ウクライナ民間電力会社、発電能力半分喪失 ロシア攻撃

ウクライナ民間電力会社、発電能力半分喪失 ロシア攻撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR300160Q4A330C2000000/

『2024年3月30日 7:24

【フランクフルト=林英樹】ウクライナ最大の民間電力DTEKは29日、ロシア軍による一連のインフラ攻撃で「発電能力の半分が失われた」と明らかにした。29日未明の攻撃では3カ所の火力発電所が標的となり、これまでに6カ所の大規模発電所のうち5カ所に被害が出た。復旧に1年以上かかる設備もあり、電力不足の長期化懸念が強まる。

ウクライナ軍によると、ロシア軍は29日未明、ウクライナ南部・中部・西部6州のエネルギーインフラ施設を一斉攻撃した。ミサイル39発のうち26発、ドローン(無人機)60機のうち58機を迎撃したものの、火力発電所のほか送電網や変電施設が損傷した。

ロシア軍は22日にも各地のエネルギーインフラを狙った最大規模の攻撃を行ったばかりだった。ウクライナ最大の国営電力ウクルエネルゴは29日、東部ドニエプロペトロフスクやハリコフなど7州で計画停電を導入すると発表した。

DTEKはウクライナ国内の約7割の電力を供給している。ロシアによる弾道ミサイル「イスカンデル」や巡航ミサイル「KH101」、イラン製無人機「シャヘド」など複数の兵器を組み合わせた波状攻撃が増えており、DTEK担当者は「以前より正確かつ集中的な攻撃で重要な設備に被害が出ている」と指摘する。

マキシム・ティムチェンコ最高経営責任者(CEO)は「攻撃が成功するたびにロシアは大胆になる。戦争の重大局面に欧州の防衛にとって重要な投資を行うよう求める」と述べ、防空能力強化のための追加軍事支援を訴えた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は29日「防空システムやミサイルの供与を増やすよう友好国への説得に取り組んでいる」とX(旧ツイッター)に投稿した。米共和党のジョンソン下院議長と電話会談し、ウクライナ支援を含む緊急予算案を可決するよう要請したことも明らかにした。

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