中国はトランプ氏望むか 米中が「予測不能」さ競う世界

中国はトランプ氏望むか 米中が「予測不能」さ競う世界
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD268CL0W4A320C2000000/

 ※ 日本で言えば、「側用人」政治か…。

『2024年3月30日 5:00

11月の米大統領選でトランプ前米大統領が勝った場合、閣僚や補佐官にどんな人物を選ぶのか。米ユーラシア・グループのディレクター、ジョン・リーバー氏は

①米連邦議会の親トランプ派

②ウォール街の経済人

③保守系シンクタンク

④別荘に出入りする側近――が人材源になるとみる。

1期目のトランプ政権は国際協調を重視する実務派や共和党の主流派が少なからず存在した。ポンペオ国務長官やマティス国防長官らで、トランプ氏の…

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『対立の末に大半が決別したこうした面々が、次に政権入りするとの見方はほとんどない。』

『混乱に拍車をかけそうなのがトランプ氏が温めている官僚機構の刷新案だ。米国で政権が代われば、ホワイトハウスや各省で4000に上る高官ポストは政治任用で入れ替わるのが通例だ。新構想の対象は5万人と異例の規模に及ぶ。

政府の職員を解雇しやすくする大統領令を出し、後任の選考は「忠誠心」も重んじる。トランプ政権は1期目の末期に類似の措置を実施し、後に大統領に就いたバイデン氏が撤回した。

政治任用は大統領との近さも重んじられるものの、トランプ氏が求める忠誠心と意味合いが異なるのは明白だ。「能力いかんにかかわらず、トランプ氏の意向なら何でも従うような人物が重要な決定を左右しかねない」(リーバー氏)』

『適性や能力より忠誠を部下に求め、政策の判断を自身に集中させる。こんな手法は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に通じる。今月の全国人民代表大会(全人代)は恒例だった首相の記者会見が取りやめになり、習氏への権力集中がさらに鮮明になった。』
『防衛研究所の飯田将史氏は「正しい情報がトップに届きにくくなり、判断を誤るリスクが高まりかねない」と警鐘を鳴らす。特に軍事分野で不測の衝突をもたらす恐れが大きくなる。

国防総省には「中国は危機のときに連絡がつかなくなり、ホットラインが機能しない」(元高官)との言い伝えめいた教訓がある。2023年に中国の偵察気球を米軍が撃墜した際もそうだった。オースティン国防長官らによる再三の協議呼びかけを中国は拒否したり、無視したりした。

米中間で最大の火種である台湾を巡ってトランプ氏は中国が攻撃したら防衛するかを問われ「交渉の立場が不利になるので、言いたくない」と話している。』

『予測不可能さを演出し、相手に揺さぶりをかけるこうした手法は「マッドマン・セオリー(狂気理論)」と呼ばれる。ニクソン大統領がベトナム戦争の終結に向けた交渉に生かした。

トランプ氏はニクソン氏と手紙を頻繁にやり取りした経験があり、交渉術の参考にしたという。』

『ロシアや北朝鮮がバイデン大統領よりもトランプ氏の勝利を望んでいるのは通説になりつつある。中国の場合は見方が分かれる。国際協調が損なわれ、民主主義が弱体化するのを歓迎する。その半面「対米関係の安定をめざす中国にとって米国の出方が読みにくくなるのは難点だ」(飯田氏)。』

『トランプ氏再登板なら世界はどうなるのかが関心の的だが、予測には限界がある。

インド太平洋の安定をめざす米国はもちろん、経済再建を探る中国にとっても日本の価値は小さくない。重要なのは大統領が誰になるかによらず、米中にそう思わせるような力を強めることだ。

岸田文雄首相は4月の訪米で日本の首相として9年ぶりに米議会演説に臨む。その道筋を示す絶好の機会になる。

(編集委員 永沢毅)』