プーチン氏、ウクライナ侵攻にモスクワテロ利用の可能性
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2419A0U4A320C2000000/
『ロシアの首都モスクワ郊外で22日夜に発生した銃乱射事件では、23日時点で100人以上が入院しており死者が増える恐れがある。プーチン大統領は今回のテロを、ウクライナへの軍事侵攻強化を正当化するために使う可能性がある。
モスクワ州のボロビヨフ知事は23日夜、被害者の救出活動を終えたと発表した。ロシア連邦捜査委員会は24日、死者が137人になったと発表した。
ロシア連邦捜査委員会はテロ容疑で捜査を始めた。容疑者4人をウクライナとの国境に近いロシア西部のブリャンスク州で拘束したと23日に発表した。ロシア内務省によると容疑者4人は全員外国籍という。
プーチン氏は23日の国民向けの演説で「(実行犯が)逃亡をはかり、ウクライナに向けて移動していた」とウクライナが関与しているかのように主張した。
ロシア通信は23日、ロシア連邦保安局(FSB)による情報として容疑者がウクライナと接触したり、50万ルーブル(約82万円)で買収されたりしたなどとの情報を流した。
国営メディアを使って国民のウクライナへの敵対心を高めて、侵攻の強化に向けた理解を求める狙いがあるとみられる。
プーチン氏は3月の大統領選で過去最高の87%超の得票率で通算5選を決めた。国民に不人気の政策を実行しやすくなる。
ロシアの独立系メディアはテロが発生する前から、戦時経済下の財源を確保するための所得増税や、侵攻拡大を視野に軍の兵員を増やすための再度の部分動員の可能性について伝えている。
ロシア軍は志願兵である契約軍人の採用を優先して進め、前線に投入している。22年9月に発令した部分動員令では30万人超を招集し、発令後に招集を回避しようとする人の出国が相次いだ。
ウクライナは関与を否定している。ゼレンスキー大統領は23日の声明で「プーチンや周囲の連中は誰かのせいにしようとしているだけだ」とロシアを非難した。
事件翌日まで演説しなかったプーチン氏について「どうすればウクライナに罪をなすりつけられるか考えていた」と断じた。「何十万ものテロリストをウクライナに送り込んで戦わせている」と指摘し、ロシアの侵攻を改めて批判した。
実行犯は犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)とみられる。欧米メディアによると、ISは23日、実行犯が現場で撮影した映像を公開した。複数の男が銃を乱射している。ロシア政府はISに言及していない。
米国はプーチン政権がテロをウクライナ侵攻に利用するのを警戒しているとみられる。米メディアによると、米国家安全保障会議(NSC)はIS単独の犯行であり「ウクライナの関与はまったくない」との声明を出した。
モスクワでは23日、コンサートホール近くで献花など犠牲者を追悼する人々や、入院する市民に提供するための献血に応じる人々の姿がみられた。プーチン氏が国民の服喪の日にした24日も献花の動きは続いた。
モスクワの北西クラスノゴルスクの音楽ホール「クロッカス・シティ・ホール」で22日夜に起きた銃撃事件ではコンサート前に迷彩服を着た犯行グループが警備員を撃って侵入し、観客に銃撃した。爆発も発生し建物から黒煙と炎が上がった。
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説
今回犯行声明を出したのは、IS-K(イスラム国ホラサーン州)と呼ばれるアフガニスタンに本拠地を置くISの一部のようです。
米国系のテロ専門家の多くはIS系グループの可能性が高いと判断しており、戦争研究所(ISW)もその可能性が相当高いという判断です。https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-assessment-march-23-2024
元々ロシアに対する敵意は明らかであったということで、手口からしてもISの可能性が高いというのが判断のようです。
しかし、この事件が起こったことをプーチン大統領が政治的にどう利用するかは、全く別次元のことなのでしょう。
2024年3月24日 15:58 』