米国35州、子供のSNS利用制限へ 「中毒性」広がる警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27DUE0X20C24A3000000/
『2024年3月28日 6:04 (2024年3月28日 8:47更新)
【シリコンバレー=山田遼太郎】心の健康を害する懸念から、米国で子供のSNS利用を制限する取り組みが広がっている。南部フロリダをはじめ、全米50州のうち35州が規制など子供の保護策の導入に乗り出す。企業の対策が不十分とみて州や連邦議会が動きを強めるが、実効性を持たせる制度づくりには課題が残る。
全米7割の州、規制にかじ
「利益のために子供を中毒にして奪っていくのは、デジタルの人身売買だ」。フロリダ…
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『規制の動きは同州にとどまらない。全米州議会議員連盟(NCSL)によると、SNSの利用に一定の年齢制限を設けたり、若者に有害なコンテンツを拡散した事業者を罰したりするなど、関連する法整備を試みた州は23年に35に上った。
西部ユタ州は23年、18歳未満の若者がSNSアカウントを持つ際に保護者の同意を義務付ける法律を成立させた。親が子供のアカウントを監督できるようにし、SNS企業には広告の表示や若者の個人情報の収集を禁じている。10月の施行を目指す。
南部ルイジアナ州でも16歳未満の若者が親や保護者の同意なくアカウントを開けないようにする法案が成立した。
各州が念頭に置くのは米メタが運営する画像共有アプリ「インスタグラム」や、中国発の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」だ。フロリダの州法はサービス名こそ名指ししないが、無限に続く投稿の表示や、動画の自動再生を「中毒性のある機能」と定義し、規制対象にした。』
『規制強化に乗り出す背景には若者のメンタルヘルスの問題が米国で深刻化するなか、SNSの持つ中毒性や、SNS上で不適切なコンテンツに接することが大きな要因だとの見方が強まっていることがある。』
『性犯罪の温床としても問題視されている。全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)によると、SNS企業などから通報があった児童ポルノは22年に世界で3190万件に上り、20年比で47%増えた。こうした被害が増えているとして、米連邦議会上院は1月末に公聴会を開き、メタやティックトック運営会社のトップに非難を浴びせた。』
『子供のうちから利用者を囲い込んで収益につなげる思惑から、SNS企業は対応に消極的だとの見方もある。
各社は子供の利用によって稼ぐ売上高を開示していないが、米ハーバード大は12歳以下の子供から得た広告収入が22年に米グーグルの動画サービス「ユーチューブ」で9億5900万ドル(約1400億円)、インスタグラムで8億ドルに上ると推計する。』
『子供をSNS上の被害から保護する必要性には党派を超えた一致があるものの、連邦レベルでの法整備はこれまで難航してきた。投稿やメッセージの管理強化、幅広い利用者に年齢や身元の確認を求めることは、検閲ともとられかねないためだ。
米国には利用者の投稿についてSNS企業の法的責任を原則問わないとする通信品位法230条がある。各州の規制に対しても、メタやティックトック運営会社が加盟する業界団体のネットチョイスなどが、言論の自由を保障する合衆国憲法修正第1条に反するとして提訴や懸念の表明をしている。』
『日本にとっても対岸の火事ではない。NTTドコモのモバイル社会研究所の調査によると、22年に小学校高学年の4人に1人がティックトックを使っている。中学生では毎日3時間以上SNSを使う生徒も12%いる。SNSの悪影響から子供をどう守るか、社会全体での議論が重要性を増している。
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『多様な観点からニュースを考える
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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察 実は「子どもの中毒」が強調される動きに、違和感もありました。SNS依存症。それ、大人もですよね。
例えばAndroidスマホなら、「設定→Digital Wellbeing」でアプリごとのその日の使用時間がすぐ出ます。もし、一日数時間であろう自由時間の中でSNSが長すぎると感じて、それでも利用を減らせないなら、依存症の疑いありですね。
さて、こうした規制論にはネットや言論の自由の立場からの反対論が、根強いところです。
よくわかりますが、であれば法規制以外でのSNS弊害への実効対策を、規制派の2倍は真剣に考えるくらいの姿勢が必要ですね。無論、規制派の言論の自由への配慮にも、同じことが言えます。
2024年3月28日 7:54 (2024年3月28日 7:55更新)
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説 背景にあるのがやはりアメリカがキリスト教の国家という点。
性的な画像を子供が容易にアクセスすることに対する強烈な拒否反応が福音派の一部にあります。
2024年3月28日 12:28 (2024年3月28日 12:29更新)
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