米国、廃炉原発を再稼働へ バイデン政権が2300億円支援

 ※ ミシガン州なんで、極めて「政治的な」決定だろう…。

 ※ それと、後記Think!の小山さんが語っているが、AI社会≒大量電力消費社会でもある。

 ※ 安定した行列演算≒安定した電力供給、でもある…。

米国、廃炉原発を再稼働へ バイデン政権が2300億円支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN28DJK0Y4A320C2000000/

『2024年3月29日 2:25 (2024年3月29日 5:04更新)

【ヒューストン=花房良祐】米国政府はすでに廃炉となった原子力発電所の再稼働を支援する。

バイデン米政権は中西部ミシガン州のパリセイズ原発に対し、約15億ドル(約2300億円)の融資を決めた。

廃炉となった原発が再稼働すれば米国で初めてで、世界的にも異例だ。温暖化ガスを排出しない安定電源として原発が再評価された。

エネルギー省がこのほどパリセイズ原発への支援を決めた。元ミシガン州知事でもあるグランホルム長官は「原発は米国の最大の脱炭素電源だ」と強調した。ミシガン州政府も再稼働を後押しした。

同原発は2017年に5年後の廃炉方針を発表、22年5月に稼働を恒久的に停止した。原子炉から燃料は取り除かれたが、プラントの主要設備と建屋はまだ解体されていない。

廃炉は放射線を取り除く作業が必要で、事故が起きていない原発でも数十年単位の時間がかかる。

電力会社エンタジーは稼働停止の翌月、廃炉を手掛けるエンジニアリング会社ホルテック・インターナショナルに原発を売却した。ホルテックは当初、廃炉を進める方針だったが、連邦政府の支援を当て込んで一転して再稼働を目指した。

運転再開には原子力規制当局の許認可が必要だ。再稼働は25年後半を目指し、少なくとも51年まで運転する計画という。ホルテックは地元電力などと長期売買契約で合意した。

パリセイズ原発は出力約80万キロワットで1971年に運転を開始した。運転の許認可の期限は2031年だったが、米国ではシェール革命でガス火力発電が急増し、再生可能エネルギーも台頭。コスト競争力で押され、運転期限より前に廃炉となった。

ホルテックはパリセイズ原発の敷地内に小型原発を建設する計画も進める。2機で合計出力は約80万キロワット。30年代半ばの稼働を目指す。

バイデン政権は既存の原発を延命させる方針で、カリフォルニア州でも廃炉を回避するよう老朽化した原発を支援している。

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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別の視点

今秋の大統領選、議会選の結果に関わらず、廃炉原発の再稼働の動きは続くと思います。
というのも、原子力発電は最近、超党派の支持に変わってきているからです。

ピューリサーチの世論調査によれば、以前は4割を下回っていた民主党支持者の原子力発電への支持は23年50%に上昇。

共和党支持者はもっと高く67%、全米では57%です。

共和党が政権を奪還し、議会の多数派を制すれば米国の脱炭素化は停滞する、化石燃料が復活する可能性は高いのですが、エネルギー需要の拡大は続くため原子力発電の推進や廃炉原発の再稼働は現政権から継承される可能性が高そうです。

2000年代に起きた原子力ルネッサンスの再来なのかもしれません。

2024年3月29日 10:11
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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望

「温暖化ガスを排出しない安定電源として原発が再評価された」、「原発は米国の最大の脱炭素電源だ」。

米国だけではない。

欧州委員会がタクソノミーに原子力と天然ガスを加え、脱炭素化の対応策としても原発回帰が顕著になっている。

フランスが原発同盟を推進し、オランダでも新設する。

温暖化対策のためには再生エネルギーへの転換自体を忘れてはならないが、原子力発電がトランジションを形成する中で重要な役割を果たすことも疑う余地がないのではないか。
日本でも先週、原子力再稼働を前提としたエネルギー計画の見直しを着手することが発表されたばかり。どういう位置づけで原発を推進するか、真正面から取り組む必要がある。
2024年3月29日 9:48

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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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ひとこと解説

今回の決定を受けて、パリセイズ原発の再稼働が実際にどうなっていくのかについてはこれから先行きを見極めていく必要がある。

ただし重要な点は、脱炭素化を進め、エネルギー安全保障を強化していく上で、原子力発電の重要性を見直す動きが進んでいること、その中で、既存の設備を有効に活用することが最も効率性の高いオプションである、ということだろう。

さらに、米国ではデータセンターの急増などで、電力需要の増加が発生し、しかも、それに対して、安定的でゼロエミッションで、かつ「Uninterruptible」な高品質の電力を供給するニーズが高まっている。

こうした潮流の中で、今回の決定の意味を読み解く必要があろう。

2024年3月29日 8:07 』