていた高官をベイルートで空爆により殺害しており、今回も同じような感覚で攻撃したのだろう。

前回の空爆でもイランは報復しなかったので、今回もそう対処するのではないかと思われる。

革命防衛隊にとってはハマスよりもシリアやヒズボラの方が重要だが、隊員の弔い合戦をしてイランをイスラエルとの大規模戦争に突入させるようなことはしない。

2024年4月2日 10:16 (2024年4月2日 10:19更新)

いいね
7

松尾博文のアバター
松尾博文
日本経済新聞社 本社コメンテーター・上級論説委員
コメントメニュー

ひとこと解説 外交施設を狙うという一線を越える攻撃がなぜ起きたのか。

攻撃がイスラエルによるものだとすれば、その動機を考える必要があります。

ガザの衝突は半年になろうとしていますが、イスラエルが目標とするイスラム組織ハマスの壊滅は遠く、時間がかかればかかるほどネタニヤフ政権の足元は揺らぎます。

こうした中でイランの最高指導者ハメネイ師は過去1週間、ハマスとイスラム聖戦の指導者を相次いでテヘランに招き、後ろ盾との姿を見せつけました。

イスラエルがイランにフラストレーションを抱き、大使館攻撃という強いメッセージを発したとしても、ラマダン(断食月)中の攻撃は衝突を拡大させかねない危険な行動です。
2024年4月2日 9:23 (2024年4月2日 9:32更新)
いいね
20

植木安弘のアバター
植木安弘
上智大学特任教授
コメントメニュー

ひとこと解説 大使館は、外交関係に関するウィーン条約で守られている。

従って、大使館への軍事攻撃は、イランの革命防衛隊幹部の殺害という軍事的論理とはいえ、国際法違反となる。

イランも1979年のアメリカ大使館襲撃占拠事件で接受国として国際法を゙遵守しなかった例がある。

アフガニスタンでのイラン外交官殺害事件では、イランがアフガン国境に軍を゙集結させたことがある。

国際法の無視は自国の安全保障にも悪影響をもたらす。

2024年4月2日 9:06いいね
15

村上芽のアバター
村上芽

日本総合研究所創発戦略センター エクスパート
コメントメニュー

分析・考察 イスラエル国内での総選挙を求めるデモには、まだ”民主的”な匂いが残っていいなと思っていたところにこのニュースです。

宗教的な背景が中東の話にはつきものですが、神々の争いを代わりにしているつもりだからこんなに暴走できるものなのでしょうか、そうなると、徹底的に世俗の利益を優先できる実務家が必要だと思いますが、それが内部から出てこないことに問題があることになります。

行きつく解は多様性の尊重と維持であり、経世済民という意味で経済と言いたいです。

2024年4月2日 8:38いいね 』