諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について 2021年版

 ※ 是非一読をオススメする…。

 ※ 随分長いので、とても全部は貼っていられない…。

 ※ ここではごく一部のキャプチャ画像を、貼っておく…。

 さらに、.pdf→テキスト変換したものは、「資料」として貼っておく…。

諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について 2021年版
反フィンランド£=スウェーデンE!フランスDスイス
・ドイツ釆英国HIカナダ尊米国
2021年2月
『この冊子は、高レベル放射性廃棄物の処分に関心をお持ちの方々に対し、理解の一助として頂くことを目的として製作しております。
本冊子に関するご意見•ご要望がごさいましたら、以下までお知らせください。
経済産業省資源エネルギー庁
電力・ガス事業部放射性廃棄物対策課
〒100-8931 東京都千代田区霞が関1-3-1
TEL:03-3501-1511(代表)
E-mail : rwaste-question@meti.go.jp』
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/

『はじめに
高レベル放射性廃棄物は、極めて長期にわたり私
たちの生活環境から遠ざける必要があり、その方法
として地下深くの安定な地層中に処分する「地層処
分」が最も好ましい処分方法であることが、国際的に
共通の認識となっています。わが国においても、平成
26年(2014年)4月のエネルギー基本計画において、
高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題について、
地層処分を前提に進めつつ、将来世代が最良の処
分方法を選択できる余地を残すとしております。原子
カ発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、
将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任
で、地層処分する必要があります。地層処分の仕組
みや日本の地質環境等について理解を深めて頂くた
めに、国は、「科学的特性マップ」を作成し、平成29
年(2017年)7月に公表しました。そして、令和2年
(2020年)11月に、北海道の寿都町と神恵内村に
て文献調査が開始されることとなりました。文献調査
は、地質に関する文献データを調査分析し、情報提
供していくものです。今後設置される「対話の場」で
は、地域住民の参加を得て、調査状況、地層処分事
業の仕組みや安全確保、地域の発展ビジョンの具体
化について議論する予定です。』

〜この冊子のねらい〜
諸外国の経験から学ぶ上では、放射性廃棄物を
長期にわたって管理するという共通の目標があって
も、各国の文化、政治及び歴史的な状況を反映し
て、地層処分の実現に至る取組みには似ているところ
と異なるところが必然的に生じます。
諸外国の多様な進披状況を理解する上で役立つ
重要な事項を体系的にまとめ、解説する資料を目指し
て、この冊子の最初のバージョンを平成15年(2003
年)9月に発行しました。当初は欧米6カ国(スウェー
デン、フィンランド、フランス、スイス、ドイツ、米国)を取
り上げました。その後、これら6カ国以外にも、高レベ
ル放射性廃棄物処分の具体化が進んだ国、処分地
選定や処分事業の進展が見られる国々を丹念に追跡
し、収録国を増やしつつ、情報の更新•追加を行っ
た改訂版を毎年発行してきました。内容改訂では、諸
外国での最新の進拶動向を反映するだけでなく、わ
が国での検討状況を踏まえ、諸外国で類似検討がな
された過去の情報も充実させるようにしています。地
層処分について知る•考えるきっかけとなる読み物とし
ての性格を意識しています。
地層処分について初めて知ったという方でも手に
とってもらえるよう、難しい表現をできるだけ避けつつ、
諸外国の状況や多様な取組みがわかるように配慮し
ています。初めてこの冊子を手に取った方は、頁数
が多いのでは••・と疑問に思うかもしれません。
地層処分の関心領域は、技術面、実施体制など
の制度面、処分場のサイト選定方法、地域振興、安
全確保の取組みなど多岐にわたっています。原子力
発電の導入状況や核燃料サイクルの選択なども関係
します。諸外国でも高レベル放射性廃棄物の問題に
ついて悩みつつ、様々な取り組み•経験が積み重ね
られて今日に至っています。頁数が多いのはそのた
めです。
2021年版の冊子では、特に断りのない限り、令和
2年末(2020年末)時点の情報に基づき作成してい
ます。フィンランド、スウェーデン、フランス、スイス、ドイ
ッ、英国、カナダ、米国の主要8力国の最新情報を、
それぞれ独立した「編」にまとめています。
付録として、用語解説のほか、わが国の近隣国で
ある中国、韓国、ロシアでの地層処分に関する情報
を短く解説したページを設けています。
地層処分に関して、興味のある方、もっとよく考えて
みたいと思われる方の理解の一助になれば幸いです。
〇本冊子の電子版は、原子力環境整備促進・資金管理センターのウェブサイト「諸外国での高レベル放射性
廃棄物処分」(https://www2.rwmc.or.jp)で入手できます。このウェブサイトでは、諸外国の高レベル
放射性廃棄物の最終処分に関連する情報をまとめているほか、最新情報を「海外情報ニュースフラッシュ」
としてブログ形式で提供しています。こちらもぜひご覧下さい。
(右のQRコードをスキャンしてアクセスできます。)
諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捧状況
卜!カナダ
2010年から開始したサイ
卜選定プロセスに21地域
が参加。絞り込みが進めら
れており、「2023年まで
に!カ所の好ましいサイト
を特定する」としています。
A屹
る尽
英国
スウェーデン
15°
CANA
15°
2008年から公募方式で開始したサイト選定プロ
セスから、カンブリア州西部が2013年1月に撤
退。2018年から実施主体のRWM社がサイト選
定プロセスを開始し、202I年2月時点では、2
自治体がワーキンググループを設置しています。
処分実施主体のSKB社が、処分場建設
予定地としてフォルスマルクを選定し、
2011年3月に立地•建設許可申請。
現在、安全審査が進められています。
Ca gary
中レベル放射性廃棄物など
も併圏処分する計画です。
ドイツ
Reykjavik
/ UNITE 3
DubHrt* KINGDOM
IRELAND Lon&n N
DENMAF
UN TED STAT
2013年に新たなサイト選定手続を定める法
律が成立。現在、サイト選定を実施しており、
二2020年9月に地質学的な基準・要件を満た
E:す区域を示したマップを公表しました。
NORWAY 屈 £DEN
‘Murmansk
.Petersburg
Ekaterinburg
KAZAKHS AN
RAINE
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FINLAND
Helsinki,ノ
Kijev •
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,EL SALVADC )F
TRU廃棄物などを含む発熱性
廃棄物を処分する計画です。
CUBA
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HONDURAS——
)R NICARAGUA
ベルギー
・米国
法律上の処分場であるネバダ州
のユッカマウンテンは、許認可
手続きが中断している状態です。
概ね、共和党政権はユッカマウ
ンテン計画を推進し、民主党政
権は計画中止、代替案の検討と
なっていましたが、2021¢!
月に誕生した民主党のバイデン
政権の方向性は見えていません。
MA
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RU
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201I年に取りまとめられた放
射性廃棄物の国家計画案の法的
手続きが完了し、連邦政府の正式
決定を待っているところです。
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Mumba
(Bombay
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50-100年間の中間貯蔵後に地層処
分を行うことを優先オプションとして
いますが、最終的な管理方針の決定は
先送りされています。
フランス
SOMALIA
/loqadishu
MAURITIU 5
TRU廃棄物などの併置処分も
検討しています。
※併置処分とは、異なるレベルの放射性廃棄物等を
同一のサイト内に処分する処分方法です。
ids°
9 °
法律で定めたスケジュールに沿って
「可逆性のある地層処分」の事業化に
向けた取組を実施。2021年頃に
は処分場の設^許可申請が行われる
予定です。
TRU廃棄物なども併置処分
する計画です。
1。

処分事業の進按状況
各国の進拶をわが国の地層処分事業段階に相当する位置で示しています。段階の構成•順序は各国で異なります。
ベルギー 英国 カナダ 中国(甘粛省北山ほか)※4
韓国
※1:サイト公募段階はなく、ドイツ全土から地質学的条件等で絞り込む方式。
※2 :サイト公募段階はなく、地質学的条件で抽出された複数の候補エリア内
から絞り込む方式。
※3 :サイト公募段階はなく、廃棄物発生場所に近い複数の地域から地質学的
条件で絞り込む方式。
最終処分施設
建設地の選定
フランス
(ビュール地下研究所近傍)
※4 :北山以外の地域を含めて比較検討して、候補地を選定する予定。
※5 :精密調査の実施前に、法令手続に基づく立地・建設許可を申請。審査後
に処分地が正式決定する。
※6 :精密調査の前に、法令手続に基づく処分地選定が終了。精密調査の実施
を経て建設許可申請がなされ、政府が処分場の建設許可を発給。
諸外国の比較
4
と各国の比較
•各国の地層処分の検討経緯と進接状況………6
(2020年]2月時点)
諸外国の状況
フィンランド
中国
2015年にフィンランド政府が使用済燃料処分場の
建設許可を発給。実施主体のポシヴァ社は2016年
12月に処分場の建設を開始しました。
王フィンランド
法律で地層処分を行
うと決めており、サ
イト調査が甘・省北
山(ペイシャン)など
で行われています。
•日本
2017年7月に科学的特性
マップが公表され,2020
年11月には北海道寿都町・
神恵内村で文献調査が開始
されました。
E5スウエ|デン
ロフランス
Novosibirsk

  • NepA 卜、.、
    ’剛 KaS満応
    BANGLAQE
    –卜iak;
    ND A Calcu ta’
    I. 局レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針…10
    II. 地層処分計画と技術開発……….13
    IH. 処分事業の実施体制と資金確保……..19
    IV. 処分地選定の進め方と地域振興 …….25
    V. 情報提供•コミュニケーション………30
    I.高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針 ..36
    II. 地層処分計画と技術開発 ………38
    IIL処分事業の実施体制と資金確保 ……..44
    IV.処分地選定の進め方と地域振興 ……..50
    V情報提供•コミュニケーション………..54
    I. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針 .60
    II. 地層処分計画と技術開発 ………64
    IIL処分事業の実施体制と資金確保 ……..69
    IV.処分地選定の進め方と地域振興 ……..74
    V情報提供•コミュニケーション ……….79
    MONGC
    C H
    iFi’ VIETNA
    N A

Guangzhou
MAI AYSIA
Kuala Lumpur . ゝ
N. KOREA
•Pyongyang
•Seoul
S. KOF’EA
Taiwan—-
2016年7月に高レベル放射性廃棄物管
理基本計画が策定されましたが、現在は
「使用済燃料管理政策再検討委員会」にょ
る見直しが進められています。
ALU
E3スイス
連邦政府は2018年12月に候補エリアを3つまで
絞り込みました。現在、サイト選定第3段階にあり、
2019年より候補エリアにてボーリングを実施して
います。
MD
TRU廃棄物などの併置処分
も検討しています。
申請
安全審査 ▼建設
申請
r |皿•Iヽ
IEI
スウェーデン 米国
(フォルスマルク)※5 (ユッカマウンテン)※フ
フィンランドUU
(オルキルオト)※6 FI|1
※7 :安全審査自体はほぼ終了しているが、許認可
発給、ユッカマウンテン計画を進めるために
は、予算の確保、体制の再構築などが必要と
考えられる。
地下数百メ|トル
I.高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針 …84
ス II.地層処分計画と技術開発 …………89
[ HI.処分事業の実施体制と資金確保 ……..94
ス IV.処分地選定の進め方と地域振興……..100
V情報提供•コミュニケーション……….106
I.高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針….110
ド II.地層処分計画と技術開発…………113
g HI.処分事業の実施体制と資金確保……..117
ノ IV.処分地選定の進め方と地域振興……..122
V情報提供•コミュニケーション……….127
I.高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針….132
英 II.地層処分計画と技術開発………..135
国 IIL処分事業の実施体制と資金確保……..139
IV.処分地選定の進め方と地域振興……..144
V情報提供•コミュニケーション……….151
好! I,高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針……156
力 II.地層処分計画と技術開発………..160
吉.HI.処分事業の実施体制と資金確保………164
夕 IV.処分地選定の進め方と地域振興……..170
V情報提供•コミュニケーション……….175
I.高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針….180
米 II.地層処分計画と技術開発…………183
国 IIL処分事業の実施体制と資金確保………192
IV.処分地選定の進め方と地域振興……..198
V情報提供•コミュニケーション……….202
韓国、中国、ロシアにおける地層処分…………205
•資料編
フィンランド……………………214
スウェーデン……………………216
フランス……………………..218
スイス………………………220
ドイツ………………………222
英国……………………….224
カナダ………………………226
米国……………………….228
•諸外国における高レベル放射性廃棄物処分事業に
関連する地域振興策………………..230
日本における地層処分 ………………231
•用語集……………………..238
[]は現段階での事業の進抄を示しているものの、計画の中止などで変更があり得る。
換算レートは、日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場に基づき1米ド
ル=105円、1ユー ロ=124円、1英ポンド=13 7円、1カナダドル=80円、1ス
ウェーデン・クローネ=12円、1スイス・フラン=115円を使用しています。また、
1999年以前については、1ユーロ=1.95583マルク(ドイツ)で換算しています。
※この冊子は特に断りのない限り、2020年12月現在の情報に基づいています。
諸外国の比較
国 名 処分サイト 処分廃棄物 研究開発
処分地の選定状況 候補岩種/処分深度(計画) 対象廃棄物処分量 処分実施主体 事業計画など
フィンランド 工ウラヨキ自治体 オルキルオト 〇岩種:結晶質岩 〇深度:約400~450m 〇使用済燃料:6,500t (ウラン換算) ポシヴァ社 〔原子力発電会社2社の共同出資会社〕 02001年:最終処分地の決定 02016年12月:処分場建設開始 〇処分開始予定:2020年代
スウエ|デン エストハンマル自治体 フォルスマルク (建設許可申請書を提出) 〇岩種:結晶質岩 〇深度:約500m 〇使用済燃料:12,0001 (ウラン換算) スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB) 〔電力会社4社の共同出資会社〕 02011年3月:立地・建設許可申請 〇処分開始予定:203I年頃
フランス 候補サイトを特定 (ビュール地下研究所の近傍) 〇岩種:粘土層 〇深度:約500m (併置処分想定) 〇高レベル・ガラス固化体:12,000m3 OTRU 廃棄物等:72,000m3 ※全量再処理を前提とした2018年の見積(処分容器を含 まない量) 放射性廃棄物管理機関(ANDRA) 〔商工業的性格を有する公社〕 02010年:地下施設展開区域(ZIRA、約30km2)の決定 〇処分開始予定:2035年頃
スイス 3カ所の地質学的候補エリアを 連邦政府が承認 〇岩種:オパリナス粘土 〇深度:約400〜900m (併置処分想定) 〇高レベル・ガラス固化体と使用済燃料:9,402m3 OTRU廃棄物等:L072m3 ※体積の値は、処分容器を含む量 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA) 〔連邦政府と原子力発電事業者が出資する共同組合〕 02008年〜:特別計画に基づくサイト選定の開始 〇処分開始予定:2060年頃
ドイツ サイトは未定 〇岩種:未定 〇深度:300m以上 (併置処分想定) 〇高レベル・ガラス固化体と使用済燃料 〇固形物収納体(CSD-C)等 処分量合計:27,000m3 (2022年までに全ての原子炉を閉鎖する場合) ※体積値は、廃棄物容器を含む量 連邦放射性廃棄物機関(BGE) 〔連邦政府が1〇〇%所有する私法上の組織〕 02031¢:処分場サイトの決定 〇処分開始予定:2050年代以降
英 国 サイトは未定 〇岩種:未定 〇深度:200-1,000m程度 (併置処分想定) 〇高レベル・ガラス固化体:9,860m3 〇中レベル放射性廃棄物:461,000m3 〇低レベル放射性廃棄物:11,400m3 ※上記以外に、一部の使用済燃料を再処理せずに直接処分す ることも検討している。 実施主体:原子力廃止措置機関(NDA) 放射性廃棄物管理会社(RWM社) 〔政府外公共機関〕 02018年12月:サイト選定プロセス開始 〇処分開始予定:低レベル放射性廃棄物及び中レベル放射性廃棄物は 2040年頃、高レベル放射性廃棄物は2075年頃
カナダ サイトは未定 〇岩種:結晶質岩または堆積岩 〇深度:500〜1,000m OCANDU炉使用済燃料 処分量:未定 使用済燃料集合体数: 約285万体(2018年6月時点) 約57,00〇t (重金属換算) 核燃料廃棄物管理機関(NWM0) 〔原子力発電事業者の共同出資による非営利法人〕 02010年:サイト選定開始 〇処分開始予定:2040年〜2045年頃
米 国 ネバダ州 ユッカマウンテン(法律上) 〇岩種:凝灰岩 〇深度:200m~500m 〇使用済燃料(商業用が主) 〇高レベル・ガラス固化体(国防用が主) 処分量合計:70,00〇t (処分容器を含まない上記の重金属換算による重量) 実施主体:エネルギー長官(法律上) 02013年:エネルギー省(DOE)の管理•処分戦略 〇処分開始予定:2048年
スペイン サイトは未定 (最終管理方針は未決定) 〇岩種:未定 〇深度:未定 (併置処分想定) 〇使用済燃料、高レベル・ガラス固化体 〇長寿命中レベル放射性廃棄物 処分量合計:12,800m3 放射性廃棄物管理公社(ENRESA) 〔政府出資による公社〕 〇1998年:サイト選定プロセスの中断 〇処分開始予定:2050年以降
ベルギ| サイトは未定 〇岩種:粘土層 〇深度:未定 (併置処分想定) 〇高レベル・ガラス固化体と使用済燃料(カテゴリー C) OTRU廃棄物等(カテゴリー B) 処分量:1L700m3 (再処理ケース) ベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS) 〔連邦政府監督下の公的機関〕 〇処分開始予定:カテゴリーBは2035年から2040年、カテゴリーC は2080年に処分開始
中 国 サイトは未定 〇岩種:未定 〇深度:未定 〇高レベル・ガラス固化体(PWR) OCANDU炉使用済燃料 処分量:未定 中国核工業集団公司(CNNC) 〔国営企業体〕 01986年:サイト選定開始 〇処分開始予定:204I年〜今世紀半ば
韓 国 サイトは未定 (最終管理方針は未決定) 使用済燃料の管理政策を検討中 韓国原子力環境公団(K0RAD) 〔韓国産業通商資源部(日本の省に相当)監督下の公団〕 〇処分開始予定:未定
B 本 サイトは未定 (2002年末公募開始) 〇岩種:未定 〇深度:300m以上 〇高レベル・ガラス固化体(第一種) 処分量:4万本以上 OTRU廃棄物(第二種) 処分量:19,000m3以上 原子力発電環境整備機構(NUM0) 〇平成14年(2002年)12月:「最終処分場施設の設置可能性を調査す る区域」の公募開始 〇処分開始予定:未定
注:処分量及び処分費用は異なる時期に異なる算定ベースで見積られている可能性があります(数字は概算)。
換算レートは2020年12月時点の日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を使用しています(1米ドル=105円、1ユーロ=124円、1英ポンド=137円、1カナダドル=80円、
1スウェーデン・クローネ=12円、1スイスフラン=115円)。
4
(202〇年12月末時点)
研究施設 処分費用と資金確保
地下研究所•地下特性調査施設 処分費用 廃棄物発生者 資金確保
地下特性調査施設(0NKAL0)〔ポシヴァ社施設〕 02004年から建設開始 ※将来は、処分場の一部となる予定 33.2億ユー ロ (4,120億円)(2009年算定額) 〔処分量5,500tベース〕 原子力発電会社2社他 〇国家放射性廃棄物管理基金(VYR) 2019年末残高:27.2億ユーロ(3,37〇億円)
エスポ岩盤研究所[SKB社施設〕 〇1990年建設開始、!995年から供用 530億スウェーデン•クローネ (6,360億円)(2019年算定額) ※キャニスタ封入施設と処分場の費用のみ。廃 棄物輸送費や研究開発費は含まない 電力会社4社 〇原子力廃棄物基金 2019年末残高(市場価格): 746億スウェーデン・クローネ(8,95〇億円)
ビュール地下研究所[ANDRA施設〕 0200〇年から建設開始 ※処分場はビュール研究所の近傍に立地されるが、研究所 が処分場に転用されることはない 250億ユーロ (3兆1,〇〇〇億円)(2〇16年算定額) ※ANDRAが2014年に提示した見積額に基 づき、2016年1月にエネルギー担当大臣が 定めた目標額 フランス電力株式会社(EDF社)、原子力•代替エネルギー庁(CEA)、 Orano 社(旧 AREVA 社) OEDFの弓|当金:86億4,00〇万ユーロ(1兆710億円) (2019年末:高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄 物の貯蔵・処分)
グリムゼル試験サイトCNAGRAの施設〕 〇1983年建設開始、!984年供用開始 モン・テリ岩盤研究所〔国際共同利用施設〕 01996年設置 137.4億スイスフラン (約1兆5,80〇億円) ※環境•運輸・エネルギー •通信省(UVEK)が 2018年4月に決定した額 ※高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃 棄物の処分費用の合計 電力会社4社 〇放射性廃棄物基金 2019年末残高:57.68億スイスフラン(6,630億円)
ゴアレーベン地下施設〔連邦政府の施設〕 〇1986年から地下探査用坑道の建設開始 02013年のサイト選定法の施行に伴い地下探 査の停止 02014年に一部を地下坑道の閉鎖を決定 ※今後閉鎖予定 約77億ユーロ (約9,500億円)(2015年算定額) ※処分場の建設、操業及び閉鎖のための費用 電力会社主要5社及びその子会社 〇放射性廃棄物管理のための基金: 2019年度末残高:約232億ユーロ(約2兆8,800億円)
地下研究施設:なし ※処分場建設と平行して地下特性調査を行う計画 約106.6億ポンド (約1兆4,600億円)(2019〜2〇会 計年度) ※上記の地層処分費用の算定額では、0~5年 目はー1.34%、6〜1〇年目は一0.96%、11 年目以降はー0.11%の割引率を適用 EDFエナジー社、原子力廃止措置機関(NDA) OEDF!ナジー社の引当金:15.9億ユーロ(約1,970億円) (2019年末:放射性廃棄物管理費用) ONDA分は税金負担
地下研究所(URL) 〔カナダ原子力公社(AECL)施設〕 〇1983年建設開始、1989年から供用 02006年から閉鎖作業開始、2010年に恒久 的に閉鎖 230億カナダドル (1兆8,900億円)(2015年算定額) CCANDU炉燃料集合体520万体処分 する場合〕 電力会社3社、カナダ原子力公社(AECL) 〇信託基金(各社が個別設置) 2019年末残高:48億カナダドル(3,84〇億円)
ユッカマウンテン探査研究施設[D0E施設〕 〇1995年建設開始、1997年完成 ※処分場の一部として計画 962億ドル (lO^l.OOOISH) (2007年算定額) 電力会社(商業用)、DOE (国防用等) 〇放射性廃棄物基金(NWF) 2020年9月末に保有する米国債(市場価格): 543億ドル(5兆7,000億円)
地下研究施設:なし 62億ユーロ (7,690億円)(2006年算定額) 電力会社5社 〇放射性廃棄物の管理基金(ENRESAが管理) 2019年末残高:61億ユーロ(7,560億円)
HADES地下研究所 〔研究機関と実施主体の共同利用施設〕 〇1980年建設開始、!984年供用開始 5.9億〜14.9億ユーロ (73〇億〜1,850億円) (2〇〇〇年算定額) シナトム社 〇長期基金(ONDRAF/N旧ASが管理) 〇使用済燃料管理引当金(シナトム社が一括管理)
地下研究施設:なし 処分費用:未定 原子力施設事業者 〇資金確保策:「原子力発電所の使用済燃料の処理処分基金」を設置
地下研究施設:なし 処分費用:未定 韓国水力原子力株式会社 〇資金確保策:放射性廃棄物管理基金を設置
日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター 〇平成13年(200I年)開設 日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所 〇平成14年(2002年)開設 処分費用: 〇第一種 約3兆1,299億円 〇第二種 約8,373億円 〔令和2年(2020年)12月〕 電力会社9社、日本原子力発電株式会社、 日本原子力研究開発機構(JAEA)、日本原燃株式会社 〇第一種最終処分積立金:令和元(2019)年度末残高 約1兆669億円 〇第二種最終処分積立金:令和元(2019)年度末残高 約603億円
5
各国の地層処分の検討経緯と進】歩状況
-1970
1980
1990
フィンランド
1985
全国マップ策定
]QQ3
政府が地層処分の方針を決定後、処分地選定を開始
:= スウェーデン 1993 文献調査地の公募と実施
1976 1990 1995 政府の委員会が地層処分を提言 地下研究所の建設開始 文献調査の申し入れ
II フランス 1 993 地下研究所の候補地域を公募
1 983 原子力庁が地層処分を提案
□ スイス 1983 NAG R Aが地下研究所の建設開始
1978 国内処分の実現可能性実証のための調査開始
ドイツ
1979
ゴアレーベン選定
1986
探査坑道の建設開始
英国
1976
王立の委員会が地層処分を提案
カナダ
米国
■ 1978 核燃料廃棄物 ■ 1985 1管理計画の策定 地下研究所の開設
1987 ユッカマウンテンを唯一の処分候補地として選定
1957 全米科学アカデミーが地層処分を提案 1983 9カ所の候補サイトを選定 1995 地下特性調査施設建設開始
日本
1976
地層処分研究開始
1992
「第1次取りまとめ」を公表
※EKRAn「放射性廃棄物の処分概念に関する専門家グループ」の略称
6
—•—処分場サイト決定前の進拶状況 —処分場サイト決定後の進拶状況
2000 2010 2020-
2004 地下調査施設建設開始 2015 建設許可の発給
2001 オルキルオトに決定 2012 2016 建設許可を申請 処分場建設開始
2009 フォルスマルクに選定 【審査中】
2002 現地調査実施 2011 立地・建設許可を申請
2010 ビュール近郊の候補区域を政府が了承
1999 地下研究所の建設・操業の許可 2009 2021 処分場の設置候補区域を提案 設置許可の申請(見込み)
2000 2005 EKRA報告書 原子力法•原子力令 2011 2018 サイト選定第2段階 サイト選定第3段階
1996 スイス国立水文学•地質調査所が地下研究所の建設開始 2008 処分場サイト選定開始 地質学的候補エリアを含むスイス全土のマップを公表
2011 2017 新たなサイト選定実施の同意 サイト選定開始
2013 2020 「サイト選定法」制定 第1段階中間報告書 (サイト区域マップ)を公表
2006 政府が地層処分を採用 2013 2014 2018 自治体が撤退プロセス見直しサイト選定を新たに開始
2008 2020、2021 処分地選定開始 2自治体がワーキンググループを設置
1998 環境評価パネルの報告書 2012 22自治体から関心表明
2002 「核燃料廃棄物法」制定 2010 2020 サイト選定開始 2自治体がボーリング調査等を実施中
2008 許認可申請 【審査中】
2002 ユッカマウンテンを処分場サイトに決定
2000 最終処分法制定・NUM〇設立 2015 2017 最終処分に関する基本方針の改定科学的特性マップ公表
1999 「第2次取りまとめ」を公表 2020 北海道寿都町•神恵内村で文献調査を開始
7
2020年1月から2021年1月までの
諸外国における高レベル放射性
廃棄物等の管理.処分の動き
▲ n dj
IW1
諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、”海外情報
ニュースフラッシュ”として、上記のホームページで最新の正確な情報を迅速に提供しています。
2020 年
1日]c 日 英国の原子力廃止措置機関(NDA)が2019年
H H 版の放射性廃棄物インベントリ報告書を公表
英国でRWM社が地層処分に関連する研究を支
8月4日 援する研究サポートオフィスを立ち上げ
P.137参照
米国で放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)
1月23日 が乾式貯蔵等に係るエネルギー省(D0E)への勧
告•所見を公表
フィンランドでTVO社が極低レベル放射性廃棄
8月14日 物の浅地中処分に関する環境影響評価計画書を
提出
カナダの使用済燃料処分場のサイト選定の状況
1日クく日 ーカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWM0)が
月 日 ヒューロン=キンロス・タウンシップを除外
スイスでNAGRAが高レベル放射性廃棄物の
8月17日 キャニスタ封入施設の立地オプションを比較す
る報告書を公表
P.173参照
カナダ〇PG社の低・中レベル放射性廃棄物の地
1月31日 層処分場建設プロジェクトが代替サイト検討へ
ドイツでサイト選定手続きの第1段階の中間報
8月21日告書提出及び公衆参加手続に関するスケジュー
ルが公表
P.124参照
P.165参照
米国で2021会計年度の予算要求ーユッカマウ
ンテン計画の膠着状態を傍観せずに代替の解決
こ月| ut!策を開発するとの方針を表明
ロシア・オジョルスクに計画中の浅地中処分場
H に対して立地,建設許可が発給
P.212参照
P.182 及び191
ドイツでサイト選定手続き第1段階の中間報告
9月28日 書が公表一地質学的な基準・要件を満たす「サイ
卜区域」を選定一
英国の放射性廃棄物管理会社(RWM社)が地層
2月18日 処分施設(GDF)のサイト評価方法書を公表
P.145参照
フランスの環境連帯移行省が「放射性物質
及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」
月 日(PNGMDR)改定案に関する公開協議を開催
米国でエディ・リー・エナジー・アライアンス
3月2〇日(ELEA)サイトにおける中間貯蔵施設の建設・
操業に係る環境影響評価が進行
P.66参照
ドイツで連邦放射性廃棄物機関(BGE)がアッセ
3月27日!I研究鉱山からの放射性廃棄物の回収計画を公

カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWM0)が
4月|日 2020-2024年の実施計画書を公表
ベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機
関(ONDRAF/NIRAS)が高レベル放射性廃棄物
B ° 及び長寿命低•中レベル放射性廃棄物の長期管
理方針に関する国家計画案への意見聴取を開始
米国で中間貯蔵パートナーズ(isp)社による中
5月8日 間貯蔵施設の建設•操業に係る環境影響評価が
進行
カナダの使用済燃料処分場のサイト選定の状況
6月8日 ーサウスブルース自治体での将来ビジョンづく
りの取組
スイスでUVEKが21の調査候補地点に対する
〇 ボーリング許可発給を完了
スウェーデンで原子力活動法改正:処分場閉鎖
H ° 後の責任を国に移管する旨を明確化
英国のドーンレイサイト及び低レベル放射性廃
7月1〇日 棄物処分場のサイト許可会社が原子力廃止措置
機関(NDA)の完全子会社へ
スウェーデンのエストハンマル自治体議会が使
H用済燃料処分場の受け入れ意思を議決
ドイツでサイト区域専門会議のキックオフ会合
10月17日 が開催ーサイト選定手続きにおける公衆参加の
開始ー
P.128参照
フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が
11月6日 公益宣言(DUP)に関する公開ヒアリング向け
資料を公表
P.74参照
NN
目区
英国カンブリア州のコープランド市が調査エリ
11月14日 アの特定に向けてワーキンググループを設置
P.145参照
1 1 カナダで天然資源省が放射性廃棄物政策の見直 月 日しに向けた関与プロセスを開始
2021年
: □ : イタリアで原子力施設管理会社(SOGIN)が極 1月5日 低レベル及び低レベル放射性廃棄物処分場の候 補サイトを示したマップを公表
英国カンブリア州のアラデール市が調査エリア
1月14日 の特定に向けてワーキンググループを設置
P.145参照
カナダ原子力安全委員会(CNSC)が放射性廃棄
月 日物の管理に関する規制文書を公表
ロシア・セベルスクに計画中の浅地中処分場に
B H 対して立地•建設許可が発給
P.212参照
フ日ロ フランスで国家評価委員会(CNE)が第14回評
ァ月頂日価報告書を公表
本文に反映されている出来事については、欄内のタイトルの後に本文
の該当ページを示しています。
8
諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について 2020年12月現在
—フィンランドにおける
高レベル放射性廃棄物の処分について
融E庁EN
IRI1JSSIW!
400
フィンランドの基本データ
面積 336,869平方キロ
人口 5,523 千人(201 8 年)
首都 ヘルシンキ
言語 フィンランド語、スウェーデン語
通貨 ユーロ (1ユーロ=124 円)

高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針
a

フィンランドでは、原子力発電から生じる使用済燃料を再処理せず、高レベル放射性廃棄物とし
て処分する方針です。処分する前は、各原子力発電所で中間貯蔵しています。
◎原子力エネルギー政策の動向
フィンランドには原子力発電所が2力所あり、東側
のロヴィーサ原子力発電所ではロシア型加圧水型原
子炉(VVER) 2基、西側のオルキルオト原子力発
電所ではスウェーデンから導入した沸騰水型原子炉
(BWR) 2基が運転中です。
ロヴィーサ原子力発電所を運転するフォルツム・パ
ワー •アンド・ヒート社(FPH社)は、北欧の大手工
ネルギー企業フォルツム社の子会社です。フォルツ
ム社は株式上場企業ですが、その株式の過半数を
フィンランド政府が保有しています。
オルキルオト原子力発電所はテオリスーデン•ヴォイ
マ社(TVO社)が運転しています。この会社は、そ
の親会社に電力を売電する民間の電力会社です。
フィンランドでは総消費電力量の約23% (2019年)
を輸入に頼っている一方で、2005年よりオルキルオト
原子力発電所で3号機の建設が進められています。
オルキルオト原子力発電所3号機は欧州加圧水型原
子炉(EPR)であり、2022年には商業運転を開始す
る予定です。さらに2010年7月には、原子力発電事
業に新規参入を図るフェンノボイマ社の発電所の立
地計画が政府及び国会の承認を受けています(実際
に建設するには、別途、事前に建設許可を受ける必
要があります)。2011年3月の東京電力(株)福島第
一原子力発電所の事故後も大きな政策変更は生じて
いません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
フィンランドは1994年に原子力法を改正し、使用済
燃料の輸出入を禁止しています。原子力発電所で発
生する使用済燃料は、各発電所で中間貯蔵されてい
ます。原子炉から取り出された燃料は、原子炉建屋
の燃料プールで数年間冷却した後、所内に別途設け
られた中間貯蔵施設に移されます。
オルキルオト原子力発電所では、1987年から所内
の中間貯蔵施設が操業しています。建設中の3号機
等から発生する使用済燃料の貯蔵に対応するため
に、2014年までに容量拡大の工事が行われました。
一方、ロヴィーサ原子力発電所(ロシアから原子炉
を導入)では、使用済燃料を1996年まではロシアに
オルキルオト原子力発電所(TVO社)
’79年(1号機)、
’82年(2号機)運転開始
3号機建設中
ロヴィーサ原子力発電所(FPH社)
ワ7年(1号機)、
’81年(2号機)運転開始
フィンランドの原子力発電所
(写真提供:ポシヴァ社日A報告書より引用、一部追記)
10
フィンランド
m参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
フィンランド
石油
フィンランドの電力供給構成
(発電量一2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
2018 年 フィンランド 総発電電力量 国内供給 電力量 国内電力 消費量
輸入 輸出
単位:億kWh 702.63 225.51 -26.17 901.97 827.71
◎原子力発電設備容量
合計4基279.4万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
■ 原子力発電所(商業用、運転中)
■ 低(中)レベル放射性廃棄物処分場
■ 処分場予定地・特性調査施設
11
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
返還していましたが、以降は所内で中間貯蔵していま
す。2001年に新たなプール貯蔵施設が操業を始めま
した。
◎処分方針
フィンランドで処分の対象となる高レベル放射性廃
棄物は、オルキルオト原子力発電所と口ヴィーサ原子
カ発電所から発生する使用済燃料です。フィンランド
では、これらの使用済燃料を再処理せずに、そのまま
高レベル放射性廃棄物として処分する直接処分方式
をとっています。1994年の原子力法改正時に、使用
済燃料を含めて、フィンランドの原子力発電で発生す
る放射性廃棄物は、自国内で最終処分しなければな
らないことが法律に明記されました。
◎最終処分容量の拡大ニーズへの対応
フィンランドでは、後述するように、原則決定という
法律に基づく手続きを経て、2001年に高レベル放射
性廃棄物(使用済燃料)の最終処分場の建設予定
地がオルキルオトに決定しています。実際に使用済燃
料の処分を開始するためには、処分実施主体のポシ
ヴァ社が別途、法律に基づく形で処分場の建設、操
業に関して、それぞれ政府から許可を得なければなり
ません0
また、承認を受けた当初計画での処分容量を拡大
する必要が生じた場合には、それを反映した計画に
ついて、改めて政府及び国会の承認を受ける必要が
あります。
TVO社のオルキルオト原子力発電所での原子炉
増設計画に対応する形で、ポシヴァ社はオルキルオト
最終処分場における使用済燃料の処分容量拡大計
画の原則決定の申請をしてきました。オルキルオトが
最終処分地に決まった2001年時点では、運転中の
原子炉4基から発生する使用済燃料について最大
4,000トン(ウラン換算、以下同じ)を条件として計画
が承認されていましたが、現時点では、オルキルオト3
号機で発生する使用済燃料を含めて最大6,500トン
の処分計画が承認されています。
トン(ウラン換算)
8,000
6,000
4,000
2,000
6,500トン
オルキルオトでの使用済燃料の処分計画における
処分容量の拡大
※TVO社は過去にオルキルオト4号機の建設計画をし、2010年
には政府による原則決定、及びそれに伴い使用済燃料の処分量を
9,000トンまで拡大することが認められていました。しかし、そ
の後TVO社はオルキルオト4号機の建設を断念したことにより、
現在は6,500トンまでの処分量が認められています。
オルキルオト原子力発電所
(写真提供:TVO)
0

12
フィンランド+|
II-地層処分計画と技術開発
•処分計画
ポ^2ン
a
ンランド
フィンランドでは、オルキルオトの地下約400〜450mの結晶質岩中に使用済燃料を直接処分
する計画です。使用済燃料を銅製容器と鋳鉄製容器の2重構造のキャニスタに封入して処分しま
す。処分場の操業開始目標が2020年代に設定されています。ポシヴァ社は2016年12月に処分
場の建設を開始しています。
◎地層処分対象の放射性廃棄物
フィンランドで地層処分の対象となる高レベル放射
性廃棄物は、原子力発電所から発生する使用済燃
料です。使用済燃料は、右の写真に示すような、外
側が銅製の容器、内側が鋳鉄製の容器という2重構
造の容器(キャニスタ)に封入して処分されます。外
側の銅製容器が腐食に耐える役割を、内側の鋳鉄
製容器が荷重に耐える役割を各々担っています。
キャニスタは3通りのサイズを考えています。これ
は、原子炉形式によって異なるサイズの使用済燃料
が発生するためです。右下の図に示したのは、左
が口ヴィーサ原子力発電所のロシア型加圧水型原
子炉(VVER)から発生する使用済燃料用、中央
と右がオルキルオト原子力発電所の沸騰水型原子炉
(BWR)と建設中の欧州加圧水型原子炉(EPR)
から発生する使用済燃料をそれぞれ封入するキャニ
スタです。
使用済燃料の燃焼度に応じ、BWR用及びVVER
用は12体、EPR用は最大で4体の集合体を収納す
る設計を検討しています。使用済燃料をキャニスタに
封入する施設は、処分場の地上施設として建設する
計画です。
◎処分場の概要(処分概念)
処分実施主体のポシヴァ社は、隣国スウェーデンの
処分実施主体であるSKB社が開発したKBS-3処分
概念を採用しています。使用済燃料に含まれる放射
性核種を、使用済燃料自身、キャニスタ、緩衝材(ベン
トナイト)、埋め戻し材、地層からなる多重バリアシス
テムにより長期にわたって隔離する方法です。キャニ
スタの定置の方法としては、地下の処分坑道の床面
に掘削した処分孔に一本ずつ定置する「処分孔縦
置き方式」が考えられています。キャニスタの周囲に
は緩衝材(ベントナイト)を充填する計画です。
銅ー鋳鉄キャニスタ
左の鋳鉄製容器が右の銅製容器に挿入されます。鋳鉄製容器に使用
済燃料の集合体が見てとれます。
(ポシヴァ社ウェブサイトより引用)
[断面図]
3.55m
J
BWR用
475m
5.20 m
EPR用
(ポシヴァ社報告書より作成)
13
地層処分計画と技術開発>>>
最終処分地は、工ウラヨキ自治体のオルキルオトで
す。ポシヴァ社は、使用済燃料を最大6,500トン(オル
キルオト1~3号機と口ヴィーサ1,2号機の合計5基
の原子炉で50〜60年間運転する場合に発生する
量)の受け入れに対応可能な処分場を、地下400〜
450mの深さに設置する計画です。ポシヴァ社の計画
では処分場の規模は、処分坑道の延長距離が42km
で、処分エリアの面積は2~3km2です(5,500トン処
分の場合。建設許可申請で設定している6,500トン処
分の場合の坑道距離と面積情報は未出)〇
◎処分事業の実施計画
高レベル放射性廃棄物の最終処分地は、2001年
に工ウラヨキ自治体のオルキルオトに決定しています。
実施主体のポシヴァ社が最終処分を実施するために
は、原子力法に基づき、処分施設の建設許可、操業
許可を順次取得しなければなりません。
ポシヴァ社は、2012年12月に処分場の建設許可申
請書を政府に提出しました。同時に、ポシヴァ社は規
制機関である放射線•原子力安全センター(STUK)
に、処分の長期安全性の順守を立証する「セーフティ
ケース」と呼ばれる文書を提出しています。STUKは
セーフティケースを含む建設許可申請関連文書の評
価を行い、2015年2月に、キャニスタ封入施設及び地
層処分場を安全に建設することが可能であると結論
づけた審査意見書を雇用経済省に提出しました。そ
の後、雇用経済省が建設許可の発給に向けて検討
を行い、2015年11月にフィンランド政府はポシヴァ社に
処分場の建設許可を発給しました。その後、STUK
による処分場建設の準備状況の確認を経て、ポシヴァ
社は2016年12月に処分場の建設を開始しています。
政府は1983年に策定した政策文書において、処
分開始目標を2020年と設定しています。これは、使
用済燃料を原子炉から取り出してから40年後に処分
するという方針によるものです。ポシヴァ社は、このス
ケジュールを踏まえて処分事業の計画を進めており、
2020年代には最終処分場の操業を開始する予定と
しています。
新規に原子力発電所建設を計画しているフェンノ
ボイマ社は、使用済燃料処分に関して、工ウラヨキ自
治体、及び発電所を立地予定のピュハヨキ自治体の
2つの自治体から処分場サイトを選ぶことを計画して
います。
オルキルオト処分場の設置イメージ
(写真提供:Posiva Oy)
キャニスタの定置イメージ
(写真提供:Posiva Oy)
緩衝材の設置方法(概念図)
(写真提供:ポシヴァ社)
14
フィンランド+|
2.研究開発•技術開発
ポ^2ン
フィンランド
実施主体のポシヴァ社は国内外の研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関に委託して
処分技術や安全評価等に関する研究を進めています。また、スウェーデン等との国際協力による
研究開発も進めています。国内の主要な研究機関はフィンランド技術研究センター(VTT)です。
◎研究機関と研究体制
処分の実施主体であるポシヴァ社が、研究開発計
画を作成し、実施しています。ポシヴァ社は小規模な
管理、プロジェクト組織であり、その多くの研究開発
業務を研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部
機関に委託しています。また、同様の処分概念を開
発しているスウェーデンのほか、スイス、カナダ等と国
際協力による研究開発も進めています。
ポシヴァ社を支援している主な研究機関としてフィン
ランド技術研究センター(VTT)があります。VTTは、
雇用経済省の管轄下にあるフィンランドの総合研究所
で、高レベル放射性廃棄物処分に関して規制行政
機関が処分事業を管理•監督するために行う研究プ
ログラムの研究支援も行っています。
◎研究計画
フィンランドでは、廃棄物管理義務者はその廃棄物
管理計画(研究開発計画を含む)を3年毎に更新し、
雇用経済省に提出することが義務付けられています。
雇用経済省はこれらの計画書について、放射線•原
子カ安全センター(STUK)の見解書を得る必要が
あることが定められています。
2003年以降、廃棄物管理義務者であるTVO社と
FPH社は、3年毎に使用済燃料と低中レベル放射性
廃棄物の廃棄物管理の現状と研究開発を含む将来
の廃棄物管理計画に関する報告書をポシヴァ社と共
に作成しています。
原子炉の運転
ロヴィーサ(2基)
オルキルオト(2基)
オルキルオト(新規建設中1基)
使用済燃料の地層処分のための準備
実現可能性の調査
サイト選定調査及び概念開発
原則決定(DiP)
ONKALOの建設、工学設計、
セーフティケースの編纂、研究開発
建設許可の申請
処分施設の建設
操業許可の申請
処分施設の操業と閉鎖
ロヴィーサ(2基分)
オルキルオト(2基分)
オルキルオト(新規1基分)
廃止措置と閉鎖
2000 2030
2060 2090
フィンランドの最終処分地決定以降の使用済燃料処分のスケジュール
(出典:ポシヴァ社廃棄物管理プログラムYJH-2018等を基に作成)
15
地層処分計画と技術開発>>>
◎地下特性調査施設
最終処分地に決定したオルキルオトの詳細なサイト
特性調査のために、2004年6月から。 NKALO@と
呼ばれる地下特性調査施設が建設されてきました。
ONKAL0での調査は、わが国の処分地選定プロセ
スにおける精密調査に相当します。
ONKALOのアクセス坑道は2010年6月に処分深
度まで掘削され、2014年7月には、最終的に坑道の
全長は約5km、深度は455mに達しました。ポシヴァ
社はONKALOの建設作業と並行して、処分場の建
設許可申請に必要な岩盤や地下水のデータを収集
し、また、掘削がこれらの特性に及ぼす影響につい
ての調査を行ってきました。処分場の建設開始後は、
ONKALOは処分施設の一部として利用されますが、
ONKAL0でこれまで利用されてきた研究•実証用
の坑道エリアでは、人工バリアの定置技術等の研究
開発が今後も継続されます。
なお、ONKAL0の建設以前には、オルキルオト原
子カ発電所の敷地内の地下に設置されている低中レ
ベル放射性廃棄物処分場内に、専用の坑道を設け
て小規模な試験が行われていました。
◎処分場の建設予定地の地質構造
オルキルオトはフィンランド南西部のサタクンタ地域
の南部に位置しています。この地域の基盤岩は先
カンブリア紀のフェノスカンジア盾状地における約8億
年間(19億年前〜12億年前)の地質履歴を有して
います。最も古い基盤岩は古原生代にあたる19~
18億年前のスヴェコフェニアン造山運動によって変形
と変成を受けた堆積岩と火成岩から構成されていま
す。その後、約16億年前の中原生代の非造山期に
大きな貫入性のラパキビ花崗岩がこの地域の中心部
に出現しました。このマグマ活動期以降はサタクンタ
堆積岩が堆積し、さらに、これらの堆積岩やそれ以前
の古い岩石は約12億年前にカンラン石輝緑岩の岩
脈や岩床による貫入を受けています。
オルキルオトにおける基盤岩は、主に19〜18億年
前のミグマタイト質の雲母片麻岩等の結晶質岩です。
ONKALO®の建設状況(2006年夏頃)
(ポシヴァ社資料より引用)
(ONKALO®はポシヴァ社の登録商標です(国際登録1406147))
地下特性調査施設のレイアウト図
(ポシヴァ社ウェブサイトより引用)
エ・一 ゝ48^^^^
オルキルオトの地下特性調査施設内の
坑道と試験処分孔
(写真提供:ポシヴァ社)
16
フィンランド+|
◎安全性の確認と知見の蓄積
1980年代、当時の実施主体であったテオリスー
デン・ヴォイマ社(TVO社)がサイト確定調査を行っ
ており、1985年に安全評価の結果をまとめました。そ
の後、TVO社は1992年に5カ所のサイトを対象とし
た安全評価(TVO-92)を取りまとめ、いずれのサイ
卜においても処分場の建設が可能な適切な場所を特
定することができると結論づけています。
実施主体として1995年に設立されたポシヴァ社は、
TVO社が実施してきたサイト調査及び研究開発計画
を引き継ぎました。ポシヴァ社は概略サ仆特性調査
等で3カ所に絞られたサイトに加え、ロヴィーサ原子力
発電所のあるハーシュトホルメンでの処分の安全性に
関する中間報告書を公表しています。
さらに1999年3月にポシヴァ社は、詳細サイト特性
調査を行った4カ所に対し、使用済燃料の処分を行っ
た場合の長期安全性に関する報告書「ハーシュトホ
ルメン、キヴェッティ、オルキルオト、ロムヴァーラにおけ
る使用済燃料処分の安全評価(TILA-99)」を発表
しました。TILA-99では、地下約500mの結晶質岩
の岩盤中に建設される処分場において、KBS-3の概
念を用いて使用済燃料を処分するということを前提に
安全評価を行っています。その中で、
① 使用済燃料自身からキャニスタ、緩衝材、埋め
戻し材の一部または全部を通過して地層へ至る
放射性核種の移行
② 移行した放射性核種の地下水による地層から生
物圏への移行
③ 生物圏に移行した放射性核種による人の被ばく
という使用済燃料から人に至る経路においてさまざま
なシナリオを設定し、モデルとデータに基づいて、コン
ピュータを用いたシミュレーションを行い、処分場閉鎖
後の安全性など、処分場の性能を予測、評価しました。
シナリオとしては、通常考えられるもののほか、フィン
ランドの位置するスカンディナビア半島が、最終氷期
に発達した氷床による荷重の影響により、後氷期の
現在、地殻の上昇とそれに伴う断層運動等の地殻変
動が生じる地域であるという特徴を踏まえたシナリオも
想定されています。
特性・事象•プロセス(FEP)
基本ケース
(現在と同様の条件が続き、バリアが想定通りの性能を示す)
基準シナリオ
(1) キャニスタに最初から小さな孔がある場合
(2) キャニスタに大きな孔があいた場合

(3) 10 ,〇〇〇年後にキャニスタが消失する場合 など

感度解析及び
“WHAT IF(••・したらどうなるだろう)”解析
(基準シナリオの(1)、(3)をもとに広い範囲にわたって
仮定やモデル、データを変えてみる)
本質的なFEPが全て考慮されているか?
モデル化されなかったFEPについての
定性的な評価の実施
TILA-99で取り上げられた安全評価シナリオの構造
(出典:ポシヴァ社日A報告書1999)
17
地層処分計画と技術開発>>>
◎最終処分場サイト決定における安全確保
1999年5月、実施主体のポシヴァ社はオルキルオト
を最終処分地に選定して処分場建設計画を進めるこ
ととし、原子力法に基づく原則決定の申請を政府に
行いました。
政府が原則決定を行うために必要な要件の一
つは、安全性に関して放射線•原子力安全センター
(STUK)が審査し、肯定的な見解を示すことです。
このため、STUK及び、STUKが編成した国際的
な専門家からなる外部検証グループによる国際評価
が行われました。その結果、政府が策定した一般安
全規則に含まれる安全要件が満たされ、その段階の
ものとしては適切であるとするSTUKの見解書が提
出されました。これにより、その後に提出された地元自
治体の肯定的な見解書と併せて、オルキルオトが最
終処分地に決定されました。
オルキルオトにおいては、2004年6月から地下特性
調査施設(ONKALO)の建設が開始されています。
ポシヴァ社はこの建設作業と並行して必要な研究開
発や設計研究を実施しており、さらに詳細な地質環
境データの取得が行われています。処分場の建設・
操業許可申請においては、これらの研究成果に基づ
いて処分の安全性が評価されます。
ポシヴァ社
放射線•原子力安全
センター(STUK)
雇用経済省
(TEM)
政府
使用済燃料処分の
安全評価報告書
(TILA-99)
原則決定申請
地下特性調査
原則決定
(2000年)
建設許可申請
予備的安全解析報告書
予備的安全解析報告書に
対する審査意見書
各種意見書の取りまとめ
建設許可
(2015¢)
操業許可申請
+
最終安全解析報告書
操業
最終安全解析報告書に
対する審査意見書
各種意見書の取りまとめ
操業許可
(2020年代)
建設
地層処分場の立地、建設、操業のための安全評価の流れ
18
フィンランド+|
HI.処分事業の実施体制と資金確保
1.実施体制
ポ^2ン
高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は、政府、雇用経済省、放射線•原子力安全
センター(STUK)であり、雇用経済省は処分事業の管理•監督、STUKは安全規制という役割
を各々担っています。また、政府は処分目標(サイト選定の段階と目標時期)の決定を行うほか、
処分場の建設•操業の許可発給を行います。
実施主体は原子力発電事業者2社が共同出資して設立したポシヴァ社という民間会社です。
◎実施体制の枠組み
フィンランドでは放射性廃棄物管理分野における責
任体制は原子力法で定められており、全般的な権限
は国のエネルギー政策を作成する責任が課されてい
る雇用経済省にあります。雇用経済省は、放射性廃
棄物の管理義務要件を策定する上で、政府が意思
決定するための準備も行っています。政府は、処分
目標(サイト選定の段階と目標時期)の原則決定を行
うほか、処分場の建設•操業の許可発給を行います。
規制の面では、放射線•原子力安全センター
(STUK)が放射線と原子力に関する安全につい
て、規制管理を行う独立の行政組織として存在して
いますが、上記のように政府と雇用経済省にも規制面
での役割が課されているのがフィンランドの特徴です。
高レベル放射性廃棄物処分場の建設•操業・閉
鎖は実施主体のポシヴァ社が実施します。処分場の
閉鎖後に、放射性廃棄物が永久処分されたことを
STUKが確認した後は、廃棄物の所有権は国に移
り、廃棄物に係る全ての責任を国が有することが原
子力法で規定されています。
◎実施主体
フィンランドでは、放射性廃棄物を処分する責任は、
原子力施設の許可取得者にあると定められています0
また、正当な理由があれば、原子力発電事業者が共
同で処分責任を果たすことができるようになっていま
す。2社の原子力発電事業者のうち、フォルツム・パ
ワー •アンド・ヒート社(FPHtt)の使用済燃料は、も
ともとはロシアに返還されていました。したカヾって、も
う1社のテオリスーデン•ヴォイマ社(TVO社)が高
レベル放射性廃棄物処分の研究やサイト選定を進め
ていました。しかし、1994年の原子力法の改正により
使用済燃料の輸出入が禁止され、自国内で処分する
規制行政機関
政府
規制の流れ
規制
実施主体 皿日
・ ポシヴァ社
原子力発電事業者
(2社)
処分場の建設•操業などの許可は、政府が発給します。
(ポシヴァ社パンフレット等より作成)
使用済燃料と低中レベル放射性廃棄物の廃棄物管理の現状、
及び研究開発を含む将来の廃棄物管理計画に関する報告書
19
処分事業の実施体制と資金確保»>
ことになったため、2社は共同で処分を実施することと
し、1995年末に、高レベル放射性廃棄物処分事業
の実施主体としてポシヴァ社を設立しました。
ポシヴァ社は高レベル放射性廃棄物の処分事業を
行う会社であり、その他の放射性廃棄物の処分や、
使用済燃料の中間貯蔵等は、原子力発電事業者が
各々の原子力発電所サイトで行っています。
◎安全規則
フィンランドの原子力施設に関する安全規制の文
書体系は、①原子力法、②原子力令、③規則(一
般安全規則)、④詳細安全規則、の4段階の構成と
なっています。使用済燃料の処分に関する一般安全
規則は、当初は1999年に定められましたが、その後
2度改訂され、現在は「原子力廃棄物の処分の安全
性に関する放射線•原子力安全センター(STUK)
規則」として定められています。一般安全規則、詳
細安全規則を定める権限は、安全規制機関の放射
線・原子力安全センター(STUK)にあります。
最終処分の長期安全性に関する詳細安全規則は
2001年5月に「安全指針YVL 8.4:使用済燃料処
分の長期安全性」として定められていましたが、2013
年12月に新しい安全指針「YVL D.5:原子力廃棄
物の処分」に置き換えられました。(2018年に一部改
訂)
この安全指針YVL D.5では、放射線安全に関し
て、右の表のように、人間の被ばくの評価について十
分に予測可能な少なくとも数千年間という期間につい
ては実効線量による制約条件を適用し、その後につ
いては、処分場から生物圏への放射性核種の放出
放射能量に関する制約条件を適用して規制する方
法をとっています。このほか、発生の可能性が非常に
低く、設計で想定した状況を超える事象についての
考察や動物•植物など人間以外の環境に対する防
護についても規制要件を課しています。
一般安全規則(規則)
安全指針(YVL D.5)における被ばく線量及び
放射性核種の放出率の拘束値
⑴十分予測可能な期間(少なくとも数千年間)において、人間の被 ばくする可能性のある線量
•公衆の中で最も被ばくした人の 1年間あたりの実効線量 0.1mSv未満
•その他の人々への1年間あたり の平均実効線量 僅かにとどまるように
⑵数千年後に使用済燃料から放出され、環境に移行すると予想さ れる放射性核種の長期間にわたる平均量
•処分から生じる放射線影響 最大でも地殻内の自然の放 射性物質から生じるものに 相当程度
•放射性核種別の環境に放出され る1年間あたりの量 個別の規制値以下で、かつ各 核種の放出量/規制値の比 率の合計が1以下
(安全指針YVL D.5 :原子力廃棄物の処分より作成)
20
フィンランド
◎処分に関わる法令及び政府決定体系図
フィンランド
21
処分事業の実施体制と資金確保»>
◎処分の法制度
内 容
事業規制 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みを定めているのは、原子力法です。ただし、サイト選定を 含めた基本的な処分の方針については、1983年に政府による廃棄物管理目標に関する原則決定が行われてい ます。 廃棄物管理目標の原則決定では、処分責任、計画作成義務、資金負担義務等について、その後の原子力法での 規定の骨格となる制度、及び段階的なサイト開発から処分場の操業に至るまでの目標時期も定められています。 原子力関係の基本法である原子力法は、原子力利用が社会全体の利益に合致し、人間と環境に安全であること を確保するため、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や関係機関の役割等を明確に 定めている法律です。 原子力法では、処分場を含む重要な原子力施設の建設を行うにあたり、原則決定手続を定めています。原則決 定手続とは、その原子力施設の建設が社会全体の利益に合致するという原則的な判断を、建設許可の申請よりも 早いタイミングで、政府が決定するものです。この決定が有効となるためにはさらに、国会によって承認を受け ることが必要とされています。この原則決定の申請を行うためには、安全評価の実施等のほかに、地元自治体か らの肯定的な意見を得ることが必要と定められています。 原子力令は、原子力法の規定のより詳細な手続等を定めた政令です。
安全規制 安全性確保のための基本的な枠組みは、原子力法及び原子力令で定められています。 原子力廃棄物処分における、処分施設の設計や安全基準等の安全性に関しては、2015年の「原子力廃棄物 の処分の安全性に関する放射線•原子力安全センター(STUK)規則」で基本的な要件の原則が示されています (2018年に一部改訂)。 さらに安全規則の細目については放射線・原子力安全センター (STUK)が、2001年に「安全指針YVL 8.4 : 使用済燃料処分の長期安全性Js 2002年に「安全指針YVL 8.5 :使用済燃料処分場の操業における安全指針」 を定めていましたが、2013年12月に新しい安全指針「YVL D.5 :原子力廃棄物の処分」に置き換えられまし た(2018年に一部改訂)。 また、放射線防護全般に関わる規制は、放射線法によって規定されています。
資金確保 放射性廃棄物管理のための資金確保の枠組みについても原子力法により規定されています。そこでは、放射性 廃棄物管理のために特別な基金を国に設置すること、原子力発電会社による費用負担原則、費用の見積り方法と 必要とされる資金の拠出方法、集められた資金の管理方法などが定められています。 特に国家放射性廃棄物管理基金(VYR)については、原子力法において国家予算から独立した基金として設置 するとされるとともに、より詳細な規定が「国家放射性廃棄物管理基金(VYR)に関する政令」(廃棄物基金令) 等で定められています。
環 境 フィンランドにおける放射性廃棄物の処分場の建設については、環境影響評価(EIA)が要求されています。 EIAに関する手続は、EIA手続に関する法律及びEIA手続に関する政令に定められた評価手続に従って実施され ます。 このEIA手続の主要なポイントとしては、実際の評価活動に入る前にEIA計画書が作成された段階で、地元住 民や自治体等に意見書提出の機会が与えられており、ここで表明された意見は調整機関(原子力施設の場合は雇 用経済省)がとりまとめ、必要に応じてEIA計画書の修正を命じることができる制度となっています°また、評 価結果に対しては、公聴会や住民意見の聴取、関係機関からの意見書を取得した上で、雇用経済省が評価の適切 さに対する意見書を出すこととされています。
原子力責任 フィンランドの原子力損害賠償に関する法令としては、原子力責任に関する法律(原子力責任法)及び原子力 責任に関する政令(原子力責任令)がありますが、これらは、第三者責任に関するパリ条約とブリュッセル補足 条約及び民事責任に関するウィーン条約の国内法化を図る法令ともなっています°
22
フィンランド+|
2.処分事業の資金確保
フィンランド
ポ^2ン
高レベル放射性廃棄物の処分費用は、原子力施設許可取得者(電力会社)が負担しています。
処分費用は、雇用経済省が所管する国家放射性廃棄物管理基金(VYR)に積み立てられています。
基金に積み立てられる費用には、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費
用、さらにその他の放射性廃棄物の処理•中間貯蔵•輸送•処分費用、及び原子炉施設の廃止措
置費用等も含まれています。
◎処分費用の負担者
フィンランドの原子力法では、原子力施設の許可取
得者が放射性廃棄物の処分や貯蔵等を含めた管理
全般の費用を負担する責任を有することを規定して
います。ここで対象となる費用は、最終処分場の建
設•操業のほかに、研究開発や輸送、貯蔵等を含め
た放射性廃棄物管理全般に係る費用です。原子炉
施設許可取得者である電力会社テオリスーデン・ヴォ
イマ社(TV0社)とフォルツム•パワー ・アンド•ヒー
卜社(FPH社)は、3年毎に提出する放射性廃棄物
管理計画と併せて、その実施に必要な費用見積の
提出も義務づけられています。
◎処分の資金確保制度
放射性廃棄物管理費用は、雇用経済省が所管す
る国家放射性廃棄物管理基金に積み立てられてい
ます。この基金に積み立てを行う主な廃棄物発生者
はTV0社とFPH社です。
基金の積立対象となるのは、高レベル放射性廃棄
物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費用、さ
らにその他の放射性廃棄物の処理•中間貯蔵•輸
送・処分費用、及び原子炉施設の廃止措置費用等
も含まれています。
フィンランドの特徴は、その時点までに発生した放
射性廃棄物の量(原子力施設の解体廃棄物につい
ては発生したとみなされる量)を処理•中間貯蔵•輸
送•処分する費用を、その時点の見積額で評価する
点です。
雇用経済省は、TV0社とFPH社から提出された
費用見積額を精査した上で、債務評価額(各社が最
終的に負担すべき金額)と積立目標額を決定します。
積立目標額は、廃棄物の発生量に比例しない固定費
部分を長期の分割払いとして調整した金額です。各
ポシヴァ社
(高レベル放射性廃棄物処分関係)
電力2社
(TV〇社、FPHtt)
見積
(放射性廃棄物全般)
確認
債務評価額
雇用経済省
(TEM)
決定
払込み
積立目標額
国家放射性廃棄物
管理基金
(VYR)
フィンランドにおける資金確保の仕組み
国家放射性廃棄物管理基金の積立残高(2019年末)
支払者 基金残高
TV〇社 (オルキルオト原子力発電所) 15.1億ユー ロ (1,870 億円)
FPH社 (口ヴィーサ原子力発電所) 11.9億ユー ロ (1,48〇億円)
その他(研究炉をもつVTT) 2,000万ユーロ (25億円)
合計 27.2億ユー ロ (3,37〇億円)
※1ユーロ=124円で換算、四捨五入のため合計は合わない

定を整
固等調
23
処分事業の実施体制と資金確保>>>
廃棄物発生者は、この積立目標額を毎年3月末まで
に国家放射性廃棄物管理基金に払い込みます。ま
た、積立目標額と債務評価額の差額分については、
国に対して担保の提供が義務付けられています。
積み立てられた費用の運用にも特徴があり、積み
立てた電力会社は積立残高の最大75 %までの貸付
を受けることが可能です。
◎処分費用の見積額
フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物の処分
実施主体であるポシヴァ社は処分費用について定期
的に見積もりを行っています。2010年時点での処分
費用の総額は、約33.2億ユーロ(約4,120億円)と
見積られています。この見積額は発電所の稼働年数
等を基に5,500トンの処分量を前提とした金額です。
内訳は、地下特性調査施設(ONKALO)を含めた
建設費などの投資費用が約7億ユーロ(約870億円)、
操業費が約24.2億ユーロ(約3,000億円)、処分場
の閉鎖•廃止措置費用が約2億ユーロ(約250億円)
となっています(1ユーロ =124円として換算)。
◎処分費用として対象となるもの
高レベル放射性廃棄物の処分費用は、放射性廃
棄物管理全般の枠組みの中で見積られています。高
レベル放射性廃棄物の処分費用の算定は、実施主
体のポシヴァ社が行っていますが、ポシヴァ社の費用
見積を受けて、TVOttとFPH社は、高レベル放射
性廃棄物の処分費用以外の中間貯蔵、輸送費用、
及び低中レベルの放射性廃棄物の処理、中間貯蔵、
輸送、処分費用、さらに原子炉施設の廃止措置費用
等を含む全ての必要な費用を見積った上で、雇用経
済省に提出します。
なお原子力法に基づき、これらの費用の見積に当
たっては、将来の不確定条件も多く含まれることから、
予備費(コンティンジェンシー:不測の費用増に備え
た上乗せ分)として10 %が含まれています。
2600
2400
2200
0000000000
0000000000
0864208642
百万ユ—ロ

ZOO6〇lCMOO 寸!■09ZC06〇lCXJCQ 寸!■09Z006 0LCXJCO 寸 し09Z006
6666666666666〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
lllllllllllllCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCXJCMCMCMCM
—TVO社の債務評価額
t一 FPH社の債務評価額
—債務評価額の合計
—TVO社の積立目標額
-*■ FPH社の積立目標額
—•積立目標額の合計
国家放射性廃棄物管理基金の積立の状況
閉鎖•廃止措置
処分費用の内訳
(百万ユー ロ)
※5,500トン(ウラン換算)処分の場合
(ポシヴァ社資料を基に作成)
24
フィンランド+|
IV.処分地選定の進め方と地域振興
1.処分地の選定手続き・経緯
ポ^2ン
フィンランドでは1983年から、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に向けた調査
がスタートしました。サイト調査が段階的に進む途中から、建設許可申請の審査ステップよりも早
い時期に、重要な原子力施設について、その建設が社会全体の利益に合致するという判断を政府
が決定するステップが法制化されました。地元自治体の受け入れ意思の存在がなければ、政府は
最終処分場の計画を承認できません。こうした法制度のもとで、2001年に工ウラヨキ自治体のオ
ルキルオトが最終処分地に決定しています。
◎処分地選定の進め方
フィンランドでは、処分地の選定方法は法律で定め
られていません。フィンランドには「原則決定」と呼ば
れる、この国特有の政策決定手段があり、この形式で
1983年に地層処分場のサイト選定段階と目標時期が
設定されました。原則決定とは、政府や行政省庁が
政策を進める根拠として政府が決定する文書(及び
その内容を閣議で決定すること)を言います。原則決
定は、民間事業者に対しても一定の効力カヾ及びます。
1983年の政府の原則決定は、フィンランドで4基目
の原子炉が商業運転を開始した翌年に行われまし
た。原子力発電から発生する放射性廃棄物の管理
に関する研究、調査、実施計画策定において順守す
べき目標を定めたものです⑴。この中で、高レベル放
射性廃棄物の最終処分地を2000年末までに選定で
きるように、サ仆調査を3段階で進めることを規定しま
した。
① サイト確定調査(1983~1985年)
② 概略サイト特性調査(1986~1992年)
③ 詳細サイト特性調査(1993~2000年)
[1J〔983年の原則決定
1983年の政府の原則決定では、使用済燃料の管理に関
する政府の考え方について、原子力発電事業者が外国に
再処理を委託し、かつ再処理で発生する放射性廃棄物が
フィンランドに返還されない形で再処理契約を締結する
方向で交渉すべきとする方針が述べられていました。し
かし、こうした再処理契約が実現しない可能性に備えて、
使用済燃料を原子炉から取り出してから40年後(2020
年)に処分開始できるような目標を定めています。
(シエヴィ)
オルキルオト・
(工ウラヨキ)
サイト確定調査
1983-1985
ヴェイスツイヴァーラ
(ヒリンサルミ)
スイイリ• ロムヴァーラ
(クーモ)
キヴエッティ
(アーネコスキ)
オルキルオト・
(工ウラヨキ)
□ムヴァーラ
(クーモ)
キヴエッティ
(アーネコスキ)
・ハーシュトホルメン
(□ヴィーサ)
オルキルオト
(工ウラヨキ)
概略サイト特性調査
1986-1992
詳細サイト特性調査
1 993-2000
原則決定の承認
2001
サイト選定の経緯
(出典:ポシヴァ社EIA報告書1999)
25
処分地選定の進め方と地域振興>>>
◎原子力施設導入計画の承認プロセスの制度化
•••原則決定手続き
サイト調査が進む中、1987年に原子力法の全面改
正が行われ、最終処分場を含む原子力施設の導入
計画について、建設許可申請よりも早い時期から、国
民、施設設置予定の地元や隣接の自治体、規制機
関などが意見を表明する機会が設けられました。これ
により、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設
予定地が、建設許可申請のかなり前の時期に決まる
ことになっており、フィンランドにおけるサイト選定の特
徴となっています。
具体的には、原子力法における立法措置として、
原子力施設の導入計画の是非を政府が判断するス
テップを導入し、これをフィンランド固有の政策決定手
段である原則決定で行うようにしました。このステップ
は「原則決定手続き」と呼ばれています。原子力法
には、原則決定において政府が何を判断するかが明
記され、その手続き様式が規定されています。この手
続きは、事業者が事業計画内容についての判断を政
府に申請するという形を取り、その事業計画がフィン
ランドの「社会全体の利益に合致する」ことを政府が
判断します。政府が判断を下す前に、原子力施設の
立地予定の自治体が受け入れに好意的であることを
確認しなければなりません。また、規制機関である放
射線•原子力安全センター(STUK)が、事業内容
について安全面から支障がないという見解であること
を確認する必要もあります。
原子力法には、政府の原則決定文書を有効とする
には、国会での承認を必要とする条項も盛り込まれて
います。政府や国会での判断に影響するような、大き
な出費を伴う事前の活動(大規模な地下掘削など)
は禁止されています。
◎環境影響評価(EIA)手続き
フィンランドでは、1994年に環境影響評価手続法
が制定されました。環境に重大な影響が生じる可能
性がある事業について、市民を含む利害関係者が
情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加
する機会を増やすことを目的とした制度です。最終処
分場を含む原子力施設の場合には、原子力法に基
づく原則決定手続きの申請に先だって、環境影響評価
(EIA)を実施し、その評価書を申請書に添付する
必要があります。
(フィンランド原子力法より作成)
環境影響評価(EIA)計画書 公告・縦覧
関係機関等の意見書 地元住民等の意見表明
普籠皆 雇用経済省(TEM)の意見書
環境影響評価(日A)の実施
環境影響評価(EIA)報告書の提出 公告・縦覧
関係機関等の意見書 地元での公聴会•意見募集
地元自治体等の意見
雇用経済省(TEM)の意見書(環境影響評価手続の終了)
環境影響評価(EIA)手続ぎの概要
(フィンランド環境影響評価手続法より作成)
環境影響評価(EIA)は、①EIA計画書の作成
段階と、②EIAを実施して報告書にまとめる段階から
構成されます。事業者がEIA計画書を監督官庁(原
子力施設の場合は雇用経済省)に提出し、監督官
庁が対象地域住民を含めた関係者に意見を求めま
す。寄せられた意見を踏まえて、監督官庁は、必要
に応じて計画書に変更を指示します。
EIAは、狭い意味での自然環境に対する影響だけ
ではなく、景観、社会生活への影響、経済的な影響
を含めた総合的な評価を行うものです。
事業者が作成するEIA報告書は、原子力法に基
づいて政府が原則決定を行う際の判断材料の一つ
です。このため、雇用経済省は、原子力法の規定に
基づき、地元自治体で公開の集会(公聴会)を開催
するとともに、公告を通じた意見募集で寄せられた意
見を踏まえ、実施されたEIAの適切さについての判
断を意見書としてまとめます。
26
フィンランド+|
◎処分地選定までの経緯
サイト調査の当初(サ仆確定調査と概略サイト特
性調査)は、オルキルオト原子力発電所を所有する
TVO社が実施しました。1994年の原子力法改正に
よる使用済燃料の輸出入禁止以降は、原子力発電
事業者2社が設立したポシヴァ社がサイト調査を継承
しました。
1983年からのサイト確定調査では、大規模な亀裂
帯を回避し、安定な基盤岩ブロックを選定するために、
最初に航空写真や地形図等の文献調査が行われ、
フィンランド全土から100〜200km2の大きさからなる
327カ所の目標地域が選定されました。次に、基盤岩
の大きさや地形等の地質学的要因や、人口密度•使
用済燃料の輸送等の環境要因に関する文献調査によ
り目標地域の絞込みが行われ、5 —10km2の大きさか
らなる102カ所の調査地域が選定されました。その後、
調査に対して自治体から同意を得る等のプロセスを経
て、最終的に5カ所で地表からのボーリング等による
概略サ仆特性調査が行われました。その後、より適し
た場所と考えられた4カ所で、ポシヴァ社が詳細サイト
特性調査を行いました。これらの4カ所では、最終処
分場の地上施設と地下施設を建設•操業する場合の
環境影響評価も実施しました。
ポシヴァ社は、1999年3月に、4カ所の候補地点に
ついて使用済燃料の処分を行った場合の長期安全
性に関する報告書『ハーシュトホルメン、キヴエッティ、
オルキルオト、ロムヴァーラにおける使用済燃料処分
の安全評価』(TILA-99)をまとめました。その結果
からポシヴァ社は、工ウラヨキ自治体のオルキルオトを
選定し、原子力法で定められた原則決定手続きに基
づく申請を1999年5月に行いました。
STUKは申請書とTILA-99等の関連文書を評価
し、2000年1月12日に肯定的な見解書を政府に提出
しました。その見解書を見た上で、エウラヨキ自治体
は2000年1月24日に議会で投票を行い(賛成20/
反対7)、最終処分場の受け入れ意思を表明すること
を決定しました。これらの結果を受けて、政府は2000
年12月に原則決定を行い、その決定内容を国会が
2001年5月に承認しました(賛成159/反対3)。これ
により、エウラヨキ自治体のオルキルオトが最終処分地
に決定しました。フィンランドは、世界で最初に高レベ
ル放射性廃棄物の処分地が決定した国です。
「原則決定手続き」という原子力施設導入計画の
承認する制度では、国会において政府の原則決定
が承認されるまでは、大規模な地下掘削が禁止され
ています。このため、わが国のサイト選定プロセスで
は精密調査段階で実施される調査は、フィンランドで
は最終処分地が決定した後に実施することになって
いるのが特徴です。オルキルオトでは、2004年6月か
ら地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始さ
れています。
サイト確定調査(1983-1985年)における調査地域の選定•絞込み
27
処分地選定の進め方と地域振興>>>
2.地域振興方策
ポ^2ン
実施主体のポシヴァ社は、処分場の立地による経済メリットを明らかにしています。また地元自
治体は、税制において固定資産税率のアップを通じて財政的優遇措置が受けられるようになってい
ます。さらにポシヴァ社との間で協力協定を締結しています。
◎社^^的影響評価
ポシヴァ社は、最終処分地決定の判断資料として
1999年に作成した環境影響評価(EIA)報告書に
おいて、4つの候補地の自治体のそれぞれに対する
処分場の立地が社会経済面に及ぼす影響の評価
を、本ページの表にある項目に対して行いました。
このうち地域構造への影響に対する評価結果で
は、どの自治体においても、農業・観光業•不動産
価値に対して特にマイナスの影響が出ることはないと
評価されています。むしろ、どの自治体でも雇用の創
出、人口増加を始めとする経済効果などが生じると見
込まれています。
◎制度的な財政面の優遇措置
フィンランドにおいて、処分場等の原子力施設の立
地に関連する自治体に対して制度的に経済的便宜
供与が行われるものは、税制における固定資産税の
優遇措置のみです。地元自治体は通常の固定資産
税率を0.93 %から2.。 %の間で任意に定めることがで
きますが、原子力発電所や放射性廃棄物管理施設
については、固定資産税の税率は3.1%を上限として
設定することが可能です。このため地元自治体にとつ
ては、処分場の立地により固定資産税の増収を見込
むことができます。
なお、EIA報告書が取りまとめられた1999年当時
の税制では、通常の固定資産税率0.5〜1.0%に対
して、原子力施設については上限が2.2%となってい
ました。
◎地元との協定による措置
処分場立地に関して、ポシヴァ社と地元工ウラヨキ
自治体との間で協力協定が1999年に結ばれていま
す。この協定は、ポシヴァ社及び工ウラヨキ自治体の
代表による少人数のワーキンググループの議論から始
まったもので、両者の協力の可能性を探し出すことを
処分場立地による社会経済面への影響に関する評価項目
地域構造への影響評価項目 生活状況•全般的な 幸福さへの影響評価項目
•事業活動(雇用を含む) •農業 •観光業 •人口規模と構造 •その他の地域構造及び社会基盤 •不動産価値 •自治体への経済効果 •処分場に対する住民の考え •社会科学的考察
■ •クーモ・■・アーネコスキ・■-ロヴィーサ・■・工ウラヨキ
処分場立地による雇用の増加
(ポシヴァ社EIA報告書1999の予測の最大値より作成)
処分場立地優遇措置による固定資産税の税収増
(※この図では1ユー ロ=115円の為替レートが用いられています)
(ポシヴァ社EIA報告書1999より弓|用)
28
フィンランド
目的として行われました。ポシヴァ社は同年にオルキル
ォトにおける処分場建設のための原則決定の申請を
行っていますが、この原則決定が国会で承認されるこ
とを協定発効上の条件として結ばれました。
この協力協定に基づいて、ポシヴァ社は工ウラヨキ
自治体に対して、新たに高齢者向けホーム施設を建
設する資金を貸与しています。一方の工ウラヨキ自治
体は、老朽化対策に悩んでいた高齢者向けホーム施
設をポシヴァ社にリースしています。ポシヴァ社は、そ
の施設を改装して事務所として利用しています。ポシ
ヴァ社はその設立時から、処分場建設地が決定した
時にはそこに移転する方針でした。現在ポシヴァ社の
事務所として利用している施設は、1836年に建設さ
れた旧領主邸宅という歴史がある建物です。ポシヴァ
社は、施設の一部をレストラン・多目的ホールとして観
光客や自治体住民が利用できるようにしています。
工ウラヨキ自治体の歴史的邸宅
(Vuojoki Mansion)
フィンランド
29
情報提供•コミュニケーション>>>
V.情報提供•コミュニケーション
1.公衆との対話
ポ^2ン
フィンランドでは、サイト決定の原則決定手続で地元自治体の賛成が必要とされるほか、自治
体•住民の意思•意見反映が制度面でも確立されています。さらにポシヴァ社は、自主的にさまざ
まなコミュニケーション活動を精力的に行っており、フィンランドにおける特徴の一つともなってい
ます。
◎情報開示、パブリックコメント、公聴会
フィンランドでは、処分場のサイト選定過程において
自治体、住民の意見を反映するために、さまざまな«舌
動が行われたことが環境影響評価(EIA)報告書に
挙げられています。これらのうち、法令で制度化され
ている手続きには以下のものがあります。
〇公告・縦覧•新聞掲載などの情報開示
〇意見書の作成•提出
〇公聴会の開催
これらの手続は、フィンランドでは大きく分けて二つ
の法律で規定されています。その一つは、EIA手続
法に基づく EIA手続の中で、EIA計画書の審査と
EIA報告書の審査の2つの段階で住民等に対する
情報開示と意見聴取が行われます。他の一つは原
子力法に基づく原則決定手続で、安全性を含めた処
分場の建設•操業計画について、情報開示と意見
聴取の手続が定められています。
自治体•住民•個人
雇用経済省(TEM)
ポシヴァ社
公告・縦覧/新聞掲載
日A計画書
日A計画書への意見
日A計画書への雇用経済省意見書
公告・縦覧/新聞掲載
日A報告書
日A報告書への意見
日A報告書への雇用経済省意見書
概要説明書
原則決定の申請書
公開の集会(公聴会)〔口答・書面による意見表明〕
隣接自治体の意見
地元自治体議会の意見
(受入決議)
政府への原則決定の請議
STUK
予備的安全評価
政府による原則決定
フィンランド国会による原則決定の承認
透明性の確保と説明責任のための諸手続
(原子力法及びEIA手続法等より作成)
30
フィンランド+|
◎地域コミュニケーション組織と会合
制度化されたコミュニケーション方法以外にも、処
分事業の計画と環境影響評価(EIA)に関し、でき
るだけ多くの住民に参加してもらって活発に議論して
もらうため、ポシヴァ社は、さまざまな地域コミュニケー
ションの組織づくりに働きかけてきたことがEIA報告
書に記載されています。
〇地元の住民向けの対話集会やワーキンググルー
プ会合
〇地元自治体の職員や自治体議会の議員向けの
「協力/フォローアップグループ」
〇自治体を運営する参事会向けの会議
〇国とその地方出先機関の職員向けの会議やセミ
ナー
これらの地域コミュニケーション組織の中で、自治
体からの代表者とポシヴァ社からの代表者をメンバー
とする「協力/フォローアップグループ」は、最終処
分に関する諸問題や、その計画、環境影響評価等
について、ほぼ2カ月に1回の頻度で会合を行ってい
ました。EIAの対象地域であった口ヴィーサとクーモ
では1997年に、工ウラヨキとアーネコスキではより早い
時期に、グループが組織されました。
これらの地域コミュニケーション組織などを通じて
寄せられた意見や疑問等について、ポシヴァ社が
EIA計画書を作成する際に考慮したほか、EIA報
告書の社会的影響の評価において検討して対応し
ています。
フィンランド
31
情報提供•コミュニケーション>>>
2.意識把握と情報提供
ポ^2ン
a
実施主体のポシヴァ社は、処分事業の理解を得るための活動として、一方的な情報提供活動で
はなく住民が情報を入手し、意見を表明できる場をさまざまな形で設けてきました。また環境影
響評価の中では、住民の意識調査も行われています。
◎広報活動(情報提供)
実施主体のポシヴァ社が行っている処分場開発の
ための情報提供(広報)活動については、環境影響
評価書に詳しく述べられています。それによると、情報
提供(広報)活動の目的は、環境影響評価(EIA)
に住民が積極的に参加できるようにすることであり、具
体的には、以下のことができるようにするとしています。
〇議論へ参加する機会があることを知ってもらう。
〇処分事業計画、EIA手続、進拶情報、完成レ
ポート類の提供など、情報を入手できるようにす
る。
〇各候補地の自治体住民の間で、継続的な対話
ができるようにする。
〇処分事業とその影響予測とその評価に関し、開
かれた議論が行われるようにする。
〇処分事業についての報告書の内容と使用する
手法の適切性、妥当性に関して、さまざまな見解
を集める。
これらの目的を達成するため、ポシヴァ社は、次のよ
うな広報(情報提供)活動を行っています。
〇地元自治体の各世帯にEIAニュースレターを配

〇ポシヴァ社現地事務所での資料閲覧・提供
〇パブリック・イベント(催し物)の開催
〇小グループ会合を開催
〇地元/隣接の自治体を運営する参事会向け会
議を開催
〇自治体職員と自治体議会議員のために、協力/
フォローアップグループを設置
〇事業内容とEIAを説明し、またフィードバックを得
るための展示会の企画•開催
〇地方の行政官向けの説明会
トレーラーを用いた展示会の模様
(ポシヴァ社EIA報告書1999より弓|用)
市民と接触を図るために、地域の催しに合わせて展示を設置
(ポシヴァ社EIA報告書1999より弓|用)
32
フィンランド+|
〇中央の行政官向けのセミナー
〇新聞などの論壇への寄稿
EIAニュースレターは、自治体に処分事業内容や
EIA手続のことを知らせるために発行されるようになっ
たものです。文面を分かりやすくして多くの人々の理
解促進を図るだけでなく、EIAへの参加を促すことも
ねらって作られています。
ポシヴァ社は地元の住民に、より多くの意見を出し
てもらうために展示会やワーキンググループ会合を企
画・開催しています。こうした会合では、ブレーンストー
ミング(自由討論)やその他の手法を活用して、参加
者の意見等を集める取り組みが行われました。
◎国民意識と住民意識(主な世論調査結果)
環境影響評価(EIA)のなかで行われた「住民の
生活条件と全般的な幸福さへの影響評価」におい
て、処分場立地を受け入れに対する地元住民の意識
調査が行われています。1999年のはじめに、処分場
の4つの候補地の自治体の居住者の10%を無作為
に抽出して、電話による聞き取り調査が行われました。
原子力発電所が存在する工ウラヨキと口ヴィーサの
2つの自治体では、賛成が約60%前後でしたが、クー
モとアーネコスキの2つの自治体では、反対が60%前
後という結果でした。
またEIA報告書の中では、住民の持つ不安やリス
クをどうとらえているか、原子力技術に対する意識、
風評被害等さまざまな問題についての社会調査が行
われています。下の表はそうした調査の中から、処分
プロジェクトによる影響についての地元住民の意見を
評価した結果として示されているものです。
フィンランド
質問:「安全規制当局による詳細調査と安全評価の結果、
あなたが居住する自治体が放射性廃棄物の最終処分地と
して安全であることが判明した場合に、あなたの自治体
内にフィンランド国内で発生した放射性廃棄物を定置す
ることを受け入れますか?」
コ認める 口認めない 口わかりません
地元住民の意識調査
(ポシヴァ社EIA報告書1999より弓|用)
地元住民が考える処分プロジェクトが与える影響の大きさ
安全性への懸念とその結果(地域のイ メージ、特性、快適さへの影響) 直接的、間接的経済効果/自治体の発 展への処分事業の貢献 計画策定と意思決定プロセスに関わ る、問題/対立
工ウラヨキ 小 小 小
クーモ 大 大 大
□ヴィーサ 大/小・ 大/小・ 大/小※
アーネコスキ 大 小 大
※口ヴィーサでは両極端の意見が見られました。
(ポシヴァ社EIA報告書1999より弓|用)
33
諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
2020年12月現在
スウェーデンにおける
高レベル放射性廃棄物の処分について
IRMS.’SI^
SWEDEN
)DEN阪
オスカー学ヤ図,
(キャニスタ封入施設建設予定地)ヽ
スウェーデンの基本データ
438,574平方キロ
9,972 千人(201 8 年)
ストックホノレム
スウェーデン語
スウェーデン・クローネ(1クローネ=12円)
200コ I- C400 •ん・!\ 600 km
0
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

原子力発電所で発生した使用済燃料は、取り出し後約1年冷却した後、国内1カ所に集めて集
中貯蔵されています。全ての原子炉の営業運転が停止するまでに発生する使用済燃料の累積量は
約12,000トンになる見込みです。スウェーデンでは、これらの使用済燃料を再処理することなく、
キャニスタに封入して地層処分する方針です。
◎原子力エネルギー政策の動向
スウェーデンでは1980年に原子力発電の是非を
巡って実施された国民投票の結果を受け、原子力発
電から段階的に撤退する政策がとられていました。4
カ所の原子力発電所全体において、沸騰水型原子炉
(BWR)が9基、加圧水型原子炉(PWR)が3基
の計12基が導入されましたが、この政策に基づき2
基が営業運転を停止しました[1]〇
2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発
電所の事故後、炉心冷却能力強化等の規制強化を
受けたコスト増のほか、電力需要の低迷予測を受け
て、2015年秋に原子力発電事業者2社が計4基の
原子炉を2020年までに運転終了する計画を表明し
ました。このうち、出力増強に向けて改修中であった
オスカーシャム2号機が2015年10月に営業運転に
復帰することなく閉鎖、同1号機が2017年6月に閉
鎖されました。その後、リングハルス2号機、1号機が
2019年末、2020年末に閉鎖されました。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
スウェーデンにおいて高レベル放射性廃棄物として
処分される使用済燃料は、主に国内4カ所にある原
子カ発電所から発生します。
使用済燃料は各発電所で冷却(炉取り出し後約1
年間)した後、SKB社が操業する「集中中間貯蔵施
設」(CLAB)に輸送し、地下に設けられたプールで
貯蔵されています[2]〇使用済燃料の輸送は、SKB
社が自社の専用船で行っています。2019年末貯蔵
量は約6,800トン(ウラン換算)です。
◎処分方針
スウェーデンでは、原子力発電所で発生した使用
済燃料を再処理せずに、高レベル放射性廃棄物と
して地下約500mの深さの結晶質岩中に地層処分
する方針です。電力会社が共同出資して設立した
SKB社が処分実施主体です。
[1]スウェーデンの原子力発電所
スウェーデンには、バーセベツク、フォルスマルク、オ
スカーシャム、リングハルスの4カ所の原子力発電所が
あります。このうち、脱原子力政策の元で、コペンハー
ゲン (=隣国デンマークの首都)から約50kmの場所に
あるバーセベツク発電所の2基の沸騰水型原子炉(BWR)
が、それぞれ1999年11月末、2005年5月末に営業運転
を停止しました。
2021年1月時点で運転中の原子炉は以下の通りです。
•リングハルス PWRX2基
•オスカーシャムBWR x1基
•フォルスマルクBWR X3基
[2]使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB)
CLABは1985年に操業を開始しました。許可を受け
ている貯蔵容量は8,000トンです。SKB社は使用済燃
料を処分用の容器であるキャニスタに封入する施設を
CLABに隣接・統合して建設する計画であり、完成後は
CLINKと呼ばれます。2015年にSKB社は貯蔵容量を
11,000トンに引き上げる許可申請を行っています。
CLAB (使用済燃料の集中中間貯蔵施設)
36
スウェーデン
m参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
スウェーデンの電力供給構成
(発電量一2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
スウエIデン
2018 年 スウェーデン 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 1,634.00 122.00 -294.24 1,461.76 1,275.57
◎原子力発電設備容量
合計6基685.9万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
37
地層処分計画と技術開発>>>
II-地層処分計画と技術開発
•処分計画
ポ^2ン
スウェーデンでは、使用済燃料を地下約500mの結晶質岩中に直接処分する計画です。キャ
ニスタ、緩衝材(ベントナイト)及び地層という多重のバリアシステムにより廃棄物を隔離する
KBS-3概念という処分方法です。使用済燃料を封入するキャニスタは、外側が約50mmの厚さ
の銅製、内側が鋳鉄製の容器です。KBS-3概念に基づく処分場の建設予定地として、処分実施主
体のSKB社は、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定し、2011年3月に処分場の立地•
建設の許可申請を行いました。
◎地層処分対象の放射性廃棄物
スウェーデンで地層処分の対象となる高レベル放
射性廃棄物は、主に原子力発電所から発生する使
用済燃料です。使用済燃料は、右の図のように、外
側が銅製、内側が鋳鉄製の2重構造のキャニスタと
いう容器に封入して処分する計画です。外側の銅製
容器が腐食に耐える役割を担い、約50mmの厚さが
考えられています。内側の鋳鉄製容器は外部からの
応力に耐える役割を担います。
BWR燃料集合体をキャニスタに封入する場合、
チャンネルボックスを付けた状態で最大12体収納しま
す。PWR燃料集合体の場合は、その集合体に制御
棒を挿入した状態で最大4体を収納します。使用済
燃料の封入後の重さはキャニスタ1体あたり約24〜
27トンです。
◎処分場の概要(処分概念)
処分実施主体のSKB社が検討している処分概念
はrKBS-3概念」と呼ばれています。右下の図に示
すように、使用済燃料をキャニスタに封入し、その周
囲を緩衝材(ベントナ仆粘土)で取り囲んで、力学
的及び化学的に安定した岩盤内に定置する方法で
す。複数の人工バリアと天然バリアを組み合わせた
多重バリアシステムにより、放射性廃棄物を長期に隔
離し、隔離ができなくなった場合でも処分場からの放
射性核種の放出を遅延させるという安全哲学に基づ
いています。キャニスタの定置方法について、SKB
社は縦置き方式を主とて技術開発を進めてきました
が、フィンランドの使用済燃料実施主体ポシヴァ社との
共同で横置き方式の実現可能性も検討しています。
E
LD
CO
00

キャニスタ
E寸•寸提
銅製容器
ECO・臺
キャニスタへの使用済燃料の封入
KBS-3処分概念
キャニスタは緩衝材に取り囲まれるようにして、地層中に定置して
処分されます。キャニスタの定置方法は、縦置き(図左)と横置き(図
右)が検討されています。
38
スウェーデン
SKB社が地層処分を実施するためには、使用済
燃料をキャニスタに封入する「キャニスタ封入施設」
と、そこで製造したキャニスタを処分する「使用済燃
料処分場」の2つの施設が新たに必要になります。
キャニスタ封入施設はオスカーシャム自治体で1985
年から操業中である使用済燃料の集中中間貯蔵施設
(CLAB)に併設し、CLINKという一体施設にする
計画です。
使用済燃料の処分場の建設予定地は、エストハン
マル自治体のフォルスマルクです。既存の全ての原
キャニスタ封入施設の概要
オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設に併設され(赤
枠部分)、CLINKという一体施設とする計画です。
スウエIデン
子炉が発電運転を終了するまでに発生する使用済
燃料量に対応する約6,000本のキャニスタ(ウラン換
算で約12,000トン相当)を、地下約500mの深さで処
分する計画です。SKB社は、2030年から処分を開
始する予定であり、当初は年間25〜50本ペースで
処分する試験操業、その後、年間150-160本を処
分する通常操業に移行する計画です。
地下施設は段階的に建設され、完成した処分坑
道でキャニスタの定置•埋め戻しが実施され、平行し
て別の場所で処分坑道の建設が進められます。地
下施設の最終的な面積は約3.6km\坑道の総延長
は約72km (処分坑道は約61km)になります。
使用済燃料処分場の概要
使用済燃料を封入したキャニスタは、フォルスマルクの地下約500mで処分する計画です。処分坑道が配置される面積は約3.6km2です。
39
地層処分計画と技術開発>>>
◎処分場の建設予定地の地質構造
スウェーデンは、ノルウェー、フィンランド、ロシア:!匕
西部などに広がっているフェノスカンジア盾状地と呼
ばれる古い大陸性の地殻の上に位置しています。地
層処分場の建設予定地であるフォルスマルクを含むス
ウェーデン南東部の岩盤は、19.5 ~17.5億年前(古
原生代)に形成された結晶質岩です。約4-2.5億
年前には、大西洋側のプレート運動の圧力によってノ
ルウェーとの国境となっているスカンディナビア山脈が
形成されるとともに、スウェーデン南東部の岩盤にも大
規模な断層が生じました。また、約200万年前以降の
新生代第四紀には、山脈の東山麓に氷河が何度も形
成された跡が残っています。ウルム氷期として知られ
る最終氷期は約11万前から始まり、最盛期にはスカン
ディナビア半島全体が氷で覆われ、氷床の厚さは最
大で3kmに達したと推定されています。この氷の重さ
のために地殻が沈み込み、スウェーデンとフィンランド
の間にできた窪みが現在のボスニア湾にあたります。
氷床の成長•後退につれて岩盤にかかる荷重が変化
するので、断層が動いて地震が発生することもありま
す。氷期が終わった約1万年前から現在まで、沈降し
た地殻が元に戻ろうとしてゆっくりとした隆起が続いて
います。現在のフォルスマルクは海岸に面しています
が、紀元前8800年頃には海面下150mのところにあり、
紀元前500年頃に陸地になりました。表層5~6mの
土壌は、氷床の動きによって岩盤が侵食されて運ばれ
た氷成粘土や礫の堆積物です。
処分場の建設予定地であるフォルスマルクにも大
規模な断層があります。そのような断層の近くでは、
その動きによって結晶質の岩石が引きちぎられ、細
かく破砕していますが、そのことによって一定以上離
れた所の岩体は相対的に安定となり、レンズ状の塊
となって残っている部分があります。そのような岩体
は「構造レンズ」と呼ばれています。フォルスマルクの
地下約500mのところには、これまでのプレート活動や
氷床荷重の変動による影響を受けていない、構造レン
ズが存在することがボーリング調査で確認されていま
す。使用済燃料の処分場は、このような構造レンズ内
の結晶質岩に建設されます。
スカンディナビア山脈の 古原生代(19.5-17.5億年前)
形成で影響を受けた領域 に形成された岩盤
in構造レンズの存在領域(薄色部分は、海面下の深度に
存在している部分を示す。)
塑性変形の影響が強く生じる領域
I !塑性変形の影響が弱い領域
0サイト調査エリア
海または湖沼 P %___T km
フォルスマルク周辺の岩盤構造
40
スウェーデン
◎処分事業の実施計画に対する審査
SKB社はKBS-3概念による使用済燃料の最終処
分の実現に向け、原子力活動法と環境法典に基づ
き、計3つの許可申請書を提出しています。
① オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建
設許可申請書(2006年11月にSSMに提出、
2011年3月16日更新)
② フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の
立地•建設許可申請書(2011年3月16日に
SSMに提出)
③ 使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選
定に係る許可申請書(2011年3月16日に土地•
環境裁判所に提出)
スウェーデンでは、2施設の原子力発動法に基づく
許可だけでなく、処分事業で採用する方法と場所の
選定に関する環境法典に基づく許可も必要となって
います。現在、これらの申請書の審査が並行して進
められています。原子力活動法に基づく申請書は放
射線安全機関(SSM)が担当し、環境法典に基づく
申請書は土地・環境裁判所が担当しています。
2018年1月23日、SSMと土地・環境裁判所は、
それぞれの意見書を政府に提出したところです。
放射線安全機関(SSM)は、政府への意見書に
おいて、使用済燃料のキャニスタ封入施設と処分場
の建設を許可するよう勧告するとしつつも、処分場の
建設、試験操業、通常操業のそれぞれの開始に先
立ち、処分場の安全性を最新知見に基づいて精査
可能とするために、SKB社が安全解析書(SAR)を
SSMに提出し、承認を受けることを条件とすべきとし
ています。
一方、土地•環境裁判所は、キャニスタ封入施設
に関しては環境法典に基づく形で容認可能であると
した一方、処分場については、キャニスタの腐食及
び強度に影響を与えるプロセスに関する説明が不十
分であり、今後、キャニスタの耐久性能を考慮に入れ
た形で処分場の安全性を立証する追加資料がSKB
社から提出される場合に限り、容認可能になる、とし
た意見書を政府に提出しました。
2019年4月にSKB社は、キャニスタの長期閉じ込
め能力に関する補足説明書を政府に提出しました。
今後、政府は、SKB社が申請した処分事業が許容
可能であるかの判断を行うことになっています。
スウエIデン
2011 2013 2015 2017 2019 2021 2023 2025 2027 2029 2031 2033
2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 2026 2028 2030 2032 2034 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 年
:使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB) i i π H H H H
操業中
使用済燃料のキャ三スタ封入施設i 総合•今体化, 試験操業1 通常操業 廃止措置
許可審査•建設準備 建設・コミッショニング’
使用済燃料の処分場;π m
許可審査•建設準備 建設・コミッショニング 試験操業1 通常操業 閉鎖•廃止措置
使用済燃料のキャニスタ封入施設
使用済燃料の処分場
使用済燃料の最終処分に向けたスケジュール
(SKB社RD&Dプログラムより作成)
41
地層処分計画と技術開発>>>
2.研究開発•技術開発
ポ^2ン
実施主体のSKB社は、国内外の大学、研究機関、専門家等との協力により処分技術の開発や安
全に関する研究を進めています。実際の地層環境での地下研究を目的としたエスポ岩盤研究所で
は、国際共同研究も数多く行われています。
◎研究機関
処分に関する研究は、実施主体であるスウェー
デン核燃料 •廃棄物管理会社 (SKB社)が1970年
代後半から実施しています。SKB社は、スウェーデン
の国内外の大学、他の研究機関及び専門家と協力
して研究•技術開発を進めており、約250人が研究
活動に従事しています。主な研究施設としては、オス
カーシャム自治体にあるエスポ岩盤研究所とキャニス
タ研究所が挙げられます。
◎研究計画
SKB社は、1984年に制定された原子力活動法に
基づいて、3年毎に研究開発計画書を作成していま
す。この計画書は、研究計画、処分事業計画も含む
総括的なもので、SKB社は「研究開発実証(RD&D)
プログラム」と呼んでいます。計画書は、監督機関の
レビューを受けた後に政府決定という形で承認を受
けます。SKB社からRD&Dプログラムの提出を受け
る規制機関は放射線安全機関(SSM)であり、SSM
は、レビュー活動の一環として、県域執行機関(国の
出先機関)、自治体、大学•研究機関、環境保護団
体等さまざまな機関にコメントを求め、それらを取りまと
め、レビュー報告書として政府に提出します。また、政
府の諮問組織である原子力廃棄物評議会も独立した
評価を行います。SKB社は最新のRD&Dプログラム
2019において、処分場閉鎖後の安全評価における不
確実性を低減し、施設を最適化するために研究開発
の継続が必要であり、処分場に関する知識を将来に
伝えることや、建設・操業要員の能力開発も含めて体
系的に取り組む考えを述べています。
◎地下研究所
オスカーシャム自治体のエスポ島には「エスポ岩盤
研究所」というSKB社の地下研究所があり、地下約
450mの深さに達する坑道を備えています。地下研究
実証処分場
模麗のキャニスタを使用して定置装置の動作
確認や作業上の問題などを確認しています。
エスポ岩盤研究所の概念図
(SKB社提供資料より引用)
42
スウェーデン
所の建設は1990年に始まり、事前の調査に基づく予測
を確認しながら坑道掘削を進め、1995年に竣工しまし
た。エスポ地下研究所は、その計画当初から処分場
への転用の考えはなく、実際の地層環境での研究を目
的とした施設です。この研究所での研究目的は、以下
のような点があげられています。
① 母岩の調査手法の開発と試験
② 岩盤特性に応じた処分概念の開発と試験
③ 安全性向上に向けた科学的知見の蓄積
④ 処分場で使用される技術の開発、試験及び実証
この他に、岩盤の天然バリアとしての機能を把握す
るために、地下水挙動や化学組成に関する調査など
が行われています。
この研究所では、国際的な共同研究も多く進めら
れており、今日では日本を含む合計7カ国がプロジェク
卜に参加しています。
◎安全性の確認と知見の蓄積
実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理
会社(SKB社)は、研究開発のなかで処分場の長
期安全性を評価する方法の開発を継続的に進めて
います。これまでにSKB社は安全評価の取りまとめを、
サイト調査の候補地を選定する前(フィージビリティ調
査の実施期間内)、ならびに詳細特性調査の候補地
1カ所を選定する前(サイト調査の実施期間内)に実
施しています。これらの安全評価を実施する目的の
一つは、サイト選定プロセスにおける自治体や関係機
関の意思決定に役立てることです。このことは、SKB
社が3年ごとに取りまとめる「研究開発実証プログラ
ム」の規制機関及び政府による審査•承認のサイク
ルを通じて決定されました。なお、政府は1995年5月
に、詳細特性調査は処分場建設の一部であるとの見
解を示しており、詳細特性調査の候補地1カ所を選
定する前の安全評価は、処分場の建設許可申請に
必要となる安全評価として位置付けられています。
SKB社が実施するこれらの処分場の長期安全性
の評価結果は「安全報告書(SR)Jとして取りまと
められています。この報告書は規制機関に提出され、
「研究開発実証プログラム」の場合と同様にレビュー
を受けます。規制機関は、原子力廃棄物評議会と
いった評価機関や他の行政機関、サイト選定に関係
する調査が実施されている自治体などから意見を収
集するとともに、それらを踏まえた意見書を政府に提
出します0
地層処分の実施に向けたSKB社の活動
〜サイト選定プロセスと安全評価のタイミング
1984¢ SKB社設立
1990 年 エスポ岩盤研究所の建設開始
1992年5月 fskb 91ー安全における母岩の重要性』
1992年9月 『研究開発実証プログラム1992』を取りま とめ、サイト選定プロセスを公表
1993〜2〇〇〇年 フィージビリティ調査(文献調査に相当)
1999¢!1月 『SR 97 ー閉鎖後の安全性』
2000年12月 『研究開発実証プログラム1998の補足』に おいて、サイト調査候補地の選定結果を政府 に提出
200I年11月 政府がSKB社のサイト調査候補地の選定結 果を承認。その後、3候補地の所在自治体で 調査受け入れに関する議決(2自治体が可 決、1自治体が否決)
2002 〜2009 年 エストハンマルとオスカーシャムの2自治 体でサイト調査を実施(地表からの調査)
2006年11月 FSR-Can -フォルスマルク及びラクセマル におけるKBS-3概念処分場の長期安全性一 最初の評価』
2009年6月 サイト調査結果から、地質条件の優位性を主 たる理由として、エストハンマル自治体の フォルスマルクを処分場建設予定地に選定
201I年3月 FSR-Site -フォルスマルクにおける使用済 燃料処分場の長期安全性』、地層処分場の立 地・建設許可申請書を提出
今後の予定 •地層処分場の予備的安全報告書を更新 •処分場の建設と詳細特性調査 •処分場の操業許可申請 •使用済燃料の処分開始(2031年頃を予定)
43
処分事業の実施体制と資金確保»>
HI.処分事業の実施体制と資金確保
1.実施体制
ポ^2ン
スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は、政府(環境省)と
中央行政執行機関である「放射線安全機関」(SSM)です。政府は処分事業全般に対する監督を
行います。実施主体は原子力発電所を所有、運転する電力会社が共同出資して設立した「スウェー
デン核燃料 •廃棄物管理会社」 (SKB社)という民間会社です。また、原子力利用から発生する
放射性廃棄物の問題について、独自の評価を行う政府の諮問組織として「原子力廃棄物評議会」
があります。
◎実施体制の枠組み
右の図は、スウェーデンにおける高レベル放射性廃
棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。環
境省は、原子力安全と放射線防護を所掌する省で
す。原子力活動法に基づき、地層処分場の建設、操
業の許認可は政府が発給します。政府は政令を定
め、法律-原子力活動法や放射線防護法ーに基づく
規制権限を「放射線安全機関」(SSM)に割り当て
ています。SSMは環境省が所管する中央行政執行
機関⑶で、原子力安全と放射線防護の観点から監
督を行い、安全規則の策定を行います。
環境省の下には1992年より、原子力発電所の運
転や廃止措置などから発生する放射性廃棄物の問
題について、独自の評価を行って政府や規制機関に
対して助言を行う「原子力廃棄物評議会」が設置さ
れています。
また処分場の建設及び操業には、原子力活動法と
環境法典に基づく政府の許可が必要です。環境法
典に基づく許可(環境に影響を与える活動の許可)
の審査は、司法機関である「土地•環境裁判所」⑷
が行います。ただし、最終処分場に関しては、土地•
環境裁判所が許可を行う前に、政府がその可否を決
定する必要があります。この政府の判断に対しては、
地元自治体に拒否権が認められています。
◎実施主体
スウェーデンにおいては、原子力発電所を所有、運
転する電力会社が、原子力活動から生じる放射性廃
棄物を安全に処分する責任を有することが原子力活
動法で定められています。電力会社は、共同出資で
処分事業の実施主体となるスウェーデン核燃料・廃
棄物管理会社(SKB社)を1984年に設立しています。
規制行政機関
実施主体
原子力
発電事業者
(4社)
スウェーデン核燃料・
出資・設立
廃棄物管理会社
(SKB 社)

  • : SKB社への出資は、発電会社の親会社から行われている場合もあります。
    処分事業の実施体制
    [3]中央行政実行機関とは…
    政府からは独立した組織です。スウェーデンの中央行
    政執行機関には、拘束力のある規則を自ら定めることや、
    事業者を直接監督できること等が法令で認められてお
    り、権限も委譲されています。
    [4! 土地・環境裁判所とは…
    土地・環境裁判所は政府の指定する地方裁判所内に設
    けられ、法律の専門家である裁判長と、環境問題の専門
    家である環境参事と専門委員2名の、合計4名で構成さ
    れます。土地・環境裁判所の役割は、環境の側面から環
    境に影響を及ぼす活動に関し審査を行うことです。
    44
    スウェーデン
    SKB社は使用済燃料の集中中間貯蔵施設
    (CLAB :1985年操業開始)や原子力発電所から
    発生した低中レベル放射性廃棄物の処分場(SFR:
    1988年操業開始。SFRはスウェーデン語の“運転廃
    棄物の処分場”の略語であり、原子力発電以外で発
    生した放射性廃棄物も処分している)の操業も行って
    います。
    ◎安全規則
    スウェーデンにおける使用済燃料の処分に関係す
    る安全規則は、放射線安全機関(SSM)が定めて
    います。現在有効な規則としては、「原子力施設の
    安全性に関するSSM規則」(2008年)、「核物質及
    び原子力廃棄物の処分の安全性に関するSSM規
    則」(2008年)、「使用済燃料及び原子力廃棄物の
    最終的な管理に係わる人間の健康及び環境の保護
    に関するSSM規則J (2008年)があります。SSMは、
    それらの規則適用に関して、必要に応じて一般勧告
    という形式の規制文書を策定しています。
    処分場の安全基準については、下の表のように、リ
    スク値で規定されており、処分場閉鎖後において有
    害な影響(放射線による発癌など)が生じるリスクが、
    最大のリスクを受けるグループの代表的個人について
    10-6/年を超えないように設計しなければなりません。
    また、一般勧告では、安全評価の方法、評価期間、
    シナリオなどに関する指針が示されています。
    スウエIデン
    安全基準と安全評価に関する指針
    安全基準 (処分場の防護能力の評価) •個人リスクICT&/年未満(実効線量からリスクへの換算係数は〇•073/Sv) •評価の不確実性を考慮して、処分場閉鎖後の最初の1,〇〇〇年間とそれ以降の期間に分けて評価
    安全評価に関する勧告・ ガイドラインの概要 リスク基準の適用
    •最大被ばくを受けるグループがごく少数の人数である場合には、個人リスクは1〇ー5/年を超えなければ基 準を満たすと判断できる。
    安全解析の期間
    •少なくとも約io万年、または氷期1サイクルに当たる期間を含み、最大でも1〇〇万年とし、処分場の防護 能力の改良可能性についての重要な情報をもたらす限りの期間まで延長する。
    安全解析で評価するシナリオ
    •処分場の防護能力と環境影響は、処分場とその周辺、生物圏の最も重要な進展プロセスを解明できるように 組み合わせたシナリオを組み合わせて評価する。 •安全評価は、さまざまな時期における処分場の機能の基本的な理解を与えること、処分場のさまざまな構成 部分の機能及び設計の要件を確認することも目的とする。 •処分場への直接的な人間侵入などの将来の人間活動シナリオを含むシナリオについては、擾乱を受けていな い処分場に対するリスク解析と分けて報告する。 ・シナリオの発生確率及び発生時期の違いについて解析し、シナリオ及び計算ケースが実際に発生する確率を 可能な限り評価する。
    45
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    ◎処分に関わる法令の体系図
    環境に影響を与える
    活動及び
    健康保護に関する政令
    環境法典
    環境影響評価に
    関する政令
    陸域•水域
    維持管理政令
    原子力責任法の下の
    諸規則に関する政令
    46
    スウェーデン
    ◎処分の法制度
    内 容
    事業規制 使用済燃料の最終処分事業を含む原子力事業の規制は、原子力活動法及び原子力活動令に基づき行われてい ます。 原子力活動法においては、①安全を維持すること、②放射性廃棄物を安全に最終処分すること、③施設の解体 を行うことが、原子力事業の許可取得者の一般的責務として規定されています。また、一般的責務を果たすため に必要な研究開発を実施することと、3年毎に研究開発計画を策定し提出することが義務づけられています。ま た、地方安全委員会の設置により、地方自治体が原子力施設の安全に関する情報を入手できる仕組みが整えられ ています。 原子力活動令は、スウェーデンの規制機関である放射線安全機関(SSM)の原子力活動法に基づく責務の範 囲を規定しています。また、研究開発計画の提出と審査・評価に関する詳細が規定されています。
    安全規制 使用済燃料の最終処分事業を含む原子力事業の安全のうち、放射線防護に関する規制については放射線防護 法及び放射線防護令に、その他の安全に関する規制は原子力活動法及び原子力活動令に定められています。放射 線防護法及び放射線防護令では、原子力事業以外で用いられる放射線を取り扱う施設•装置も含めた、統括的な 規制が行われています。 上記法令に基づく具体的な規則は、SSMが定めています。主要なものとしては、「原子力施設の安全性に関す るSSM規則」、「核物質及び原子力廃棄物の処分の安全性に関するSSM規則」、「使用済燃料及び原子力廃棄物 の最終管理における人間の健康と環境の保護に関するSSM規則」があります。
    資金確保 原子炉の所有、運転の許可取得者には放射性廃棄物管理費用を支払う義務が原子力活動法及び資金確保法に より定められており、詳細は資金確保法と資金確保令により規定されています。 資金確保法は、許可取得者が費用の負担を行う範囲を規定し、毎年の拠出金の支払いと不足資金の充当のため の担保提供を義務づけています。また、処分費用見積りの作成と、政府あるいは政府が指定する機関による見積 りの審査とは、毎年行われることになっています。 資金確保令は、処分費用見積等の審査機関としてSSMを指定するとともに、費用見積りの提出期日等の詳細 を規定しています。サイト調査が行われる自治体へ、情報提供費用の補償金を交付することも規定しています。
    環 境 使用済燃料の最終処分場等の環境に大きな影響を与える施設の建設に当たっては、スウェーデンでは、環境影 響評価を行うとともに環境法典に基づく許可を得る必要があります。 環境法典では、処分場を含む特に大きな影響を与える施設の立地に当たっては、政府による許可可能性の評価 を義務づけており、この決定には自治体議会による承認が必要です。ただし、国益に最重要であると認められた 活動に関しては、①他により優れたサイトがなく、②他の適切なサイトでも自治体の承認が得られない場合に限 り、自治体議会の判断に拘わらず許可可能性を認める判断ができます。なお、許可申請には環境影響評価書を添 付する必要があります。 環境影響評価に関する政令では、環境影響評価の実施を地方新聞へ掲載することが義務づけられており、ま た、その際に意見書の提出方法を記載することが定められています。
    原子力責任 原子力損害賠償に関しては、原子力責任法及び原子力責任令に規定されています。これらの法令は、第三者責 任に関するパリ条約とブリュッセル補足条約及び民事責任に関するウィーン条約という3つの国際条約の国内 法化を図っています。 原子力責任法は、施設の所有者に対し、原子力施設内で発生した原子力災害により生じた原子力損害の補償を 義務づけています。 原子力責任令では、原子力責任法の適用範囲などについての規定が定められています。
    47
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    2.処分事業の資金確保
    ポ^2ン
    高レベル放射性廃棄物の処分費用は、原子力発電所を所有、運転する電力会社が負担していま
    す。この処分費用を賄うため、電力会社は每年政府が決定する拠出金を原子力廃棄物基金に積み
    立てています。基金に積み立てられる費用には、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯
    蔵、低中レベル放射性廃棄物処分、及び原子力発電所の廃止措置に必要な費用も含まれています。
    基金で確保する費用には、実施主体のSKB社が立地に向けた調査を行う自治体の場合に、自治
    体が行う情報提供活動のための費用も含まれています。
    ◎処分費用の確保制度
    スウェーデンにおいては、1981年に制定された資
    金確保法により、将来に必要となる放射性廃棄物管
    理全般の費用を賄うための基金制度が確立されまし
    た。基金の積立対象には、高レベル放射性廃棄物
    の処分費用のほか、中間貯蔵、低中レベル放射性廃
    棄物処分、及び原子力発電所の廃止措置費用が含
    まれています。費用の負担者である電力会社は、毎
    年政府が決定する拠出額に基づき、基金に対して拠
    出金を支払います。拠出金の額は、原子炉を50年
    運転する場合に発生する使用済燃料や放射性廃棄
    物を処分するために必要なコストをもとにして、原子
    カ発電会社ごとに発電電力量IkWh当たりの単価
    として決定されます。2021年に適用される単価は、
    IkWh当たり平均4.4エーレ(0.53円)です。
    電力の消費者
    見積額を提出
    (3年毎)
    SKB社の見積り
    を基に、翌年から
    拠出金を
    電力料金に
    含め回収
    て、翌年から3年間におけ
    る各発電会社の拠出金額及
    び担保額を決定
    発電電力量に基づいた
    払い込み
    原子力廃棄物基金
    スウェーデンにおける資金確保の仕組み
    原子力廃棄物基金の年度末残高推移(市場価格)
    ※1995年以降は基金とは別に、担保の形での追加の費用の確保も行われています。
    (出典:原子力廃棄物基金理事会年次報告書)
    48
    スウェーデン
    原子炉を運転する電力会社は、株主である親会
    社に原価で売電する卸電力会社です。このため、料
    金単価を上乗せした形で親会社に売電し、拠出金を
    「原子力廃棄物基金」に3ヶ月ごとに納付します。拠
    出金は国債などで運用されます。2019年末残高は
    746億クローネ(約8,950億円、1スウェーデン•クロー
    ネ=12円で換算)です。
    また、原子炉を50年以上運転する場合などの基
    金への拠出金ではカバーされない追加費用を賄う資
    金を確保する仕組みとして、電力会社が担保を提供
    する制度が導入されています。
    ◎処分費用の見積額
    原子力廃棄物基金によって賄われる廃棄物管理
    費用全般の見積は、電力会社の共同出資で設立さ
    れたスウェーデン核燃料•廃棄物管理会社(SKB社)
    が3年ごとに行っており、プラン報告書として公表さ
    れています。プラン報告書は、研究開発プログラムの
    策定と合わせた3年毎に取りまとめられます(最新は
    2019 年 9 月)。
    見積りの対象には、使用済燃料を含めた原子力廃
    棄物の管理・処分費用のほか、原子炉廃止措置も
    含まれています。これまでに発生したSKB社の研究
    開発費を含めて、原子力発電所の廃止措置及び廃
    棄物処分の費用は、総額約1,468億クローネ(1兆
    7,620億円)(2019年価格)、このうち、2021年以降
    に発生する費用は941億クローネ(約1兆1,290億円)
    と見積もられています。
    SKB社は、使用済燃料の最終処分だけでなく、そ
    の中間貯蔵も行っているほか、原子炉の運転と廃止
    措置で発生する低中レベル放射性廃棄物の処分、
    使用済燃料と原子力廃棄物の輸送のほか、これら全
    てに係わる研究開発も行っています。特に研究開発
    の費用は、使用済燃料とその他の原子力廃棄物で
    明確に区別できないため、使用済燃料の処分に要す
    る費用だけを切り分けることができません。高レベル
    放射性廃棄物(使用済燃料)の地層処分場関連費
    用とキャニスタ封入関連費用は右下の表のように評価
    されています。これらの金額を合計すると、使用済燃
    料約12,000トン(ウラン換算)の処分費用は530億ク
    ローネ(約6,360億円)となります。
    Plan 2019報告書
    (SKB社、2019¢9月)
    総額:約1,468億クローネ(1兆7,620億円)(2019年価格)
    放射性廃棄物管理費用の内訳
    (出典:SKB社プラン2019)
    高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分関連費用見積り
    2020年までの 支出(累計) 2021年以降に 発生する費用
    キャニスタ 11.4 億 SEK 151.1億 SEK
    封入関連費用 (137億円) (1,813 億円)
    地層処分場 67.1億 SEK 300.2WSEK
    関連費用 (805億円) (3,602 億円)
    合 計 530 億 SEK (6,460 億円)
    金額は2019年価格。1SEK (スウェーデン・クローネ)=12円で
    換算。四捨五入のため合計は合わない
    (出典:SKB社プラン2019)
    49
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    IV.処分地選定の進め方と地域振興
    1.処分地の選定手続き・経緯
    ポ^2ン
    スウェーデンにおけるサイト選定は、SKB社が1992年に取りまとめた研究開発計画においてサ
    イト選定プロセス案を提示し、その概要を説明する書簡を全国の自治体(当時286)に送付したこ
    とから始まりました。SKB社が提案した選定プロセスは1995年に政府承認を受けました。
    SKB社の調査は自治体議会の了承を前提として進められ、第1段階のフィージビリティ調査は8
    自治体、第2段階のサイト調査は2自治体で実施されました。2009年6月にSKB社がエストハン
    マル自治体のフォルスマルクを処分場建設予定地に選定し、2011年3月に処分場の立地•建設の
    許可申請を行いました。
    ◎処分地選定の進め方
    スウェーデンでは、処分場のサイト選定方法を法令
    で規定していません。しかし、原子力活動法に基づ
    いて、実施主体のスウェーデン核燃料・廃棄物管理
    会社(SKB社)が3年ごと研究開発計画(RD&D
    プログラム)を作成し、これを規制機関等がレビュー
    し、政府承認を受ける手続きを通じて国の監督がなさ
    れます。SKB社は1992年に取りまとめた研究開発計
    画において、選定作業として、右図のように総合立地
    調査、フィージビリティ調査、サ仆調査、詳細特性調
    査という4種類の調査を設定し、2段階で選定を進め
    る構成としています。1995年に政府は、第1段階の
    調査は5〜10の自治体で、第2段階の調査は少なく
    とも2カ所で実施するという条件を設定しました。なお、
    詳細特性調査は処分場の建設段階に含まれており、
    建設許可が出された後に実施されます。
    ◎総合立地調査
    サ仆選定プロセスを構成する4種類の調査のー
    つである総合立地調査は、地層処分場の立地方法
    論に関する文献ベースの研究です。特定の自治体を
    対象としたものではなく、自治体を対象に行うフィージ
    ビリティ調査と並行して実施されました。例えば、全
    国各地での立地見通しを示すために、1998 ~99年
    にかけてSKB社は県域別(国の出先機関が置かれ
    ている行政区分)に地質分布や土地利用状況等の
    既存情報を取りまとめました。
    総合立地調査
    8地点における
    フィージビリティ調査•公募と申し入れ
    サイト調査地の選定
    1993〜2000年
    200I年11月
    •政府の承認
    •その後、自治体議会で
    調査継続を審議
    環境影響評価 2地点における
    (協議と報告書作成) サイト調査
    2002-2007¢
    処分場建設地(1カ所)の選定
  • 2009年6月にSKB社が
    フォルスマルクを選定
    処分場の立地・建設の許可申請
    処分場の建設
    (詳細特性調査を含む)
    口おそらく適格な基盤岩
    •おそらく不適格な基盤岩
    K不適格な基盤岩
    県域別総合立地調査の成果例
    (出典:環境影響報告書2011、SKBtt)
    2011年3月
    •地元自治体の拒否権
    (法律で規定)
    •許可発給(処分地の決定)
    サイト選定の流れ
    (SKB社RD&Dプログラムより作成)
    50
    スウェーデン
    ◎自治体のフィージビリティ調査受け入れ
    自治体を対象に行うフィージビリティ調査では、その
    実施に際してSKB社が全国の自治体(当時286)に
    公募または申し入れを行い、自治体議会の了承があ
    ることを条件としました。この調査は、わが国の文献
    調査に相当し、既存の地質関連文献のほか、土地利
    用状況や環境、雇用面の影響を調査するものです。
    表1は、フィージビリティ調査が実施された自治体での
    議会での受け入れの議決結果を示します。
    フィージビリティ調査の初期では、公募に応じたス
    トールウーマンとマーロアの2つの自治体で1993年か
    ら調査が行われました。いずれの自治体でも調査報
    告書の取りまとめ後に住民投票が行われ、反対多数
    という結果になりました。SKB社はこの結果を尊重し、
    これらの自治体から撤退しました。
    その後、SKB社は総合立地調査の成果を活用し
    つつ、1995年からフィージビリティ調査実施の申し入
    れを行いました。自治体議会の承認が得られたエスト
    ハンマル、ニーシェーピン、オスカーシャム、ティーエル
    プ、フルツフレッド、エルブカーレビーの6自治体で調
    査を実施されました。
    ◎自治体のサイト調査受け入れ
    サイト調査の候補地は、6自治体でのフィージビリ
    ティ調査の結果から、2000年11月にSKB社はオスカー
    シャム、エストハンマル、ティーエルプの自治体に位置
    する3カ所を選定しました。この選定結果は、SKB社
    が研究開発計画書の補足書という形式で取りまとめ、
    3年ごとに行われる研究開発計画の審査手続きと同
    様に、規制機関などによる審査が行われました。政府
    は、2001年11月にSKB社のサイト調査候補地の選
    定結果を承認しました。
    その後、3つの自治体は、サイト調査の受け入れ可
    否を審議しました。表2に示すように、エストハンマル
    とオスカーシャムは受け入れを決めましたが、ティーエ
    ルプは調査を打ち切ることにしました。この結果を受
    けて、SKB社はエストハンマルとオスカーシャム自治体
    において、地表からのボーリングを含むサイト調査を
    2002年から開始しました。サイト調査には2007年ま
    での約5年間を要し、その結果から、2009年6月に
    SKB社は、処分場の建設予定地として、長期安全性
    に重要な地質学的条件が有利であったエストハンマ
    ル自治体のフォルスマルクを選定しました。
    2000 年:
    第1段階1992年〜:
    公募に応じた2自治体
    で、SKB社がフィージ
    ビリティ調査を実施。
    住民投票の結果を受け
    て、以降の調査は打ち
    切り。
    第1段階1995年〜
    SKB社がフィージビ
    リティ調査実施を車
    し入れた後、議会が
    受諾した6自治体。
    .1—ル
    ーマン
    :ルブ
    Iーレビ・
    6自治体から、SKB社
    がサイト調査を実施す
    る地域を含む3自治体
    を選定。
    サイト調査受け入れを
    否決
    ティーエルプ
    •サイト調査を受け入れ
    エストハンマル
    オスカーシャム
    第2段階2002年〜:
    SKB社がサイト調査と
    環境影響評価を実施。
    2009年6月:
    フルツフレッド
    SKB社がエストハンマル自治体の
    フォルスマルクを選定。
    201t年3月:
    処分場の立地・建設の許可申請
    処分場のサイト選定の経緯
    表1フィージビリティ調査受け入れ自治体での議決状況
    自治体名 議会での議決状況
    ス・’ールウーマン 1993年6月 賛成24、反対5、 棄権5
    マーロア 1993年11月 賛成14、反対14、 棄権3 議長賛成で可決
    エストハンマル 1995年6月 賛成36、反対12
    ニーシエーピン 議決は不要と判断
    オスカーシャム 1996年10月 賛成38、反対5
    ティーエルプ 1998年6月 賛成49 (全会一致)
    フルツフレッド 1999年5月 賛成47 (全会一致)
    エルブカーレビー 1999年6月 賛成3〇、反対1
    表2サイト調査受け入れに関する地元議会での議決
    自治体名 議会での議決状況
    エストハンマル 2001年12月 賛成43、反対5
    オスカーシャム 2002年3月 賛成49 (全会一致)
    ティーエルプ 2002年4月 反対25、賛成23
    51
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    ◎建設地決定に係わる法制度
    SKB社は2011年3月に、フォルスマルクに処分場
    を立地•建設する許可申請を行いました。この申請
    に対して法律に基づいた決定が行われると、スウェー
    デンにおいて建設地が“決定した”ことになります。
    スウェーデンの法制度では、高レベル放射性廃棄
    物の処分場の立地•建設には、環境法典と原子力
    活動法という2つの法律に基づく許可が必要となって
    いることが特徴です。以下で説明するように、実施主
    体が行う申請の審理・審査の場も異なっています。
    1つ目の許可は、環境法典に基づく(環境に影響を
    及ぼす事業に関する)許可です。この許可申請は土
    地•環境裁判所に提出され、審理されます。環境法
    典に基づく審理は、同一目的を達成するための複数
    の方法と場所から、最適なもの(方法と場所)が選択
    されているかどうかを判断するもので、このような判断
    を裁判形式で行うものと見ることができます。高レベル
    放射性廃棄物の処分場の場合には、申請案件が土
    地・環境裁判所で判断できる問題であるかを、政府
    が事前に判断することになっています。その際には、
    建設予定地の地元自治体議会が当該事業の受け入
    れを承認していることが前提となっています。これは、
    地元自治体が拒否権を有することを意味します。
    2つ目の許可は、原子力活動法に基づく原子力施
    設の建設許可です。この許可申請は、放射線安全
    機関(SSM)に提出され、審査されます。SSMは審
    査意見を政府に提出し、それをもとに政府が許可を出
    すことになっています。
    いずれの法律に基づく許可申請にも環境影響評価
    が求められており、地元自治体や影響を受ける個人•
    団体のほか、関係行政機関との協議が義務づけられ
    ています。また、上で説明したように、2つの異なる過
    程の審理•審査のいずれにおいても政府の判断が行
    われますが、矛盾を避けるために、同じ機会に行われ
    ることになっています。環境法典と原子力活動法とい
    う2つの法律に基づく審理・審査が同時進行する事
    例は、SKB社が2011年3月に提出した処分場の立
    地・建設の申請が初めてとなります。
    2.地域振興方策

スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物の処分事業に関連して、自治体が行う情報提供活動
や協議に要する費用は、原子力廃棄物基金で賄われています。その協議を通じて、サイト調査が
実施されたエストハンマルとオスカーシャムの2自治体、SKB社、原子力発電事業者4社の間で、
地元開発に関する協力協定が2009年3月に合意されました。
◎制度的な財政支援
スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物の処分
費用や原子力発電所の廃止措置費用を確保するた
めに制定されている資金確保法において、自治体が
行う情報提供や協議に要する費用を、原子力廃棄物
基金からの交付金で賄えることが定められています。
しかしこれ以外に、処分場立地に関連する自治体に
対して経済的便宜供与を定める制度はありません。
この交付金の使途は、使用済燃料や放射性廃棄物
の問題について、自治体が行う情報提供活動の費用
に限られており、他の目的に使用できません。
◎事業者と地元自治体間の協力協定
オスカーシャムとエストハンマルの自治体組織と
SKB社の協議を通じて、2009年3月にこれら2自治
体における地元開発に関する協定が合意されまし
た。SKB社の計画では、オスカーシャム自治体では
今後も使用済燃料の集中中間貯蔵が行われるほか、
それらをキャニスタに封入する施設が新たに建設され
ます。エストハンマル自治体には、そのキャニスタを処
分する最終処分場が建設されます。SKB社は、2力
所の原子力施設を長期に継続して操業するため、地
元の社会経済的な側面も重視しています。スウェー
デンでは、自治体の社会経済を発展させることは、自
治体の基本的な仕事と位置付けられています。こうし
52
スウェーデン
た認識と双方の立場を尊重して、SKB社•原子力発
電事業者4社と2自治体間で協力の枠組みが生み出
されています。
この開発協力協定では、新規の原子力施設立地
による自治体への直接的な経済効果とは別に、追加
的な自治体開発支援を原子力発電事業者とSKB社
が行うことになっています。2025年までの期間で、総
額20億スウェーデン・クローネ(220億円)規模の経
済効果を生み出す付加価値事業を実施する予定で
あり、その経済効果がエストハンマル自治体で25%、
オスカーシャム自治体で75 %の割合で創出されること
になっています。
なお、地元開発に関する協力協定はSKB社が地
層処分場のサイトを決める前に合意されており、2自
治体間の経済効果の割合は「地層処分場が立地さ
れない自治体に75%」という内容で合意されたもので
した。
付加価値事業では、以下の分野で投資が行われ
ることになっています。
〇教育
〇ビジネス開発
〇インフラ(たとえば、処分場活動による交通量の
増加に対処するための道路及び港湾の改良)
〇労働市場の拡大と多様化
OSKB社の本社機能のエストハンマルへの移転
〇 SKB社の研究所のさらなる発展
〇キャニスタ製造プラント
〇地元企業のイノベーション支援/開発
自治体が地元の社会経済の発展を検討するために
独自に取りまとめた報告書
左:『安全/リスク、決定/責任』
(エストハンマル自治体、2011年)
右:『原子力問題とオスカーシャムのアイデンティティ』
(オスカーシャム自治体、2006年)
エストハンマル自治体の概観
SKB社が最終処分場の建設予定地としたフォルス
マルクはエストハンマル自治体にあり、スウェーデン
の首都ストックホルムから北に約12〇キロメートルの
所です。フィンランドとの間にあるボスニア湾の南端
部に面しており、沖合にはアーキペラルゴと呼ばれる
群島が数多く広がっています。このような景観から、
エストハンマルは避暑地や観光地として有名です。歴
史的には、 漁業/船舶業、鉄工業及び農業が盛んな地
域です。今日では、サンドビック・コロマント社とフォ
ルスマルク発電会社の2つの企業が中心です。
•面積:約2,790平方キロ(東京都の約1.3倍)
•人口 :約 22,000 A (2019年統計)
V _____________)
オスカーシャム自治体の概観
使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)が
1985年から操業しています。この施設は、シンペバ
ルプ半島に立地しており、ストックホルムから南に約
300キロメートルの所にあります。SKB社は新たに
使用済燃料をキャニスタに封入する施設を建設し、ー
体的に運用する計画です。
港に面したオスカーシャムの市街地は工業の町で
す。以前は造船業が盛んでしたが、近年はエネルギー
産業が盛んで、オスカーシャム原子力発電所のほか、
エネルギー関連企業も多く集まっています。市街から
約35キロメートル北|こは、SKB社のエスポ岩盤研究
所もあります。
•面積:約1,054平方キロ(東京都の約0.5倍)
•人口 :約 27,000 A (2019 年統計)
V _____________)
53
情報提供•コミュニケーション>>>
V.情報提供•コミュニケーション
1.公衆との対話
ポ^2ン
スウェーデン核燃料•廃棄物管理会社(SKB社)は、サイト選定の当初から、自治体の了承が得
られない限り、調査を実施しない方針をとっています。処分事業の計画は、環境影響評価の協議に
は住民や自治体を含む関係者が幅広く参加し、許可申請に必要な環境影響評価書に盛り込まれる内
容は、こうした協議で決定されていきます。自治体は、独自の立場で判断を行うことができるよう
に、住民を含む形の体制整備や情報提供活動の費用を原子力廃棄物基金で賄うことができます。
◎サイト選定への地元意思の反映
SKB社は、1992年にサイト選定を開始するに当
たって、自治体の了承なく調査活動を行わないことを
明確にしました。法令上は、サイト選定のための調査
(フィージビリティ調査及びサ仆調査)を行う許可を
自治体から得る必要はありません。しかし、SKB社は、
サ仆選定活動には自治体及び地元住民の協力が不
可欠との考えから、各調査の実施に先立ち、自治体
の了承を得る手続を踏んでいます。
① フィージビリティ調査実施に関して、SKB社が接
触・議論した自治体でも、了承が得られなかった
自治体では調査を実施していません。
② SKB社によるフィージビリティ調査の結果が肯定
的なものであっても、以降の調査継続を断った自
治体では調査活動を打ち切りました。
(北部の2自治体)
③ SKB社は、次段階のサイト調査をオスカーシャ
ム、エストハンマル、ティーエルプの3地域におい
て実施し、輸送等の問題についてニーシェーピン
で継続調査を行う意向でした。これは、政府や
規制機関からは支持されました。しかし、ティー
エルプとニーシェーピンでは自治体議会の同意
が得られず、SKB社は予定していた調査を中止
しました。
◎環境影響評価書とEIA協議
スウェーデンの環境法典では、環境に影響を与える
可能性のある活動を行うときは、計画段階から県域執
行機関と協議することになっており、原子力施設につ
いては、「その計画を行うと、環境に大きな影響を与え
る可能性がある」と判断され、環境影響評価(EIA)
手続を行うことが義務づけられています。また、許可
フィージビリティ調査
サイト調査
K接触・議論したが
受け入れに至らず
•フィージビリティ調査を実施
0調査完了後、継続調査を否決
・受け入れを否決
•サイト調査を実施
フィージビリティ調査とサイト調査の受け入れ状況
54
スウェーデン
申請書に、EIA手続をもとに作成される環境影響評
価書の添付が求められます。EIA手続において大き
な役割を果たすのがEIA協議と呼ばれる協議で、予
定されている計画について関係者に知らせ、環境に
対する影響について話し合い、計画の必要性や環境
への影響を低減するための措置が適切であるか検討
されます。協議には、県域執行機関⑸、スウェーデン
核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)及び放射線安
全機関(SSM)の他に、環境防護機関、住宅国家委
員会などの関係行政機関、関係自治体、影響を受け
ると予想される個人、地元環境団体等が参加します。
政府は、地層処分場については特に早くからEIA協
議を行う必要があると考え、サイト調査の開始と同時
にEIA協議を開始することを求めました。
環境法典に基づく正式なEIA協議は、エストノ、ン
マルとオスカーシャムにおいて、それぞれ2002年、
2003年から開始されています。しかしそれ以前のサ
イト選定の当初から、SKB社は規制機関や関係自治
体と、環境法典に定められたEIA協議に準じて、先
行的に協議(非公式EIA協議)を行っていました。
そうした非公式の協議には、全国レベルで開催さ
れたものもありました。サ仆選定の初期のフィージビリ
ティ調査は、全国の複数の自治体で同時に行われて
いたことから、全国レベルの議論が必要との要請が、
規制当局、原子力廃棄物評議会、カルマル県の県域
執行機関及びオスカーシャム自治体からなされました。
これを受けて政府は、1996年からサイト調査が開始
された2002年の間、放射性廃棄物特別アドバイザー
(1999年に放射性廃棄物調整官より改名)を設置
し、全国レベルのEIA協議の主催、サイト選定に係
わる行政機関間の活動の調整、フィージビリティ調査
対象自治体に必要な情報提供及び調査活動を行っ
てきました。また、調査対象自治体を含む県域レベル
での協議も、国の出先機関である県域執行機関が主
催して行われました。
◎地元協議・コミュニケーションを支える財政支

高レベル放射性廃棄物の処分場のサイト選定に向
けて、SKB社が実施する各段階での調査を受け入れ
た自治体では、調査に関連した議論を行う“地元協
議”が開催されています。自治体は、主体的に意思
決定を行うために、地元社会における影響をさまざま
[5]県域執行機関とは…
県域執行機関は、スウェーデンの21の県域ごとに設置
されている国の出先機関です。主な任務は所管県域内の
各自治体活動の支援ですが、地域計画の策定や国、自治
体の協力関係を促進する役割もあります。わが国の県庁
とは位置づけが異なります。
なお、県域執行機関とは別に、スウェーデンの地方自
治制度では、自治体単独では解決しにくい特定の業務(保
健医療分野など)を県域で協力して行う自治体連合があ
ります。自治体連合を運営する理事会委員は選挙で選ば
れますが、わが国の県とは位置づけが異なります。
環境法典の制定前に開催された非公式EIA協議
県域を対象とした非公式EIA協議
参加者:県域執行機関(主催)、SKB社、SKI、SSI、原子力廃棄
物評議会、自治体、軍等
開催頻度:年に2、3回
主題:フィージビリティ調査結果、公衆への情報、近隣自治体の
見解
全国を対象とした非公式EIA協議
•参加者:特別アドバイザー(主催)、自治体、県域執行機関、SKB
社、SKI、SSI、原子力廃棄物評議会、環境保護機関、住宅国家委
員会、原子力立地自治体協会
•開催頻度:年に2、3回
•主題:一般的な問題(地層処分方法の選択、サイト選定手続、
日Sの内容)
1998年に環境法典が制定される以前から先行的・試行的に、環境
影響評価手続きに関する協議が開催されていました。なお、表中の
原子力発電検査機関(SKI)と放射線防護機関(SSI)は統合して、
2008年7月から放射線安全機関(SSM)となっています。
原子力廃棄物基金から自治体等への交付額
給付先 交付金額(2019年度)
オスカーシャム自治体 924千 SEK (1,109 万円)
エストハンマル自治体 2,795 千 SEK (3,354 万円)
ウプサラ県域連合 0 千 SEK (-)
カルマル県域連合 112千 SEK (134万円)
合 計 3,830 千 SEK (4,596 万円)
1SEK (スウェーデン・クローネ)=12円で換算、四捨五入のため
合計は合わない
(原子力廃棄物基金理事会年次報告書より作成)
55
情報提供•コミュニケーション>>>
な角度から検討する組織を設けています。それらの
組織には住民も参加しており、SKB社から調査状況
の報告や質疑応答が行われるほか、住民間での情報
伝達や協議の場ともなっています。こうした活動は、自
治体が意思を決める上で重要なものと考えられていま
す。自治体職員や議員、住民を含む協議組織を設置
して懸案事項を協議する仕組みは、スウェーデンにお
ける地方自治の歴史の中で培われてきたものです。
こうした自治体にとって不可欠な活動を支援するた
めに、自治体が住民向けに行う情報提供活動の費用
は、原子力廃棄物基金で賄えることが資金確保法で
定められています。自治体は、予算を放射線安全機関
(SSM)に申請し、交付金を事前に受け取ります。こ
の交付金の額は、1自治体あたり年間最大1,000万ス
ウェーデン・クローネ(1.2億円)まではSSMが決定し、
それを超える場合には政府が決定します。2019年度
の交付先と交付額を55ページにまとめています。
交付金は主に、住民向けのセミナーなどの開催費
用のほか、協議に参加する自治体の議会議員や職
員の人件費として使用されています。
◎地元自治体で行われたサイト選定に対する取組
自治体の協議組織の活動費用を原子力廃棄物基
金からの交付金で賄うことができるため、自治体は費
用負担を気にすることなく EIA協議に参加できるほ
か、外部の専門家を雇用したり、住民向けの情報提
供活動を主体的に行うことができます。
ここでは、2002年から開始されたサイト調査を受け
入れた2自治体である、エストハンマル自治体とオス
カーシャム自治体の取り組みを紹介します。
[エストハンマル自治体の取組]
エストハンマル自治体では、1995年にフィージビリ
ティ調査が開始されました。自治体行政を統括する
執行委員会(議会議員の代表から構成される)は、
同委員会の下に、準備グループとレファレンスグループ
を設置しました。準備グループは、自治体内でこの問
題を長期に継続して議論するために、与党と野党の
両方の議会議員から構成されました。レファレンスグ
ループは、議員だけでなく住民や隣接自治体からの
代表者も参加するグループで、住民への情報伝達活
動を行う役割も担っています。レファレンスグループは
定期会合のほかに、勉強会や意見交換会を随時開
催しました。執行委員会は、レファレンスグループに寄
せられた意見を聴き、自治体の意思決定に役立てて
います。2009年6月にSKB社が同自治体のフォルス
マルクを処分場建設予定地に選定したことを受けて、
執行委員会は、準備グループを安全グループと環境
影響評価グループに拡大再編したほか、レファレンス
グループの活動も強化しています。
[オスカーシャム自治体の取組]
オスカーシャム自治体は、1995年にフィージビリティ
調査の申し入れを受けた後、約1年間にわたり対応
方法を検討・しました。オスカーシャムでは、スウェー
デン国内の原子力発電所の使用済燃料が中間貯
蔵のために集められているほか、キャニスタ封入施
設と処分場の両方を建設する計画が検討されていま
した。このような状況に対処するために、同自治体は
「オスカーシャム自治体の地域能力開発(LKO)」プ
ロジェクトを発足させ、外部の専門家を雇用し、自治
体がSKB社や規制機関と対等に議論ができるように
体制作りを進めました。説明会や討論会を多数開催
し、その結果をもとに自治体の議会や執行委員会が
議論し、1996年にフィージビリティ調査の受け入れを
決めました。自治体は、LKOプロジェクトで雇用した
専門家の支援を受けつつ、住民も参加する複数の検
討グループを組織し、SKB社が行ったフィージビリティ
調査やサイト調査のレビューも行いました。2009年6
月にSKB社が処分場建設予定地をフォルスマルクに
選定したことを受けて、以降はオスカーシャムに建設
予定のキャニスタ封入施設の問題を中心に活動を継
続しています。
56
スウェーデン
2.意識把握と情報提供
ポ^2ン
実施主体のスウェーデン核燃料•廃棄物管理会社(SKB社)は、処分事業への理解を得るため
の活動として、一方的な情報提供活動ではなく、住民が情報を入手し、意見を表明できる場をさま
ざまな形で設け、双方向のコミュニケーションを図ってきました。SKB社が処分場建設予定地と
してフォルスマルクを選定した後に、エストハンマル自治体の住民を対象に実施された処分場受け
入れに関する意識調査では、81%の人が支持しているという結果が得られています。
スウエIデン
◎広報活動(情報提供)
スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)
はサ仆選定過程の透明性を確保するため、初期の
段階から地元自治体の幅広い層との対話を行ってい
ます。調査を実施した自治体に情報事務所を設けて
住民との交流を図っているほか、情報冊子の配布や
展示会、セミナーなどを開催しています。
例年夏期には、右の写真のようにSKB社は自社所
有の輸送船を改装し、各地の港で展示会を開催して
います。また、SKB社は施設等を積極的に公開し、
情報提供を行っています。サイト調査が始まった2003
年には、オスカーシャム自治体にあるエスポ岩盤研究
所の地下約500 メートルを訪れるバスツアーが開催さ
れました。バスツァーは、調査が行われたエストハン
マル自治体とオスカーシャム自治体の住民を主な対象
として企画されたもので、2,500人以上がこのツァー
に参加しました。また、サイト調査が行われた2009年
までは、ボーリングサイトへのガイドツァーも開催され、
毎年約300〜500名が参加しました。
SKB社は2015年に自社施設全体で延べ9,750人
以上の訪問者を受け入れています。エスポ岩盤研究
所の訪問者数は約4,100名、エストハンマル自治体に
ある低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の訪問
者数は約3,300人でした。
SKB社は、学校への情報提供も積極的に行ってお
り、生徒向けの冊子、ビデオ、コンピュータゲームなど
の教材や教師用資料を作成しています。教材のトピッ
クスは技術的なことから倫理的なことまで幅広く、廃
棄物問題を社会問題として捉えた教材づくりに配慮し
ています。
SKB社の輸送船を使用した展示
(SKB社年報より引用)
エスポ岩盤研究所
見学ツァー
(SKB社提供資料より引用)
57
情報提供•コミュニケーション>>>
◎国民意識と住民意識(主な世論調査結果)
高レベル放射性廃棄物の処分に関し、実施主体で
あるスウェーデン核燃料•廃棄物管理会社(SKBtt)
により、サイト調査実施自治体の住民を対象に意識調
査(毎年4〜5月に実施)が行われてきました。エスト
ハンマル自治体とオスカーシャム自治体では、地元で
の処分場建設に対する態度は、サイト調査が開始さ
れた当初の2003年では住民の約60 %が肯定的なも
のでしたが、2009年には約80 %まで増加しています。
2009年6月にSKB社は、サ仆調査の結果に基づ
き、処分場の建設予定地として、長期安全性に重要
な地質学的条件が有利であったエストハンマル自治
体のフォルスマルクを選定しました。SKB社の建設予
定地の選定以降も、地元エストハンマル自治体での
処分場建設に対する支持が継続しています。
設問:処分場の地元での建設を支持しますか
1 •全く支持しない•支持しない・支持する•強く支持する 持る 支丈
(1)エストハンマル自治体 支持 しない
2003 16 11 44 20 27 65

2004 9 12 45 26 20 71
2005 8 12 43 28 20 71
2006 8 11 41 31 19 73
2007 7 11 45 31 18 77
2008 610 43 34 16 77
2009 7 8 41 38 15 79
2010 37 51 30 10 81
2011 59 46 34 15 80
2012 57 51 31 12 82
2013 68 43 34 14 77
2014 510 43 34 15 77
2015 68 48 31 14 79
2016 610 44 33 16 77
2017 510 43 32 15 75
2018 6 9 42 35 15 77
2019 49 40 38 13 78

2020 58 40 42 13 82
-100 -80 -60 -40 -20 6 20 40 60 80 100
(2)オスカーシャム自治体 支持 支持
r しない する
2003 9 14 47 22 23 69
2004 8 15 43 28 22 72
2005 6 12 45 31 18 76
2006 59 43 36 14 79
2007 57 43 40 12 83
2008 49 43 40 13 83
2009 37 46 38 10 84
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
処分場建設に対する住民の意識調査の結果
(SKB社提供資料より作成)
58
諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
2020年12月現在
Inフランスにおける
J高レベル放射性廃棄物の処分について
THE NE^HERWSgS]
|I»IESHiFESSjiEiNi
FRANCE
•候補サイト
(ビュール地下研或所届近傍]
FSRSlNi
600 km

フランスの基本データ
面積 551,500平方キロ
人口 64,991千人(201 8 年)
首都 パリ
言語 フランス言吾
通貨 ユーロ (1ユーロ=124 円)
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

フランスでは、原子力発電で発生する使用済燃料を再処理しています。2006年に制定された放
射性廃棄物等管理計画法において、再処理等に伴って発生する高レベル放射性廃棄物及び長寿命
中レベル放射性廃棄物は「可逆性のある地層処分」を行う方針を定めています。
◎原子力エネルギー政策の動向
フランスの原子力発電所は、全てフランス電力株式
会社(EDF社)が運転しています。2020年末現在、
56基の原子炉を運転しており、フランス全土に電力を
供給し、輸出もしています。
フランス北西部のコランタン半島の先端にOrano社
(IH AREVA社)のラ・アーグ再処理施設があり、
UP2、UP3と呼ばれるプラントが操業しています。再
処理で回収したプルトニウムをMOX燃料等に加工
し、再び原子力発電の燃料として利用しています。フ
ランスでは、高速増殖炉の開発も行われてきました
が、現在は運転中のものはありません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
フランスの全ての原子力発電所から発生する使
用済燃料は年間約1,200トンであり、そのうち年間約
1,080トンがラ•アーグ再処理施設で再処理され、残り
は再処理されずに貯蔵されています。再処理を待つ
使用済燃料は、各発電所で貯蔵されるほか、ラ•アー
グ再処理施設にも受入施設としての貯蔵施設があり
ます(いずれもプールでの湿式貯蔵)。また、ラ・アー
グ再処理施設には、再処理後に発生する高レベルガ
ラス固化体の貯蔵施設もあり、将来の地層処分場の
開設まで貯蔵しています。
フランスでは、余剰プルトニウムを発生させないため
にプルサーマル用MOX燃料の年間生産•装荷量か
ら使用済燃料の年間再処理量を計画しています(年
間約!20トンのMOX燃料の生産に見合う量として年
間約1,080トンの使用済燃料を再処理)。そのため、
発生する全ての使用済燃料が直ぐに再処理されるわ
けではなく、2018年末時点で約14,000トンの使用済
燃料(使用済MOX燃料等を含む)が将来の再処
理を待ち、貯蔵されています。使用済燃料の貯蔵量
増加に対応して貯蔵施設の拡張等が計画されてい
るほか、2020年に公表された多年度エネルギー計画
(PPE)では、21世紀後半を目途とした高速炉(第
iv世代炉)開発計画にて核燃料サイクルの確立(全
グラブリーヌ・■■
カットノン
フラマンビル
■ 90万kW級の原子炉
▲130万kW級の原子炉
パリユエル
[ンリー
シホー•
ビュジェイ
•クリュアス・■■■
コノレノエツシュ
•サンタルバンび▲▲
サンモ※
フランスの原子力発電所
(ANDRAウェブサイトより作成)
フェッセッハイム
(2020年閉鎖)
国家放射性物質及び放射性廃棄物インベントリ報告書の例
(写真提供:ANDRA)
60
フランス
仙参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
フランスの電力供給構成(発電量一 2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
フランス
2018 年 フランス 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 5,819.44 135.61 -765.37 5,189.68 4,402.88
◎原子力発電設備容量
合計56基6,137.〇万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
■ 原子力発電所(商業用、運転中)
■ 低(中)レベル放射性廃棄物処分場
地下研究所
1 再処理施設
61
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
量再処理)を目指すとともに、中期的には、使用済
mox燃料の再処理による燃料を第m世代の加圧水
型炉で利用することで貯蔵量の低減を目指す方針が
示されました。
2021年に処分実施主体の放射性廃棄物管理機関
(ANDRA)が取りまとめた最新のインベントリレポー
卜によれば、2019年末時点の貯蔵量は、ガラス固
化体が4,090nA長寿命中レベル放射性廃棄物が
42,700m3 です。
フランスで最終的に地層処分する必要がある高レ
ベル放射性廃棄物等の構成と量は、今後の使用済
燃料の再処理の状況によって変化することが予想さ
れます。2018年には、当時稼働していた58基の原
子炉から発生する使用済燃料について、下の表のよ
うな再処理シナリオを仮定して、最終的に地層処分
が必要となる放射性廃棄物量を試算しています。
管理機関(ANDRA)は、地層処分場の安全確保と
コスト削減の両立のための研究等を考慮し、設置許
可申請を2021年頃に行う予定とし、後述のパイロット
操業フェーズに限定された操業許可の取得について
2035年頃を見込んでいます。
「可逆性のある地層処分」とは、処分事業を段階
的に実施し、各段階において利用可能な知見をもと
に、技術・環境•経済•社会的観点から処分場設
計の変更や定置された廃棄物の回収などが行えるな
ど、将来世代に選択肢を残すことを目的とした柔軟性
のある事業概念です。このため、地層処分の技術開
発においては、一つ前の段階に戻るときに必要となる
技術の実現性を実証する目的のプログラムも必要とな
ります。
地層処分事業における可逆性を確保する期間は
少なくとも100年以上(処分場の閉鎖段階までを意図)
◎処分方針…可逆性のある地層処分
2006年に放射性廃棄物等管理計画法が制定さ
れ、高レベル放射性廃棄物を含む、あらゆる放射性
廃棄物の管理に関する基本方針が定められました。
同法では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レ
ベル放射性廃棄物について、「可逆性のある地層
処分」を行うことを基本とし、研究結果を考慮した上
での、地層処分場の設置許可申請の提出の目標を
2015年、操業開始の目標を2025年としました。その
後、2016年7月には地層処分場の設置許可の条件
等を定めた法律が制定され、設置許可申請の提出目
標が2018年に修正されました。なお、放射性廃棄物
フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による
地層処分の可逆性に関する検討報告書
(写真提供:ANDRA)
再処理シナリオ別の放射性廃棄物及び使用済燃料の予測発生量
シナリオ1 シナリオ2 シナリオ3
原子力発電 既設炉の運転期間 50〜6〇年 50〜6〇年 4〇年
既設炉から欧州加圧水型原子炉への リプレース 実施 実施 1基のみ
高速炉の導入 有り 無し 無し
再処理 ウラン燃料 全量 全量 限定
MOX燃料 全量 無し 無し
高レベル放射性廃棄物 使用済のウラン燃料 一 3,700tHM 25,000tHM
使用済のMOX燃料、高速炉燃料 一 5,400tHM 3,300tHM
ガラス固化体 12,000m3 9,400m3 4,200m3
長寿命中レベル放射性廃棄物 72,000m3 70,000m3 61,000m3
(ANDRA、放射性物質及び放射性廃棄物国家インベントリ報告書2018年版より整理)
62
フランス
とされています。また、地層処分場の操業は、可逆
性と安全性を立証する「パイロット操業フェーズ」から
始められ、パイロット操業フェーズの結果の審査後に、
その後の全面的な操業での可逆性の実現条件を定
める法律が制定されます。
◎処分方針が決定するまでの経緯
フランスの現在の処分方針(可逆性のある地層処
分)は、1991年に制定された放射性廃棄物管理研
究法が定めた、3つの管理方策に関する15年間にわ
たる研究の実施、及びそれらの研究成果の総括評
価を経て決定されたものです。この法律の制定以前
には、政府の主導で、当時は原子力庁(CEA、現在
の原子力•代替エネルギー庁)の一部門であった放
射性廃棄物管理機関(ANDRA)が4つの地域で
の地質調査に着手しましたが、地元の反対を受けて
1990年に停止に至りました。その反対運動の原因を
議会科学技術選択評価委員会(OPECST)⑴が調
査した結果を踏まえて、1991年に放射性廃棄物管理
研究法が制定されました。この法律において、高レベ
ル・長寿命放射性廃棄物の管理方策に関する3つ
のオプションを設定し、研究を実施することにしました。
〇長寿命の放射性核種の分離と短寿命の核種へ
の変換を可能とする解決法
〇地下研究所を利用した、可逆性のあるまたは可
1991年
放射性廃棄物等管理計画法成立までの流れ
フランス
[!議会科学技術選択評価委員会(OPECST)
1983年に法律で議会内に設置されている常設委員会
です。国民議会(下院)と元老院(上院)から各18名、計
36名で構成されています。一定数以上の議員からの要請
を受けた科学技術政策の特定テーマについて、評価委員
会メンバーである議員自身が調査活動を行います。通常
は、調査の過程で公聴会を開催します。調査報告書を評
価委員会で諮った後、議会に提出されます。
逆性のない地層処分の実現可能性
。長期中間貯蔵の方法、及び事前に必要となる廃
棄物の前処理方法
同法はさらに、これらの研究活動の進拶評価結果
を、政府が毎年、議会(国会)に報告するとともに、
15年以内に研究全体を総括した評価結果を提示す
ることを義務づけ、その様な評価と報告書作成を行う
国家評価委員会(CNE)を設置することも規定して
います。
これらの領域の研究は、処分実施主体のANDRA、
及び原子力•代替エネルギー庁(CEA)が進め、
2005年には各管理方策に関する研究成果報告書を
取りまとめました。国家評価委員会(CNE)による総
括評価、OPECSTによる審査等を経て、2006年に放
射性廃棄物等管理計画法が制定されました。
このように、フランスでは、高レベル放射性廃棄物
の処分方針の政策決定に、議会(国会)が大きな役
割を果たしていることが特徴です。

Dossier 2005 :地層処分実現可能性研究成果報告書
(写真提供:ANDRA, 2005年)
63
地層処分計画と技術開発>>>
II-地層処分計画と技術開発
1.処分計画
ポ^2ン
フランスの処分実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分場の設置許
可申請は2021年頃となる予定です。処分場の操業は、可逆性と安全性を立証する「パイロット操
業フェーズ」から始まることとなっており、同フェーズに限定された操業許可の取得については、
2035年頃が見込まれています。
◎地層処分対象の放射性廃棄物…ガラス固化体と
長寿命中レベル放射性廃棄物を併置処分
フランスでは原子力発電で発生した使用済燃料を
再処理しており、使用済燃料を再利用可能な資源と
して位置づけています。「可逆性のある地層処分」
の対象となる高レベル放射性廃棄物は、使用済燃
料の再処理によって生じる高レベル廃液を固化したも
の(ガラス固化体)です。再処理によって発生する
TRU廃棄物などの長寿命中レベル放射性廃棄物も
同じ処分場内の異なる区画で併置処分する方針で
す。
なお、研究炉などをもち、原子力に関する研究開
発を担当している原子力•代替エネルギー庁(CEA)
から発生する同種の廃棄物も、同じ処分場で処分す
ることになっています0
◎処分形態
再処理等によって発生した高レベル放射性廃液
は、高温で溶かされたホウケイ酸ガラスと混合され、
ガラス固化体としてステンレス鋼製のキャニスタに封
入されます。キャニスタ1本には、使用済燃料を約1.3
トン再処理した場合に発生する高レベル放射性廃棄
物力斗又納できます。これをさらに高さ1.3〜1.6m、直
径0.57 ~0.64m、重さ1.7 ~2トン、厚さ約5cmの
鋼鉄製の容器(オーバーパック)に封入して処分し
ます。ガラス固化体は、冷却のためにOrano社(旧
AREVAtt)のラ・アーグ再処理施設及び旧マルクー
ル再処理施設(1997年に操業停止)の専用施設で
貯蔵されています。
溶融したガラスの注入装置と
ガラス固化体用キャニスタ(CSD-V)
(ANDRAウェブサイトより引用)
0.57 ~〇•64m
ガラス固化体
ガラス固化体用の廃棄物パッケージ
(出典:Dossier 2005 TAG Figure4.2.1)
64
フランス
◎処分場の概要(処分概念)
ビュール地下研究所で調査している粘土層での処
分概念では、地下約500mの粘土層内に処分坑道
を建設し、次の3つのバリアからなる多重バリアシステ
ムによって廃棄物を隔離します。
〇廃棄物パッケージ(放射性廃棄物自身とそれを
収容するキャニスタ、オーバーパックにより構成)
〇人工バリア(処分孔内の鋼鉄製スリーブ)
〇天然バリア(サイトの地質学的環境特性)
なお、処分孔内のスリーブは、処分孔を力学的に
支えるとともに、廃棄物パッケージの定置と回収を容
易にする機能を持っています。
処分場の地下施設は、高レベル放射性廃棄物の
処分エリア、長寿命中レベル放射性廃棄物の処分エ
リアに区分されています。さらに各処分エリアで行わ
れる建設作業や廃棄物定置作業の範囲を分けるた
めに細分化し、処分区域が設けられます。また、処
分場の主な地上施設は、作業員の移動や物資の搬
送用の立坑入口を配置するエリアと、廃棄物を地下
に搬入する斜坑入口を配置するエリアに分けられて
います。
廃棄物パッケージの定置イメージ
(出典:Andra)
フランス
フランスにおける処分場の概念図
※地上施設1には作業員や物資等の輸送用立坑が、地上施設2には廃棄物輸送用の
斜坑を配置することが検討されている。
(出典:ANDRA)
65
地層処分計画と技術開発>>>
◎処g補地の地質構造
ビュール地下研究所は、パリ盆地の東端に位置
し、ムーズ県とオート=マルヌ県の境に位置していま
す。地表から約500mの深さのところに力口ボ・オッ
クスフォーディアン粘土層があり、その上下を石灰岩
層に挟まれた形で一つの均質な地層(層厚:130~
160m)が広がっています。この粘土層は約1億5
千万年前に形成されたもので、透水性が非常に低い
ことが特徴です。
◎処分の基本方針と実施計画
2006年に放射性廃棄物等管理計画法が制定さ
れ、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放
射性廃棄物の管理方策として「可逆性のある地層処
分」を基本とする方針が定められました。この基本方
針の実現に向けて、2025年までには処分場の操業開
始とするとの目標スケジュールが同法内に盛り込まれま
した。処分場の設置許可申請に先立ち、国民各層か
ら事前に意見を聴取し、申請内容に反映するために、
公開討論会を開催することも定められています。
また、フランスでは、放射性廃棄物等の管理に関す
る研究方針等を含む国家計画(PNGMDR)⑵を政
府が3年毎に作成•改訂するとともに、議会に提出、
公開する決まりです。こうした取組みの実施も、2006
年の放射性廃棄物等管理計画法で定められていま
す。現在、PNGMDRの取りまとめは、原子力安全機
関(ASN)及び環境連帯移行省のエネルギー •気候
総局(DGEC)が担当しており、計画は2007年以降
約3年ごとに公表されてきました。PNGMDRでは、フ
ランスにおける放射性廃棄物管理の現状分析、ならび
に最終管理方策の実現に向けた、研究開発を含む取
組みの提案が報告され、計画の実現については、デク
レ(政令)等により規定されます。
ビュール地下研究所周辺の地質構造
(出典:Andra)
[2]放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計
画(PNGMDR)
PNGMDRは、2006年の「放射性廃棄物等管理計画法」
に基づき、3年每に政府が策定してきました。高レベル放
射性廃棄物だけでなく、すべての種類の放射性廃棄物の
管理対策を議論しています。2017年の法令の改正にて
PNGMDRの策定は公開討論会の対象と明記され、2019
年以降の計画は、2019年の公開討論会や2020年末から
の公開協議を経て、2021年前半に策定される予定です。
また、対象期間は5年間に見直されました。
放射性廃棄物等の管理に
関する研究方針等を含む
国家計画(PNGMDR)
「可逆性のある地層処分」の実施主体であるフラン
ス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、「高レベ
ル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分産
業センター」(Cig如プロジェクト)設置許可申請を行
う予定であり、このプロジェクトに関する国家討論会
が2013〜2014年にかけて開催されました。この国
家討論会に関する制度や開催成果の詳細は、後述の
「v•情報提供•コミュニケーション」の、「◎公開討
論会による意見聴取と反映」(80ページ)にまとめて
います。
公開討論会の結果を受けてANDRAは、2014年
5月にCigeoプロジェクトの継続に向けた改善案を公
表しました。これを受け2016年7月には新たに法律
が制定され、地層処分場の設置許可申請の目標を研
究結果を考慮した上で2018年とすることや、地層処
分場の操業は、可逆性と安全性を立証する「パイロッ
卜操業フェーズ」から始まること等カヾ定められました。
また、パイロット操業フェーズの結果の審査後に、地
66
フランス
層処分の可逆性の実現条件を定める法律が制定さ
れ、その後にASNは地層処分場の全面的な操業の
許可を発給できるようになります。なお、放射性廃棄
物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の安全確
保とコスト削減の両立のための研究等を考慮し、設置
許可申請を2021年頃に行う予定とし、パイロット操業
フェーズに限定された操業許可の取得について2035
年頃を見込んでいます。
地層処分場の操業開始までの暫定マイルストーン
2016 年 地層処分場の安全確保に関する意見請求書類 の原子力安全機関(ASN)及び国家評価委員会 (CNE)への提出
2020年 地層処分場の公益宣言の申請
2021年頃 地層処分場の設置許可申請
2025年頃以降 地層処分場の建設開始
2035年頃 パイロット操業フェーズに関する操業許可取得
(ANDRA広報誌(2020年5月)、ANDRAウェブサイトより整理)
法律
1991年
放射性廃棄物
管理研究法
国家評価委員会
(ONE)
原子力安全機関
(ASN)
2006 年
放射性廃棄物等管理計画法
2016 年
地層処分場の設置許可条件等
に関する法律
1 i Z
評価報告書 2007年以降 国家計画(PNGMDR)の実施に関する年次評価報告書
評価•勧告 評価•勧告 ソ

意見書 (当時は原子力安全・ 放射線防護総局: DGSNR) 2007年以降 国家計画(PNGMDR)の取りまとめ(3年毎) ・ ノ
2008年 安全指針 評価•勧告 評価•勧告
2016年 2021年頃
意見請求 地層処分場設置
書類 許可申請書
放射性廃棄物
管理機関
(ANDRA)
2009 年
研究報告書
(Dossier2009)
2006年以降国家計画(PNGMDR)に基づく研究
法律及び「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に基づく安全確保の取組
2.研究開発•技術開発
ポ^2ン
実施主体の放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2006年の放射性廃棄物等管理計画法で示
された「可逆性のある地層処分場」の設置許可申請に向けた処分技術開発を進めています。また、
国内外の機関と共同で処分技術や安全評価等に関する研究を進めています。
なお、フランスでは、地層処分に関する研究とともに長寿命放射性核種の分離•変換と中間貯蔵
についての研究も実施することになっています。政府は、放射性廃棄物管理に関する研究方針等を
含む国家計画(PNGMDR)を3年每に策定してきました。
◎研究機関と研究体制
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性
廃棄物の地層処分については、放射性物質及び放射
性廃棄物の管理に関する国家計画(PNGMDR)に
従い、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が中心と
なって、原子力•代替エネルギー庁(CEA)、地質•
67
地層処分計画と技術開発>>>
鉱山研究所(BRGM)等の研究機関と協力しつつ、
研究開発計画を作成し、実施しています。
◎研究計画
2006年に制定された放射性廃棄物等管理計画法
では、「可逆性のある地層処分」の実現に向けた研
究とともに、それを補完する2つの研究の実施も示さ
れました。1つは廃棄物内の「長寿命放射性核種の
分離・変換」です。もう1つは「中間貯蔵」の研究で
あり、廃棄物を最終的に処分場に定置するまでの間、
安全に保管•取り出しを行うことができる管理方法の
実現を目的としています。
上記の法律では、研究結果を考慮した上で、地層
処分場の設置許可申請の提出の目標を2015年、操
業開始の目標を2025年としました。その後、2016年
7月には地層処分場の設置許可の条件等を定めた
法律が制定され、設置許可申請の提出目標が2018
年に修正されました。なお、放射性廃棄物管理機関
(ANDRA)は、地層処分場の安全確保とコスト削
減の両立のための研究等を考慮し、設置許可申請を
2021年頃に行う予定とし、後述のパイロット操業フェー
ズに限定された操業許可の取得について2035年頃
を見込んでいます。
◎ビュール地下研究所
ムーズ、オート=マルヌ両県にまたカヾるビュールサイト
において、粘土層を対象とした地下研究所の建設が
1999年に決定され、2000年から建設が進められてい
ます。ANDRAはこの建設作業と並行して地下での
調査研究も実施しています。ビュール地下研究所で
は、主に深さ445mに設置された実験用横坑、深さ
490mの主試験坑道及び主試験坑道から10 %の勾
配で上下方向に2本の斜坑が設置されており、さまざ
まな調査や試験が進められています。
また、近年の研究開発の特徴としては、長寿命中
レベル放射性廃棄物の処分坑道を従来よりも大径化
しつつ岩盤を安定に維持する技術等の、安全性と経
済性を両立させるための技術開発が挙げられます。
ビュール地下研究所の概観
国際研究の場としても利用されています。
(写真提供Andra)
ビュール地下研究所の構造
(出典:Andra)
ビュール地下研究所の地下坑道での研究活動
(写真提供:Andra)
68
フランス
HI.処分事業の実施体制と資金確保
1.実施体制
ポ^2ン
高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は、原子力安全機関(ASN)です。また、
ASNに対しては放射線防護•原子力安全研究所(IRSN)が技術的な支援等を行います。
放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が、高レベルを含む放射性廃棄物の長期管理の責任を有し、
深地層研究を目的とした地下研究所の建設、操業及び処分場の設計、設置、運営等を行うことに
なっています。
◎実施体制の枠組み
右図は、フランスにおける高レベル放射性廃棄物
処分に係る実施体制を図式化したものです。実施
主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)を
含め、主要な関係機関としては政策決定等を行う
政府や議会、規制行政機関である原子力安全機関
(ASN)が挙げられます。
政府や議会は2006年放射性廃棄物等管理計画
法などの法律制定や各種政省令等の制定•公布を
行い、放射性廃棄物管理の政策や方針の決定を行
います。政府、議会の下には「放射性物質及び放射
性廃棄物の管理研究•調査に関する国家評価委員
会」(CNE、右図の「国家評価委員会」)、議会科
学技術選択評価委員会(OPECST,議会の常設委
員会)がそれぞれ設置され、技術的な検討等を実施
して政府や議会をサポートしています。政府の技術
的な諮問組織であるCNEは当初、1991年の放射性
廃棄物管理研究法に基づき、高レベル・長寿命放射
性廃棄物の管理方策に関する3つの研究分野の進
拶を毎年評価し、15年目に総括報告書をまとめる役
割を担う組織として設置されました。その後も2006年
の放射性廃棄物等管理計画法により、全ての放射性
廃棄物の管理を評価対象として、年次評価報告書を
取りまとめています。
技術的支援
支援機関 放射線防護•原子力
安全研究所
(IRSN)
民間会社
(※1)関係機関への意見提示を行います。
(※2)正式名称は「放射性物質及び放射性廃棄物の管理研究•調査に関する
国家評価委員会」といいます。
処分事業の実施体制
原子力分野の規制体制は、2006年6月に制定さ
れた原子力安全•情報開示法により、独立性を高め
た形で再編されました。規制機関である原子力安全
機関(ASN)は、中央省庁から独立させるために大
統領府の下に新設され、大統領が任命する3名、議
会(国会)の両院議長が任命する各1名の、計5名
のコミッショナー制で運営されています。ASNを技循:
面で支援する組織として、放射線防護•原子力安全
69
処分事業の実施体制と資金確保»>
研究所(IRSN)が設置されています。
また、原子力安全•情報開示法に基づき、ASNと
は独立した「原子力安全情報と透明性に関する高
等委員会」(HCTISN)が設置されており、国レベル
で原子力安全及びその情報提供に関する問題の検
討や意見提示を行います。
◎実施主体
ANDRAは放射性廃棄物の長期管理を実施す
る責任を有する、廃棄物発生者とは独立した立場の
「商工業的性格を有する公社」(EPIC)という形態
で設置されています。ANDRAは、当初フランス原子
力•代替エネルギー庁(CEA)の一部門として1979
年に創設されましたが、1991年の放射性廃棄物管理
研究法の規定により、CEAから独立した組織として、
現在の役割や機能が定められています。
ANDRAは、高レベル放射性廃棄物の処分実施
主体であるほか、低レベル放射性廃棄物の処分も実
施しています。
◎安全規則
フランスにおける高レベル放射性廃棄物及び長寿
命中レベル放射性廃棄物の地層処分に適用される
安全規制として基本となるものは、原子力安全・情
報開示法とこの内容を反映した環境法典の条文で
す。原子力安全•情報開示法の施行デクレでは放
射性廃棄物処分場も対象となっている原子力基本施
設(INB)の定義やその具体的な設置許可手続など
が規定されています。
安全規則としては、1991年に策定された安全基本
規則(RFS 111.2.f)を置き換えるものとして、深地層
における放射性廃棄物の最終処分に関する安全指
針が原子力安全機関(ASN)によって2008年に策
定されています。この指針では処分場閉鎖後の安全
性を確保するために、放射性廃棄物の地層処分場
の設計及び建設段階で遵守する必要のある目標を
定めています。また、処分場の設計及び建設の責任
を負う実施主体であるANDRAは、ASNに対して、
この規則の適用状態に関する報告を行うことが定め
られています。本指針では、処分場閉鎖後の長期安
全の線量基準として、0.25mSv/年(個人線量当量)
を設定しています。
原子力安全機関(ASN)の戦略計画
ASNのコミッションは、ASNの運営戦略を策定•公表し、ASNの
Vision, Task, Values, Goalを明確化しています。
(写真提供:ASN, STRATEGIC PLAN FOR 2010-2012)
ANDRAが操業している低レベル放射性廃棄物処分場
(上:オーブ処分場(CSA)、下:モルヴィリエ処分場 ©RES))
(写真提供:ANDRA/4 vents)
70
フランス
◎処分に関わる法令の体系図
放射性物質及び
放射性廃棄物の管理
に関する国家計画
(PNGMDR)デクレ(** () () ()) 公益事業共同体(GIP) 設置デクレ() 放射性廃棄物管理研究法 の適用と地下研究所の 建設・操業デクレ() ビュール地下研究所の 建設•操業デクレ() 地域情報フォローアップ 委員会(CLIS) 設置デクレ() 原子力基本施設(INB)等 原子力債務の 資金確保デクレ 放射性物質及び 放射性廃棄物の管理 に関する国家計画 (PNGMDR)アレテ フランス ()フランスの法律の一部は法典化されており、1991年の放射性廃棄物管理研究法と2006年に制定された放射性廃棄物等
管理計画法の一部は環境法典のL542条等に編纂されています。また、放射性廃棄物等管理計画法と2016年に制定され
た地層処分場の設置許可条件等に関する法律はこの環境法典のL542条の一部を改訂しました。したがって、1991年の
放射性廃棄物管理研究法の内容が変更された形になっています。
(* )環境法典L542条に編纂された法律の施行デクレの一部が環境法典R542条に編纂されています。 ()正式名称は「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした2016年7月25
日付法律」です。
()原子力安全・情報開示法の一部は環境法典L125条及びL591 ~L596条に編纂されています。 (
)原子力基本施設(INB)等デクレの一部は環境法典R125条、R592 – R594条及びR596条に編纂されています。
71
処分事業の実施体制と資金確保»>
◎処分の法制度
内 容
事業規制 1991年に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物管理研究に係る諸活動の法的枠組みを与 えることを目的として、放射性廃棄物管理研究法が定められました。放射性廃棄物管理研究法では、長寿命放射性 核種の分離・変換、可逆性のあるまたは可逆性のない地層処分、長期地上貯蔵の3つの研究実施が規定されまし た。また、2006年までに政府が議会にこれらの研究についての総括報告書、さらに必要に応じて、地層処分場の 建設許可に関する法律案を提出することが定められていました。さらに同法のもとでは、放射性廃棄物管理機関 (ANDRA)設置デクレなどが発給されています。なお、同法の内容は環境法典に編纂され、同法は廃止されました。 2006年6月に放射性廃棄物等管理計画法が制定され、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃 棄物については、「可逆性のある地層処分」を実施することが規定されました。また、処分実施に向けた地層処分 の研究とともに、長寿命放射性核種の分離・変換と中間貯蔵に関する研究も実施されることが定められました。 放射性廃棄物等管理計画法では、処分場設置の許可対象が地下研究所による研究の対象となった地層に関する ものに限ること、設置許可はデクレによって発給されること、処分場の最終閉鎖は新たな法律によって許可され ること、可逆性を確保する期間は少なくとも100年以上とすること、等が規定されています。 また、同法では政府が放射性廃棄物管理に関する国家計画を策定すること、地下研究所区域に設置される地域 情報フォローアップ委員会(CLIS)、地下研究所または地層処分場区域に設置される公益事業共同体(GIP)に ついても規定されています。 2016年7月には新たに地層処分場の設置許可条件等に関する法律が制定され、デクレによる処分場の設置 許可の発給後に原子力安全機関(ASN)が発給する処分場の操業許可は、可逆性と安全性を立証する「パイロッ 卜操業フェーズ」に限定されることや、パイロット操業フェーズの結果の評価後に、地層処分の可逆性の実現条 件を定める法律を制定し、その後はじめてASNは地層処分場の全面的な操業許可を発給できること等が定めら れました。
安全規制 放射性廃棄物に関する安全規制については、原子力安全・情報開示法と、同法の内容が編纂された環境法典が 適用されています。 原子力安全・情報開示法は、原子力活動の原則や原子力安全・放射線防護及び情報公開に関する国の役割と 責任を定めたものとされています° 原子力基本施設(INB)等デクレは、原子力安全・情報開示法に基づいて制定されており、INBの設置、操業、 恒久停止、廃止措置の許認可について規定しています。 地層処分の安全指針は、処分場閉鎖後の安全性を確保するために、放射性廃棄物の地層処分場の設計及び建設 において採用されるべき目標を設定しています。
資金確保 放射性廃棄物等管理計画法では、中間貯蔵施設及び地層処分場の建設•操業等に必要な資金確保のためには、 原子力基本施設(INB)操業者からの拠出による基金をANDRA内に設置することが定められています。また、 INB操業者は、基金への拠出を行うまでは引当金によって資金を確保することが同法で定められています。なお、 管理費用の見積についてはANDRAが行い、エネルギー担当大臣が最終的な見積額を決定することとされていま す。また、中間貯蔵施設及び地層処分場に関する調査研究に必要な資金確保のための、『研究税』を資金源とする 基金、及び地層処分場の概念設計や建設の準備等に必要な資金確保のための、原子力基本施設(INB)操業者から の拠出による基金を放射性廃棄物管理機関(ANDRA)内にそれぞれ設置することが規定されています。
環 境 環境法典では、自然界に対して損害を与える可能性のある事業は、その影響評価ができるような調査を行うこ とや環境影響評価の実施項目と公衆意見調査が行われる場合に環境影響評価を対象に加えることが規定されて います。また、事業が環境に及ぼす影響があるときは、工事に先立って公衆意見聴取を行う必要があることを規 定しています。さらに、天然資源や自然環境等の保護、開発、管理等の原則を定めていて、開発に先立つ公開討 論会の開催や要件等が示されています。
原子力責任 フランスにおける原子力に関する損害賠償については、原子力分野の第三者に対する責任に関するパリ条約 等に基いており、条約締結国の裁量部分を現在、環境法典第L597条に規定しています。同条文では、事業者の 責任限度額及びその時効を規定していて、商業用または軍事用原子力施設を利用する個人または法人は、公的機 関、民間を問わず、規定に従うことを定めています。
注)デクレ:政令
72
フランス
2.処分事業の資金確保
a
ポ^2ン
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の処分費用は、フランス電力株式会社
(EDF社)等の原子力基本施設(INB)の操業者が負担します。放射性廃棄物等管理計画法におい
て、処分費用は操業者が引当金として確保し、建設段階以降に放射性廃棄物管理機関(ANDRA)
に設置される基金に必要な資金が拠出され、独立した会計管理が行われることが定められています。
◎処分費用の負担者
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射
性廃棄物の処分費用の負担については、放射性廃
棄物等管理計画法の第16条により、フランス電力株
式会社(EDF社)、Orano社(旧AREVA社)、原
子力•代替エネルギー庁(CEA)などの原子力基本
施設(INB)を有する事業者が負担します。
細は、基金設置時に定められる予定です)。
2019年末時点において、EDF社は、フランスでの
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性
廃棄物の貯蔵•処分のために、86億4,000万ユーロ
(1兆710億円)を引き当てています。
◎処分費用の対象と見積額
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射
性廃棄物の処分費用は、中間貯蔵施設または処分
場の建設•操業•閉鎖•保守及びモニタリングが対象
となっています。また、高レベル放射性廃棄物及び長
寿命中レベル放射性廃棄物の処分費用は、放射性
廃棄物管理機関(ANDRA)が見積りを行い、最終
的にエネルギー担当大臣が処分費用の見積額を決
定するとされています。2014年にANDRAによって見
積もられた処分費用は344億ユーロ(約4兆2,660億
円、1ユーロ =124円として換算)でした。これに対し、
2016年1月にエネルギー担当大臣は廃棄物発生者や
原子力安全機関(ASN)の意見を踏まえ、処分費用
の目標額として250億ユーロ(3兆1,000億円)を示し
ました。
◎処分の資金確保制度
フランスでは、2006年の放射性廃棄物等管理計
画法により、高レベル放射性廃棄物等の中間貯蔵施
設または可逆性のある地層処分場の建設•操業等
の資金を、原子力基本施設(INB)の操業者が引当
金として確保することを定めています。また、建設段
階以降に、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)内
に独立した会計管理が行われる基金を設置すること
も規定しており、必要な資金が操業者より拠出される
ことになっています(基金への資金拠出方法等の詳
2014年のANDRAによる処分費用見積もり(基本ケース)
建設費:58%、操業費:25%、税:12%
その他(技術開発、環境モニタリング等):5%
処分費用総額約344億ユーロ
(CHIFFRAGE CIGEO EN PHASE ESQUISSE)
意見
原子力安全機関(ASN)
所見
原子力基本施設(INB)
操業者
•フランス電力株式会社(EDF社)

  • Orano 社(旧 AREVA 社)
    •原子力•代替エネルギー庁
    (CEA)など
    引当金(内部留保)
    環境連帯移行省
    目標額
    (省令)
    見積額
    放射性廃棄物管理機関
    (ANDRA)
    基金
    (建設段階以降に
    設立予定)
    拠出 、 ’
    (建設段階以降)
    フランスにおける資金確保のしくみ
    73
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    IV.処分地選定の進め方と地域振興
    1.処分地の選定手続き・経緯
    ポ^2ン
    1991年に制定された放射性廃棄物管理研究法のもと、地域からの自発的立候補を原則として、
    地下研究所の設置のためのサイト選定が進められ、1999年に粘土層を有するビュールが選定され
    ました。その後、2006年の放射性廃棄物等管理計画法では、処分場の設置許可申請が行えるの
    は、地下研究所による研究の対象となった地層だけとされています。
    処分場の設置許可の発給後、処分場の操業は可逆性と安全性を立証する「パイロット操業フェー
    ズ」 から始まり、可逆性の実現条件を定める法律の制定を経て、全面的な操業の許可が発給され
    ます。
    ◎処分場サイト選定の状況と枠組み
    2006年制定の放射性廃棄物等管理計画法には、
    地層処分場の設置許可申請は、地下研究所による
    研究の対象となった地層に対してのみ申請が行えるこ
    とが定められています。
    ANDRAによる処分場の設置許可申請の前には、
    公開討論会を開催しなければなりません。この公開
    討論会は、公開討論国家委員会(CNDP)が主催
    するもので、ANDRAはその開催を地層処分の実施
    主体として支援する必要があります。また、環境影響
    や都市計画との整合性等を評価し、政府が地層処
    分プロジェクトの公益性や正当性を認定する公益宣言
    (DUP)の発出を申請することで、土地管理や建設
    前の準備作業を可能とする必要があります。
    設置許可申請の際には、国家評価委員会(CNE)
    による評価報告書、原子力安全機関(ASN)の意見
    書の作成に加えて、地元の意見が求められます。申
    請書には公開討論会の報告書、CNEとASNによっ
    て出された各々の報告書が添付され、議会科学技
    術選択評価委員会(OPECST)に提出されます。
    OPECSTは申請書についての評価結果を議会に報告
    します。処分場の設置許可は、公衆意見聴取等を経
    た許可デクレ(政令)によって発給されます。この後、
    ASNが処分場の可逆性と安全性を立証する「パイロッ
    卜操業フェーズ」に限定した操業許可を発給します。
    パイロット操業フェーズの結果は、ASN及びCNE
    の見解、地元の意見と共に0PECSTにて評価され、
    議会に報告されます。この後、政府は、地層処分の
    可逆性の実現条件を定める法案を策定します。この
    法律の公布後に、ASNは地層処分場の全面的な操
    業の許可を発給できるようになります。
    可逆性のある地層処分、 放射性廃棄物等
    が基本方針に 管理計画法が制定
    2007年に開始
    新たな地質調査結果も
    踏まえて2009年末に
    政府に提案
    放射性廃棄物等管理計
    画法に基づき、2013
    年に開催
    2020年に申請
    地下研究所周辺(250km2区域)
    で新たな地質調査
    ■ \/
    候補サイト(30km2区域)を
    ANDRAが提案、政府の了承
    \/
    公開討論会の開催
    \/
    処分場の公益宣言申請
    2021年頃には申請可 処分場の設置許可申請
    能となる予定 f
    15〜25年間継続する処分場のパイロット操業
    予定 f[ フェーズの開始
    知龍濫篇 処分場の全面的な操業開始
    放射性廃棄物管理に関する事業の流れ
    ※2013年に開催された公開討論会の情報は、80ページにまとめて
    います。
    ビュールにおける地質構造
    (ANDRAウェブサイトより引用)
    74
    フランス
    ◎地下研究所を含むサイト選定の状況
    1987年に放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が
    高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性
    廃棄物地層処分場のサイト選定を目的として、岩塩、
    粘土、頁岩(けつがん)、花崗岩という4つの地質媒
    体を有するサイトで調査を開始しました。しかし、地
    元で反対運動が起こり、1990年2月に政府は一時的
    に現地調査を停止することにしました。この事態を打
    開するために、政府は議会科学技術選択評価委員
    会(OPECST)に、反対運動が生じた原因について
    の包括的な調査を依頼し、委員であったバタイユ議
    員を中心とした調査が行われました。同議員は1990
    年12月に調査結果を取りまとめ、OPECST報告書と
    して議会に提出しました。政府はこの報告書を基に
    放射性廃棄物管理研究法の法案を作成し、同法は、
    1991年12月30日に発効しています。なお、同法では
    地下研究所の研究対象となった地層が放射性廃棄
    物の処分や貯蔵の対象となり得ることと共に、地下研
    究所内での放射性廃棄物の処分や貯蔵を禁止する
    ことを規定しています。
    政府は、この放射性廃棄物管理研究法の考え
    に従い、地下研究所の設置サイトの選定のために
    ANDRAが予備調査として特定地域での地質調査
    を実施するのに先立って、地質学的に適した一定
    数のサイトについて政治的及び社会的合意を得るた
    めの作業を行うこととし、その調停官としてバタイユ
    議員を任命しました。バタイユ議員率いる調停団は、
    地下研究所の受け入れに関心を示した約30件の申
    請に対して、各申請地点に関する地質•鉱山研究所
    (BRGM)及び放射性廃棄物管理機関(ANDRA)
    による地質学的な特性評価などを踏まえて申請地域
    が属する10県を選定しました。そのうちの8県で地元
    との協議を行い、1993年には4県のサイトが予備的
    な地質調査対象として提案されました。ANDRAは
    1994年から2年間にわたって予備的な地質評価作
    業を実施し、その結果、ビュール(ムーズ県/オート=
    マルヌ県)、ガール、ヴィエンヌの3力所のサイトを提案
    しました。
    政府は!996年6月に3サイトそれぞれについて地
    下研究所の建設及び操業許可申請書の提出を認め
    ました。その後、ANDRAが行った3つのサイトに関
    する許可申請について、1998年12月に政府は省庁
    間決定として、異なる2種類の地質媒体に対する調
    調停官による提案区域 予備的調査後にANDRAより 提案されたサイト
    県名 区域規模
    ガール県 北東部の小郡 規模 シュクラン近傍 (ガール県内)
    オート=マルヌ 県 北東部の5郡 ビュール近傍 (ムーズ県内のオート=マルヌ 県との県境)
    ム_ズ県 同県全域
    ヴィエンヌ県 南部の2つの 小郡 ラ=シャペル=バトン近郊 (ヴィエンヌ県内)
    ビュール地下研究所の周辺約250km2の区域
    (ANDRA資料より作成)
    75
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    査を2カ所の地下研究所で実施する必要性を示し、
    粘土層に関する地下研究所サイトとしてビュールを選
    定するとともに、花崗岩に関する地下研究所サイトを
    新たに探すことを指示しました。
    1999年8月3日には、ビュールに地下研究所の建
    設及び操業を許可するデクレ(政令)、そして花崗岩
    の地下研究所については、新規サイトを選定するた
    め、新たに調停官を置き、調停活動の開始を承認す
    ることを定めたデクレ(政令)カヾ発糸合されました。この
    花崗岩サイトの選定について、ANDRAが予めリスト
    アップした15カ所のサイトにおいて、調停団は地元と
    の対話を試みましたが、全国的な反対を受け、2000
    年5月には地元住民との対話を中断しました。
    ◎ 2006年以降のサイト選定の進搜
    2006年の放射性廃棄物等管理計画法で規定さ
    れたスケジュール等に基づき、ANDRAは引き続き、
    ビュール地下研究所周辺の約250km2の区域を対象
    に、サイト選定に向けた調査を進めました。その結果
    から、1次案として同区域から4つの候補サイトを選定
    して地元関係者等と協議し、政府への提案準備を進
    めました。2009年末にANDRAは、政府に対して候
    補サイトとして、地層処分場の地下施設の展開のた
    め詳細な調査を行う約30km2の区域(ZIRA)と地
    上施設を配置する可能性のある区域を特定して提案
    しました。ANDRAの提案は2010年3月の政府の了
    承を受け、調査・検討が続けられました。
    現在、ANDRAでは地下施設の設置区域(ZIOS)
    と、立坑区域⑵OS内)と斜坑区域、廃棄物搬入
    のための専用鉄道等の地上施設の位置を提示して
    います。
    0.2m/m以上の動水勾配を示す地域
    力口ボ・オックスフォーディアン粘土層の厚さが14〇mに満たない地域
    Ornain渓谷のとの関係で注意を要する区域(長期の勾配評価を要する)
    地下研究所の坑道深度レベルが600m以上となる区域
    0 ANDRAが提案した地層処分候補サイト(30km2の制限区域)
    •処分場の立地に適したビュール地下研究所と同等の粘土層を有すると
    結論付けられた250km2の区域
    q ビュール地下研究所
    » 技術センター
    地層処分場の地下施設の展開が予定される
    約30km2の区域
    (ANDRAウエブサイトより引用)
    76
    フランス
    2.地域振興方策
    ポ^2ン
    「放射性廃棄物等管理計画法」(2006年)の規定により地下研究所または地層処分場が設置さ
    れる区域を有する県には公益事業共同体(GIP)が設置されることになっています。ビュール地下
    研究所が位置するムーズ県とオートマルヌ県の両県にGIPが設置されており、年間3,000万ユー
    ロ (37.2億円)の助成金が各GIPに交付されています(1ユーロ=124円として換算)。更に、
    放射性廃棄物発生者による雇用創出のための事業が、地域と検討を進めながら行われています。
    ◎公益事業共同体(GIP)の設置とGIPへの助成金
    放射性廃棄物等管理計画法により、地下研究所ま
    たは地層処分場が設置される区域を有する県にGIP
    が設置されることになっています。GIPには、国、地
    下研究所または地層処分場の設置許可保有者、施
    設の周辺区域にある州(地域圏)、県、自治体などが
    加入できます。
    GIPには、右下に示す3つの役割があります。これ
    らの役割を果たすための財源として、原子力基本施
    設(INB)に課税される連帯税による税収の一部が
    割り当てられます。
    当初、GIPは1991年の放射性廃棄物管理研究法
    のもとで、ビュール地下研究所を有するムーズ県とオー
    卜=マルヌ県に2000年に設置され、ANDRAやフラン
    ス電力株式会社(EDF社)等の事業者より、2006年
    までに、それぞれ年間約915万ユーロ(約11.3億円)
    が支給されました。
    2006年の放射性廃棄物等管理計画法に基づく新
    たなGIPでは、参加自治体は今後処分場となる可能
    性のあるビュール地下研究所周辺の250km2の区域
    を包含する300以上の自治体へと拡大されました。
    2007年以降、予算規模は年間2,000万ユーロ (24.8
    億円)/ GIPに拡大され、更に2010年からは3,000
    万ユーロ(37.2億円)/GIPへと拡大されています。
    GIPへの助成金は以下のような地域の振興に役立
    てられました。
  1. 経済開発と雇用の助成(企業の設立計画、近
    代化、発展等の支援、企業環境の改善への寄
    与、雇用増加のための支援)
  2. 自治体間において計画された地域開発、必要と
    される地域への支援(郊外の開発、居住環境
    整備、公共の部門及びサービスの人口に応じた
    再編成、新規通信技術の導入等)
    〇ムーズ県に設置されたGIPの名称
    Le Groupement d’lnteret Public«Objectif Meuse»
    〇オート=マルヌ県に設置されたGIPの名称
    Le GIP Haute-Marne
    GIP対象区域
    (ANDRA資料より弓|用)
    「公益事業共同体」(=GIP)の役割
  3. 地下研究所または地層処分場の設置及び操業の促進
  4. 地下研究所または地層処分場の周辺区域などにおけ
    る国土整備及び経済開発事業の自県内での推進
  5. 地下研究所内において研究されている諸分野及び新
    しいエネルギー技術分野などにおける、人材養成事業
    ならびに科学的技術的知見の開発、活用及び普及事業
    の推進
    77
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
  6. 県のインフラストラクチャー整備の支援(道路等
    の整備)
  7. 観光開発と県のイメージ向上に対する支援(観
    光者向けのインフラストラクチャーの整備、県の評
    判やイメージを改善すると思われる活動の支援
    ◎廃棄物発生者による地域での経済的支援に関す
    る取り組み
    法的枠組みに基づいて設置される公益事業共同体
    (GIP)とは別に、ビュール地下研究所を有する地域
    において、廃棄物発生者であるフランス電力株式会社
    (EDF社)、Orano社(旧AREVA社)、並びに原
    子力•代替エネルギー庁(CEA)が、当該地域をフ
    ランスのエネルギー戦略の拠点と位置付けた右下の
    表のような事業を展開しており、これにより2006年か
    ら2018年までに2,420人の雇用の創出や維持が行
    われたと報告されています。
    ◎地域開発計画
    これまでの取組に加え、2019年10月には政府と地
    方自治体、公益事業共同体(GIP)、放射性廃棄物
    管理機関(ANDRA)や廃棄物発生者等の間で、
    地層処分場の立地に必要なインフラ整備や地域経済
    の開発等に関し、地域開発計画(PDT)が調印され
    ました。
    地域開発計画(PDT)では、地層処分場が立地
    する予定であるムーズ県とオート=マルヌ県における
    地域開発の方向性として、以下の4つの分野を取り
    扱います。
    〇分野1:地層処分場の建設と操業に必要なイン
    フラ整備の実施
    〇分野2 :地層処分場近傍地域における社会•経
    済的ポテンシャルの強化
    〇分野3 :整備措置を適切に組み合わせることによ
    るムーズ県及びオート=マルヌ県の地域
    の魅力の向上
    〇分野4:これら2県が備える経済•環境の魅力を
    維持する取り組み
    分野1及び分野2に関しては、2020年から5年間
    に38のアクションが開始され、ANDRAをはじめとし
    て、GIP、国や県等から約5億ユーロ(約600億円)
    の投資が予定されています。また、分野3及び分野
    廃棄物発生者による地域振興事業例
    (木材ガス化プラント)
    (EDF報告書より引用)
    事業分類 取組主体 取組概要(事業概要)
    省エネに関する 事業の実施 EDF社 省エネ設備移行等に際しての、融資 支援、設備工事に際しての地元企業 への発注等
    バイオマス・エ ネルギーの安定 供給に関する事 業 CEA 次世代バイオマス燃料生産施設
    EDF社 木材ガス化によるコジェネレー シ ョンのパイ ロッ トプラント
    Orano 社 バイオディーゼル生産施設、バイオ マスによるコジェネ発電所
    3者共同 バイオマス利用のための森林開発 等研究の実施
    地場産業活性化 に関する事業 3者共同 地場産業である鉄工・冶金産業を 中心とした、専門能力向上の支援 (研修)、地域企業からの製品購入・ 発注等
    地域の開発支援 事業の創出や中 小企業支援 EDF社 EDF社の文書保管施設の設置、原 子カ発電所の備品・工具の整備施 設及びスペアパーツ倉庫の設置
    Orano 社 Orano社の文書保管施設の設置
    3者共同 企業融資(低利融資、金利補助)
    4に関しては、廃棄物発生者の参加を含む26のアク
    ションが予定され、地層処分場の設置許可までに内
    容の詳細化を行いつつ、中長期的に実施していく予
    定です。
    78
    フランス
    V.情報提供•コミュニケーション
    1.公衆との対話
    ポ^2ン
    2006年の放射性廃棄物等管理計画法では、地層処分場の設置許可申請に先立って、公開討論
    会を開催するよう定めています。また、地下研究所の所在サイトには、実施主体と地元住民との間
    の情報の仲介と、地下研究所の建設、操業の監視を行うことを目的として、地域情報フォローアッ
    プ委員会(CLIS)が設置されています。
    ◎地域情報フォローアップ委員会(CLIS)
    原子力発電所など原子力基本施設(INB)の地
    元には「地域情報委員会」(CLI)が設置されること
    になっていますが、地下研究所はこれに該当しないた
    め、同様な役割を担う組織としてCLISが設置されて
    います。
    CLISの設置は、1991年の放射性廃棄物管理研
    究法で定められました。2006年の放射性廃棄物等管
    理計画法でCLISの設置条項が一部改正され、2007
    年5月に改めて「ビュール地下研究所CLISJ⑶が
    発足しました。会合は少なくとも年2回開催され、処分
    に関する研究の目的、内容と成果に関する情報が提
    供されます。
    CLISは地下研究所の環境及び周辺に影響が及
    ぶような問題を討議し、ヒアリングを行うこともできます。
    国家評価委員会(CNE)や原子力安全情報と透明
    性に関する高等委員会(HCTISN)などの外部専門
    機関を活用できることになっています。
    CLISの設立及び運営資金は、国の補助金と放射
    性廃棄物の発生者からの補助金が同額となるように
    賄われています。
    ◎原子力安全情報と透明性に関する高等委員会
    (HCTISN)
    原子力安全•情報開示法のもと、原子力活動に
    関するリスク及び原子力活動による健康•環境・
    安全保障についての情報提供や議論を目的とし
    て、原子力安全情報と透明性に関する高等委員会
    (HCTISN)が設置されています。HCTISNには、
    議会(国会)の上院と下院からそれぞれ2名が委員
    として参加するほか、地域情報委員会(CLI)、環境
    団体、労働者組合、原子力事業者、学識経験者、
    原子力安全機関(ASN)、IRSNの代表から構成さ
    れています。
    ⑶ 地域情報フォローアップ委員会の構成
    ビュール地下研究所は、ムーズ、オートマルヌ両県に
    またがって設置されており、地域情報フォローアップ委
    員会(CLIS du Laboratoire Bure)には現在、以下の
    構成員が参加しています。
    〇両県の県地方長官、地域圏環境•整備•住宅局局長
    (国の出先機関の長)またはその代理人
    〇地域圏保健局の局長またはその代理人
    。上院と下院の議員の代表
    〇地域圏議会議員、両県の県議会議員
    〇関連市町村の代表
    〇環境保護団体の代表
    〇農業その他の職能団体の代表
    〇給与所得者組合組織の代表
    〇医療専門職の代表
    〇有資格者
    アドバイザとして、
    〇放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の代表
    。原子力安全機関(ASN)の代表
    も参加しています。
    地域情報フォローアップ委員会【CLIS](約90名)
    可逆性に関する専門部会(13名)
    環境・健康に関する専門部会(19名)
    処分場の位置に関する専門部会(16名)
    コミュニケーションに関する専門部会(11名)
    公開討論に関する専門部会(9名)
    地層処分に関係するリスクに関する
    専門部会(21名)
    健康の基準状態に関する専門部会(2〇名)
    連絡協議会(9名)
    地域情報フォローアップ委員会(CLIS)の組織
    (各専門部会はメンバーの重複や外部メンバーを含む)
    79
    情報提供•コミュニケーション>>>
    ◎公開討論会による意見聴取と反映
    2006年の放射性廃棄物等管理計画法に基づき、
    地層処分場の設置許可申請に先立ち、公開討論会
    が開催されました。ANDRAが申請する地層処分プ
    ロジェクトに対して、事前に国民各層からの意見が反
    映できる機会が設けられています。
    放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は「高レベ
    ル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分
    産業センター設置」(Cig6oプロジェクト)に関する公
    開討論会の開催を、2012年10月に国家討論委員会
    (CNDP)⑷に付託しました。CNDPは、公開討論
    会を2013年5月23日〜12月15日の7力月間にわたっ
    て開催しました。
    CNDPは当初、全国14カ所で集会形式の公開討
    論会を計画していましたが、第1回と第2回の討論会
    が反対派の妨害により中止を余儀なくされました。こ
    れを受けてCNDPは小規模な住民参加の会合、イン
    ターネット会議のライブ配信、ソーシャルコミュニケー
    ション等の手法を取り入れるとともに、公開討論会の
    期間を当初予定から2力月延長しました。
    また、CNDPは締め括りとして、ムーズ県及びオー
    卜=マルヌ県の8名を含む、全国から無作為に選出さ
    れた17名の市民パネルによる市民会議を2013年12
    月〜2014年2月に開催しました。市民会議終了後の
    2014年2月、CNDPは公開討論会の総括報告書を
    公表しました。インターネットなどを通じて1,508件の
    質問、497件の意見表明があったほか、専門知識を
    持たない市民であっても、対立的な意見も含む多様
    な観点での情報提供を受け、政策決定者が考慮す
    るに値する意見を示したと評価しています。
    公開討論会の結果を受けてANDRAは、2014年
    5月にCigeoプロジェクトの継続に向けた改善案を公
    表しました。改善案の内容は2016年7月に成立した
    法律に反映され、処分場の操業は、実際の処分場
    環境で安全性と可逆性を立証するための「パイロット
    操業フェーズ」から開始されることや、処分操業基本
    計画の定期レビュー等を通じた市民社会の参画機会
    を設けること等が定められました。
    2017年11月には、CNDPはANDRAの要請を受
    け、ANDRAによる情報提供や公衆参加を監督する
    保証人を任命しました。保証人は地層処分場の設置
    許可発給に先立つ公開ヒアリングに向け報告書を提
    出します。保証人の監督の下、ANDRAは2018年
    [4]国家討論委員会(CNDP)
    フランスでは放射性廃棄物処分施設を含む原子力基本
    施設(INB)など、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共
    事業や政策決定を行うにあたり、計画段階から行政・事
    業者・国民・専門家などが自由に意見を交わすために、
    公開討論会という制度があります。この企画•開催を担
    う組織として、CNDPと呼ばれる常設機関(委員25名、
    任期5年)があります。
    CNDPは、公開討論会の対象となるプロジェクト案件
    ごとに、独立・中立的な立場の専門家で構成する特別委
    員会(CPDP)を設置し、CPDPが実際の公開討論を立
    案・運営します。
    インターネット会議「異なる意見による討論」の構成
    日時 討論テーマ
    2013/ 7/11 様々な放射性廃棄物
    2013/ 9/18 処分方策(地層処分、中間貯蔵、核種分離•変換)
    2013/ 9/23 諸外国との比較
    2013/10/ 9 予防原則と可逆性
    2013/10/16 処分場作業員、地元住民及び環境に対するリス クと安全面
    2013/10/23 廃棄物の輸送
    2013/10/30 地元地域の将来の動態予測と地元開発
    2013/1 1/13 プロジェクトのコストと資金調達
    2013/1 1/20 政策決定への住民の関与
    特設ウエブサイト上の公開討論会の模様
    公開討論会用にANDRAが議論材料として準備した資料
    80
    フランス
    以降、地層処分場に関わる輸送、水循環、都市計画
    と居住環境、エネルギー供給というテーマについて、
    住民や地方及び国会議員等との協議を続けていま
    す。
    2.意識把握と情報提供
    放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、処分事業の理解を得るため、地下研究所の見学会や
    インターネットのウェブサイト、情報誌等による情報提供や、戸別訪問等による意識把握を行って
    います。また、フランス政府は、規制機関等と協力し、インターネット上の情報センターを設置し
    ています。
    ◎実施主体による広報(情報提供)活動
    放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、公衆に
    フランスの放射性廃棄物の管理に関する情報を提供
    することも、その使命の一つとしています。このため、
    ANDRA は情報誌(“Le Journal de 1’ANDRA”)を
    作成しています。配布先に応じて内容や構成を変え
    ており、ビュール地下研究所と将来の地層処分場に
    フォーカスしたバージョンは、毎号約20万部がムーズ
    県とオート=マルヌ県の全ての家庭や事業所に配達さ
    れています。これらの情報誌では、地下研究所での
    研究進拶、地層処分場の計画、イベントの告知、地
    域開発に関する住民との協議の概要、様々な専門
    家の意見等を紹介しています。これらの情報誌や、
    ビュール地下研究所の調査結果、地層処分場の計
    画を解説した冊子や動画等が、ANDRAのウェブサ
    イト(www.andra.fr)で公開されています0さらに、
    地層処分場のガバナンスや地域開発等の協議のた
    めのウェブサイト(concertation.andra.fr)を設ける
    等、インターネットを用いた情報提供や対話を活発に
    行っています。
    ANDRAは、ビュール地下研究所や地上のビジター
    センターの見学会も開催しており、訪問者数は1993年
    から2014年の間に10万人に達しました。また、住民の
    意識把握にも努めており、近年ではビュール近傍の45
    の市町村の家庭への戸別訪問などを行っています。
    ビュール地下研究所のビジターセンター
    (ANDRAウェブサイトより引用)
    情報誌 C’Le Journal de I’ANDRA”)
    (ANDRAウェブサイトより引用)
    ポ^2ン
    81
    情報提供•コミュニケーション>>>
    ◎政府、規制機関による情報提供の強イ匕
    フランス政府は、地層処分計画に関する情報提供
    を強化するため、2018年にエネルギー政策を所管す
    る環境連帯移行省、原子力安全機関(ASN)、放
    射線防護•原子力安全研究所(IRSN)による、地
    層処分計画に関するインターネット上の情報センター
    (www.cigeo.gouv.fr)を開設しました。情報セン
    ターには、地層処分計画に関する様々な情報が集約
    され、質問等を投稿できるようになっています。
    1 Centre dlnformitions et ressources a* h 4«
    I sur Cigeo 珂 IRSM
    一学 CDMHttMW CIGH] APPHOMMOK MQ tSHkCt Pt^SSt MSinUIIONN(l Q
    Faites-vous un avis sur le projet Cigeo!
    I e projn Cigio (Centro industrie| de stockage gfologiqu¢>) prevort le stockage d*
    dechete nudeaires fran^ais de haute acthite et moyenne activite a vie longue. II suecite
    des interrogotiona legitimes dons (‘opinion publique fron〇ai»e. Lc Gowernement
    Considine que lc debut sur cc projet rndrile Id lransparw»ce et I’cxiiduslivite.
    Cost lc sens de ce centre de ressoutces et d’infonnation construit avcc la panicipation
    de I’ASN ct de riRSN qui a vocation cnrichir kt ddbat. Get espacc permet dgalemcnt 6
    chacun de porter a la conneistance de rttat des elements d*app«eciat>on sur le proyet
    avant que le Gouvemement xoit amene a prendre des decisions II rasisemble des a
    present des ressaurces documentaireR prodtjites par dee promoteurs du prajet mais
    aussi des ONG, des opposents et des lanceiirs d’alerte.
    フランス政府、規制機関による
    地層処分情報センター・ウェブサイト
    82
    諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
    2020年12月現在
    スイスにおける
    高レベル放射性廃棄物の処分について

¢SZEgH^REa
IfflEigHTE^SJiEiN
回異或
嘲險
スイスの基本データ
41,291平方キロ
8,526 千人(201 8 年)
ベルン
ドイツ、フランス、イタリア、レート・ロマンシュ語
スイスフラン(1スイスフラン=115円)
600 kml
iBEIfiSIUKlj
“MWEMBWRsl
r仁、ー
興分場疑質学的候補エリア
A ・源処陶あ質・的候補或リ
& ・テ世岩盤研究所—— • •
(地下研究所)
Bern
皿NE^
※処分場の地質学的候補エリア,ノ
/ /
瞰卜値地盛研究所初
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針
a

高レベル放射性廃棄物を含む全ての放射性廃棄物を、長期安全性と回収可能性を融合させた「監
視付き長期地層処分」の概念に基づいて設計する処分場で処分することを法律で定めています。
◎原子力エネルギー政策の動向
スイスでは2003年に原子力法が制定され(2005
年2月施行)、新規原子炉の導入凍結を解除するとと
もに、原子炉の運転期限の制限を撤廃していました。
しかし、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子
カ発電所の事故後の2011年5月に、連邦評議会⑴
は「エネルギー戦略2050Jを閣議決定し、既設5基
が営業運転を終了した以降はリプレースせず、段階
的に原子力発電から撤退する方針に転換しました。
連邦議会は2012年12月に原子炉の新設を禁止する
動議を可決しています。政府が提出した同戦略に基
づくエネルギー構造改革に向けた法案は、連邦議会
で採択され、法律が2018年1月に発効しました。
原子力利用を段階的に縮小する流れを受けて、
2019年12月中旬にミューレベルグ原子力発電所が
閉鎖されました。2020年12月末現在、3カ所の原子
カ発電所において、4基の原子炉が運転中です。そ
の内訳は沸騰水型原子炉(BWR)が1基、加圧水
型原子炉(PWR)が3基です。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
スイスでは、原子力発電から発生する使用済燃料
は、各発電会社が個別に外国(フランスと英国)の
会社と委託契約を結ぶことにより、再処理を実施して
きました。しかし、原子力法、及びその後の連邦決議
により、2006年7月以降再処理を目的とした使用済燃
料の輸出を暫定的に禁止しました。さらに2018年1
月の原子力法の規定の改正により、再処理が永続的
に禁止されました。このため現在は、燃料プールで使
用済燃料を数年間冷却した後、所内または所外の中
間貯蔵施設で中間貯蔵しています。
発電所外の中間貯蔵施設には、原子力発電所を
保有する4社が出資して建設されたヴユレンリンゲン
放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL. 2001年操
業開始)があります。この施設では、使用済燃料(乾
式キャスク貯蔵)のほか、^^国での再処理に伴って
返還されるガラス固化体や他の放射性廃棄物を貯蔵
しています。
[1]連邦評議会とは?
連邦の行政府で、日本の内閣に相当します。連邦参事
会とも呼ばれており、7人の閣僚から構成され、合議制を
とります。連邦評議会の閣僚は連邦議会により選出され、
任期は4年です。大統領には首席閣僚が就任し、輪番制
により1年每に交代します。議会による連邦評議会の不
信任、連邦評議会による議会の解散などはありません。
ヴユレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)
(NAGRAウェブサイトより引用)
84
m参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
スイスの電力供給構成(発電量一 2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
スイス
2018 年 スイス 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 691.08 310.17 -326.11 675.14 576.38
◎原子力発電設備容量
合計4基296.0万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
ドイツ
■ 原子力発電所(商業用、運転中)
地下研究所
▼ 集中中間貯蔵施設
85
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
2カ所の原子力発電所(ベッナウとゲスゲン)には
所内に中間貯蔵施設があり、いずれも2008年から使
用済燃料の貯蔵を開始しました。ベツナウ中間貯蔵
施設(ZWIBEZ)は乾式キャスクを用いた貯蔵方式
であり、ゲスゲン原子力発電所の施設は湿式プール
方式です。
2016年12月末時点で、スイス国内の使用済燃料
貯蔵量は約1,377トン(ウラン換算、以下同じ)です。
外国との新規再処理委託契約が凍結されるまでに、
フランスと英国に約!,139 bンの使用済燃料が搬出さ
れましたが、ガラス固化体の形で114m3が既に返還
済みであり、ZZLで貯蔵されています。
◎処分方針
スイスでは原子力法及び連邦決議において、再処
理目的の使用済燃料の輸出を暫定的に禁止していま
した。2005年施行の原子力令では、再利用しない使
用済燃料を“高レベル放射性廃棄物”と定めており、
2018年1月の原子力法の改正により、再処理は永続
的に禁止されたことから、使用済燃料は高レベル放射
性廃棄物として取り扱われることとなります。
スイスでは、放射性廃棄物を国内で処分する場合
には地層処分を行う方針です。ただし、法的には、国
際共同処分場での処分も可能としています⑵。
地層処分場の構成要素として、主となる処分施設と
は別に、少量の代表的な放射性廃棄物を収納してー
定期間にわたりモニタリングする「パイロット施設」の
設置を原子力令で定めている点が特徴的です。この
ような処分概念は「監視付き長期地層処分」と呼ば
れています。
[2放射性廃棄物の管理義務の履行
原子力法は、次のいずれかが満たされた場合、放射性
廃棄物の管理義務が履行されたものとすると規定してい
ます。
・廃棄物が地層処分場に搬入され、モニタリング期間
と将来の閉鎖のための資金が確保されている。
・廃棄物が外国の放射性廃棄物管理施設に搬入されて
いる。
事業段階
地層処分
(GEL)
監視付き長期
地層処分(KGL)
無期限地層貯蔵
(TDL)
探査及び計画 サイト調査 サイト調査 サイト調査
建設 施設建設 施設建設 施設建設
操業及びモニタリング 廃棄物の試験的定置 廃棄物の 試験的定置 パイロット施設の モニタリング•管理 廃棄物の試験的定置
定置 定置 定置
閉鎖後 処分 主要施設の モニタリング モニタリング、保守、 修繕を伴う 無期限の貯蔵
処分
【回収可能性とは?】
回収可能性とは、処分場に定置された放射性廃棄物
を、処分場の閉鎖後も含めたさまざまな段階で回収
できるようにする考えです。
各段階での回収可能性について1
[ ]回収が容易
[ ]回収がより困難
廃棄物は存在しない
回収が非常に容易
EKRAが比較検討を行った処分概念
(EKRA放射性廃棄物の処分概念より引用)
86
◎処分方針が決定されるまでの経緯
スイスでは、原子力分野における規制が、数多くの
法令に分散していたことなどを理由として、原子力分
野の法制度の刷新の必要性が認識されていました。
1998年に連邦評議会は「エネルギー対話」ワーキン
ググループを設置し、新しい原子力法の制定に向け
た検討•を開始しました。このワーキンググループには、
関係官庁やNAGRAに加えて、原子力発電事業者
や環境団体も参加し、原子力発電の継続や再処理
の実施についての議論が行われました。同ワーキング
グループは、放射性廃棄物管理の問題に関して、廃
棄物の回収可能性に関する検討を継続することを勧
告しました。
その後、連邦の環境•運輸•エネルギー ・通信省
(UVEK)は、1999年に「放射性廃棄物の処分概
念に関する専門家グループ」(EKRA)を設置し、技
術と社会の両面から問題を検討•勧告するよう依頼し
ました。EKRAは2000年に最終報告書をまとめ、「監
視付き長期地層処分」という概念を提案し、この概念
で放射性廃棄物を処分することを法律で明確化する
よう勧告しました⑶。
EKRAは、従来の地層処分(GEL) ー保守を行
なわず、回収の意志を持たずに、放射性廃棄物を生
物圏から永久に隔離する一概念のほか、無期限の
地層貯蔵(TDL)といった概念を比較検討しました。
TDLについては、長期の安全評価に合致しないと結
論付け、GELにモニタリングの概念を積極的に組み
込んだ「監視付き長期地層処分」概念(KGL)を考
案しました。
その後、連邦評議会は、全ての放射性廃棄物を
「監視付き長期地層処分」概念で処分する方針を
立法化するために、原子力法制の改正準備を進めま
した。新たな原子力法が2003年に制定され、2005
年の同法の施行に合わせて、新たな原子力令を制定
し、「監視付き長期地層処分」の方針が法律で明確
イ匕されました。
◎安全性の確認と知見の蓄積
スイスでは、1978年に連邦議会の「原子力法に関
する連邦決議」により、原子力施設の建設許可及び
運転許可の前提条件として、施設を建設しようとする
者に対して、連邦評議会(内閣に相当)が発給する
[3] EKRAの勧告
2000年のEKRAの報告書の主な勧告は、次の通りです。
•放射性廃棄物の管理に関する公衆の議論を奨励すべ
きである。
•全ての放射性廃棄物の処分概念として、地層処分を
原子力法で規定すべきである。処分事業の実施者に
対して、「監視付き長期地層処分」概念の具体化を要
求すべきである。
・廃棄物管理が発電事業者から財政的に独立して行わ
れるようにすべきである。
•オパリナス粘土(90ページの写真参照)は、監視付
き長期地層処分にも適している。
•国際共同処分は、スイス自身で処分の問題を解決す
るための選択肢とはならない。
•処分プロジェクトのスケジュールを設定し、定期的
にチェックすべきである。



チューリッヒ北部のベンケンで採取されたオパリナス粘土の
ボーリングコアで見つかったアンモナイトの化石
(写真提供:NAGRA)
87
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
概要承認の取得が義務付けられました。既存の原子
カ発電所の運転の継続や新規発電所の認可条件と
して、放射性廃棄物が確実に処分可能であることが
条件とされました。
この「処分の実現可能性の実証」に向けて、連邦
政府は、実際の地質条件に基づいた、地層処分の
実現可能性を評価する「保証プロジェクト」の実施を
求め、NAGRAは1978年にその調査を開始しました。
このプロジェクトではスイス北部の結晶質岩に注目し
て検討が進められました。NAGRAが1985年に作成
した「保証プロジェクト」報告書を受けて、1988年に
連邦評議会が示した評価では、地層処分場の建設
可能性や安全性は確認されたものの、必要な大きさ
を備えた母岩を見つけ出せるかどうかについては立
証できていないとし、堆積岩も調査対象とすることを
要求しました。
NAGRAは、既存の地質情報に基づきスイス全土
から絞り込む形で粘土質を多く含む岩種に着目し、現
地調査を行う第一優先区域として、1994年にはチュー
リッヒ州北部を選定しました。連邦当局の承認を得
て、選定区域での三次元弾性波探査を行うとともに、
1998年からは同区域にあるベンケンといつ場所でボー
リング調査も行われました。
2000年になると、環境•運輸・エネルギー ・通信
省(UVEK)が設置した放射性廃棄物処分概念専
門家グループ(EKRA)が「監視付き長期地層処分」
(KGL)という概念を提案します。
EKRAの勧告を受け、処分実施主体である
NAGRAもKGL概念に基づく処分場システムの検
討と安全評価を実施しました。2002年に取りまとめた
「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書にお
いて、KGL概念に基づいた高レベル放射性廃棄物
の地層処分により長期安全性が確保できる見通しを
明らかにしました。規制当局の評価が行われた後、
2006年に連邦評議会は処分の実現可能性の実証
結果を承認する決定を行いました。
なお、NAGRAは上記の報告書において、今後の
調査対象をチュルヒャー ・ヴァインラント(チューリッヒ
州北東部)のオパリナス粘土に絞ることを提案してい
ましたが、連邦評議会はその提案を退け、都市計画
法に基づく特別計画を策定して地層処分場のサイト
選定を進めることにしました。
1978年 1985年 1988年
1994年 2002 年 2006 年
「処分の実現可能性実証プロジェクト」
に対する政府決定
「処分の実現可能性実証プロジェクト」
7地点でのボ|リング調査
クリスタリン・I
処分場立地の実現
可能性実証の調査
オパリナス粘土と
モラッセ堆積岩の調査
政府決定
保証プロジェクト
スイス北部の
結晶質岩の調査
スイス北部の
堆積岩の調査
国内処分の実現可能性実証のための調査開始
処分の実現可能性実証プロジェクトに至る経緯
88
II-地層処分計画と技術開発
1.処分計画
ポ^2ン
スイスでは、多重バリアシステムにより長期間にわたって放射性廃棄物を人間環境から隔離する
という通常の地層処分概念に、回収可能性の考え方を取り入れた処分概念である「監視付き長期
地層処分」が、2005年2月に施行された原子力法及び原子力令で採用されています。また、国内
での処分を原則としていますが、他の国との国際共同処分も可能とされています。2008年から国
内での処分場サイトの選定が開始されています。
◎地層処分対象の放射性廃棄物
スイスでは、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル
放射性廃棄物用の2カ所の処分場を建設する予定
ですが、地質条件等によっては、全ての放射性廃棄
物を対象とした処分場を1カ所に建設する可能性もあ
ることが特別計画「地層処分場」というプロジェクト
確定手続きで定められています。
高レベル放射性廃棄物用の地層処分場では、英
国とフランスに委託した再処理に伴って返還されるガ
ラス固化体とともに、残りの使用済燃料を処分します。
また、ガラス固化体とともに返還される長寿命中レベ
ル放射性廃棄物(TRU廃棄物⑷)も、高レベル放
射性廃棄物用の処分場で処分する予定です。
ガラス固化体は、鋼鉄製の容器(オーバーパック)
に封入して処分する計画です。スイスでは、ガラス固
化体を収納している容器をフラスコと呼び(日本では、
これをキャニスタと呼んでいます)、それをオーバーパッ
クした容器全体をキャニスタと呼んでいます。
使用済燃料の場合は、燃料集合体の形状のまま、
鋼鉄製の容器に収納•封入して処分する計画です。
NAGRAが2016年に公表した見積りによると、国
内4基の原子炉を60年間、1基の原子炉を47年間
運転した場合、約2,932トンの使用済燃料が発生し、
このうち、2016年時点で既に約!,139トンが再処理さ
れており、残りの約1,793トンは直接処分する見込み
です。NAGRAは、処分することになる量について、
ガラス固化体が398m\使用済燃料が8,995m3と評
価しています。
ガラス固化体の処分のためのキャニスタ



⑷TRU廃棄物
TRU廃棄物は、再処理施設やMOX燃料加工施設など
から発生する長半減期の超ウラン元素(ウランより大き
な原子番号を持つ元素)を含む廃棄物のことで、「超ウ
ラン」の英語,Trans-uranic,の頭文字を取った名前が付
いています。その管理については高レベル放射性廃棄物
に準じた扱いが必要となります。
89
地層処分計画と技術開発>>>
◎処分場の概要(処分概念)
NAGRAは、高レベル放射性廃棄物用の地層処
分場は、スイス北部の地下に分布する堆積岩「オパリ
ナス粘土」⑸を母岩とする地層がある、深さ400~
900mの場所に設置することを検討しています。
NAGRAが「処分の実現可能性実証プロジェクト」
で検討した地層処分場の概念を右図に示します。ス
イスでは「監視付き長期地層処分」概念に基づく処
分場で処分する方針です。このため、地下には、高
レベル放射性廃棄物の処分エリア、長寿命中レベル
放射性廃棄物の処分エリアに加えて、パイロット施設
が設けられます。
パイロット施設は、少量の廃棄物を処分することに
より、処分後に生じる変化や挙動をモニタリングし、予
測モデルの正しさを確認したり、想定外の悪影響を早
期に検出できるようにする目的で設置します。パイロッ
卜施設の設置は原子力令での要求事項となっていま
す。
ガラス固化体または使用済燃料を収納したキヤニス
タは、坑道内で、ベントナイトブロック製の台座の上に
横置きに定置します。残った空間を、粒状化したベン
トナイトで埋め戻す方法を検討しています。
◎処分場の建設予定地の地質構造
スイスでは、原子力令に基づき、地層処分場の建
設地の選定は、都市計画法で制度化されている特
別計画(ドイツ語でザッハプランといいます)というプロ
ジェクト確定手続きで段階的に進められています。こ
の手続きは2008年から開始されており、2011年11月
に、高レベル放射性廃棄物の地層処分場のための
候補地として、3カ所の地質学的候補エリアが確定
し、3段階からなるサイト選定プロセスの第1段階が
終了しました。サ仆選定プロセスの詳細については、
「IV・処分地選定の進め方と地域振興」の「1.処分
地の選定手続き•経緯」において説明しています。
いずれの地質学的候補エリアでも、地下にオパリナ
ス粘土の地層の存在が確認されています。堆積岩の
一種であるオパリナス粘土は、安定性や低い透水性
といった特性から地層処分場の母岩としての適性が
高いとされています。
[5]オパリナス粘土とは…
オパリナス粘土は、約1億8,000万年前のジュラ紀に
形成された堆積岩の一種です。「オパリナス」という言葉
は、この地層から発掘されるアンモナイトの殻が、オパー
ルのように光彩を放つことから採られています。
オパリナス粘土層内での高レベル放射性廃棄物の処分場と
キャニスタの定置イメージ
(出典:NAGRA「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書(2002)、
NAGRA放射性廃棄物管理プログラム(2016))
オパリナス粘土層の分布(例)
高レベル放射性廃棄物の処分場の3カ所の地質学的候補エリア
90
◎処分事業の実施計画
2005年2月に施行された原子力法及び同令におい
て、原子力発電事業者は「放射性廃棄物管理プログ
ラム」を5年ごとに作成し、規制機関の承認を受ける
ことが義務づけられています。このプログラムは、廃棄
物の種類や量、処分場建設の実施計画等を記述する
ものです。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
は、放射性廃棄物管理プログラムを2008年10月に連
邦政府へ提出し、連邦評議会は2013年8月にこれを
承認しました。
連邦評議会はこの際に、同プログラムに沿って実施
される研究開発計画、及び放射性廃棄物管理費用の
見積りに関する報告書の提出に合わせ、次回の更新
版のプログラムの提出を2016年にするようNAGRAに
要求したことを受けて、NAGRAは2016年12月に更
新版の放射性廃棄物管理プログラムを提出しました。
2016年の廃棄物管理プログラムでは、サイト選定手
続きが2031年に終了すると見込んでいます。地下特
性調査施設の建設及び調査の実施後、処分場の建
設を開始し、2060年頃に操業が開始される予定です。
■ HAA (高レベル放射性廃棄物)処分場 ・ SMA (低中レベル放射性廃棄物)処分場



2.研究開発•技術開発
ポ^2ン
全ての放射性廃棄物の処分責任を有する放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、高レベル
放射性廃棄物処分の国内における実現可能性及び安全性を実証することを目的として、国内外の
研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関との協力により、地下研究所における地質調
査、安全評価等の研究を進めています。
◎研究機関
スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分に関す
る研究は、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
が中心となり実施されています。NAGRAは、地表調
査、ボーリング調査、地下研究所での研究活動など
を通して、処分場のサイト選定、安全評価、処分プロ
ジェクトに必要なデータの収集及び評価、処分場及
び人工バリアの設計、操業過程の計画立案、性能評
価用のデータ及びモデルの検証などを行っています。
またこの他に、処分プロジェクトの計画の基盤となる
91
地層処分計画と技術開発>>>
放射性廃棄物の特性評価及びインベントリの作成な
ども行っています。NAGRAの研究は、スイスの国立
研究機関であるパウル・シェラー研究所(PSI)との
緊密な協力をはじめとして、大学、研究機関及び民
間機関との協力により進められています。
◎研究計画
原子力令(2005年制定)において5年毎の策定が
義務づけられている「放射性廃棄物管理プログラム」
について、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
は2016年12月に、第2回目のプログラムを公表しまし
た。このプログラムの中で、処分事業の進挑の各段階
で必要となる研究•開発事項などをまとめています。
原子力令の制定以前も、NAGRAは、高レベル放
射性廃棄物の処分研究に関する計画書を作成して
います。1995年にNAGRAは、地質調査計画及び
その実施スケジュール等も含めた「高レベル放射性
廃棄物処分:目的、戦略及びタイムスケール」を公表
しました。NAGRAのこれまでの研究成果は、2002
年末に連邦評議会に提出された「処分の実現可能
性実証プロジェクト」報告書に反映されています。ま
たNAGRAは、2016年12月に「スイスにおける放射
性廃棄物処分のための研究•開発•実証計画」を
作成しています。同計画は「処分の実現可能性実証
プロジェクト」及び連邦政府のプロジェクトに対するレ
ビューから明らかになった課題、さらに今後5〜10年
に行うべき作業計画をまとめています。同計画につい
ては、「放射性廃棄物管理プログラム」の次回更新に
合わせて、2021年の改訂が予定されています。
NAGRAが実施しているグリムゼル試験サイトのツァーの様子
(NAGRAウェブサイトより引用)
nagra.
Technical
Report 16-02
The Nagra Research, Development
4nd Demonslr«lk>n IRD&DI Plan
for the Oisp«Ml ol Radio»cthf»
Watte In Switzerland
Dvcwntor )0U
NAGRAの研究報告書
(写真提供:NAGRA)
NAGRA ^2016年に作成した、
研究・開発・実証計画に関する報告書
モン・テリ岩盤研究所での調査の様子
(写真提供:NAGRA)
92
◎地下研究所
スイスにおける地下研究所は、結晶質岩を対象と
したグノムゼル試験サイトと堆積岩のオパリナス粘土を
対象としたモン•テリ岩盤研究所の2カ所があります。
これらの地下研究所では、高レベル放射性廃棄物の
安全な処分を実施するために岩盤特性の研究などが
進められています。
[グリムゼル試験サイト]
この研究所は、1984年に放射性廃棄物管理共同
組合(NAGRA)によって設置されました。同サイトで
の調査活動には、ドイツ、フランス、英国、スペイン、ス
ウェーデン、フィンランド、チェコ、日本、韓国、米国、
カナダ、欧州連合等の機関が参加しています。現在
は長期的な実験が中心となっており、実スケールでの
高レベル放射性廃棄物の定置概念の実証、及び人
エバリアや周囲の岩盤における放射性核種の移行に
関する実験など、処分場と同様の条件下での定置概
念の現実的な実証に主眼が置かれています。



[モン•テリ岩盤研究所]
この研究所は、1996年に各国関係機関による国際
共同プロジェクトとして、スイス国立水文学•地質調
査所が中心となる形で設置されました。NAGRAは、
オパリナス粘土に関する理解を深めるためのデータ
取得を目的とした研究を実施しています。NAGRAが
参加している主な研究としては、オパリナス粘土での
放射性核種やガスの拡散、微生物の活動、母岩へ
の熱の影響を調べる研究などがあります。
モン・テリ岩盤研究所の地下坑道
(NAGRA提供資料より引用)
93
処分事業の実施体制と資金確保»>
HI.処分事業の実施体制と資金確保
.実施体制
ポ^2ン
a
スイスにおける高レベル放射性廃棄物の処分に係る行政機関は、連邦評議会、環境•運輸•エ
ネルギー •通信省(UVEK)、UVEKが所轄する連邦エネルギー庁(BFE)、及び連邦原子力安
全検査局(ENSI)です。高レベル放射性廃棄物の処分場に関する事業許可は、UVEKが発給し
ます。BFEはサイト選定手続きの監督責任を負っています。ENSIは放射性廃棄物管理共同組合
(NAGRA)に対し、原子力安全及び放射線防護の観点から直接的な規制•監督を行い、処分の
安全性確保のための指針を策定しています。NAGRAは、電力会社及び連邦政府などの共同出資
によって設立されています。
◎実施体制の枠組み
スイスにおける処分に係る実施体制は、右図のよう
になります。処分に関わる連邦の行政機関には、連
邦評議会、環境・運輸•エネルギー•通信省(UVEK)
とUVEKが所轄する行政機関である連邦エネルギー
庁(BFE)、連邦原子力安全検査局(ENSI)があ
ります。ENSIは、前身の監督機関の原子力施設安
全本部(HSK)カヾBFEから独立し、2009年1月に
発足しました。高レベル放射性廃棄物の処分場の建
設及び操業許可については、UVEKが発給します。
UVEKは、エネルギーや環境に関する連邦省であり、
UVEKの所轄する行政機関であるBFEはサイト選
定手続きの監督•責任官庁です。ENSIは、原子力
安全と放射線防護の観点から直接的な規制•監督
を行い、また、放射性廃棄物処分の安全確保のため
の指針を策定しています。
放射性廃棄物管理ワーキンググループ(AGNEB)
は連邦評議会及びUVEKに代わり、廃棄物管理に
関する専門家の見解などをまとめる役割を果たしてい
ます。連邦評議会、UVEK、ENSIに対する諮問機関
としては、処分場諮問委員会、地層処分場専門家グ
ループ(EGT)、原子力安全委員会(KNS)の3つが
あります。
◎実施主体
1959年の旧原子力法は、原子力施設の所有者に、
操業許可が取り消された原子力施設におけるすべて
の危険物の除去を義務づけていました。また医療・
産業•研究分野から発生する廃棄物については連
邦政府が責任を有しています。この責務を果たすた
めに、スイスの電力会社と連邦政府は、1972年に放
r規制行政機関
地層処分場
専門家グループ
(EGT)
と見
り解


処分場
諮問委員会
原子力
安全委員会
(KNS)
放射性廃棄物
管理ワーキング
グループ
(AGNEB)


連邦
エネルギー庁
(BFE)
連邦評議会
環境・運輸・
エネルギー•
通信省
(UVEK)
連邦原子力
安全検査局
(ENSI)
安全性に関する側面の審査と評E
地層処分実施関連機関
概要承懿(フロジhクト¢基本的特徴等を定めた許可J¢発給
処分場¢建設・操業許可の発給
ザイト選定手続き¢監督責任
電力会社5社
(AXPO社、ゲスゲン•デニケン
原子力発電会社、ライプシュタッ
卜原子力発電会社、BKW!ネル
ギー・土、Alpiq 社)
放射性廃棄物
管理共同組合
(NAGRA)
直接的な規制•監督の流れ
処分事業の実施体制
94
射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)を設立しまし
た。2005年2月に施行された原子力法でも、放射性
廃棄物処分の責任は発生者が負うことが規定されて
います。
◎安全規則•••処分の安全性確保のための指針
原子力安全に関する規制機関である連邦原子力
安全検査局(ENSI)は、2009年4月に、処分の安
全性についてENSI-G03「地層処分場の設計原則と
セーフティケースに関する要件」という指針を定めて
います。この指針では、地層処分場においては、将
来の世代に過大な負担や義務を負わせることなく、放
射性廃棄物から放出される放射線から人間及び環
境が長期的に保護される方法で、放射性廃棄物を処
分しなければならないという防護目標が設定されてい
ます。そして、右の表の2つの定量的な防護基準が
設定されており、安全評価においてこの防護基準が
1〇〇万年までの期間にわたって遵守されなければなら
ないとされています。
また、地層処分場のセーフティケース⑹について
は、概要承認及び建設、操業、閉鎖の許可手続の
各段階において、許可申請者が地層処分場の操業
段階、閉鎖後段階のそれぞれに対応するセーフティ
ケースを提出することが求められています。
地層処分場の閉鎖後の期間に係る防護基準
防護基準1 将来の変遷のうち、発生確率が高いと分類された ものについては、放射性核種の放出による個人線 量が年間〇.ImSvを上回ってはならない。
防護基準2 将来の変遷のうち、発生確率が低いと分類された ものについては、放射線による追加的な健康リス クが年間1〇〇万分の1を上回ってはならない。
(出典:ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」)
[6Iセーフティケース
ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケー
スに関する要件」 では、セーフティケースとは、地層処分
場の長期的な挙動とその放射線学的影響に関する安全評
価に依拠した、閉鎖後の地層処分場の長期安全性に関す
る総合的な評価のことと定義されています。
95
処分事業の実施体制と資金確保»>
◎処分に関わる法令の体系図
原子力 損害賠償 ーー 原子力賠償責任法 —— 原子力賠償責任令

96
◎処分の法制度
内 容
事業規制 2005年2月に施行された原子力法では、地層処分場の立地場所及びプロジェクトの基本事項などに関する 概要承認、地層処分場設置に向けて実施される立地の可能性のある地域での地質などの調査、及び建設、操業、 閉鎖について、連邦政府のみが許可発給を行うこととしてその手続等を規定しています°また同法では、原子力 施設を操業または廃止する者は、施設から生じた放射性廃棄物を自らの費用で安全に管理する義務を負うこと、 この管理義務には、処分に関する研究、地球科学的調査及び地層処分場の設置などの準備作業なども含むことが 規定されています。さらに、廃棄物の管理義務を負う者は、廃棄物管理プログラムを作成•提出することが求め られています。
安全規制 原子力法及び原子力令では、原子力安全に関する監督官庁は連邦原子力安全検査局(ENSI)であると規定さ れています°また、同法では、特に規定がない限りにおいて、放射線防護法の規定を適用すると規定しています。 放射線防護法は、電離放射線による危険から人及び環境を保護する目的で制定された法律で、連邦評議会が個 人の被ばく線量限度を設定できることが規定されています°放射性廃棄物に関しては、適切な方法で保管、密封、 固化処理、集積などを行い、処分施設などへの引き渡しなどを行うまでは監督官庁の許可を受けた場所に貯蔵す ることが義務づけられています。 また、原子力令では、地層処分場のための特別設計原則をガイドラインとして定める責任を有することが規定 されており、放射性廃棄物処分場の安全性について、ENS!が安全性の確保のために適用される目標を定めた指 針を策定しています°
資金確保 放射性廃棄物管理のための資金確保については、原子力法において、廃棄物発生者が処分に必要な資金を負担 しなければならないと規定されています。また、放射性廃棄物管理基金の設立を含めた資金確保の方法などを細 かく規定した廃止措置及び廃棄物管理基金令が制定されています。この基金では、原子力発電所の閉鎖後に必 要となる放射性廃棄物及び使用済燃料の管理を賄う費用が対象とされています。この基金の管理は、連邦評議 会によって任命された委員で構成される管理委員会が行うこととなっています°管理委員会の独立性保持の観 点から、2016年1月より環境・運輸・エネルギー ・通信省(UVEK)や連邦原子力安全検査局(ENSI)の職 員による委員の兼任は禁止されています。なお、原子力発電所の閉鎖前に発生する放射性廃棄物管理に関する 費用は、廃棄物発生者である電力会社等によって、放射性廃棄物管理に責任を有する放射性廃棄物管理共同組合 (NAGRA)などに支払われています。
環 境 原子力法及び原子力令では、放射性廃棄物の処分場の概要承認及び建設許可申請時に環境影響評価報告書を 提出することが規定されています。 環境保護法は、人間、動物、植物、これらの生活共同体及び生活圏の保護、肥沃な大地の維持、そして予防の観 点から有害または負担となりうる影響を早期に抑制することを目的として制定されています。環境に著しい負 担がかかるおそれのある施設の計画、建設、または変更を決定する前に、提出される報告書に基づいて環境影響 評価を行うことが規定されています。環境保護法は、放射線学的な影響については、放射線防護法が適用される と規定しています。 環境影響評価令では、環境影響評価を行う必要のある施設、複数段階における調査の実施、予備調査の実施な どについての規定がなされています。
原子力責任 原子力損害賠償に関する法令として、原子力賠償責任法及び原子力賠償責任令が制定されています。原子力賠 償責任法において、原子力損害に対する3〇年間の補償期間の設定など、原子力施設の所有者の原子力損害に関 する責任、及び連邦政府による原子力損害基金の設立などについての規定がなされています。原子力賠償責任令 では、連邦政府が賠償義務者の義務を超える損害などのためにかける保険に関し、賠償義務者から徴収する保険 料金額などが規定されています。なお、原子力賠償責任法では、原子力法による規制の対象ではなくなった閉鎖 後の地層処分場から損害がもたらされた場合、連邦政府が損害を補償することが規定されています。
97
処分事業の実施体制と資金確保»>
2.処分事業の資金確保
a
ポ^2ン
廃棄物発生者である電力会社及び連邦政府は、処分実施主体の放射性廃棄物管理共同組合
(NAGRA)の活動費用を負担しています。また、電力会社は原子力発電所の運転中に係る廃棄
物管理に必要となる費用を賄うため、引当金を計上しており、原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理
費用については、放射性廃棄物管理基金への拠出金を負担しています。
◎処分費用の負担者
スイスでは、放射性廃棄物の発生者が処分費用を
負担しなければならないことが2005年2月に施行され
た原子力法で定められています。廃棄物発生者であ
る電力会社及び連邦政府は、放射性廃棄物管理共
同組合(NAGRA)の放射性廃棄物管理に関する
調査・研究活動などに必要な費用を負担しています。
◎処分の資金確保制度
スイスでの放射性廃棄物管理の資金確保では引
当金制度と拠出金制度が併用されています。
原子力発電所の運転中に係る放射性廃棄物管理
費用については、2005年2月に施行された原子力法
により、原子力発電所の所有者が引当金を計上する
ことにより資金確保しています。
原子力発電所の運転停止後の放射性廃棄物管
理については、必要な費用を賄うために設立された
放射性廃棄物管理基金に対して、電力会社が毎年
拠出金を支払う義務を有しています。2000年3月に
放射性廃棄物管理基金令が制定され、原子力発電
所の閉鎖後の廃棄物管理活動全般に必要な費用を
基金化する制度が確立しました。この政令は2007年
12月に、原子力施設の廃止措置基金に関する政令
と一本化され、廃止措置・廃棄物管理基金令となり
ました。放射性廃棄物管理のための基金の積立対
象となるのは、原子力発電所の閉鎖後に必要となる
右の費用です。
この基金は、連邦評議会が設立した管理委員会
によって管理され、この委員会が費用の想定額につ
いての決定も行います。基金への払い込みは、2001
年末から始まっており、2019年末における放射性廃
棄物管理基金の残高は、約57億6,800万スイスフラン
(約6,630億円)です(1スイスフラン=115円として
換算)。2018年末の残高から約7億900万スイスフラン
電力の消費者
•拠出金額を決定
払い込み
放射性廃棄物管理基金
引当金を計上
スイスにおける資金確保の仕組み
a.廃棄物の輸送及び処分
b・使用済燃料の輸送及び処分
c. 処分場の50年間のモニタリング段階
d. 処分場の設計、計画、計画管理、建設、操業、閉鎖及び
監視
e. 放射線防護措置及び作業被ばく防止措置
f. 官庁による許認可及び監督
g・保険
h•管理費用
98
(約815億円)増加していますが、これは2018年の
投資による収益がマイナスであったのが、2019年は収
益が大幅に上昇し、プラスになったことによるものです。
基金への拠出金および引当金は、5年に一度行わ
れる放射性廃棄物の費用見積りに基づいて決定され
ます。直近では原子力発電事業者の団体であるスイ
スニュークリアが2016年に費用見積りを発表し、その
後、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び会計の専
門家が評価しました。2016年の費用見積りは、2017
年から2021年までの拠出金および引当金の額を決
定する根拠となります。次回の費用見積りは2021年
に実施される予定です。
放射性廃棄物の発生者が負う管理義務に基づい
て、NAGRAの事業費用は、現在、発生者からの引
当金に基づく処分場へのプロジェクトへの支出により
賄われています。スイスでは2019年にミューレベルグ
原子力発電所が閉鎖されており、原子力発電所の運
転停止後におけるNAGRAの活動費用は「放射性
廃棄物管理基金」からの払戻金で賄われることになり
ます。
◎処分費用の見積額
スイスの原子力発電事業者は、高レベル放射性廃
棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞ
れ1カ所ずつ計2カ所に建設する場合、放射性廃棄
物の処分費用の総額は約191.8億スイスフラン(約2
兆2,100億円)になると2016年時点で見積っていま
す。処分費用見積額の内訳は、再処理に係る費用
カヾ約27.6億スイスフラン(約3,200億円)、中間貯蔵
に係る費用が約29億スイスフラン(約3,340億円)、
輸送に係る費用が約14億スイスフラン(約1,610億
円)、低中レベル放射性廃棄物用処分場の費用が約
44.2億スイスフラン(約5,080億円)、高レベル放射性
廃棄物用処分場の費用が約76.9億スイスフラン(約
8,840億円)です。また、スイスの原子力発電事業者
は高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄
物用の処分場を同じ場所に建設する場合について
も、放射性廃棄物の処分費用を算出しており、総額
は約183.6億スイスフラン(約2兆1,100億円)と見積っ
ています。その内訳は、再処理、中間貯蔵、輸送に
係る費用については処分場をそれぞれ1カ所ずつ計
2カ所に建設する場合と同額で、低中レベル放射性
廃棄物用処分場の費用は約41.5億スイスフラン(約
4,770億円)、高レベル放射性廃棄物用処分場の費
用は約71.5億スイスフラン(約8,220億円)となってい
ます(1スイスフラン=115円として換算)。
2016年の原子力発電事業者の見積りに対しては、
2018年4月には、環境・運輸・エネルギー •通信省
(UVEK)が、原子力発電事業者が2016年に見積っ
た高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物
用の処分場を同じ場所に建設する場合よりも、約24.4
億スイスフラン(約2,810億円)多い137.4億スイスフラン
(約1兆5,800億円)を高レベル放射性廃棄物と低中
レベル放射性廃棄物に関する将来の処分費用とする
ことで決定しました。この費用は、高レベル放射性廃
棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞ
れ1カ所ずつ計2カ所に建設する場合のみを想定した
もので、UVEKは同じ場所に建設するシナリオは想定
していません。
・再処理 •中間貯蔵 ・輸送
•低中レベル放射性廃棄物処分場
単位(億スイスフラン)
・高レベル放射性廃棄物処分場
•低中レベル放射性廃棄物処分場と
高レベル放射性廃棄物処分場の合計
※四捨五入のため合計は合わない
計2カ所に建設 (事業者の見積り) 計2カ所に建設
(事業者の見積り) (UVEKの決定)
処分費用の見積額内訳(高レベル放射性廃棄物用処分場と
低中レベル放射性廃棄物用処分場を建設)
(出典:NAGRA放射性廃棄物管理プログラム(2016))
99
処分地選定の進め方と地域振興>>>
IV.処分地選定の進め方と地域振興
1.処分地の選定手続き・経緯
ポ^2ン
スイスにおける放射性廃棄物処分場のサイト選定は、連邦政府が策定した特別計画「地層処分
場」で取り決めた3段階のプロセスで進められています。特別計画の手続きを進めていく中で、地
層処分プロジェクトの具体的な姿を定めていき、最終的にプロジェクトの基本的事項を定める「概要
承認」の内容を決定します。2018年11月に第2段階が終了し、低中レベルと高レベル廃棄物用処
分場ともに、3つの地質学的候補エリアが特定されています。処分地は連邦評議会が概要承認の発給
(許可)を受けて確定しますが、一定数の国民の発案があった場合には国民投票の対象となります。
◎処分地選定の進め方…プロジェクト確定手続き
スイスの連邦評議会は、原子力令(2005年2月施
行)において、「放射性廃棄物処分に関する拘束力
のある目標及び基準を“特別計画”で定める」と規定
しています。特別計画とは、地域と環境に重大な影
響を及ぼすプロジェクト一例えばエネルギーインフラや
交通網など一を確定する手続きとして都市計画法で
定められている手続きです(ドイツ語ではザッハプラン
といいます)。
特別計画は「方針部分」と「実施部分」から構成
されます。特別計画「地層処分場」の方針部分で
は、サ仆選定の手順と目標スケジュールのほか、プロ
セスに関わる連邦政府や州と自治体、隣接諸国及び
実施主体の役割についても事前に取り決めます。残
りの実施部分は、方針部分で定めたプロセスの実施
成果を取り込んでいくことにより、完成させることになり
ます。完成した特別計画全体は、選定されたサイトで
の地層処分プロジェクトの許認可手続きの最初のもの
となる「概要承認」を申請できる条件の一つです。
「概要承認」⑺は、原子力法に基づく原子力施設
の導入に際しての最初の許認可手続きであり、スイス
特有のものです。地層処分場の概要承認では、立地
場所やプロジェクトの基本事項などを定めることになり
ます。連邦評議会が概要承認を発給しなければ、実
施主体は建設許可申請をおこなうことができません。
連邦評議会が発給する概要承認が有効となるに
は、連邦議会の承認が必要です。なお、議会の承認
から100日以内に5万人の署名が集まれば国民投票
にかけることができ、これは「任意の国民投票」と呼
ばれます。その場合、可決には過半数の賛成が必要
となっています。
特別計画「地層処分場」(方針部分)の策定 2006〜2008年
特別計画「地層処分場」の実施部分
I 1
第1段階:複数の地質学的候補エリアの選定
方針部分で定められた基準に基づいてNAGRAが“地質
学的候補エリア”を複数提案し、官庁の審査や意見聴取を
踏まえ、連邦評議会が承認する。
第2段階:2力所以上の候補サイトの選定
複数の“地質学的候補エリア”内から、地上施設の設置案
と組み合わせた“候補サイド’をNAGRAが提案し、官庁
の審査や意見聴取を踏まえ、連邦評議会が承認する。
第3段階:処分サイトの決定と概要承認
NAGRAは弾性波探査、ボーリングなどの地球科学的調査を
実施(必要な場合)し、処分サイトの提案内容、環境影響評
価の報告書、安全評価報告書等を含む概要承認を申請する。
連邦評議会が「概要承認」を発給
地層処分場のサイト選定と許認可プロセスの流れ
(特別計画「地層処分場」、NAGRA提供資料、BFE資料、放射性廃棄物管理プログラムより作成)
2008-2011年
2011-2018¢
2018年〜
2031年頃
2032年以降
2045〜2048年頃
2060年頃
[7]概要承認
原子力法に基づき、原子力施設の導入プロジェクトで
行われる最初の許認可手続きです。
1959年制定の旧原子力法では、建設許可と操業許可の
2段階の手続きが定められていましたが、概要承認はそ
れらに先立つ手続きとして、1978年の連邦議会の「原子
カ法に関する連邦決議」に盛り込まれていました。
2005年施行の原子力法において、概要承認の手続きが
正式に組み込まれました。旧原子力法の制度では、原子
カ施設に関する一部の許可発給権限が州にも付与されて
いましたが、新たな原子力法に基づく制度では、連邦に
一元化されました。ただし、連邦評議会が原子力施設に
関する許可を発給する際には、関係する州の懸念をプロ
ジェクトが極度に制限を受けない範囲で考慮するよう規
定されています。
100
◎特別計画の空間概念
特別計画では処分場に関する空間概念が右図の
通り示されています。
特別計画第1段階で選定される“地質学的候補エ
リア”は、地質学上の要件を満たし、そのエリアの地
下に処分場の建設できる可能性がある候補地の幅
広いエリアです。地質学的候補エリアを包み込む“計
画範囲”は地上施設が建設される可能性のある領
域です。“サイト地域”は地質学的候補エリアに所在
する自治体、計画範囲の境界内部に全体またはー
部が含まれる自治体、その他関係する自治体から構
成されます。これらの自治体の代表や住民は「地域
会議」へ参加します。地域会議の活動については、
rv.1.公衆との対話」(1〇7ページ)にまとめています。
◎特別計画『地層処分場』の策定
地層処分場に関する特別計画は、原子力令に基
づき連邦政府が策定します。方針部分の策定作業
は、2006年3月から連邦エネルギー庁(BFE)を中
心として進められ、州や自治体に加え、ドイツ、オースト
リアなどの近隣諸国からも意見聴取がなされました。
特別計画「地層処分場」は、作業開始から約2年を
かけた2008年4月に策定に至りました。
特別計画「地層処分場」では、サイト選定に関わ
る連邦政府や州と自治体、隣接諸国及び実施主体
の役割についても規定されています。主な組織の役
割は右の表に示す通りです。
サイト選定の進め方について、以下の優先順位で
進めることも規定しています。
一安全性を最優先する。人間と環境の持続的な保
護を確保しなければならない。そのためには、放
射能毒性が崩壊によって十分に減衰するまで放
射性物質の閉じ込めを確保しなければならない。
一安全に次いで、地域開発、生態系、経済及び社
会の側面を検討する。
また特別計画「地層処分場」では、高レベル放射
性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用の2つの処
分場を建設すると規定していますが、同じ場所に高レ
ベル及び低中レベルの放射性廃棄物用処分場を建
設することも可能としています。
サイト地域
・候補エリア所在自治体
計画範囲を含む自治体
その他の影・を受ける自治体
サイト選定に係わる空間概念(特別計画で定義)
サイト選定における各組織の役割
連邦の機関 連邦エネルギー庁 (BFE) 特別計画及び概要承認手続の担当官 庁
連邦国土計画庁 (ARE) 地域開発計画の面で事業を検証、BFE を支援
連邦原子力安全 検査局(ENSI) 特別計画におけるサイトの安全性の 評価基準の策定、及び安全規制
原子力安全委員会 (KNS) 安全性の問題に関する諮問機関とし て、ENSIの評価に対する見解を表明
地層処分場専門家 グループ(EGT) 地球科学的問題でENSIに助言
実施主体 放射性廃棄物管理 共同組合(NAGRA) 特別計画の基準に従って地質学的候 補エリア・サイトを提案、概要承認の 申請書を提出
州・自治体 州 事業の段階毎に成果報告書に対する 見解を表明
地域参加プロセスに 参加する自治体※の 所在州 連邦政府と協力し、サイト選定手続に おいて連邦政府を支援、州の土地利用 計画との調整を実施、並びに自治体と 協力
地域参加プロセスに 参加する自治体・ 地域参加の組織化・実現において BFEと協力、地域利益を代表
※地域参加プロセスに参加するのは、地質学的候補エリア及び「計画
範囲」を一部でも含む自治体と、それらに隣接し観光などで特別な
関係を有する自治体
101
処分地選定の進め方と地域振興>>>
◎サイト選定の第1段階の進抄
(2008-2011年)
特別計画に基づくサイト選定の第1段階は、2008
年10月に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
が処分場の地質学的候補エリアを提案したことを受
けて始まりました。
特別計画では右上表にある安全性と技術的実現
可能性に関するサイトの評価基準が定められました。
NAGRAはこの基準に従って全国から絞り込みを進め
(右段の囲み記事を参照)、高レベル放射性廃棄物
の地層処分場の地質学的候補エリアを3カ所提案し
ました。
第1段階では右下のフロー図に示すとおり、
NAGRAの提案に対する規制機関等による審査、及
び連邦エネルギー庁(BFE)が作成する成果報告書
とファクトシートの草案に対する意見聴取などが行わ
れました。審査や意見聴取を踏まえ、成果報告書と
ファクトシートが改訂されました。2011年11月に、連
邦評議会が、NAGRAが提案した3カ所の地質学的
候補エリアを承認したことにより、第1段階が終了し、
次ページに示す地質学的候補エリアが確定しました。
高レベル放射性廃棄物の地層処分場の地質学的候
補エリア3カ所は、いずれも地下400~900mの範囲
に、地層処分場の母岩となるオパリナス粘土が十分
な厚さで存在していると評価されています。なお、低
中レベル放射性廃棄物の地層処分場については地
質学的候補エリアが6力所選出され、そのうち3カ所
は高レベル放射性廃棄物について選出された地質
学的候補エリア3カ所とほぼ重なっています。
第1段階では地質学的候補エリアの確定作業と
並行して、第2段階での“候補サイド’の選定作業に
必要な検討が行われました。これらの主要な成果とし
て、BFEは次の点を示しています。
〇地層処分場による環境的•経済的•社会的影
響調査のために第2段階で使用する「地域開発
面の評価手法」の開発
〇処分場の地上施設が建設される可能性のある
「計画範囲」の確定
〇地質学的候補エリアの安全性に関する安全規
制当局の審査
〇第2段階以降で実施される地域参加プロセスに
特別計画が規定する第]段階での安全性と技術的実現可能性に
関するサイトの評価基準
基準グループ 基準項目
1.母岩ないし有効な閉じ 込めエリアの特性 1.1サイト規模 1.2水力学的バリア機能 1.3地球化学的条件 1.4放出経路
2.長期安定性 2.1 サイト•岩盤特性の安定性 2.2侵食 2.3処分場による影響 2.4地下資源の利用による影響
3.地質学的知見の信頼性 3.!岩盤の特性の評価可能性 3.2空間的な条件の調査可能性 3.3長期的変化の予測可能性
4.建設上の適性 4.1岩盤力学的特性と条件 4.2地下坑道の掘削と排水
NAGRAが実施した絞り込みのステップ

  1. 廃棄物を高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベ
    ル放射性廃棄物用処分場に割り当てる。
  2. バリア概念と安全性の概念を確定し、基準に関わる定
    量的及び定性的な要件と基準値を定める。
  3. 地質学的・構造地質学的な広域圏に関する評価を実
    施する。
  4. 母岩及び閉じ込め機能を有する岩盤領域の評価を実
    施する。
  5. 岩盤形状の評価及び地質学候補エリアの提案を作成
    する。
    NAGRA
    〇地質学的候補エリアを提案
    州委員会(8つの州の代表から構成)
    〇地質学的候補エリアの安全性と地質、計画範囲、地域参加等
    について見解を公表
    連邦原子力安全検査局(ENSI)
    〇地質学的候補エリアの安全性に関する評価報告書を作成
    地層処分場専門家グループ(EGT)と原子力安全委員会(KNS)
    OENSIの評価報告書をレビュー
    連邦エネルギー庁(BFE)
    〇州委員会や官庁の見解を踏まえて、成果報告書とファクト
    シートの草案を作成
    意見聴取(3カ月間)
    〇州、関心のある住民などは草案に対して意見を表明
    連邦評議会
    〇成果報告書とファクトシートを承認
    地質学的候補エリアの確定
    参加する自治体の確定
    第1段階の概要
    102
    それぞれの放射性廃棄物の地質学的候補エリアとその面積
    地域会議の設置エリア名•関係州(関係する自治体数) 地層処分場の地質学的候補エリア面積し11
    ジュラ東部 アールガウ州(«高»:35/«低中»:44)保之) 約27km2«高»/約61km2«低中»
    ジュラ・ジュートフス アールガウ州(28)、ゾロトウルン州(19) 約65km2«低中»
    北部レゲレン アールガウ州(13)、シャフハウゼン州(2)、チューリッヒ州(26) 約64km2«高»/約65km2«低中»
    ジュートランデン シャフハウゼン州(22)、トウールガウ州(3)、チューリッヒ州(12) 約24而2«低中»
    ヴェレンベルグ 二ドヴァルデン準州(7)、オプヴァルデン準州(1) 約16km2«低中»
    チューリッヒ北東部 シャフハウゼン州(8)、トウールガウ州(3)、チューリッヒ州(24) 約50km2«高»/約49km2«低中»
    (※1)高レベル放射性廃棄物用(«高»)と低中レベル放射性廃棄物用(«低中»)の地層処分場の設置が検討されている地域では、地質学的候補エ
    リアの面積を順に記載。廃棄物種類によって候補となる岩種•深度範囲が異なるため、高レベル廃棄物用の地質学的候補エリアは、必ず
    しも低中レベル廃棄物用のエリアの一部ではありません。
    (※2)ジュラ東部は立地州がアールガウ州単独となります。地域会議は、低中レベル廃棄物用と高レベル廃棄物用に分かれるのではなく、対象
    に応じて参加する自治体が変わります。
    地質学的候補エリア 地質学的候補エリアを一部含む自治体 計画範囲 計画範囲を一部含む自治体
    影響を受けるその他自治体 ——計画範囲の境界 ——州境 ——国境 ——自治体の境界
    :::::サイト地域の境界
  • NAGRA提案の地上施設 •地域会議提案の地上施設 •絞り込まれた地上施設とその名称




バーゼル•
ラントシャフト州
フランス
イタリア
チューリッヒ州
アールガウ州
(WLB-1)
:〇 ヴェレリ幻レグ、
ベルン [ー「‘W、、ハづ
ZNO-6b
ジュラ東部
NL-6
北部レゲレン
ドイツ
シャフハウゼン州
オーストリア
(※1)NAGRAの提案に基づき絞り込まれた地上施設
(※2)地域会議の提案に基づき絞り込まれた地上施設
特別計画「地層処分場」の第]段階で確定した地質学的候補エリア
(高レベル放射性廃棄物の処分場3カ所及び低中レベル放射性廃棄物の処分場6力所)
ゝIトウール
•ガウ州
ォプヴァル
デン準州
7 ウーリ州
す,
ゾロトウ
ルン州
ルツェルン州
ジュートランデン
ヴェレンベルグ
(NAGRA2011年年次報告書に基づいて作成)
103
処分地選定の進め方と地域振興>>>
◎サイト選定の第2段階の進接状況と作業予定
(2011〜2018 年)
2011年12月にサ仆選定手続きの第2段階が開始
されました。2012年1月にNAGRAと連邦エネルギー
庁(BFE)は「計画範囲」に含まれる20力所の地上
施設区域の案を公表しました(103ページの地図で丸
印で示された点です)。設置区域は、安全性及び技
術面からの現実性、土地利用に関する適合性及び環
境との適合性、地域との調和を考慮して提案されまし
た。BFEの主導で設置され、自治体の代表や住民が
参加する「地域会議」は地上施設の設置区域につい
て独自の提案をしました。NAGRAはこれらの提案を
踏まえ、14カ所を追加検討し、2013年秋から2014年
5月末にかけて、6つの計画範囲について合計34カ所
の地上施設の設置区域案のうち7カ所を提案しました。
BFEは2012年6月に地層処分場が立地する地域
に与える経済影響に関する中間報告書を公表しまし
た。同報告書は、6カ所の地質学的候補エリアを包
含する形で設定されている「サ仆地域」を対象にし
た分析で、いずれのサ仆地域でも経済的にプラスま
たはマイナスの影響のどちらも小さいと結論付けてい
ます。BFEは2014年11月に社会•経済•環境影響
に関する最終報告書を公表しました0最終報告書で
は、NAGRAが2014年5月に提案したそれぞれの地
上施設の設置区域を比較し、環境影響及び社会影
響については、差異の大きい評価項目があると結論
付けています。
NAGRAは科学的・技術的な基準に基づいて絞
り込みを行い、2015年1月末に「チューリッヒ北東部」
及び「ジュラ東部」の2つを提案しました。NAGRA
はいずれについても不透ZK性の岩盤が適切な深度に
あり、氷河等による侵食の影響を受けず長期に安定
して存在しているため、放射性廃棄物の安全な閉じ
込めが実現できるとしています。
連邦原子力安全検査局(ENSI)はNAGRAの
提案について「北部レゲレン」も優先候補として引き
続き検討すべきとの見解を示しました。ENSIの見解
や意見聴取の結果を踏まえて、連邦評議会は2018
年11月、低中レベルと高レベル廃棄物用処分場ともに
「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」
を第3段階に進む候補として承認し、サイト選定第2
段階が終了しました。
NAGRA
〇地上施設を提案
連邦エネルギー庁(BFE)
〇地域会議と協力して社会・
経済調査を実施、報告書
を公表
地域会議
ONAGRAの地上施設の提
案を検討、独自の提案も
可能
NAGRA
〇地上施設を計画範囲ごと
に1つへと絞り込み
NAGRA
〇予備的安全評価とサイト
の比較作業を実施
NAGRA
〇最低2カ所の候補サイトを提案
連邦原子力安全検査局(ENSI)
〇サイトの安全性に関する評価報告書を作成
原子力安全委員会(KNS)
OENSIの評価報告書をレビュー
連邦エネルギー庁(BFE)
〇州委員会、宮庁、地域会議の見解を踏まえて、成果報告書と
ファクトシートの草案を作成
、ノ
意見聴取(3カ月間)
〇州、関心のある住民などは草案に対して意見を表明
、ノ
連邦評議会
〇成果報告書とファクトシートを連邦評議会が承認
最低2カ所の候補サイトの確定
第2段階の概要
予備的安全評価とサイトの比較
特別計画によると、予備的安全評価で実施するのは以
下の2つとなっています。
•廃棄物の閉じ込めにおける個々のバリアの性能と挙
動に関する情報を提示すること。
•第1段階で選定されたそれぞれの地質学的候補
エリアにおける線量の評価値が、防護基準である
0.1mSv/年以下であることを立証すること。
サイトの比較では以下が実施されます。
•各々のサイトについてレファレンスシナリオを利用
して、現実的に予想される線量の時間的な変遷を計
算する。
•代替シナリオにおける地層処分場の挙動を計算する。
•以上の2つにより、各々のサイトについて線量区間
を導出する。
104
◎サイト選定の第3段階の作業予定とプロジェク
卜確定手続き(2019年〜)
第3段階では、右図の流れで、NAGRAが2019
年4月よりボーリング調査を実施しています。NAGRA
は2020年12月に、ジュラ東部については、2地点で
の調査をもってボーリング調査を終了する見込みであ
るとしています。他方、ゴ匕音5レゲレンとチューリッヒ;[匕
東部では、2021年も引き続きボーリング調査を実施す
る予定です。
またBFEは今後経済的な側面に関する詳細調査
を実施する予定です。これらの調査結果を踏まえ、
NAGRAは概要承認申請書をBFEに提出し、高レ
ベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃
棄物用処分場のサイトを提案します。低中レベル放
射性廃棄物用処分場と高レベル放射性廃棄物用処
分場を同じサイトで提案する可能性もあります。
「概要承認」の議会による承認後は、地下特性調
査施設の建設等の詳細な地球科学的調査が実施さ
れます。処分場の建設許可、操業許可の手続きは別
途必要となっています。
◎環境影響評価
環境影響評価は、特別計画及び環境影響評価に
関する政令に基づき、予備調査、第1ステージ、第2
ステージの順序で進められます。まずNAGRAはサ
イト選定第2段階で環境影響の予備調査を実施し、
環境影響評価の第1ステージの仕様書を作成しま
す。サイト選定第3段階では概要承認を申請する際
にNAGRAが環境影響評価の報告書の第1ステー
ジを提出し、第2ステージの仕様書を作成します。建
設許可を申請する際には環境影響評価の報告書の
第2ステージを提出します。
NAGRA
〇必要に応じて弾性波探査、
ボーリングなどの地球科
学調査を実施
連邦エネルギー庁(BFE)
〇サイト地域と協力して、
経済的側面に関する詳細
な調査を実施
第3段階の概要
2.地域振興方策
a
ポ^2ン
地層処分場プロジェクトに関する確定手続きである特別計画において、その手続きが完了して地
層処分場の建設地が確定した後に、地元への交付金について検討することを明記しています。
◎制度の現状
スイスでは、現時点では地域振興を目的とした法的
な枠組みはありませんが、地層処分場プロジェクトに
関する特別計画の確定手続きにおいて、サイト確定後
に交付金について検討することを明文化しています。
特別計画によると、交付金について、法的根拠は定
められていないものの、第3段階において交付金に関
する検討が行われ、概要承認が発給されてから、実施
主体であるNAGRAを通じて廃棄物発生者が支払う
ことが規定されています。交付金の配分と用途につい
ては、地質学的候補エリアや計画範囲に含まれる自治
体等が検討し、州などに提案することになっています。
105
情報提供•コミュニケーション>>>
V.情報提供•コミュニケーション
1.公衆との対話
ポ^2ン
特別計画「地層処分場」は、放射性廃棄物処分場のサイト選定手続において、情報提供とコミュ
ニケーションが重要であるとしています。サイト選定においては、連邦政府の担当官庁である連邦
エネルギー庁(BFE)が中心となって、さまざまな方法で透明性の確保とコミュニケーションの実
現が図られています。
◎処分事業とコミュニケーション
処分事業を進めていくためには、住民の理解を得る
ことが重要となります。スイスにおいて放射性廃棄物
処分に関し、住民との間に十分なコンセンサスが得ら
れなかった例として、低中レベル放射性廃棄物処分
場計画が挙げられます。この計画では、電力会社と
地方自治体の共同出資によって設立されたヴェレンベ
ルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)が、1994
年にスイス中部の二ドヴァルデン準州ヴェレンベルグに
おける処分場建設計画を発表し、概要承認手続を開
始しました。しかし、1995年6月の州民投票⑻で、
探査坑の掘削と処分場の建設を目的とした地下空間
利用の許可及び連邦による概要承認に対する州の
意見•勧告が否決され、GNWは連邦、州政府、放
射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)などの協力
のもとに処分概念の見直しを実施しました。2002年
にGNWは再び、探査抗掘削のみを目的とした地下
空間利用の許可申請を州に提出しましたが、同年9
月の州民投票で州の許可発給が再度否決されたた
め、ヴェレンベルグ・サイトを断念する決定がなされ、
GNWは解散しました。
なお、2005年2月に施行された原子力法において、
処分場などの原子力施設の立地などに関しては、州
政府による許可が必要とされないことが規定されてい
ます。
ヴェレンベルグ・サイト
(写真提供:GNW94-01,Technischer Bericht zum
Rahmenbewillungsgesuch,(1994))
[8]スイスにおける州民投票とは?
州民投票とは、州民による発案に対して一定数以上の
有効署名が集まった場合に、発案の是非について住民が
直接的に意思表明を行うことができる制度です。州レベ
ルでの発案の権利は、広範囲にわたって認められており、
州憲法の改正や州法の改正も対象となっています。
◎特別計画「地層処分場」における規定
サイト選定手続等を定めた特別計画「地層処分
場」は、2006年3月の最初の草案の公表以降、国内
や隣接諸国の当局や組織及び個人、スイスの州など
から提出された意見を踏まえて、2008年4月に連邦
評議会により承認されました。
同計画は、サイト選定の担当官庁である連邦エネ
ルギー庁(BFE)の役割の一つとして、コミュニケー
106
ション方針の作成や公衆への情報提供、及び広報活
動を定めています。また、放射性廃棄物管理共同組
合(NAGRA)には、関係者に対する専門的な知見
の提供が求められています。
また、同計画によるサ仆選定手続においては、情
報提供や関係する州、地域、自治体及び公衆の関
与が重要と考えられており、地域参加はそのための
主要な手段とされています。特別計画は「サイト地
域」に属する自治体が地域参加の組織を設置するこ
とを定めており、2011年から6つのサイト地域におい
てBFEの主導により設置された「地域会議」が活動
を始めています。
◎地域会議
各地域会議は約85名から最大110名までのメン
バーで構成されており、①州やサイト地域を構成する
自治体の代表者、②経済団体、政党、教会等の代
表者、③住民が参加しています。また、サイト地域に
ドイツの自治体が含まれる場合はドイツからも地域会
議に参加します。NAGRAの2012年年次報告書に
よると地域会議には約200の自治体が参加しており、
その中にはドイツの12の自治体が含まれています。
地域会議は土地利用や社会経済発展に関する
調査を実施し、地域の持続的発展に資するプロジェ
クトを作成する役割を担っています。また、NAGRA
の提案と別に、地域会議が地上施設の配置と立地
について独自に提案できます。ジュラ東部とジュート
ランデンでは地域会議が提案した地上施設の設置
区域案をNAGRAが採用しました。チューリッヒ北東
部と北部レゲレンでは、地域会議の見解を踏まえて
NAGRAが新たに設置区域案を提案•採用しました。
地域会議の予算は1つの地域会議ごとで年間約
50万〜80万スイスフラン(約5,750万~9,200万円、
1スイスフラン=115円として換算)です。地域会議は
予算案と活動費用に係る請求書を連邦エネルギー庁
(BFE)へ提出し、BFEはこの予算案を承認し、費
用をNAGRAへ請求します。この予算は地域会議の
事務局の運営費用、広報活動、会議参加の費用な
どに割り当てられており、地域会議のメンバーは活動
への参加に対する報酬を受け取っています。
なお、2015年のNAGRAによる地質学的候補エリ
アの絞り込み提案の結果、予備候補とされたエリアに
係る地域会議は解散するか、活動を大幅に縮小して
います。
2.意識把握と情報提供
ポ^2ン
a
特別計画「地層処分場」は、サイト選定における地域参加プロセスの実施、及び州や自治体
等のさまざまな関係者が参加する委員会などの設置を規定しています。また、連邦エネルギー庁
(BFE)や放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、多様な媒体を通じて情報提供を行ってい
ます〇
◎広報活動(情報提供)
ここでは、放射性廃棄物処分場のサイト選定手続
において実施されている意識把握のための活動や、
情報提供活動を紹介します。
[委員会などの設置]
特別計画「地層処分場」は、州や自治体からも代
表者が参加して構成される、右の表のような委員会な
どの設置を規定しており、活動しています。
名称 役割
処分場諮問 委員会 地層処分場サイト選定手続の実施において環境・ 運輸・エネルギー ・通信省(UVEK)をサポート
州委員会 サイト選定に関係する州や近隣州、近隣国の政府 代表者間の協力を図り、選定手続の実施で連邦を サポート、連邦に勧告を提出
州安全専門 家グループ 安全性に関する資料の評価時に州をサポート/ア ドバイス
安全技術 フォーラム 住民、自治体、団体、州、関係近隣国で影響を受け る自治体の技術的な問い合わせへの対応
107
情報提供•コミュニケーション>>>
[情報提供の取り組み]
地層処分場の地質学的候補エリアの提案の公表
後の2008年11月から12月にかけて、BFEの主催に
よりドイツを含めた9カ所で、情報提供イベントが開催
されました。このイベントでは、連邦原子力安全検査
局(ENSI)及びNAGRAもプレゼンテーションを行っ
ています。
また、NAGRAは、独自に情報提供のためのイベン
卜を実施する他、パンフレット等の作成や教育機関へ
の情報提供、地下研究所を利用した情報提供活動
などを行っています。
NAGRAは2015年から「地層処分場へのタイムトラ
ベル(Journey through time to a deep repository)J
と題する展示を行っています。この展示では、バー
チャル•リアリティ(VR)のヘッドセットを利用して、地
層処分場の建設•操業を体験することができます。
2019年には、この展示が各地域の見本市、合計20
カ所において開催されました。
NAGRAが作成しているパンフレット等
(NAGRAウェブサイトより引用)
was kommt
auf die
regionen zu?
auswirkunQvn
QcolOQischcr
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バーチャル・リアリティ体験の様子
(写真提供:NAGRA)
NAGRAによる情報提供活動の様子
(写真提供:NAGRA)
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200
600 kml
諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
2020年12月現在
ドイツにおける
高レベル放射性廃棄物の処分について
面積 357,582平方キロ
人口 83,124千人(201 8 年)
首都 ベルリン
言語 ドイツ語
通貨 ユーロ (1ユーロ=124 円)
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針
a

ドイツでは当初、原則として使用済燃料を再処理する方針でしたが、2002年に改正された原子
カ法において使用済燃料を外国の再処理施設に運搬することが禁じられ、高レベル放射性廃棄物
(ガラス固化体及び使用済燃料)を国内で地層処分する方針に変わっています。これらは処分空
洞の壁面に熱影響を与えることから、「発熱性放射性廃棄物」とも呼ばれています。
◎原子力エネルギー政策の動向
ドイツでは1998年に成立した連立政権の下で脱原
子カ政策が進められ、現在も継続しています。2000
年6月に連邦政府と主要電力会社は、原子力発電か
らの段階的撤退等に関して合意しました。2002年4
月に全面改正された原子力法では、この合意内容の
一部が法制化され、商業用原子力発電所の運転を
原則32年間に制限するとともに、今後の原子力発電
の総量に上限を設けました。2009年秋に成立した連
立政権は、脱原子力政策を維持しつつも、運転中の
原子炉17基の運転期限を平均で12年延長すること
などを含む原子力法改正案を、2010年10月に成立
させました。
しかし、東京電力(株)福島第一原子力発電所の
事故を受けて連邦政府は、2011年3月に、17基の原
子炉のうち8基(1980年以前に運転開始した炉)を
停止させるとともに、予定していた原子炉の運転期限
の延長を凍結しました。そして2011年6月、連邦政
府は、停止させた原子炉8基を即時閉鎖し、残る9
基も2022年までに閉鎖するとした、将来のエネルギー
政策の見直しを閣議決定しました。これらの政策を含
む改正原子力法は、2011年8月に発効しました。
2020年末現在、ドイツで運転中の原子炉がある原
子カ発電所は7カ所あり、加圧水型原子炉(PWR)
が6基、沸騰水型原子炉(BWR)が1基運転中です。
これらの?基についても2022年末までに順次運転を
終了する予定です。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
ドイツでは、当初は使用済燃料を再処理して核物
質を再利用するよう法律で定めていましたが、1994
年の原子力法改正により、再処理せずに使用済燃料
を直接処分することを原子力発電事業者が選択でき
るようなりました。その後、原子力発電からの段階的
撤退政策を受けて2002年4月に改正された原子力
法において、原子力発電所からの再処理を目的とし
た使用済燃料の搬出を2005年7月以降永続的に禁
止しています。
原子力発電所で発生する使用済燃料は、原則とし
て処分のために搬出するまで、発生したサイト内で貯
蔵する方針です。使用済燃料は、燃料プールで約5
年間冷却された後、「輸送貯蔵兼用キャスク」に収納
して貯蔵されます。こうした乾式貯蔵は、運転中と閉
鎖された原子力発電所を含め、12の原子力発電所
で実施されています。
一部の使用済燃料は、原子力発電所から搬出さ
れ、ゴアレーベン、アーハウス、ノルトの集中中間貯蔵
施設で貯蔵されています。当初は、ゴアレーベン中間
貯蔵施設において使用済燃料及びフランスと英国に
委託した再処理からの返還ガラス固化体(高レベル
放射性廃棄物)を併せて貯蔵する計画でした。ゴア
レーベン中間貯蔵施設では、1995年から使用済燃
料を収納した「輸送貯蔵兼用キャスク」の受け入れ
が始まりました。しかし、使用済燃料の輸送に対する
反対運動が激しくなったことから、1997年を最後に使
110
ドイツ
◎原子力発電の利用•導入状況
西暦
ドイツの電力供給構成(発電量一 2018¢)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
2018 年 ドイツ 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 6,431.59 317.27 -804.68 5,944.18 5,129.29
◎原子力発電設備容量
合計6基811.3万kW
(2021年1月)



◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
ベルリン
オランダ
スイス
モルスレーベン処分場
(廃止措置手続中)
コンラッド処分場
(建設中)
アッセ!I研究鉱山
アーハウス集中 (閉鎖予定)
ハ中間貯蔵施設
ゴアレーベン・サイト<・アレーベン中間貯蔵施設 (サイト特性調査(中止))、f ドイツ ポーランド ベルギー ノルト集中中間貯蔵施設 フランス オーストリア チェコ t 原子力発電所(商業用、運転中) ■ 低(中)レベル放射性廃棄物処分場 地下研究施設 ▼ 集中中間貯蔵施設 ■ 特性調査施設 111 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
用済燃料の搬入は行われていません。外国からの
返還ガラス固化体の受け入れは継続していましたが、
2013年3月の連邦政府とニーダーザクセン州の合意
に基づき、搬入が停止されることになりました。今後
返還されるガラス固化体は、原子力発電所サイトに貯
蔵することが決まっています。アーハウス中間貯蔵施
設では、主として研究炉や高温ガス炉(実験炉と実
証炉、いずれも1980年代末に廃止)の使用済燃料
を乾式貯蔵しています。旧東ドイツに導入された原子
カ発電所の廃止措置に伴い、それらの発電所からの
使用済燃料が、ノルト集中中間貯蔵施設において乾
式貯蔵されています。
2016年12月末時点で、ドイツ国内の使用済燃料
貯蔵量は約8,485トン(ウラン換算トン、以下同じ)で
す。また既に約6,343トンの使用済燃料が主としてフ
ランス及び英国において再処理されています。
◎処分方針
ドイツでは2002年の原子力法改正以降、再処理
のために既にフランスと英国に搬出した使用済燃料
は再処理し、回収したプルトニウムなどを燃料として
再利用するものの、それ以外の使用済燃料はそのま
ま高レベル放射性廃棄物として直接処分する方針で
す。従って、処分対象となる高レベル放射性廃棄物
は、使用済燃料と、外国(フランスと英国)に委託し
た再処理に伴って返還されたガラス固化体の両方が
あります。
ドイツでは、放射性廃棄物を処分する場合は全て、
国内で地層処分する方針です。処分時に地層への
熱影響を考慮しなければならない廃棄物を「発熱性
放射性廃棄物」と定義し、それ以外を「非発熱性放
射性廃棄物」としています。使用済燃料とガラス固
化体は、発熱性放射性廃棄物に該当します。
処分の対象となる発熱性放射性廃棄物の量は、
2022年までに全ての原子炉を閉鎖することを前提とし
て、約27,000m3 (処分容器込みの体積)と推定され
ています。
ゴアレーベンの中間貯蔵施設
使用済燃料とガラス固化体のほか、低レベル放射性廃棄物も中間貯
蔵されています。
ゴアレーベン中間貯蔵施設における使用済燃料の乾式中間貯蔵
(写真提供:GNS社)
発熱性放射性廃棄物
(高レベルと中レベル相当
のものが含まれます)
放射性廃棄物
非発熱性放射性廃棄物
(中レベルと低レベル相当
のものが含まれます)
ドイツでは発熱量の違いにより放射性廃棄物の区分がされています
ドイツの放射性廃棄物区分
112
II-地層処分計画と技術開発
1.処分計画
ポ^2ン
ドイツでは1979年からゴアレーベン岩塩ドームにおいて高レベル放射性廃棄物の処分場候補
地として探査が続けられてきました。しかしs 2013年に高レベル放射性廃棄物処分場サイト選定
に関する新しい法律が制定され、公衆参加型の新たな手続きによりサイト選定をやり直すことにな
り、2017年9月にサイト選定が開始されました。今後3段階からなる手続きが行われ、2031年ご
ろに処分場サイトを決定することを目標としています。
◎地層処分対象の放射性廃棄物
ドイツでは、全ての種類の放射性廃棄物を地層処
分する方針です。廃棄物から発生する熱によって、
地下の処分空洞壁面の温度上昇が3°C以上となる
廃棄物を「発熱性放射性廃棄物」と定義しており、
使用済燃料のほか、外国での再処理で製造•返還
されるガラス固化体や中レベル放射性廃棄物(ハル・
エンドピースなどの圧縮体など)がこれに該当します。
ここでは、発熱性放射性廃棄物の地層処分につい
て紹介します。
なお、2017年に開始されたサイト選定関連では、
「高レベル放射性廃棄物の処分場」など発熱性放
射性廃棄物に代わり、高レベル放射性廃棄物という
用語が同じ意味で使われている場合もあります。
◎処分形態
使用済燃料は処分のためのコンディショ二ングとし
て複合構造を有する「Polluxキャスク」(右図参照)
に収納した後に、処分場に定置する方法が検討され
ています。この方法では、原子炉から取り出した使用
済燃料集合体を解体し、燃料棒だけをPolluxキャス
クに収納します。1999年にパイロット•コンデ、イショニン
グ施設がゴアレーベンに建設されています。ここでは、
燃料棒のPolluxキャスクへの試験的な封入が行われ
る予定です。
909mm *r
■3700mm
■5517mm
7
-4
6
,2
5

  1. 遮へいキャスク
  2. 遮へい蓋
  3. 内層容器
    4.1次蓋
  4. 溶接2次蓋
  5. 溶接部
  6. 制振構造
  7. 中性子減速板
  8. 減速棒
    10.燃料棒
    11•トラニオン
    12.バスケット構造
    4UE09巴0—



    使用済燃料用に予定されているPolluxキャスク
    (DBE社資料より引用)
    使用済燃料のパイロット・コンディショ二ング施設
    (1999年にゴアレーベンに建設)
    Pilot-Konditionierungsanlage (PKA)
    113
    地層処分計画と技術開発>>>
    ◎処分場の概要(処分概念)
    ドイツでは、具体的な処分概念については、現在
    行っているサイト選定において選定される母岩やサイ
    卜の特徴に従い、今後具体化することとしています。
    サイト選定法では、処分場の母岩としては、結晶質
    岩、岩塩層、堆積岩の3種類が処分場の候補とされ
    ています。また、操業期間中の回収可能性の維持、
    処分場の閉鎖後500年間にわたり、廃棄体が回収可
    能であるよう、廃棄体の取り出しが可能であることを
    求めています。
    このほかに、サイト選定法では、処分場サイト選定
    のための地質学的基準が規定されています。この基
    準には、閉じ込め機能を果たす岩盤領域※が十分な
    広がりを持つとともに、深度が300m以上あること、厚
    みが10〇m以上あること、が含まれています(右図参
    照)。
    ※人工バリアや地質 工学的なバリアとともに、隔離期間に廃棄物
    の閉じ込めを保証する地質バリアの一部
    ドイツの地層処分場設置に関する基準
    ◎過去の処分場計画(ゴアレーベン計画)の状況
    ドイツ北部のゴアレーベン岩塩ドームでは、最終処
    分地としての適性確認を目的とした探査活動が1979
    年から続けられてきました。1983年5月、当時の実施
    主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は、「ゴ
    アレーベンのサ仆調査の総括的中間報告書」をまと
    めています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処
    分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレー
    ベンが処分場の建設地として適切であると評価されま
    した。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が
    地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設
    は1986年から始まりました。
    ゴアレーベンでの地下探査活動は、2000年から10
    年の凍結期間を挟み行われましたが、2013年のサイ
    卜選定法により、一旦終了しました。
    サイト選定法では、ゴアレーベンは次の場合に検討
    対象から除外されるとし、除外されるまでは他の候補
    サイトと同列に扱うこととしています。
    〇サイト区域に含まれない場合
    〇地表からの探査サイト地域に選ばれなかった場

    〇地下探査サイトに選ばれなかった場合
    〇最終的に処分場サイトとして選定されなかった場

    ゴアレーベンのサイト調査の
    総括的中間報告書
    1983年に、当時の実施主体であった
    連邦物理・技術研究所(PTB)は、ゴ
    アレーベンが処分場の建設地として適
    切であると評価しました。
    2020年9月に実施主体である連邦放射性廃棄物
    機関(BGE)は、サイト選定第1段階の中間報告書
    を公表し、地質学的に処分場の設置に好ましいサイ
    卜区域を公表しました(詳細は124ページ)。ゴアレー
    ベンは、岩塩ドーム上部の被覆岩に関する基準に対
    する評価結果に基づき、サイト区域に含まれませんで
    した。したがって、ゴアレーベンはサイト選定の検討
    対象から除外されることが決定しました。今後、ゴア
    レーベンは埋め戻しされることとなっています。
    114
    ドイツ
    ◎処分事業の実施計画
    2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物
    の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選
    定法⑴)では、はじめに「高レベル放射性廃棄物処
    分委員会」を設置して、処分概念やサイト選定に関
    する基準や選定手続きのありかたを検討することが求
    められています。この委員会は2014年5月に正式に
    発足し、2016年6月末に検討結果をまとめた報告書
    を連邦議会•政府に提出しました。高レベル放射性
    廃棄物処分委員会が勧告したサイト選定基準等は
    2017年3月にサイト選定法が改正され、連邦法として
    確定されました。
    ドイツでは、連邦政府が放射性廃棄物の処分場の
    設置・操業の責任を有しているため、連邦環境•自
    然保護•原子炉安全省(BMU)⑵の下に放射性廃
    棄物処分の実施主体として連邦放射性廃棄物機関
    (BGE)が設置されています。サイト選定手続きは、
    このBGEによって2017年9月から開始されています。
    2020年9月にサ仆区域の提案が行われ、今後地
    上からの探査を行うサ仆地域の選定が行われること
    が計画として示されています。また、サイト選定法で
    は2031年末までに処分場サイトを連邦法を制定し確
    定することが目標とされています。処分場の操業開始
    は2050年頃が見込まれています。
    2016 年
    2017 年
    2020 年
    2050 年
    サイト選定基準や手続きの検討
    複数のサイト区域の提案
    2031年
    操業
    閉鎖
    廃止措置
    ドイツにおける処分場事業の流れ
    (2013年サイト選定法以降の計画)



    [1]サイト選定法
    2013年に制定されたサイト選定法は、当初は「発熱性
    放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」
    という名称でしたが、2017年3月の改正時に「高レベル
    放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」
    に変更されました。本冊子ではサイト選定法に関わる記
    述について、その時点での名称を用いています。
    •旧名称(2013年〜2017年3月):
    発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関す
    る法律
    •現名称(2017年3月〜):
    高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関
    する法律
    [2] BMU
    処分事業を管轄する連邦官庁である「BMU」は、
    2013年から、連邦環境•自然保護•建設•原子炉安全
    省(BMUB)として活動していましたが、2018年3月に
    2013年以前の名称の連邦環境•自然保護•原子炉安全
    省(BMU)に再度改称されました。本冊子では、各事業
    について、その事業実施時点での名称を用いています。
    •旧名称(2013年〜2018年3月):
    連邦環境•自然保護•建設•原子炉安全省(BMUB)
    •現名称(〜2013年、2018年3月〜):
    連邦環境•自然保護•原子炉安全省(BMU)
    115
    地層処分計画と技術開発>>>
    2.研究開発•技術開発
    ポ^2ン
    発熱性放射性廃棄物のサイト選定に関連した研究開発等については、地層処分事業の実施主体
    である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が他の機関と協力しながら進めています。
    また地層処分の研究は、地質関係の研究所である連邦地球科学•天然資源研究所(BGR)の
    ほか、国立の3研究所、施設•原子炉安全協会(GRS)等の機関によっても進められています。
    ◎研究機関
    地層処分事業の実施主体である連邦放射性廃棄
    物機関(BGE)は、連邦地球科学・天然資源研究所
    (BGR)と協力協定を結び、発熱性放射性廃棄物
    処分場のサイト選定に関連した研究開発を実施して
    います。
    一方、一般的な調査•研究は各種機関がそれぞ
    れの専門領域の研究活動を行っています。中心的
    な機関としては、BGR、その他ユーリッヒ、カールス
    ルーエ、ロッセンドルフの各国立研究所(FZJ、FZK、
    FZR)、施設•原子炉安全協会(GRS)、大学研究
    室等が挙げられます。
    ◎研究計画
    ドイツにおける地層処分に関する研究開発について
    は、サイト固有のものとサイトに依存しない基礎研究と
    が存在しています。サイトに固有の研究開発について
    は、ゴアレーベンにおいて行われてきましたが、2013年
    7月のサ仆選定法により新たにサ仆選定が行われるこ
    とになったため、現在は行われていません。
    また、サイトに依存しない基礎研究は、連邦経済•エ
    ネルギー省(BMWi)、連邦教育•研究省(BMBF)
    や実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)に
    より行われています。高レベル放射性廃棄物の処分に
    関しては、処分対象として考えられていた岩塩の他に
    結晶質岩及び堆積岩、そして岩種に依存しない研究
    も行われています。BGEは、サイト選定手続きの実施
    のために、以下の分野について、関連する研究開発
    の必要性があるとしています。
    〇放射性廃棄物の放射性毒性及び化学毒性とそ
    の進展
    〇地球科学的課題
    〇処分場概念
    〇予備的安全評価
    〇社会科学
    ◎地下研究所
    かっては岩塩鉱山であったアッセH研究鉱山にお
    いて、1967年から77年まで低中レベル放射性廃棄
    物の試験的な処分が行われていました。その後は高
    レベル放射性廃棄物の岩塩層への処分等に関する
    地下研究所となりました。
    現在はアッセ!I研究鉱山の研究所としての機能は
    実質的に終了しています。2009年1月からは、同鉱
    山の閉鎖に向けた手続きが進められており、2010年
    1月には、アッセH研究鉱山の閉鎖に関して、試験的
    に処分した低中レベル放射性廃棄物の回収が最良
    であるとする評価結果が公表されました。
    実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)
    は、2020年3月に廃棄物の回収計画を公表しました。
    この計画では、2033年から回収を開始することが示
    されています。また、ゴアレーベンの岩塩ドームにお
    ける地下探査坑道も、地下研究所としての機能を果
    たしてきたと言えます。しかし、ゴアレーベンが新たな
    サイト選定手続きから除外されたため、今後ゴアレー
    ベンは完全に閉鎖される予定です。
    アツセ!I研究鉱山での実規模キャスクを用いた実験の模様
    (写真提供:DBE)
    116
    ドイツ
    HI.処分事業の実施体制と資金確保
    1.実施体制
    ポ^2ン
    ドイツでは原子力法において高レベル放射性廃棄物処分場の設置及び操業責任は連邦政府に
    あり、この処分場の設置及び操業の実施については、連邦政府が100%所有する組織に委託しな
    ければならないと規定されています。この規定に基づき、実施主体として連邦放射性廃棄物機関
    (BGE)が設置され、2017年4月に活動を開始しました。
    また、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)
    が設置されています。BASEは、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関
    する許認可発給やサイト選定手続きの監督•調整などを行っていくこととされています。



    ◎実施体制の枠組み
    上の図は、処分に係る実施体制を図式化したもの
    です。連邦政府では、原子力問題全般を担当する
    連邦環境•自然保護•原子炉安全省(BMU)が管
    轄官庁であり、処分場建設•操業の実施主体である
    連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、100%連邦政府
    が所有する私法上の組織として設置されています。
    2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄
    物処分庁(BfE)設置法により、2014年9月に連邦
    放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。そ
    の後、2019年12月の法改正により、連邦放射性廃
    棄物処分安全庁(BASE)と名称変更されました。
    同庁は、処分場サイト選定手続全体の監督•調整を
    担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放
    射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体
    であるBGEに対する監督を行います。
    なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場に
    ついては、州の管轄官庁が許認可当局としての役割
    を担っていましたが、規制・実施体制が見直され、
    BASEが規制当局となっています。
    原子力法では、BASEが許認可を発給する際は、
    州や関係自治体も決定に参加することとされています。
    117
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    ◎実施主体
    ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を
    連邦政府が設置することになっています。また、2016
    年の原子力法の改正により、連邦政府は処分場の設
    置等の役割を連邦政府が100%所有する私法上の
    第三者に委託しなければならないと規定されました。
    この規定に基づき、処分場の建設•操業の実施主体
    として連邦放射性廃棄物機関(BGE)が設置され、
    連邦環境•自然保護•原子炉安全省(BMU)の監
    督下で、2017年4月から活動しています。処分場の
    建設•操業の実施主体としてはこれまで、連邦放射
    線防護庁(BfS)がその役割を担ってきました。BfS
    は、民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設•運
    転会社(DBEtt)と業務契約を結び、ゴアレーベン
    での探査作業等を委託していました。BGEは、処分
    実施主体としてのBfS、DBE社及びアッセII研究鉱
    山を管理していたアッセ有限会社を統合し、これらの
    役割すべてを継承しました。
    BGEは、2013年7月に新たに制定された「発熱性
    放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する
    法律」(サイト選定法)に基づく選定手続きにおいて
    も、探査地域•サイトの提案、探査や予備的安全評
    価の実施などの役割を果たすことになっています。
    ◎安全規則
    ドイツにおける放射性廃棄物処分に関する安全規
    則としては、1983年4月に当時の所轄官庁であった
    内務省が制定した「鉱山における放射性廃棄物の
    最終処分に関する安全基準」があります。ここでは、
    放射線防護令で規定された安全基準である年間
    0.3mSv (ミリシーベルト)が保証されなければならな
    いとされています。この最終処分の安全基準は、コン
    ラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画
    確定手続において適用されました。
    ゴアレーベン•サイトへの適用を前提に、BMUは
    2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分の
    ための安全要件」を策定し、2010年9月に安全要件
    の一部を改訂していました。
    2013年に制定されたサイト選定法では、「高レベル
    放射性廃棄物処分委員会」が、安全要件について
    も検討し勧告を行うことになっていました。高レベル放
    射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に検討結果
    を勧告としてまとめて政府•議会に提出しました。勧
    連邦放射線
    防護庁
    (BfS)*
    契約
    ドイツ廃棄物
    処分施設 アッセ
    建設•運転会社 有限会社
    (DBE)
    連邦放射性廃棄物機関
    (BGE)
    〇発熱性放射性廃棄物処分の実施
    •処分場サイト選定
    •処分場の建設・操業・閉鎖
    〇非発熱性放射性廃棄物処分の実施
    ・コンラッド処分場の建設・操業・閉鎖
    〇モルスレーベン処分場の閉鎖•廃止措置
    〇アッセ!I研究鉱山からの廃棄物の回収•閉鎖
    ※BfSの実施主体としての役割を担う部門がBGEに統合されました。
    放射線防護などのBfSのその他の部門は現在も存続しています。
    「高レベル放射性廃棄物の最終処分の安全要件(2020年9
    月)」に規定されている線量基準
    線量基準:評価期間は1〇〇万年を目安とする。
    〇通常の変遷(発生が確実であ るか、発生が見込まれる) 集団の個人に対する追加的な実 効線量がl〇USv/年以下
    〇代替の変遷(発生が予期され てはいないが、発生する可能 性が認められる) 集団の個人に対する追加的な実 効線量が!OOuSv/年以下
    告には、安全要件をサイト選定法に組み入れるべきこ
    とや各種規定の妥当性等を再確認すべきことなどが
    含まれています。
    2020年9月に「高レベル放射性廃棄物の最終処
    分の安全要件」及び「処分場サイト選定手続におけ
    る予備的安全評価実施要件」を定める2件の政令
    が制定されました。公表された安全要件では、安全
    性の評価期間を100万年として線量基準値を規定し
    ていることなどは変更されていません。
    また、この安全要件と同時に、「高レベル放射性廃
    棄物処分場サイト選定手続における予備的安全評
    価実施要件」が制定されました。この要件は、サイト
    選定法に基づく三段階の選定手続きの各段階で実
    施する予備的安全評価に関して、その内容などを規
    定しています。
    118
    ドイツ
    ◎処分に関わる法令の体系図
    原子力法(AtG)
    原子力許認可手続令
    (AtVfV)
    事業規制ーサイト選定法(StandAG)
    鉱山法(BBergG)
    原子力法(AtG)
    高レベル放射性廃棄物の
    最終処分の安全要件に関する政令
    (EndlSiAnfV)
    安全規制
    高レベル放射性廃棄物処分場サイト選定手続に
    おける予備的安全評価実施要件に関する政令
    (EndlSiUntV)
    一 放射線防護法(StrlSchG)
    放射線防護令
    (StrlSchV)



    原子力法(AtG)
    最終処分場設置の
    前払金令
    (EndlagerVIV)
    — サイト選定法(StandAG)
    資金確保
    一 義務移管法(EntsorgUG)
    一基金設置法(EntsorgFondsG)
    119
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    ◎処分の法制度
    内 容
    事業規制 高レベル放射性廃棄物に関する基本的な枠組みは、「原子力の平和利用及びその危険の防護に関する法律」(原 子力法)で定められています。ただし、ドイツの特徴としてサイト調査段階においては原子力法の適用はなく、 地下における活動は鉱山法によって規制されています。ゴアレーベンの地下探査活動も、この鉱山法の許可に基 づいて行われていました。 原子力法は原子力関係の基本法ですが、2002年4月の改正以降、商業用原子力発電からの段階的撤退が規 定されています。原子力法は、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や、関係機関の役 割や責任等を定めている法律です。放射性廃棄物の処分場設置の責任が連邦政府にあることも、この原子力法で 定められています。 一方、処分場サイトの選定は、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定 法)に基づいて行われます。この法律では、調査対象サイトの決定、処分サイトの最終決定など、サイト選定に 関わる重要な決定は公衆参加プロセスにかけた上で、最終的に議会が連邦法として採択するという形をとると 定めています。
    安全規制 放射性廃棄物に関する安全規制については、原子力法では概括的な考え方が規定されているのみです。放射線 防護に関する全般的な安全規制としては放射線防護法及び放射線防護令がその基本的な法令ですが、処分場に 特化した形での規制は定められていません。 高レベル放射性廃棄物処分に関する安全基準としては、201〇年に、連邦環境•自然保護•原子炉安全省 (BMU)が「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」を策定しました。この安全要件を改定した、「高 レベル放射性廃棄物の最終処分の安全要件に関する政令」が2020年9月に制定されました。この安全要件では、 評価対象期間を1〇〇万年とすることや発生の予見可能性に応じた線量基準、定置済みの廃棄体の回収可能性を 処分場閉鎖後50〇年間確保するなどが規定されています。 また、処分の安全要件と同時に、サイト選定法に基づく三段階のサイト選定手続きの各段階で実施する予備的 安全評価の構成要素や実施に係る要件を規定する「高レベル放射性廃棄物処分場サイト選定手続における予備 的安全評価実施要件」に関する政令が制定されました。
    資金確保 放射性廃棄物管理のための費用負担、資金確保についても、原子力法によりその基本的な枠組みが規定されて います。処分事業に関する費用は、いわゆる発生者負担の原則に基づき、処分場利用によって利益を受ける放射 性廃棄物の発生者の負担と定められています。 2016年12月に放射性廃棄物管理のための公的基金を設置すること、原子力発電事業者が基金へ放射性廃 棄物管理の将来費用として約236億ユーロ(約2兆8,30〇億円)を拠出することなどを規定する基金設置法 が制定されました。また、基金設置法と同時に制定された義務移管法では、放射性廃棄物の発生者である原子力 発電事業者が基金への拠出金を払い込むことにより、連邦政府との間での放射性廃棄物管理の役割分担を変更 することなどが規定されています°
    環 境 サイト選定法は、地下での詳細な地質学的探査段階において、環境適合性審査(環境影響評価)を実施する必 要があると規定しています。サイト決定後の原子力法に基づく許認可手続では、サイト選定時の環境適合性審査 を元に、必要に応じて追加的な評価を実施します。ドイツにおける環境適合性審査については、環境適合性の審 査に関する法律及び環境適合性審査法施行のための一般行政規則によってその手続等を含めた詳細が定められ ています。 また、放射性廃棄物処分場の建設を含む一定の鉱山事業に関しては、鉱山事象の環境適合性審査に関する法令 も定められています。
    原子力責任 原子力責任に関しては、第三者責任に関する1960年7月29日のパリ条約の国内法化、及び1963年1月 31日のブリュッセル補足条約の承認が行われるとともに、原子力法においてもこれを補足する形で具体的な規 定が定められています。また、さらに詳細な内容は、同法に基づいた原子力補償対策令に規定されています。
    120
    ドイツ
    2.処分事業の資金確保
    ポ^2ン
    ドイツではこれまで、放射性廃棄物処分費用については、廃棄物発生者である電力会社等が引当
    金を確保し、現段階で発生する費用については、処分場の設置•運営の責任を有する連邦政府に対
    して、原子力発電事業者が每年支払いを行っていました。しかし、2016年に新たな法律が制定さ
    れ、公的な基金を設置し処分費用などを管理することが決定されました。この法律に基づき、2017
    年に放射性廃棄物管理のための基金が設置され、原子力発電事業者から拠出金の払込みが行われ
    よした。
    ◎処分費用の負担者
    ドイツでは、廃棄物の発生者は、これまで引当金と
    して放射性廃棄物管理費用を確保してきました。し
    かし、2016年に新たな法律が制定され、公的基金を
    設置し放射性廃棄物管理費用を管理することとなりま
    した。廃棄物発生者が、基金に対して放射性廃棄
    物管理の将来費用と、リスクに備えるための保険料を
    払い込む代わりに、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵
    から処分までは連邦政府の責任で行うこととなりまし
    た。基金への払い込み完了後は、資金確保を含め、
    放射性廃棄物管理に関する責任は連邦政府に移行
    し、費用が増大した場合でも、廃棄物発生者が追加
    の負担を求められることはありません。
    ◎処分の資金確保制度
    ドイツでは、これまで放射性廃棄物管理費用の確
    保に関する公的な基金制度はありませんでした。こ
    のため、原子力発電事業者などは、原子炉の廃止
    措置のための費用や、放射性廃棄物の管理のため
    に発生する将来費用を引当金として確保していまし
    た。しかし、2016年12月に公的基金の設置等を規
    定した法律が制定されました。この法律に基づき、放
    射性廃棄物管理のための基金が設置され、廃棄物
    発生者である原子力発電事業者は、2017年7月に
    基金に対して放射性廃棄物管理の将来費用として
    約179億ユーロ(約2兆2,200億円)及びリスクに備
    えるための保険料として約62億ユーロ(約7,700億
    円)を払い込みました。これにより、放射性廃棄物の
    中間貯蔵以降の放射性廃棄物管理費用は、この基
    金から支払われ、不足した場合には連邦政府が負担
    することになります。基金で賄われる放射性廃棄物管
    理費用には、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵、処
    分場の建設•操業•閉鎖の費用が含まれます。なお、
    原子力による発電電力量に応じた基金への拠出はあ
    りません。
    ◎処分費用の見積額
    連邦環境•自然保護•建設•原子炉安全省
    (BMUB)が2015年に公表した見積りによると、発
    熱性放射性廃棄物処分場の建設•操業•閉鎖に係
    る費用は、約77億ユーロ(約9,500億円)です。こ
    のうち、処分場の建設の費用が約39億ユーロ(約
    4,800億円)、操業の費用が約34億ユーロ(約4,200
    億円)、閉鎖の費用が約4億ユーロ(約500億円)と
    なっています。
    また、サイト選定法に基づくサイト選定のための費
    用は、約20億ユーロ(約2,500億円)と見積もられて
    います。



    121
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    IV.処分地選定の進め方と地域振興
    1.サイト選定法に基づく新たなサイト選定プロセス
    ポ^2ン
    2013年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)
    が制定され、公衆の参加を得ながら複数の候補から段階的にサイトを絞り込んでいくサイト選定手
    続きが実施されることになりました。この選定手続では、地上探査地域、地下探査の対象サイト、
    最終的なサイトなど、重要な決定は連邦議会が連邦法を制定し確定します。
    201/年からサイト選定法に基づく選定手続きが開始され、2020年9月に第1段階の中間報告
    書が公表されました。中間報告書では、地質学的な基準•要件を満たす90カ所のサイト区域が示
    されています。
    ◎サイト選定手続きの進め方
    ドイツでは現在、2013年7月に制定されたサイト
    選定法(2017年改正)に基づいて高レベル放射性
    廃棄物処分場のサイト選定手続きが行われていま
    す。処分の実施主体である連邦放射性廃棄物機関
    (BGE)が手続きを実施し、規制機関である連邦放
    射性廃棄物処分安全庁(BASE)が手続きの全体を
    管理・監督します。
    サイト選定法に基づくサイト選定では、BGEが
    BASEに対して提案する複数の候補から、地上探査
    地域、地下探査サイト、最終的なサ仆の比較と段階
    的に絞り込みが行われます。「地上探査の対象サイト
    地域の選定」、「地下探査の対象サイトの選定」、「最
    終的なサイトの決定」といった各段階における重要な
    決定は、連邦議会において連邦法を制定し確定され
    ます。現在のスケジュールでは、2031年を目標として
    最終的なサイトを決定する予定となっています。各段
    階では大まかな流れとして、まず実施主体のBGEが
    BASEに提案し、それをBASEが公衆参加プロセス
    (「v・情報提供•コミュニケーション」参照)を経てレ
    ビュー後、政府に提案を提出します。政府はその提
    案を法案として連邦議会に上程し、議会審議を通じ
    て、決定事項が連邦法として確定されます。
    ◎高レベル放射性廃棄物処分委員会
    2013年に制定されたサイト選定法では科学者、議
    員、州政府代表や環境団体代表等で構成される「高
    レベル放射性廃棄物処分委員会」を設置し、サ仆
    選定手続きや基準を検討することを規定していまし
    た。
    高レベル放射性廃棄物処分委員会は2014年5月
    選定基準•各種要件•手続きの検討•提案
    言義会 選定基準等を連邦法により確定
    [〜2016年I
    [〜2017年|
    サイト区域の特定、予備的安全評価の実施、地上探査
    候補サイト地域及び探査計画案をBASEに提案
    RAq|= 公衆参加プロセスを実施し、BGEの提案をレビュー。
    地上探査候補サイト地域案をBMUに提案
    政府 地上探査候補サイト地域案を議会に送付
    三美人 地上探査候補サイト地域を連邦法により確定、探査計
    嵌ム 画を連邦官報に公示
    地上探査実施•予備的安全評価の実施。地下探査候補
    BGE サイト案、サイトごとの探査計画及び評価基準案を
    BASE!こ提案
    公衆参加プロセスを実施。BGE提案ならびにこれまで
    BASE の手続きをレビュー。地下探査対象サイト案をBMU
    に提案
    政府 地下探査候補サイト案を議会に送付
    三盆A 地下探査候補サイトを連邦法により確定、探査計画・
    「我ム 評価基準を連邦官報に公示
    地下探査を実施し、予備的安全評価報告書、ならびに
    環境影響評価報告書を作成
    RAGF 最終的なサイトの比較を行うとともに、これまでの手
    続きをレビュー。サイトをBMUに提案
    政府 政府が処分場サイトを法案の形で議会に送付
    言義会 処分場サイトを連邦法の形で確定 . ,
    -2031年 (
    委員会:高レベル放射性廃棄物処分委員会
    議会:連邦議会、連邦参議院
    BGE :連邦放射性廃棄物機関
    BASE :連邦放射性廃棄物処分安全庁
    政府:連邦政府
    サイト選定手続きの流れ
    (サイト選定法より作成)
    122
    ドイツ
    に正式に発足し、議論を開始しました。
    高レベル放射性廃棄物処分委員会の構成及び役
    割は以下のように規定されていました。
    〇構成(33名)
    委員長:1名
    連邦議会議員:8名
    環境団体代表:2名
    経済界代表:2名
    〇主な役割
    科学者:8名
    州政府代表:8名
    宗教団体代表:2名
    労働組合代表:2名
    ー地層処分に代わる処分概念の検討を行うかど
    うかの提案
    ー処分の安全要件、サイトの除外基準•最低要
    件、各母岩固有の除外基準及び選定基準、
    予備的安全評価の実施方法などの提案
    一回収可能性、可逆性などの問題を含む欠陥
    是正のための基準の提案
    -サイト選定手続に係る組織と手続き、代替案の
    検討の要件の提案
    一公衆参加及び公衆への情報提供、透明性確
    保のための要件の提案
    高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2014年か
    ら約2年間検討を行った結果、2016年7月に同委員
    会の勧告を含む最終報告書を連邦政府、連邦議会
    に提出しました。最終報告書では、3段階からなるサ
    イト選定手続きを勧告するとともに、サイト選定基準と
    して、以下などの基準•要件を提案しています。
    。地球科学的な除外基準•最低要件
    〇地球科学的な評価基準
    〇地域計画に関する評価基準
    これらの基準・要件は、サイト選定の各段階での絞
    り込み手続きに適用されます。また、高レベル放射性
    廃棄物処分委員会は、サイト選定手続きにおける公
    衆参加の枠組みとして、連邦レベルで社会諮問委員
    会、地域横断レベルで地域代表者専門会議、地域
    レベルで地域会議を設置することを提案しています。
    2017年3月にサ仆選定法が改正され、サイト選定基
    準や公衆参加の枠組みを含む高レベル放射性廃棄
    物処分委員会の勧告の多くが法制化されました。ま
    た、実施主体であるBGEは、2017年9月にサイト選
    定を開始したことを公表しました。
    地球科学的な除外基準の概要
    広域的な垂直運動 年平均1mm以上
    活動的な擾乱域 スタンプ階(3,400万年前頃)から現在 に至るまで、活動したことが証明できる か、その可能性が高い断層が存在する。
    現在または過去の鉱山 建設活動の影響 現在及び過去の鉱山建設活動により、最 終処分場エリア)のある岩盤の応力状況 と透水係数に悪影響が生じていることが 懸念される。
    地震活動 一定レベルの地震活動が存在する。
    火山活動 第四紀に火山活動が生じているか、将来 火山活動が予想される。
    地下水の年代 バックグラウンド・レベルと比較して年 代の新しい地下水であることが示されて いる。
    地球科学的な最低要件の概要
    岩盤の透水係数 l〇・1om/s 以下
    閉じ込め機能を果たす 岩盤領域•・の厚み 100m以上
    閉じ込め機能を果たす 岩盤領域の深度 300m以深
    閉じ込め機能を果たす 岩盤領域の広がり 処分場の建設が可能な面積を有している
    閉じ込め機能を果たす 岩盤領域の健全性 1〇〇万年にわたり維持されることが疑 問視されていない
    ※人工バリアや地質工学的なバリアとともに、隔離期間に廃棄物の
    閉じ込めを保証する地質バリアの一部



    地球科学的な評価基準
    閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での地下水の流動に伴う放射性
    物質の移行の評価に使用する基準
    岩体構成の評価基準
    空間的な特性調査可能性の評価基準
    好ましい状況の長期安定性に関する評価基準
    好ましい岩盤力学的な特性に関する評価基準
    地下水流動経路形成傾向に関する評価基準
    気体の生成の評価基準
    温度への耐性の評価基準
    閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での放射性核種の保持能力の評
    価基準
    地下水化学的な状況の評価基準
    被覆岩による閉じ込め機能を果たす岩盤領域の保護に関する評価
    基準
    123
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    ◎サイト選定の進筋
    現在ドイツでは、サイト選定の第1段階が行われて
    います。この第1段階では、地上からの探査を行うサ
    イト地域を選定しますが、その前段階として、地質学
    的な条件を満たすサイト区域を選定します。2020年9
    月に第1段階の中間報告書を公表し、ドイツ全土から
    地質学的に好適な可能性が高いと判断される90カ所
    のサ仆区域を示しました(次ページの表参照)。サイ
    卜区域の面積の合計は、ドイツ全土の約54%にあた
    る約194,000km2に及んでいます。また、各サイト区域
    の面積は、小さなものでは6km2 (岩塩ドーム)から最
    大約63,000km2 (粘土岩)まで大きく異なっています。
    実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)
    が、サイト区域を抽出したプロセスは次の通りです。
    BGEは、2017年のサイト選定の開始後、処分場
    の母岩候補とされる岩種(岩塩、粘土岩及び結晶質
    岩)に関する、連邦や各州の地質調査所などが保有
    する全国の既存の地質学的データを収集しました。
    その後、収集した地質学的データに対して、サ仆
    選定法に規定されている地球科学的な除外基準、地
    球科学的な最低要件を適用し不適格な区域を除外し
    ドイツ全土から181の区域を抽出しました。次にBGE
    は、抽出した181の区域に対して地球科学的な評価
    基準を適用し、90のサイト区域を抽出しました。
    サイト区域(90)
    除外区域
    残った区域(181)
    サイト区域の選定プロセス
    (BGE資料より引用)
    124
    ドイツ
    1970年代から処分場候補地として、探査が行われ
    てきたゴアレーベン岩塩ドームは、地球科学的な評価
    基準の適用の結果、「被覆岩による閉じ込め機能を
    果たす岩盤領域の保護に関する評価基準」に関し
    て好ましくないとの評価が下されたため、サ仆区域に
    は含まれませんでした。そのため、今後のサイト選定
    においてゴアレーベンが処分場候補地として考慮され
    ることはありません。
    地球科学的な最低要件の概要
    母岩 サイト区域数 サイト区域の総面積 (km2)
    粘土岩 9 129,639
    岩塩 74 30,450
    結晶質岩 7 80,786
    サイト区域合計 90 240,874
    ※複数の母岩が異なる深度に存在し、一つの区域が複数の母岩カテ
    ゴリに重複してカウントされる場合があるため、サイト区域の面
    積の合計値は、BGEが最終処分に好適な可能性が高いと判断して
    いる90区域の合計面積の約194,000km2と一致しません。
    サイト区域の分布
    (BGE報告書より引用)



    125
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    2.地域振興方策
    ポ^2ン
    ドイツでは処分場の立地自治体等に対する制度化された地域振興方策はありません。ただし、
    処分場候補サイトとしてサイト特性調査が進められてきたゴアレーベンに関しては、過去に、連邦
    政府と州の協定により、連邦政府から関係自治体の地域振興のための補助金が支払われていまし
    た。また、すでに立地が決定している、低中レベル放射性廃棄物に相当する非発熱性放射性廃棄
    物の処分場であるコンラッド処分場の場合には、連邦政府と州、地元自治体の取り決めに基づき財
    団が設置され、事業者と連邦政府が地域振興を目的とした資金提供を行っています。
    ◎ゴアレーベンへの補助金支給
    ドイツでは放射性廃棄物処分場の建設等に関して
    制度化された地域振興方策はありません。しかし、ゴ
    アレーベン・プロジェクトでは、関係自治体の地域振
    興のために連邦政府と州の間に2回にわたって行政
    協定が結ばれ、ゴアレーベン及び周辺自治体とそれ
    らの自治体の所在するリュッヒョウ・ダンネンベルク郡
    の財政負担を補償するために補助金が支給されまし
    た。
    第1回目の協定は1979年2月に結ばれ、1979年
    から10年間で合計3億2,000万マルク(1979年当時
    の日本円で約440億円)の補助金が、連邦政府から
    州政府に支払われました。
    第2回目の協定は1990年3月に締結され、1990年
    から6年間で総額9,000万マルク(1990年当時の日
    本円で約80億円)を支払う取り決めがなされました。
    2回目の協定による補助金の支払いは、処分場計画
    に反対する州が受け取りを拒否したため、最初の2
    年間で中断されました。
    これらの補助金は法令に基づく制度的なものでは
    ないため、州を通じて支払いを受けた地元の郡及び
    自治体には、使途についての報告義務はありません。
    支給された補助金については、防災関連の支出のほ
    か、観光振興のための特別プログラムや名所•旧跡
    のための特別プログラムに対する支援、道路、公会
    堂や保養センター等の公共施設の建設等が主な使
    途として報告されています。
    ◎コンラッド処分場における地域振興の枠組み
    一方、制度化されたものではありませんが、新たな
    枠組みによる処分場地元自治体等に対する地域振
    興方策が実施されている例もあります。
    すでにサイトが決定し、処分場設置準備が進めら
    れている非発熱性放射性廃棄物(低中レベル放射
    性廃棄物に相当)のためのコンラッド処分場の立地
    地域では、地域振興を目的とした財団(コンラッド処
    分場財団と呼ばれています)が2011年12月に設置
    されました。廃棄物発生者である電気事業者と連邦
    政府は、同財団を通じて、処分場の閉鎖までの間、
    福祉や環境、若者支援、スポーツ振興、保養などの
    ための立地地域振興事業に総額1億ユーロ(約130
    億円)の資金を提供することになっています。この資
    金については、電気事業者が4分の3を、連邦政府
    が4分の1を拠出することになっています。
    ◎高レベル放射性廃棄物処分委員会の勧告
    高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7
    月に公表した最終報告書において、処分場の影響を
    受ける地域に対し、処分場の建設と廃棄物の輸送に
    伴って生じる負担に対する持続的な補償を行うことが
    必要であるとしています。同委員会は、地域ごとの補
    償内容に関する戦略を策定し、連邦政府と処分場サ
    イトが存在する地方自治体が協定を結ぶことで実施
    することを勧告しています〇
    126
    ドイツ
    V.情報提供•コミュニケーション
    1.公衆との対話
    ポ^2ン
    2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サ
    イト選定法)では、新たに公衆や地元自治体等の参加を得ながら複数のサイトから処分場建設地
    を絞り込んでいくプロセスが導入されました。また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放
    射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に提出した最終報告書において、連邦レベル、地域横断レ
    ベル、地域レベルのそれぞれにおいて公衆参加のための委員会や合議体を設置して、公衆参加を
    促進することを勧告しています。
    ◎「サイト選定法」に基づく選定プロセスにおける
    公衆参加
    「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定
    に関する法律」(サイト選定法)に基づく手続きでは、
    まず国民各層の代表者33名で構成される「高レベ
    ル放射性廃棄物処分委員会」が、サイト選定基準や
    サイト選定手続きの検討を行うこととされており、同委
    員会は2014年から検討を行ってきました(TIV.処分
    地選定の進め方と地域振興」参照)。この委員会の
    会合はすべてインターネットで中継され、議事録や会
    議資料、報告書も公開されています。
    選定手続きの開始後は、実施主体である連邦放
    射性廃棄物機関(BGE)が提案する複数の候補地
    から、公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことに
    なっています。サ仆選定法においては、これらの手
    続きの期間を通じて、インターネットなどのメディアを介
    して関連の情報発信•意見聴取を行うことを規定し
    ています。
    また、サイト選定に関わる以下のような重要な事項
    については公衆や関係する州や地元自治体が見解
    を表明する機会を作らなければならないとしていま
    す。
    〇地上からの探査対象サイト地域の選定
    〇地上からの探査計画の策定
    〇地下での探査対象サイトの選定
    〇地下での探査計画の策定
    〇候補サイトの最終比較



    高レベル放射性廃棄物
    処分委員会
    サイト選定基準や手続きの検討
    サイト選定基準の決定
    複数の候補サイト区域の提案
    州•自治体関与
    地域・地域横断レベル
    サイト区域
    専門会議
    地域会議
    地域代表者専門会議
    処分地の決定
    社会諮問委員会
    連邦レベル
    サイト選定における公衆参加
    (サイト選定法などより作成)
    127
    情報提供•コミュニケーション>>>
    ◎公衆参加の枠組み
    高レベル放射性廃棄物処分委員会は、サイト選定
    法に基づき、公衆参加についても検討することとなっ
    ていましたカ\ 2016年7月に公表した最終報告書に
    おいて、連邦、地域横断、地域の3つのレベルで、市
    民代表や各地域の住民などで構成される公衆参加
    のための委員会や合議体を設置することを勧告しまし
    た(下表参照)。この勧告は2017年の改正により、サ
    仆選定法に規定されました。これらの委員会•合議
    体は、サ仆選定プロセスの各段階において、公衆参
    加の結果を報告書としてとりまとめ、提出することとさ
    れています。
    これらの委員会•合議体のうち、連邦レベルの公
    衆参加組織である社会諮問委員会には、議会選出
    委員の12名、及び市民代表委員6名の合計18名
    で構成されます。市民代表委員のうち、2名は16歳〜
    27歳の若年層を代表する委員とされています。社会
    諮問委員会は、2016年に半数の委員で活動を開始
    し、現在は18名の委員で活動を行っています。設置
    後、社会諮問委員会は、サイト選定法や公衆参加の
    あり方、地質学的データ等をテーマに、市民を交えた
    対話集会やワークショップなどの公開イベントを開催し
    ています。
    また、2020年9月に実施主体である連邦放射性
    廃棄物機関(BGE)が、サイト選定の第1段階の中
    間報告書を公表し地質学的に好適なサイト区域を公
    表しました。これを受け連邦放射性廃棄物処分安全
    庁(BASE)は、地域横断レベルの公衆参加の場と
    なる「サイト区域専門会議」のキックオフ会合を2020
    年10月17日と18日の2日間にわたって開催しました。
    このキックオフ会合では、1日目にサ仆選定手続きや
    BGEが提出した中間報告書に関する説明が行われ
    た後、2日目にサイト区域専門会議の今後の活動のあ
    り方について議論が行われました。今後、2021年2
    月、4月、6月に会合を行い、BGEの中間報告書につ
    いて協議を行い、結果を取りまとめる予定です。
    ◎候補地域•候補サイトにおける対話活動
    サイト選定法では、連邦放射性廃棄物処分安全庁
    (BASE)が、サイト選定手続きを監督するとともに、
    サ仆選定手続きの早い段階から全期間にわたり、プ
    ロジェクトの目的、手段及び実現状況、発生すると考
    えられる影響に関する情報を提供することとされてい
    ます。この手続きは、インターネットなどの媒体を通じ
    た対話志向のプロセスで実施すべきであることが規
    定されています。
    また、BASEは、公衆に包括的な情報提供を行う
    ために、情報提供を行うインターネット・プラットフォー
    ムを2017年に設置しました。このプラットフォームでは、
    BASEや実施主体であるBGEが作成したサイト選定
    手続きに関する重要文書を継続的に公表することが
    サイト選定法に規定されています。
    さらにサイト選定法では、サ仆選定における提案
    が示された際の見解表明手続き後に、BASEが示さ
    れた見解などに関する検討会議を地元において開催
    することが規定されています。
    一方で、実施主体である連邦放射性廃棄物機関
    (BGE)は、2020年9月のサイト区域の公表後、各
    サイト区域とのオンラインでの対話を行い、質問や意
    見の受付を行っています。
    サイト選定手続きにおける公衆参加の枠組み
    サイト選定プロセス
    第1段階 地上探査サイト地域の選定 第2段階 地下探査サイトの選定 第3段階 処分場サイトの提案・合意
    委員会・合議体 の設置レベル サイト区域選定 地上からの 探査サイト地域選定 地上からの 探査の実施 地下探査 サイト選定 地下探査の実施 サイト提案・合意
    連邦 社会諮問委員会
    地域横断 サイト区域 専門会議 地域代表者 専門会議 地域代表者専門会議 地域代表者 専門会議 一
    地域 一 地域会議 (多数) 地域会議 (多数) 地域会議 (複数) 地域会議 (複数) 地域会議 (!カ所)
    128
    ドイツ
    2.意識把握と情報提供
    ポ^2ン
    ドイツでは、サイト選定における公衆参加や情報提供の責任を有す連邦放射性廃棄物処分安
    全庁(BASE)が、放射性廃棄物処分の実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)などと
    サイト選定に関する情報提供などを行っています。BASEは、每年11月にサイト選定に関連す
    るステークホルダーが参加する情報共有会議を開催しています。
    また、実施主体であるBGEは、ドイツ各地で関心を有す市民に対して、サイト選定に関する
    イベントによる情報提供や移動展示車両を使った情報提供も各地で開催しています。
    ©BASEによる情報提供
    ドイツでは、サイト選定法において、連邦放射性廃
    棄物処分安全庁(BASE)がサイト選定における公
    衆参加や情報提供の責任を有することが規定されて
    います。BASEは、毎年サイト選定に関する情報を
    関係するステークホルダーとの間で共有するための情
    報共有会議を開催しています。情報共有会議は、毎
    年11月に開催されており、BGE、社会諮問委員会、
    BASEがそれぞれの立場から、ドイツにおけるサイト
    選定の現状の報告などを行っています。このほかに
    BASEは、ドイツ各地において、BGEや社会諮問委
    員会とイベントを開催し、サイト選定の進披状況や公
    衆参加の方法などについて情報提供を行っています。
    ◎実施主体による広報活動(情報提供)
    実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)
    は、2017年9月のサイト選定の開始後、ドイツ各地に
    おいて情報提供イベントなどを開催しています。この中
    には、14から30歳の若者を対象としたものや研究開
    発をテーマとしたワークショップも含まれています。2019
    年12月には、「サイト選定の日」と称する3日間のイベン
    卜を行い、情報提供やディスカッションフォーラムなどを
    開催しました。このほか、BGEは、ウェブサイトにおい
    て、サ仆選定に関連した活動等に関して積極的にプ
    レスリリースで公表しているほか、移動展示車両で各
    地を巡回する情報提供活動も実施しています。
    「サイト選定の日」の様子
    (BGE提供)



    情報提供イベントの様子(上)及び
    移動展示車両での情報提供(下)
    (BGEウェブサイトより引用)
    129
    諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
    2021年1月現在
    英国における
    高レベル放射性廃棄物の処分について
    600 km
    ‘、、幽
    ヽー, /
    英国の基本データ
    面積 242,495平方キロ
    人口 67,142 千人(201 8 年)
    首都 ロンドン
    言語 英語(ウェールズ語、ゲール語等使用地域あり)
    通貨 ポンド(1ポンド=137円)
    高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
    I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

英国政府は、放射性廃棄物管理政策を検討する専門委員会のメンバーを公募し、その委員会に
よる勧告を政府が受け入れる形で、高レベル放射性廃棄物を地層処分する方針を2006年に決め
ました。
◎原子力エネルギー政策の動向
英国には商業用原子炉として、26基のガス冷却炉
(GCR、マグノックス炉)、14基の改良型ガス冷却炉
(AGR)、1基の加圧水型軽水炉(PWR、1995年
運転開始)が順次導入されました。初期に導入され
たGCRは全て閉鎖済みであり、操業中のAGR14基
も2023年以降、順次運転を終了する見通しです。
英国政府は、温室効果ガスの排出量抑制やエネ
ルギー安全保障の観点から、2030年代までに電力
供給の脱炭素化を目指し、再生可能エネルギー、原
子カ、ガス、二酸化炭素の回収•貯蔵を用いた多様
なエネルギーミックスの構築をサポートする考えです。
民間による原子力発電への新規参入や投資の促進
を目的に、2013年エネルギー法が制定されました。
2020年12月時点で、6基の新規原子炉を建設•操
業予定です。
2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発
電所の事故を受け、原子力施設の安全管理などを規
制する原子力規制局(ONR)は、英国政府の指示
により、この事故による英国の原子力安全に与える影
響を調査しました。この調査結果による新規原子炉
の計画を含めた、大きな政策の変更はありません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
英国の原子力発電で発生する使用済燃料の発
生者は、GCRを所有する「原子力廃止措置機関」
(NDA)、AGR14基とPWR1基を所有する民間発
電事業者の「EDFエナジー社」(フランス電力会社
の英国子会社)です。これらの原子炉から発生する
使用済燃料のうち再処理予定があるものは、再処理
施設のあるセラフィールドに輸送(主に鉄道)されてい
ます。現時点では、EDFエナジー社から発生する使
用済燃料の一部については、同社が最終的な管理
方針を決定しておらず、発電所内で貯蔵しています。
なお、NDAは、かつての英国の原子力産業界、
研究開発機関カヾ持っていた原子力施設を所有し、運
転・操業し、廃止措置及び放射性廃棄物の処理処
分を行うために2005年に設立された政府外公共機関
(NDPB)です。NDAは、個々の原子力サイトに存
在する原子力施設を操業するサイト許可会社(SLC)
と管理•操業契約を締結しますが、SLCの経営は国
際競争入札で決定する親会社(PBO)が行います。
◎セラフィールドの再処理施設
英国の北西部、セラフィールドに再処理施設があ
り、1950年代から、英国内で発生した使用済燃料の
NDAのセラフィールドサイト
(セラフィールド社ウェブサイトより引用)
酸化物燃料再処理プラント(THORP)内の
使用済燃料貯蔵プール
(セラフィールド社ウェブサイトより引用)
132
英国
A反
m参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
石油
0.3%
水力
2.4%
その他
33.1% 天然ガス
総発電電力量 39.4%
3,334.24 億 kWh
原子力
0 19.5%
英国の電力供給構成(発電量- 2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
2018 年 英国 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 3,334.24 213.29 -22.21 3,525.32 2,997.75
◎原子力発電設備容量
合計15基892.3万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地


ドーンレイ再処理施設(閉鎖)*
ドーンレイ低レベル
放射性廃棄物処分場
スコットフント
エディンバ\ラ人
〇 ・
目匕アイルランド
セラフィールド再処理施設(操業終了)*
アイルランド
低レベル放射性廃棄物処分場
(LLWR)
イングランド
[フェールズ]
原子力発電所(商業用、運転中)
低(中)レベル放射性廃棄物処分場
再処理施設
ロンドン
・高レベル放射性廃棄物(廃液を含む)の中間貯蔵
133
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
他、外国の使用済燃料も委託契約に基づいて再処理
しています。再処理で製造されたガラス固化体は、再
処理施設内で貯蔵されています。セラフィールドには、
原子力廃止措置機関(NDA)が所有する2つの再
処理施設一酸化物燃料再処理プラント(THORP)と
マグ、ノックス再処理プラントーがあります。THORPは、
2018年11月に使用済燃料の再処理作業を終了し、
マグノックス再処理プラントは2021年に操業を終了す
る予定です。
◎処分方針
再処理で製造されたガラス固化体は、冷却のため
に少なくとも50年間貯蔵した後、地層処分する方針
です。セラフィールドの再処理施設では、外国の使
用済燃料を再処理しているほか、施設の操業計画に
よっては、再処理しない使用済燃料が残る可能性が
あります。それらの所有者が、使用済燃料を放射性
廃棄物と位置付けた場合には、それを容器に封入し
て地層処分する可能性も考慮しています。
◎処分方針が決定するまでの経緯
英国⑴において、高レベル放射性廃棄物を地層
処分するという最終的な管理方針は、2001年から政
府が実施している、「放射性廃棄物の安全管理」と
呼ばれる政府のアクションプログラムを通じて2006年
に決定しました。政策開発•決定の方法として、公開
討論を通じて政府に勧告してもらう方式を打ち出した
ことが特徴です。これは、放射性廃棄物政策に対す
る公衆の信頼を得るためには不可欠だという認識にょ
るものでした。公開討論の運営をどの組織が担当す
るかについても、広く意見を求めました。政府は、公
開討論の運営•政策提案を担う組織として、委員長
を含む13名を公募•選任し、2003年に放射性廃棄
CoRWMが2006年7月に
まとめた政府への勧告
物管理委員会(CoRWM)を設置しました。
CoRWMは公衆・利害関係者参画プログラム(PSE)
を進め、管理方針が未定の放射性廃棄物の管理の
在り方について、技術・コスト面だけでなく、社会・
倫理面からも検討し、協議を重ねました。2006年に
CoRWMが提出した勧告を政府が受け入れ、高レベ
ル放射性廃棄物等の地層処分実施を含む管理方針
を決定しました。処分の実施主体は、高レベル放射
性廃棄物等の中間貯蔵の責任を有していた原子力
廃止措置機関(NDA)に割り当てました。
また、CoRWMは勧告において、地層処分場の立
地選定における成功要因として、自治体の“主体的
参加”と“パートナーシップ”(互恵関係)を挙げていま
す。これに基づいて、政府は引き続き「放射性廃棄
物の安全管理」プログラムを継続しており、地層処分
場のサイト選定を公募方式で進めているところです。
高レベル放射性廃棄物の管理政策の決定までの経緯
〜「放射性廃棄物の安全管理」アクションプログラム〜
2001年9月 環境・食糧•農村地域省(Defra)が英国内の 放射性固体廃棄物管理のための政策開発に向 けた提案をまとめ、意見募集。〔第1期〕
2003 年 政策勧告を検討する「放射性廃棄物管理委員 会」(CoRWM)の設置を決定。委員を公募. 任命し、11月から検討作業を開始。〔第2期〕
2006年7月 CoRWMが放射性廃棄物管理オプションに関 する勧告を政府に提出。
2006年10月 政府が勧告を受け入れ、高レベル放射性廃棄 物等の地層処分実施を含む管理方針を決定。
200フ年4月 原子力廃止措置機関(NDA)が、地層処分の 実施主体となる。
200フ年6月 Defraが実施体制や処分地選定プロセスなど を含む「地層処分の実施枠組み」案をまとめ、 意見募集。〔第3期〕
2008年6月 Defraが白書「地層処分の実施枠組み」を公表。 処分実施主体の役割を、中間貯蔵の責任を有 していた原子力廃止措置機関(NDA)に割り 当てるとともに、政府主導のサイト選定プロ セスを開始。〔第4期〕
[1]英国の正式名称は、グレートブリテン及び北アイル
ランド連合王国です。イングランド、ウェールズ、スコッ
トランド、北アイルランドの4つの自治政府から構成さ
れます。地層処分場では、高レベル放射性廃棄物と低中
レベル放射性廃棄物の両方を処分する計画です。ただし、
高レベル放射性廃棄物の地層処分方針については、ス
コットランドが賛同していないため、高レベル放射性廃
棄物に限って、スコットランドは実施体制の枠組みには
含まれていません。
134
英国
A反
II-地層処分計画と技術開発
1.処分計画
ポ^2ン
英国では、高レベル放射性廃棄物を含め、既存の浅地中処分場では処分できない放射性廃棄物
を地層処分するという方針です。地層処分場には、高レベル放射性廃棄物の他に、中レベル放射
性廃棄物や一部の低レベル放射性廃棄物も併置処分することを想定しています。
◎地層処分対象の放射性廃棄物
英国では、既存の浅地中処分場では処分できない
放射性廃棄物を地層処分する方針です⑵。このた
め、現在、処分地の選定が進められている地層処分
場では、高レベル放射性廃棄物以外にも、再処理施
設や原子力発電所などから発生する放射性廃棄物
も処分する計画です。
また、改良型ガス冷却炉から発生する使用済燃料
の一部と加圧水型原子炉(1基)から発生する使用
済燃料については、現時点では再処理する計画が
未定であるため、これらを処分キャニスタに封入して
地層処分する可能性も考慮しています。
さらに、核燃料として用いる濃縮ウラン以外の劣化
ウラン、再処理で回収したプルトニウムやウランは、現
時点では放射性廃棄物に分類していませんが、将来
において用途がないと決定した場合には、それらを地
層処分することを想定しています。
地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管
理会社(RWM社)は、確保すべき中間貯蔵施設や
地層処分場の規模を検討するために、3年毎に英国
内の放射性廃棄物のインベントリを評価しています。
2016年4月時点のデータに基づき推定した、地層処
分の対象廃棄物の総量見通しは右表のようになって
います。
◎処分形態
ガラス固化体と使用済燃料は、いずれも処分キャ
ニスタに封入して処分する方法が検討されています。
処分キャニスタの材質は、処分地の岩盤•地下水条
件などによって変わりますが、銅ー鋳鉄製のキャニスタ
と鋼鉄製キャニスタが検討されています。ガラス固化
体の場合は3体を1つの処分キャニスタに封入します。
また、PWR燃料集合体は4体、AGR燃料体は16
体を1つの処分キャニスタに封入します。
[2]既存の浅地中処分場として、NDAが所有するドリッ
グ村近郊にある低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)
(1959年から処分開始)があります。2007年に策定され
た低レベル放射性廃棄物管理政策では、一部の小規模事
業者が採用できる可能性は残しつつも、原子力施設から
発生する放射性廃棄物用には、新たな浅地中処分施設を
設置しない方針です。
地層処分の対象廃棄物の総量見通し
種類 地層処分施設に定置する廃棄物パッ ケージの体積(レファレンスケース)
高レベル放射性廃棄物 9,860 m3
中レベル放射性廃棄物 461,000 m3
地層処分対象の 低レベル放射性廃棄物 11,400 m3
使用済燃料* 68,200 m3
プルトニウム・ 620 m3
ウラン・ 193,000 m3
合計・* 744,000 m3
・これらは現時点では廃棄物と認識されていません。
・概数のため合計は合いません。 (出典:NDA Report no. DSSC/403/02 (2018)) 英 国 ガラス固化体用 使用済燃料(PWR)用 使用済燃料(AGR)用 廃棄物パッケージ 廃棄物パッケージ 廃棄物パッケージ ガラス固化体と使用済燃料の処分パッケージ案 (出典:NDA Report no.DSSC/441/01(2016)) 135 地層処分計画と技術開発>>> ◎処分場の概要(処分概念) 英国政府が処分場のサイト選定を進めています が、現時点では具体的な候補地が未定です。地層 処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社 (RWM社)は、3種類の地質条件を仮定して、地 層処分システムの基本概念設計の開発を進めていま す。地層処分場の設置深度は地下200-1,000m の範囲が考えられています。 技術検討段階の処分場概念では、①結晶質岩の 場合には深度650mで処分キャニスタを縦置き、②堆 積岩の場合には深度500mで横置き、③岩塩層の場 合には深度650mで横置きーとしており、様々な技 術オプションを検討しているところです。 ◎処分事業の実施計画 英国政府は、2014年7月に公表した地層処分施 設の設置に向けたサイト選定プロセス等を示した白書 「地層処分一高レベル放射性廃棄物等の長期管理 に向けた枠組み」に代わる政策文書「地層処分の 実施一地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管 理」を2018年12月に公表しています。上記文書に おいて、以下のような英国の地層処分事業のタイムス ケールが示されています。 〇約20年間:地域社会との協働、サイト評価、サイ 卜特性調査 O100+a年間:地層処分施設の建設と操業 地層処分場の概念図 (出典:DECC, Implementing Geological Disposal. A Framework for the long-term management of higher activity radioactive waste (2014)) また、地層処分施設の開発に関しては、環境許可、 土地利用計画に基づく開発同意令(P146参照)及 び原子力サイト許可が必要となります。 英国政府は、EU指令(201レ70/Euratom)に基 づき作成した『英国における使用済燃料及び放射性 廃棄物の責任ある安全な管理のための計画の設定』 (2015年8月公表)において、地層処分施設の利 用が可能となる時期について以下のように設定してい ます。 02040年頃:低レベル放射性廃棄物及び中レベ ル放射性廃棄物の受入開始 02075年頃:高レベル放射性廃棄物の受入開始 期間 事業段階 ~5年 100 年+α 対話 グループ 特定地域 ボーリングを 地下調査 建設 操業 閉鎖 (Taking) 形成 での研究 利用した地上調査 (Underground (Building the (Operationg (Closing (Forming Groups) (Local Studies) (Surface-based site investigation using boreholes) investigation) infrastructure for the disposal facility) the facility – disposing of radioactive waste) the facility) 土地利用計画 (Land-use Planning) 規制プロセス 環境許可 (Environmental Permitting) 原子力サイト許可 (Licensing) 地層処分事業のスケジュール (出典:BEIS, IMPLEMENTING GEOLOGICAL DISPOSAL – WORKING WITH COMMUNITIES (2018)の図を一部修正) 136 英国 A反 2.研究開発•技術開発 ポ^2ン 放射性廃棄物管理の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)は、2004年エネルギー法に よって、地層処分を含む研究を実施することが決められています。地層処分の研究開発について は、NDAの完全子会社で地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が 実施しています。 ◎研究機関 英国における地層処分の研究開発は、地層処 分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社 (RWM社)が実施しています。RWM社は、地層 処分システムの開発段階などを通じて必要とされた 研究開発を実施していくとしています。なお、RWM 社は、放射性廃棄物の長期管理に関する政府の 政策を実施する責任を有する原子力廃止措置機関 (NDA)の完全子会社であり、研究開発の資金は NDAカヾ提供しています。 ◎研究計画 RWM社は2020年10月に、地層処分に関する知 識ベースの開発のほか、地層処分事業に関心を持つ 人との対話や情報提供を目的として『科学技術計画』 を公表しました。下記の4つの分野ごとに背景や目的、 必要となる知識や情報を示して整理することで、研究 ニーズの明確化、優先順位や研究資金運用の効率 化を図る考えです。 〇処分システム仕様 0処分システム設計 〇評価 〇知識の拡充 今後、RWM社はサイト固有の地層処分施設の開 発に必要な技術開発を特定するとしています。 ◎研究支援 RWM社は2020年8月に、英国内の地層処分に 関する科学技術や専門知識の結集と形成、次世代 の研究者の育成サポートを目的として、マンチェスター 大学、シエフィールド大学と共同でFRWM研究サポー トオフィス(RWM RSO)Jを設立しました。 RWM RSOは、先進製造、応用数学、応用社会 科学など9つの学問領域毎に英国内の大学から募集 NDAのミツション・ステートメント 「原子炉の浄化と廃棄物管理の問題に対して、安全かつ持 続可能で、国民に受け入れられる解決策を提示する。これ は、決して安全性とセキュリティ面に妥協せず、社会的ま た環境面での責任を十分に考慮し、納税者の利益を常に優 先し、ステークホルダーとの関わりを積極的に構築する。」 『英国の高レベル放射性廃棄物等の地層処分を 支援するためのNDAの研究開発戦略』より (出典:NDA/RWMD/O11) 廃棄物 インベントリ インプット 規制要件 ステークホルダー セーフティケース 仕様遵守確認書(LoC) 環境・持続可能性 廃棄物受入基準(WAC) 報告書 英 国 アウトプット 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係 137 地層処分計画と技術開発>>> した研究リーダーを置き、様々な研究活動をコーディ ネートします。RWM社は資金提供するだけでなく、 自社の専門家による研究支援も行います。 ◎地下研究所 英国には、現在のところ、高レベル放射性廃棄物 処分の研究開発のための地下研究所はありません。 RWM社が検討している処分事業の実施スケジュー ル案では、地層処分場の建設と平行して地下特性調 査を行う予定としています。 ◎安全性の確認と知見の蓄積 英国政府は2014年の白書において、地層処分施 設から人間及び環境の保護が確保される必要があ るとしており、開発事業者(地層処分施設の実施主 体である放射性廃棄物管理会社(RWM社))に対 して、提案した施設のすべての側面に関する安全面 での論拠を提示するよう求めています。またRWM社 は、地層処分施設がどのように安全性、セキュリティ 及び環境保護に関する高度な基準を満たすのかを 明示するために、セーフティケースを開発し、維持す る必、要力ヾあるとしています。 環境規制機関(EA)等は、2009年2月に「地層 処分施設の許可要件に関するガイダンス」を公表しま した。このガイダンスでは、地層処分施設の開発者 及び操業者は、地層処分施設が人間及び環境を適 切に保護するものであることを立証するよう求めてい ます。 RWM社は2010年12月に、最初の「一般的な条 件での処分システム•セーフティケース」(gDSSC) を公表し、2017年8月に、インベントリ等の情報を更 新した2016年版のgDSSCを公表しています。この gDSSCは、地層処分事業を3つの領域(放射性廃 棄物の輸送、地層処分施設の建設•操業、地層処 分施設の閉鎖後)に分けて、放射性廃棄物を安全 に処分できることを立証する目的で作成された文書で す。 2016年版のgDSSCは、英国政府の2014年の白 書に基づき、RWM社が実施している地質学的スク リーニングと並行かつ連動した形で取りまとめたもの であり、2014年の白書に基づく初期活動終了後に予 定されている、地層処分施設の受け入れに関心のあ る地域(コミュニティ)との協議において、提供される 情報の一つとなります。 概要 gDSSC Overview 一般的な条件における概要報告書 セーフティ ケース TSC 輸送セーフティケース主要報告書 OSC 操業セーフティケース主要報告書 報告書 ESC 環境セーフティケース主要報告書 TPS 輸送パッケージ安全報告書 TSA 輸送システム安全評価書 操業安全評価VoLl:非放射性建設 Volumes 操業安全評価Vol.2 :通常操業 1-4 操業安全評価V〇し3 :事故時安全評価 評価報告書 操業安全評価V〇し4 :臨界安全評価 PCSA 閉鎖後安全評価書 OESA 操業環境安全評価 gEA 一般的な条件における環境評価 gSEA 一般的な条件における社会経済評価 gHIA 一般的な条件における健康影響評価 Inventory インベントリ報告書 DSS part A 処分システム仕様書パートA:高レベル要件 DSS part B 処分システム仕様書パートB:技術仕様 gTSD 一般的な条件における輸送システム設計 基礎情報 gDFD 一般的な条件における処分施設設計 文書 WPAD 廃棄物パッケージと処分可能性評価 TB 技術背景 RSRs 研究進掛状況報告書 Data データ集 SCP&M セーフティケースの策定•管理 2016年版「一般的な条件での処分システム・セーフティケース」(gDSSC)の文書構成 (出典:NDA Report no. DSSC/101/01(2016)) 138 英国 HI.処分事業の実施体制と資金確保 1.実施体制 ポ^2ン 英国では、政府が高レベル放射性廃棄物等の処分における放射性廃棄物管理方針の決定、サ イト選定の実施などを行っています。高レベル放射性廃棄物処分の安全規制は、原子力規制局 (ONR)や各自治政府が設置している環境規制当局が担当しています。 原子力廃止措置機関(NDA)は、放射性廃棄物の長期管理に関する政府の政策を実施してい ます。地層処分に関する政府の政策の実施は、NDAの完全子会社である放射性廃棄物管理会社 (RWM社)が担当しています。 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM) 独立した精査・助言 規制機関 原子力サイト許可、放射性廃棄物処分の許可 原子力規制局(〇NR)、環境規制機関(EA) 保健安全執行部(HSE)、天然資源ウェールズ(NMW) 北アイルランド環境省(DOENI) 政府 管理政策の策定、プロジェクトの後援、資金調達 ビジネス・エネルギー ・産業戦略省(BEIS) ウェールズ政府(WG)、北アイルランド政府 資金的支援 •資金提供 •情報提供 自治体/地域住民 原子力廃止措置機関(NDA) 放射性廃棄物管理会社(RWM社) 地層処分の計画•実施 •情報提供 放射性廃棄物処分の実施体制 ◎実施体制の枠組み 英国では、英国政府(ビジネス・エネルギー ・産 業戦略省(BEIS))及び自治政府(ウェールズ政府 (WG)と北アイルランド政府)が、放射性廃棄物の 管理及び方針の決定、サイト選定プログラムの実施、 ステークホルダーとの連携などに対する責任を有して います。英国政府及び自治政府に助言を与える諮問 組織として、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM) があり、地層処分の具体化に向けた実施計画を独立 に精査する役割が与えられています。 英国では、放射性廃棄物を処分するためには、2つ の許可一①放射性廃棄物を処分するための許可、 ②原子力施設の操業及び建設などの許可(原子力 サイト許可)—の両方が必要です。 放射性廃棄物を処分するための許可は、連合王国 を構成する各自治政府(イングランド、ウェールズ、ス コットランド、北アイルランド)が設置している環境規制 当局が発給します。例えば、処分場の立地点がイング ランド領域内であれば、イングランドを管轄する環境規 制機関(EA)カヾ行います。 原子力施設の操業及び建設などの許可は、原子 カ規制局(ONR)が発給します。ONRは、保健安 全執行部(HSE)の内部組織でしたが、2013年エネ ルギー法により、原子力施設に係る安全管理や放射 性廃棄物の輸送などを所管する独立した規制当局に なっています。また、HSEは地上からの調査に関わる 作業の衛生及び安全性を確保する役割を担っていま す。 英国では、地層処分の実施面において、地域社会 (コミュニティ)と協力して作業を進める主体的参加 方式を取り入れています。地域社会は、地層処分施 設のサ仆選定プロセスに関して、実施主体と正式な 話し合いを開始することができます。また、十分な情 報が提供された上での地層処分施設の受入れに関 する住民の支持を調査・確認するまで、いつでも撤退 できるとしています。 139 処分事業の実施体制と資金確保»> ◎実施主体 英国の放射性廃棄物の長期管理に関する政府の 政策は原子力廃止措置機関(NDA)が実施し、高 レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する政府の 政策は放射性廃棄物管理会社(RWM社)が実施 します。NDAは、老朽化した原子力施設の廃止措 置や放射性廃棄物の中間貯蔵を安全に行うために、 2005年に設立された政府外公共機関です。英国に おける放射性廃棄物の処分方針の策定を受けて、そ れらの処分を実施する役割が加えられました。処分 方針の決定後に必要な法改正が行われ、2007年4 月より処分実施主体となりました。同時に、高レベル 放射性廃棄物等の地層処分場の計画立案や開発の ほか、地層処分以外の方法で処分する放射性廃棄 物の全体計画立案などを行うために、NDAの内部 組織として放射性廃棄物管理局(RWMD)を設置 しました。NDAは、2014年4月にRWMDを分離し、 NDAの完全子会社として、放射性廃棄物管理会社 (RWM社)を設立しました。 ◎安全規則 英国では、2009年2月に、イングランドとウェールズ を当時所掌していた環境規制機関(EA)などが、高 レベル放射性廃棄物等の地層処分施設に関する許 可申請を検討する際の基礎となる原則及び要件につ いて記載した「地層処分施設の許可要件に関するカ、’ イダンス」を策定しました。この中で、地層処分施設 の開発者•操業者が満たすべき管理要件、サイトの 使用、当該施設の設計、建設、操業及び閉鎖に関し て満たさなければならない放射線学的及び技術的な 要件などを示しています。 地層処分の基本防護目標として「処分時及び将来 において、人間の健康、利益及び環境の健全性が守 られるとともに、人々の信頼を喚起し、費用を考慮した 方法によって実行」するとしています。また、地層処 分場が閉鎖された後の制度的な管理期間では、最も 大きなリスクを受ける人間を代表する個人が、一つの 地層処分施設から受ける放射線学的リスクが10-6/ 年以下であることをガイダンスレベル(目標値)として 設定しています。 Geological Disposal Facilities on Land for Solid Radioactive Wastes NI£A~ Enwrotwncm 地層処分施設の 許可要件に関する ガイダンス (写真提供:EA) 安全基準に関する指針 許可期間内 線量拘束値:0.3mSv/年 サイト拘束値:0.5mSv/年 許可期間後 リスク基準値:IO/年
注)許可期間とは、地層処分場を操業する期間、及び閉鎖後において
能動的な制度的管理下に置かれる期間を指します。
140
A反
成&
◎処分に関わる法令の体系図
放射性物質法(RSA93)(2〇11年改正)
環境許可(イングランドとウェールズ)規則2016
事業規制
都市田園計画法
(T&CP90)
2008年計画法
2015年社会基盤計画
(放射性廃棄物地層処分施設)令() 労働安全衛生管理規則 労働安全衛生法 (HSWA74) 電離放射線規則 安全規制 英 国 ()イングランドのみ適用
141
処分事業の実施体制と資金確保»>
◎処分の法制度
内 容
事業規制 使用済燃料及び放射性廃棄物の管理・処分施設を含む原子力施設の建設、操業などについては、1965年原子 カ施設法に基づき、原子力サイト許可の発給を受ける必要があると規定されています。 原子力サイト上などでの放射性廃棄物の処分の実施に際しては、放射性物質法に基づき、スコットランド環境 保護局(SEPA)及び北アイルランド環境省(DoENDによる事前の許可取得が必要であるとされています°イン グランドとウェールズでは、法改正により放射性廃棄物を処分するためには、環境許可(イングランドとウェー ルズ) 規則 2016に基づく許可が必要となっています。 1990年都市田園計画法では、地方の関連機関から計画許可を得ることが必要であると規定されています。 また、イングランドにおいては、2008年計画法に基づいて、地層処分施設の候補サイトを評価するための ボーリング調査等が行われます。
安全規制 放射性廃棄物に関する安全規制については、1965年原子力施設法及び1974年労働安全衛生法、これらの 法律の関連規則によって定められています。 原子力関連事業を含むすべての事業の従事者及び影響を受ける可能性のある一般公衆の健康及び安全の確保 については、1974年労働安全衛生法の規定により原子力規制局(0NR)が規制を行うことが定められていま す。また、同法に基づき策定されている電離放射線規則では、作業員及び公衆に対する被曝線量限度に関して、 作業員については年間20mSv、一般公衆については年間1mSvと規定されています° また、原子力施設の設置・操業を行うには、1965年原子力施設法に基づき、0NRによる許可発給が必要と なることが規定されています。さらに0NRは発給する許可に対して、安全確保や放射性廃棄物管理のための付 帯条件を設定する権限を与えられています。
資金確保 放射性廃棄物処分の資金確保制度については、政府白書「放射性廃棄物管理政策レビュー 最終結論」におい て、放射性廃棄物処分に係る費用の負担の汚染者支払いの原則が示されています。 現時点で発生している、もしくは発生が見込まれる高レベル放射性廃棄物の処分に係る資金確保について規定 する法令はありませんが、新規原子炉の廃止措置及び放射性廃棄物管理のための資金確保については、2008年 エネルギー法により規定されています。
環 境 環境保護については、1995年環境法により現在の規制枠組みが定められています°同法に基づいて、イング ランドとウェールズを所掌していた環境規制機関(EA)及びスコットランド環境保護局(SEPA)が設置されて います。なお、EAは2013年4月にイングランドのみを所掌する機関となっています。ウェールズでは、新た な組織として、天然資源ウェールズ(NRW)を設置し、EAの機能などを引き継いでいます。 1999年都市田園計画(環境影響評価)規則などに基づき、放射性廃棄物の永久貯蔵または最終処分用に設計 された施設について環境影響評価書を作成することを要求しています。同規則では、環境影響評価書を作成せず に処分場を建設する計画許可を取得することはできないとされています。
原子力責任 原子力責任に関しては、1965年原子力施設法において、原子力事故発生時における許可取得者などの義務や 義務の不履行に伴う賠償などに関しての規定が設けられています。
142
英国
2.処分事業の資金確保
ポ^2ン
英国では、放射性廃棄物の処分費用はその発生者が負担することになっています。廃棄物発生
者である電力会社は、引当金として廃棄物処分費用を確保しています。
再処理施設などを所有する原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物については、その処分
費用は英国政府の負担(国税で負担)です。地層処分の実施主体でもあるNDAは、将来に支出す
る地層処分費用を負債として英国政府に計上しており、2019〜20会計年度年次報告書において
負債額を約106.6億ポンド(約1兆4,600億円)と算定しています。
◎処分費用の負担者
英国では、放射性廃棄物の発生者と所有者は、規
制コストや自身、あるいは規制機関が行う関連研究の
コストを含めて、廃棄物を管理・処分するコストを負
担する責任があるとされています。また、放射性廃棄
物の管理•処分に伴う債務をその発生前から見積っ
ておき、それを満たす適正な資金を引き当てておかな
ければならないこととされています。
◎処分の資金確保制度
英国では、放射性廃棄物管理費用の確保のため
の公的な基金制度はありません。このため、英国で
唯一の民間の原子力発電事業者であるEDFエナ
ジー社(2009年にブリティッシュ・エナジー社を買収
したフランス電力の英国子会社)は、放射性廃棄物
管理費用を引き当てています。2019年末時点では、
15.9億ユーロ(約1,970億円、1ユーロ =124円とし
て換算)を引当金として確保しています。なお、上の
数値は使用済燃料の管理費(約15億ユーロ)を除
いたものとなっています。
一方、再処理施設や既に運転を停止したガス冷
却炉を含め、原子力廃止措置機関(NDA)が所有
する原子力施設の廃止措置費用や放射性廃棄物の
管理費用は、NDAが行う地層処分事業の費用ととも
に、英国政府が負担(国税で負担)することになりま
す。NDAは、それらの費用を負債として、英国政府
に計上します。NDAは、廃止措置や廃棄物管理の
事業を進めつつ、事業効率の改善を図ることで負債
の圧縮を図ります。
新規原子炉の廃止措置及び新規原子炉から発生
する放射性廃棄物の管理費用については、2008年
エネルギー法により、原子力発電事業者が自らの負
(百万ポンド、割引前)
250———
2009 2029 2049 2069 2089 2109 2129
地層処分場に関する将来支出額の推移見込み
(出典:NDA Annual Report and Accounts 2007/08)
担分全額を賄うための確実な資金確保措置を講じる
ことになっています。
◎処分費用の見積額
2007年4月に地層処分の実施主体となった原子
カ廃止措置機関(NDA)は、2007年次会計報告書
(2008年3月末)で地層処分場に関する費用見積
りを公表しています。これによると、廃止措置なども含
めた地層処分場に関する総見積費用(割引前の金
額)は、2008年の価格で122億ポンド(約1兆6,700
億円)です。このうち、NDAが支出する分は約83%
(101億ポンド)、残りはNDA以外の処分場利用者
が負担すべき金額としています。
NDAは2019~20会計年度年次報告書において、
地層処分に関する費用を約106.6億ポンド(約1兆
4,600億円)と算定しています。この算定額は、NDA
が支出する将来費用のうち、今後5年間の費用につ
いては年あたりー1.34%、6年目から10年目の5年間
の費用については年あたりー0.96%、11年目以降の
費用については年あたりー0.11%で割弓|した額です(1
ポンド=137円として換算)。なお、算定率については、
英国財務省がインフレ予測などを元に決定したものを
用いています。
143
処分地選定の進め方と地域振興>>>
IV.処分地選定の進め方と地域振興
1.サイト選定プロセスの状況
ポ^2ン
英国政府はX 2018年12月に政策文書「地層処分の実施一地域社会との協働:放射性廃棄物の
長期管理」を公表し、地域社会の主体性を重視したサイト選定プロセスを開始しました。サイト選
定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心のある人であれば、実施主体との対話を開始するこ
とができます。
◎サイト選定プロセスの開始までの取組
英国政府は、2008年6月に公表した白書「放射性
廃棄物の安全な管理一地層処分の実施に向けた枠
組み」(以下「2008年白書」)に基づいて、地元の“主
体的な参加”を基本とするサイト選定プロセスを進め
ていました。しカ、し2013年1月に、プロセスに参加して
いた3つの自治体が全て撤退しました(P148〜P150
参照)。英国政府は、主体的参加をより効果的に実現
する上での課題を探るために、撤退した地元関係者
や公衆から意見聴取を行いました。英国政府は2014
年7月に公表した、サ仆選定に関する白書「地層処
分の実施一高レベル放射性廃棄物等の長期管理に
向けた枠組み」(以下「2014年白書」)において、自
治体を含む地域社会に対して、地質、社会•経済的
影響、地域への投資等の情報を先行的に提供するこ
との重要性が浮き彫りになったと述べています。そし
て、実施主体と自治体が正式な話し合いを始める前
に、両者の将来の協働に関わる技術的な問題と作業
プロセスに関する情報を利用可能にすることを目指して
「初期活動」と呼ぶ3つの取組みを始めました。
① 全国レベルの地質学的スクリーニング
② 土地利用計画プロセスの開発
③ 地域社会との協働プロセスの策定
1 Northern Iretend
2 Northern England
3 The Pennine$ and adjaoent
4 Eastern England
5 Wates
6 The Welsh Borderland
7 Centre! England
8 East Angba and adjoining areas
9 Bnsto< and Gtoucester regnn 10 London and the Thames VaBey 11 South West England 12 The Hampshire Basin and awning areas 13 The Wealden dislhd ※上記は英国地質調査所(BGS)が地域別指針で採用している地域 区分である。 BGS が「地域別指針」(Regional Guide publication series)を 発行するために採用している地質学的地域(スコットランドを除く) [1.全国レベルの地質学的スクリーニング] サイト選定プロセスの見直しポイントの一っとして、 今後、地域社会が地層処分施設の設置を考える際 に、必要な地質情報を予め利用できるようにするため に、「地質学的スグ>!ーニング」と呼ばれる地質情報
の取りまとめ作業が行われました。2008年白書のプ
ロセスでは「初期スクリーニング」(第2段階)として、
関心表明を行った自治体領域内で不適格なエリアを
判断する段階が設定されていましたが、2014年白書
の「地質学的スクリーニング」はそれとは異なり、英
国のイングランド、ウェールズ、』匕アイルランドを対象と
した、地層処分の長期安全性に関係する地質情報
の選別(スクリーニング)を意味しています。
実施主体のRWM社は、英国地質調査所(BGS)
と協力し、自治体等の行政向けの地域別指針が提供
されている地域区分(左下図)ごとに5つの地質特性
TD岩種、②岩盤構造、③地下水、④自然現象(地
震や氷河作用など)、⑤資源の賦存一を地図上に表
現し、分かりやすい説明をつけた形態でまとめました。
[2. 土地利用計画プロセスの開発]
英国政府は、サ仆選定プロセスへの疑念を払い、
意思決定プロセスを分かりやすく説明する必要性を
認1載しました。
英国では2008年に、エネルギー、運輸、水資源な
どに関する「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」
(NSIP)の計画策定において、その開発者に地域
社会や行政組織、関係団体等と協議する要件を定め
る制度が導入されました。この法制度では、計画審
査庁という独立した組織がプロジェクトの開発を客観
的に検討するプロセスが組み込まれており、最終的な
計画決定は、民主主義的な説明責任を果たす形で
国務大臣が行うことになっています。そこで、英国政
府は2015年3月に、地層処分施設をNSIPと定める
144
英国
A反
法改正を行いました。この法改正では、地層処分施
設の候補サイトを評価するために実施される地上から
のボーリング調査についてもNSIPと定めました。これ
により、将来、RWM社は、ボーリング調査や地層処
分施設の開発同意申請を行うことになります。
さらに英国政府は、RWM社がその申請書を作
成するガイダンスとして、また、計画審査庁や国務大
臣が申請書を検討する際の指針としての役割を担う
「国家政策声明書」を2019年10月に制定しました。
この声明書には、英国政府の地層処分方針、地層
処分施設の開発や建設の必要性、当該施設に関す
る評価原則などが記載されています。
[3.地域社会との協働プロセスの策定]
英国は地方によって社会条件や地方自治の構造
が複雑多様であるため、サ仆選定プロセスは分かり
やすくありながら、柔軟性を高くする必要があるとい
う、相反する目標をバランスさせつつ、地域社会の考
えが適切に代表されるあり方•進め方を示す重要性
がクローズアップされました。
英国政府は2014年白書において、地元の撤退権
について、地元の“主体的な参加”という考え方と整
合するように、サイト選定プロセスが進んだ将来に形
成されるコミュニティパートナーシップに参画する自治
体は、地層処分施設の立地に関わる住民の支持を
確認するまで撤退権を有すると改めました。以前の
2008年白書のプロセスでは、地表からの調査結果に
基づき、英国政府が好ましい1つのサイトを決定する
まで撤退権を有するとしていました。
英国政府は、地域社会としてまとまる範囲やその中
での合意方法、住民支持の確認方法、地域社会へ
の投資方法などを検討するために、「地域社会の意
思表示のための作業グループ」(CRWG)を設置しま
した。作業グループの議長は、英国政府の地層処分
事業を所管する省の大臣が務め、コミュニケーション
の専門家、国家レベルの事業の実務関係者、パート
ナーシップの学識経験者がメンバーとして選ばれまし
た。また、地域社会との協働プロセスを策定するため
に、科学技術分野の政策立案において早い段階か
ら市民との対話を促進することを目的とした政策立案
支援プログラム「サイエンスワイズ」(P152参照)を
活用した公衆対話を実施し、意見を聴取しました。
こうした取り組みを踏まえて、英国政府は2018年
12月の政策文書において、地層処分施設の立地へ
の関心をもつ個人、企業、自治体等が実施主体と初
期対話(内輪話)を始め、その後で地域社会との対
話に拡大していくという地域社会との協働プロセスを
取りまとめ、新たなサ仆選定プロセスを開始すること
になりました。
◎新たなサイト選定プロセスの開始 g
英国政府は2018年12月に、2014年白書に代わ
るイングランドの政策文書「地層処分の実施一地域
社会との協働:放射性廃棄物の長期管理」(以下
「2018年政策文書」)を公表し、新たなサイト選定プ
ロセスを開始しました。
5年
10-15 年
地域社会との協働プロセス
(出典:RWM»コミュニティガイダンス(2018)の図を一部修正)
145
処分地選定の進め方と地域振興>>>
この2018年政策文書は、地域社会と実施主体で
あるRWM社との初期対話に関する下記のような政
策を提示することを目的としています。
[初期対話とワーキンググループの設置]
2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセス
では、地層処分施設(GDF)の設置に関心を示す
人、または設置候補エリアを提案したい人であれば、
RWM社との初期対話を開始することができます。初
期対話の申込みは、必ずしも自治体である必要はな
く、土地所有者や企業、団体、個人であっても可能
です。
関心のある人とRWM社がGDFの設置に向けて
更なる検討を行いたいと希望した場合、両者は当該
地域の自治体組織(市議会、州議会など)に報告し
てから、地域社会全体での対話に発展させます。地
域社会全体での対話を開始するにあたり、RWM社、
関心のある人の他、独立したグループ長とファシリテー
タを加えた「ワーキンググループ」を設置します。な
お、英国政府は、ワーキンググループに自治体組織が
入ることが望ましいとする見解を示していますが、必
須条件とはしていません。
ワーキンググループは、その設置を当該地域の自治
体組織に報告した後、RWM社がGDFを設置する
ための潜在的な適合性を確認する「調査エリア」の
特定作業を進めます。調査エリアは、自治体組織の
選挙区を最小単位とするように設定しており、このこと
により、地域社会や自治体組織等の対話への参加可
能者が特定されるとしています。
[コミュニティパートナーシップの設立]
英国政府は、「調査エリア」の地理的範囲は、地
層処分施設(GDF)の候補サイトの評価方法を示し
た文書「サイト評価方法」⑶(次ページ)で定めた立地要
因に基づく検討が進むにつれて変化するものであると
しており、ワーキンググループの活動によって調査エリ
アの範囲が定まっていくにつれて「コミュニティパート
ナーシップ」の範囲に収斂していくと見込んでいます。
同パートナーシップは、当該地域社会における情報共
有、地層処分•サイト選定プロセス・地域の便益に
関する対話と理解を促進するために設立するものとし
ています。同パートナーシップの設立には、調査エリア
にある自治体組織の合意が必須であり、同パートナー
シップの構成メンバーには、少なくとも一つの自治体
組織が参画する必要があるとしています。英国政府
は、同パートナーシップを形成する地域社会(コミュニ
ティ)に対し、経済振興、環境・福祉向上を目的とす
るプロジェクトに限定した形で、年間最大100万ポンド
(1億3,700万円)、地下深部ボーリング調査の実施
に至った際には年間最大250万ポンド(3億4,250万
円)の資金提供を行うとしています。
[住民支持の調査・確認と撤退権に関する取り決め]
英国政府は、2018年政策文書において、自治体
組織(市議会、州議会など)が果たす重要な役割で
ある「住民支持の調査・確認」と「撤退権」に関す
る条件を明確にしました。住民支持の調査•確認を
実施いる前であれば、自治体組織はサイト選定プロ
セスから撤退する権利があります。この住民支持の
調査・確認を行う時期は、コミュニティパートナーシッ
プに参画する自治体組織が決定するものとしつつ、コ
ミュニティパートナーシップに複数の自治体組織が参
画している場合には、全ての自治体組織がその実施
時期に合意しなければならないとしています。また、自
治体組織がサ仆選定プロセスから撤退する権利を
行使する際には、コミュニティパートナーシップに参画
している全ての自治体組織が撤退に合意する必要が
あるとしています。
コミュニティガイダンス
RWM社は、2018年12月に公表した英国政府の政策文
書とともに、「コミュニティガイダンス」を公表しました。
このガイダンスは、地層処分事業やGDFのサイト選定プ
ロセスについて、学びたい人すべてに向けたものとなっ
ています。ガイダンスの中身は、上記の政策文書をかみ砕
いたものあり、平易な英文表現で記述され、紙面デザイン
を工夫し、パンフレットのような読みやすいものとなっ
ています。
146
英国
◎サイト選定プロセスの進接状況
2021年1月現在において、RWM社と地域社会の
協働プロセスが2つの地域において進行しています。
2020年12月にカンブリア州コープランド市が、2021年
1月に同州アラデール市が、それぞれ自治体議会での
審議を経て、ワーキンググループ(以下、WG)を設置
しています。
いずれのWGとも発足したばかりですが、自身のウエ
ブサイトを立ち上げており、今後、住民の参画を促し
ていくとともに、住民の意見を理解し、適性を有する
サイトの受入れや意向を持つ地域社会を追求してい
く方針を明らかにしています。RWM社は、これらの
WGのメンバーとして参画しています。
コープランドWGとアラデールWGは、自身のウェブ
サイトで、発足メンバーを明らかにしています。
〇コープランドWGの発足メンバー
コープランド市議会、2つの民間企業と個人力ヾ関
心を示し、個別にRWM社と初期対話を始めまし
た。特定の場所に関心を示したケース、場所を
特定しない形の関心を示したケースの両方があり
※湖水地方の国立公園については、すべての提案者の意向により検
討対象外となっています。
コープランドWGとアラデールWGの検討対象エリア
(出典:ワーキンググループウエブサイトの図を一部修正)
ました。関心を示した民間企業の一つは観光業
を営んでおり、もう一つは官民再生パートナーシッ
プによる地域再生事業などを手掛けています。
〇アラデールWGの発足メンバー
コープランドWGにも参加した地域再生事業を手
掛ける企業がRWM社に関心を示しました。両
者は地域全体での対話に発展させる方針に合意
し、2018年政策文書で示されたガイダンスに沿っ
てアラデール市と相談しました。その結果、アラ
デール市議会もWGに参加することになりました。
コープランドとアラデールの一部は、世界遺産に
指定されている、湖水地方の国立公園があります。
RWM社と両WGは、景観や環境保護などの観点か
ら、この地域を検討対象エリアから除外していること
を明らかにしています。
[3] RWM社はサイト評価方法において、地層処分施設
の立地要因として、安全とセキュリティ、コミュニティ、
環境、工学的成立性、輸送、支払いに見合った価値の6つ
を提示しています。また、これらの立地要因について検
討すべき内容を明確にするため、立地要因ごとに細分化
した評価項目を提示しています(下表)。

立地要因 (Siting Factor) 評価項目 (Evaluation consideration)
安全とセキュリティ (Safety and Security) 〇サイト調査期間中の安全 〇建設期間中の安全 〇操業期間中の安全 〇閉鎖後の安全 〇マネジメント要件 〇セキュリティ 〇保障措置
コミュニティ (Community) 0コミュニティの福祉 〇社会 〇経済 〇健康 〇地元コミュニティのビジョン
環境 (Environment) 〇環境影響 〇生息地と種の保護
工学的成立性 (Engineering Feasibility) 〇柔軟性 〇調査可能性 〇設計•建設可能性 0処分インベントリ 〇持続可能な設計 〇廃棄物の調整とパッケージ 〇回収可能性
輸送 (Transport) 〇輸送の安全 〇輸送のセキュリティ 〇輸送への影響
支払いに見合った価値 (Value For Money) 〇ライフタイムのコストとイ西イ直 〇廃棄物の処分スケジュール
147
処分地選定の進め方と地域振興>>>
2.これまでのサイト選定プロセスと経緯
ポ^2ン
2008年6月の英国政府白書『放射性廃棄物の安全な管理一地層処分の実施に向けた枠組み』
において、公募方式に基づく 6段階から成るサイト選定プロセスや適用すべき基準を示しました。
英国政府が処分場を建設するための好ましいサイトを選定するまでは、自治体がこのサイト選定プ
ロセスから撤退する権利を行使できるとしています。英国政府白書の公表とともに、サイト選定が
開始されましたが、2013年1月に、関心表明を行っていたカンブリア州西部の自治体がサイト選
定プロセスからの撤退を表明しました。
◎処分場サイト選定プロセス
英国政府は2008年6月に白書『放射性廃棄物の
安全な管理一地層処分の実施に向けた枠組み』を
公表し、地層処分場のサイト選定の進め方や初期ス
方ーニング基準(第2段階で使用)を明確化して、
サイト選定を開始しました。英国のサイト選定プロセ
スは、地元の“主体的参加”と“地域とのパートナー
シップ”を重視した公募方式です。サイト選定作業
は、処分実施主体ではなく、英国政府が直接実施す
ることになっており、当時のエネルギー •気候変動省
(DECC)が担当でした。
サ仆選定は、右に示す6段階で進められますが、
大きく前半(第1〜3段階)と後半(第4〜6段階)
にわかれています。このサイト選定プロセスでは、地
下での調査及び建設が始まるまで(第5段階の終了
まで)は、自治体が選定プロセスからの撤退権を行
使できることを政府が保証しているのが特徴です。政
府は各段階の終了期限は明確にしていません。逆に、
これらの段階は関心表明を行った自治体がたどる段
階を示した形となっており、選定を進める側のステップ
ではないことも特徴です。
◎第1段階:自治体からの関心表明の状況
英国政府は、2008年6月に英国政府白書を公表
するとともに、サ仆選定の第1段階として政府との協
議の開始を希望する、将来処分場を受け入れる可
能性のある自治体の募集を開始しました。これに対し
て、2008年7月には、ドリッグ村近郊にある低レベル
放射性廃棄物処分場(LLWR)やセラフィールド再
処理施設(THORP)など多くの原子力施設が立地
しているカンブリア州のコープランド市が、地層処分
場選定に関する政府との協議への関心表明を提出し
自治体は、サイト選定プロセスへの“参
加を確約することなく”、政府と協議で
きる。
文献調査し、白書で事前に設定した除
外基準に基づいて、不適格な地域の存
在に関する助言を自治体が受ける。
自治体で検討し、“将来の処分場立地受
け入れを確約することなく”、サイト選
定プロセスへの参加を決定できる。
• NDAが机上での調査を中心として、
複数サイトの比較作業を行う。比較に
おいて地元意見を反映するように、地
域立地パートナーシップと協力する。
•地域立地パートナーシップの助言を受
けて、自治体が次段階への参加意思を
決定する。
•政府は、次段階へ進む1つまたは複数
のサイトを決定する。
• NDAが地表からの調査を実施する。
•地域立地パートナーシップの助言を受
けて、自治体が次段階への参加意思を
決定する。(撤退権を行使できる最終機
会)
•政府は優先サイトを決定する。
• NDAが必要な規制手続きを経た後、
地下調査、処分場建設を行う。
英国におけるサイト選定プロセス
ました。また、2008年12月にはカンブリア州カヾ、さら
に2009年2月には同州のアラデール市が関心表明を
行いました。
148
英国
A反
◎第2段階での調査:カンブリア州西部のケース
カンブリア州西部の自治体について、2010年6月か
らはサイト選定プロセスの第2段階である初期スクリー
二ングが英国地質調査所(BGS)によって行われまし
た。調査結果は、同年10月に公表されました。
初期スクリーニングは、地層処分場の地下施設の
設置場所を特定することが目的ではなく、所定の除外
基準(白書で事前に公表していた基準)に基づいて、
明らかに不適格な区域を事前に明らかにすることであ
り、以降の段階での不要な作業を避けることが狙い
です。
BGSは、調査対象をアラデール市とコープランド市
の全域、及び沖合5kmまでとし、既存の文献情報を
もとに、深度200-1,000mの範囲の地下条件と所
定の除外基準を比較して除外区域を評価しました。
除外された区域は次ページのようになっています。
◎参加決定に関する自治体の判断
カンブリア州西部のケースでは、サイト選定プロセ
スの第3段階において、第4段階へ進むかどうかを
検討しました。3つの自治体(1州2市)は、各自
治体がサイト選定プロセスへの参加の是非を判断
する際の助言組織として、2009年に「西カンブリア
放射性廃棄物安全管理パートナーシップ」(West
Cumbria Managing Radioactive Waste Safely
Partnership)を発足させました。この組織は、地元
住民の参画を得て関与プログラムを進め、3つの自治
体に対する自身の意見及び勧告•助言をまとめた最
終報告書を2012年8月に取りまとめました⑷(次ページ)。
3つの自治体は、この最終報告書などを参考にし
て、第4段階に進むかどうかの決定を行うため、2013
年1月30日にカンブリア州議会、コープランド市議会、
アラデール市議会で各々が議会投票を行いました。
議会投票の結果は、コープランド市議会が賛成多数
(賛成6、反対1)で第4段階に進むことを決議し、ア
ラデール市議会も賛成多数(賛成5、反対2)でした
が、カンブリア州議会は反対多数(賛成3、反対7)と
なりました。第4段階に進むためには2市1州の合意
が必要との覚書を締結していたため、サ仆選定プロ
セスから撤退することとなりました。
カンブリア州議会は、サイト選定プロセスの第4段
階に進むことに反対した理由として、カンブリア州西部
の地質学的な適性に対する懸念やサイト選定プロセ
第2段階で実施する初期スクリーニングの基準
(明らかに不適格な地域を予め除外するために使用する)
除外基準として 適用すべき項目 理由/説明及びコメント
天然資源
石炭 資源が100m以上の深さにある場合に限り、 深部への侵入リスクがある。
石油及びガス 深部への侵入のリスクがある。
油頁岩 深部への侵入のリスクがある。
金属鉱石 (一部の鉱石) 深部、すなわち100m以上で採鉱される場合 に限り、侵入のリスクがある。
廃棄物の処分/ ガスの貯蔵 深度100m以上で実施する意向が表明されて いる、あるいは既に承認されている場合のみ該 当する。
地下水
帯水層 地層処分施設の母岩の全体または一部が帯水層 内にある場合に〔除外基準として〕適用される。
浅部透水性地層 地層処分施設の母岩の全体または一部が将来合 理的に開発され得る透水性地層である場合に 〔除外基準として〕適用される。
特定の複雑な水 文地質学的環境 深部カルスト地形及び既知の温泉の原岩
—調査対象地域 ・・アラデール市とコープランド市の境界
□ 除外された地域一地下200-1,000mにおいて1つまたは
複数の除外基準が適用された地域


初期スクリーニングで除外された地域
(DECCの許可を得て、BGS報告書より引用)
149
処分地選定の進め方と地域振興>>>
スにおける撤退権が法律によって担保されていないこ
とを挙げています。
また、3つの自治体のサイト選定プロセスからの撤
退を受けて、サイト選定を管轄するエネルギー •気候
変動省の大臣は、以下のような声明を公表しました。
〇第4段階へ進むことに対して、カンブリア州議会
は反対、コープランド市議会とアラデール市議会
は賛成の決議をそれぞれ行った。州及び2市の
事前の取り決めに基づき、賛成で一致しなかっ
たことから、カンブリア州西部でのサイト選定プロ
セスは終了することになった。
〇英国政府は地層処分施設のサイト選定を行うた
めの最善の方法は、地元の自主性とパートナー
シップによる取組に基づくアプローチであるとの
見解を維持する。
〇地層処分施設の建設を受け入れた自治体の社
会的•経済的なサポートを行うため、英国政府
は数億ポンド規模に相当する利益のパッケージ
を立地自治体に提供することを確約する。
〇サ仆選定プロセスに自治体が関心表明を行うよ
うに呼び掛けを継続するが、新たな推進策に着
手するとともに、カンブリア州西部での経験を反
映するための検討を行う。
02008年の英国政府白書が規定している目標を引
き続き英国政府は追及していく。地層処分施設
のサイト選定に関して、大きな心配はしていない。
〇今回のカンブリア州西部の経験では、サイト選定
プロセスの改善策について検討するための良い
機会であり、今後必要であれば変更を行うため
の再協議を実施する。
[4]西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシッ
プは、パンフレットの配布やワークショップを開催して、
地元住民の処分プロジェクトに関する知識・理解力の強
化を図りました。約3年間にわたって世論調査や公衆や
ステークホルダーからの意見を求めるために公衆協議を
行い、それらを反映した最終報告書を取りまとめました。
このパートナーシップの活動については、152ページ以
降で紹介しています。
3.地域振興方策
a

英国政府は2018年12月の政策文書において、地層処分施設のサイト選定プロセスに関与する
地域社会(コミュニティ)を支援するために資金提供を行うとしています。
◎地域社会(コミュニティ)への投資
英国政府は、2018年12月の政策文書『地層処分
の実施一地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管
理』において、地層処分施設の建設及び操業が数
十億ポンド(1ポンドは137円)に相当するプロジェクト
であるとしています。プロジェクト期間中は多くの雇用
を生み出し、立地する地域社会の経済及び広範な社
会•経済の枠組みに貢献するとしています。また、副
次的な効果として、産業面での利益、社会基盤への
投資、現地の教育または学術資源への利益、現地の
サービス業への利益、輸送インフラの強化も見込まれる
としています。
また、英国政府は地層処分施設のサイト選定プロセ
スに建設的に関与する地域社会を支援するために、
サ仆選定プロセスの初期段階においても、地域社会
への投資を利用できるようにするとしています。サイト選
定プロセスの初期段階においては、関与する地域社
会1力所あたり最大で年間100万ポンド(1億3,700万円)
が利用可能であるとしています。さらに、地層処分施
設の立地に適格である可能性のあるサ仆において、
サイト評価のために地下への侵入を伴うボーリング調
査の段階まで進んだ地域社会に対しては、最大で年
間250万ポンド(3億4,250万円)まで増額するとして
います。なお、これらの投資に関しては、開発事業者
と地域社会で交わされる建設中の影響緩和を目的とす
る協定(1990年都市田園計画法に基づくものなど)に
追加されるというものではなく、地域社会のサイト選定
プロセスへの関与を促すために追加されるものです。
150
英国
A反
V.情報提供•コミュニケーション
1.公衆との対話
ポ^2ン
a
2014年7月の白書『地層処分一高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』では、地
層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動の一環として、地域社会との協働プロセスの開発を
行いました。
◎地域社会との協働プロセスの開発
2014年7月の白書『地層処分一高レベル放射性
廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、英
国政府は地域社会(コミュニティ)との作業を進める
プロセスの開発を行いました。このプロセスの開発は、
以下のようなものを含むとしています。
〇地域社会の意思表示の方法。
〇地域社会への投資に関する高水準の情報提
供。
〇技術問題に関する独立した第三者からの助言を
広範に入手することのできるメカニズムの設定。
英国政府は、2014年の白書公表後、「地域社会
の意思表示のための作業グループ(CRWG)」を設
置しています。CRWGは、地域社会の関与に関する
様々な問題に対処するとしています。CRWGの活動
としては、以下のものが含まれます。
〇地層処分施設に関して、より多く学ぶこと
に関心を持つ地域に「地域社会(コミュニ
ティ)」がどのようなものであるかを定義す
る方法及び、効果的な意思表示に関するオプ
ションを開発する。
〇地域社会の代表の役割及び責任について定
義するとともに、地層処分施設のサイト選定
プロセスの進展に伴って、これらの役割がど
のように変化していくかに関する理解を深
める0
〇様々な現地政府が地層処分施設のサイト選定
プロセスについて、意見表明できるようにす
るためのオプションを開発する。
〇住民の支持に関する調査・確認(test)の実
施が適切だと考えられる時点や調査•確認の
実施方法について明確化を図る。
〇地域社会に投資するための支払に関するオプ
ションを開発する。この中には、何らかの投
資パッケージの管理、資金調達申請が提出さ
れた場合の評価及び、当該地域社会がその地
理的な地域内での投資に影響を及ぼす可能性
などが含まれる。
◎地層処分と地域社会との協働に関する公衆対話
英国政府はCRWGの作業に資するため、2015年
12月から2016年3月にかけて、地層処分と地域社会
との協働に関する公衆対話プロジェクトを実施しまし
た。この公衆対話は、地層処分に関する政策上の問
題について市民の意見を把握することを目的としたも
ので、英国政府が出資するプログラム「サイエンスワ
イズ」(Sciencewise Expert Resource Centre) [5]
(次ページ)を活用して実施されました。公衆対話の参
加者は、以下の4項目についての情報提供を受けて
から、少人数のグループに分かれて、相互に議論し
ながら、参加者自身の意見を評価します。公衆対話
では、このような参加者の議論を通じた対話を分析す
ることにより、幅広い市民の意見を深く探求することが
意図されています。


地層処分と地域の協働に関する公衆対話に関する報告書
151
情報提供•コミュニケーション>>>
〇サイト選定プロセスにおいて実施主体とコンタクト
する地域の代表
〇サイト選定プロセスへの参加可否についての住
民の支持を調査・確認(test)する方法
〇サイト選定プロセスから撤退する権利(撤退権)
〇サイト選定プロセスに参加した地域への投資
[5Iサイエンスワイズ
サイエンスワイズは、公衆対話を利用して、科学技術
などに関する政策立案の問題改善を目的とした、英国政
府が資金提供するプログラムです。2011年に政策評価
を受けて、サイエンスワイズの活動期間は2012年4月1
日から2016年3月31日までとなっています。
今回の公衆対話では、専門機関が世論調査や市
場調査を行っており、対話の設計と実施を3KQ社、
対話の実施プロセスの分析をURSUSコンサルティン
グ社が担当しています。
02008年白書に基づくサイト選定プロセス:
カンブリア州西部での先行事例
カンブリア州、同州のアラデール市及びコープランド
市の3つの自治体は、2009年にサイト選定プロセス
への関心表明を行った後、様々な側面から助言・支
援活動を行う組織を立ち上げました。この組織は「西
カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ」
と呼ばれています。この組織の活動は、自治体が参
加是非を決めるまで(第3段階の終了まで)の期間
に限って、3自治体が合同で設置しているもので、第
4段階以降で設立される「地域立地パートナーシップ」
(CSP)とは位置付けが異なります。
西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナー
シップには、両市議会、カンブリア州内の他の市議
会、カンブリア州地方議会連合、全国農業者連盟
(NFU)、地方労働組合などが参加しました。パート
ナーシップの会合は、約6週間に一回の頻度で開催
されており、意見交換や勉強会の場となりました。会
合には、質問に答えるオブサーバーとして、CoRWM、
DECC (当時の地層処分事業の所管省庁)、EA、
NDAのほか、地元の原子力施設に対して批判的立
場のグループも参加しました。
◎関与を支えるための資金提供
地層処分場のサイト選定プロセスや研究開発や施
設設計などに対して、地域社会が参加できるという
可能性だけではなく、影響力をもって実質的に参加で
きる体制を整えられるようにするために、「関与のパッ
ケージ」と呼ばれる政策支援が行われることになって
いました。2008年6月の政府白書「放射性廃棄物の
安全な管理一地層処分の実施に向けた枠組み」で
西カンブリア放射性廃棄物安全管理
パートナーシップの活動例
152
英国
A反
は、関心表明を行った自治体、並びに参加表明後に
自治体に設立される「地域立地パートナーシップ」の
活動費用について、そのコストに見合った価値がある
という前提のもとで、政府が負担することを明確にし
ていました。
カンブリア州、同州のアラデール市及びコープランド
市が設立した「西カンブリア放射性廃棄物安全管理
パートナーシップ」の場合には、エネルギー •気候変
動省(DECC :当時の地層処分事業の所管省庁)
が資金提供しており、同省の代表がオブザーバーとし
てパートナーシップに参加しました。
2.意識把握と情報提供
ポ^2ン
2008年から始まった当初のサイト選定プロセスに関心表明を行ったカンブリア州及び同州内の
2市は、地層処分場立地に関する地元の多様な意見の実像を評価し、プロセスへの参加是非の判
断材料とするために、助言組織としてパートナーシップ組織を立ち上げました。住民や地元関係者
に対する情報提供は、このパートナーシップ組織の活動を通じて行われました。
02008年白書に基づくサイト選定プロセス:
カンブリア州西部での地元広報活動
英国における地層処分場のサイト選定活動は、処
分実施主体の原子力廃止措置機関(NDA)ではな
く、英国政府が直接行っています。NDAが特定の
地元を対象として調査を始める時期は、自治体がサ
イト選定プロセスへの参加を決定した後から(第4段
階から)です。このため、地層処分場の立地に関す
る地元住民への主な情報提供は、関心表明を行った
自治体が合同で設立した「西カンブリア放射性廃棄
物安全管理パートナーシップ」の活動を通じて行われ
ました0
このパートナーシップは、カンブリア州並びに州内の
アラデール市とコープランド市がサイト選定プロセスに
関心表明を行った直後の2009年11月に設立しまし
た。地層処分場に関する情報を地元住民や関係者
に周知し、サイト選定プロセスへの参加に対する多様
な意見を評価することを活動目的の1つとしています。
西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシッ
プは、インターネットサイトでの情報提供、パネル討論
やワークショップの企画・開催のほか、地層処分場の
サイト選定に関する情報を住民向けに紹介する小冊
子(リーフレット)を独自に作成し、カンブリア州のアラ
デール市及びコープランド市の全戸に配布しました。
また、初期スクリーニング結果が公表された後の
2010年11月には「ディスカッション•パック」と名付け
西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップが作成
した“ディスカッション•パック”
地層処分場を話題として、1〇名程度の集まりで意見交換し、その結
果をまとめるワークショップ・ツールです。背景情報として、高レベ
ル放射性廃棄物等を地層処分する方針が決まった経緯、地層処分場
のサイト選定プロセスの進め方を簡単に紹介しています。


153
情報提供•コミュニケーション>>>
たDVD付き冊子を作成・配布し、アンケート調査な
どを実施しました。
◎国民意識と住民意識(主な世論調査結果)
西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシッ
プは、地層処分場立地に関する地元の多様な意見
の実像を評価するとともに、パートナーシップ自身の活
動の改善を図るために、カンブリア州全体を対象とし
た世論調査を実施しました。外部調査会社を利用す
る形で、これまでに4回(2009年11月、2010年2月、
2011年2月、2012年5月)の電話インタビューを実施
しており、その結果をパートナーシップのインターネット
サ仆で公開しています。
2011年2月の調査結果では、西カンブリア放射性
廃棄物安全管理パートナーシップが地層処分場の立
地可能性について、英国政府と話合いをしているとい
う事実に対する認知度は、アラデールとコープランド
の2市では70%を超えており、カンブリア州全体でも
58%となっていました。
カンブリア州西部に地層処分場を立地すべきかどう
かの対する質問に対しては、2市では反対よりも賛成
の立場の意見が多く、2市を除いた地域では賛成と
反対が拾抗していました。
設問:西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ
が地層処分場の立地可能性について、英国政府と話合
いをしていることを知っていますか?
(図は「はい」と答えた比率)
調査時期:
■ 2011年 2 月 • 2010 年 2 月 • 2009 年11月
カンブリア州全体
以下の2市以外の領域(4市)
アラデール市
71%
57%
61%
58%
49%
52%
コープランド市
カンブリア州及び
同州アラデール市、コープランド市の概観
地層処分場のサイト選定プロセスに関心表明を行った
カンブリア州は、イングランド北西部に位置し、6つの
自治体から構成されています。カンブリア州の湖水地方
には、イングランド最大の国立公園があり、豊かな自然
がある地域として有名です。同州アラデール市には、い
くつかの地域でStudsvik社(スウェーデンの民間会社)
を含む原子力関連(原子力施設からの金属廃棄物のリサ
イクル)の工場があります。また、同州コープランド市に
は、セラフィールド再処理施設やドリッグ村近郊にある
低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)があります。
人口(約人) 面積(約而2)
カンブリア州全体 498,900 6,768
以下の2市以外の領域(4市) 333,000 4,794
アラデール市 97,500 242
コープランド市 68,400 732
※東京都(人口 :約13,954,000人、面積:約2,189km2)
設問:地層処分場をカンブリア州西部領域内に立地すべぎだ
と思いますか?
(図は2〇11年2月の電話インタビュー結果)
(出典:Ipos MORI: Radioactive Waste Survey Wave 3, Research Report
Prepared for West Cumbria Managing Radioactive Waste
Safely Partnership (March 2011))
154
諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について 2020年1月現在
I n Iカナダにおける
Ltai」高レベル放射性廃棄物の処分について
ICEI^W
CANADA
•地下研究所(閉鎖)
pttawa・’
EHMeid!血源心®日触er!礎
BAI^WSl
tDOMIN〇NtREIg
tgJJB爲
,500

/4 号W 氏

miT-r
カナダの基本データ
面積 9,984,67〇平方キロ
人口 37,075 千人(201 8 年)
首都 オタワ
言語 英言吾フランス言吾
通貨 カナダ•ドル(1カナダ•ドル=80円)
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

カナダでは、カナダ型重水炉(CANDU炉)から発生する使用済燃料を再処理せずに高レベル
放射性廃棄物として、当面60年間はサイト貯蔵または集中貯蔵を実施し、最終的には地層処分す
るという「適応性のある段階的管理」(APM)を長期管理アプローチとしています。
◎原子力エネルギー政策の動向
カナダでは、国家レベルのエネルギー政策について
は連邦政府が権限を有するものの、天然資源の保有
をはじめ、州内でのエネルギー開発や規制の権限は
基本的に州政府にあります。そのため、原子力エネ
ルギー政策についても州ごとに異なっていますが、国
としては原子力の平和利用を推進する方針です。
カナダでは1952年に設立されたカナダ原子力公
社(AECL)が天然ウランを燃料とするカナダ型重水
炉(CANDU炉⑴)を開発しました。商業用の原子
カ発電所は、オンタリオ州、ケベック州、ニューブラン
ズウィック州の計5カ所に建設され、1971年から1983
年にかけてCANDU炉が計22基導入されました。
2019年末時点で19基が運転中であり、うち18基が
オンタリオ州に、1基がニューブランズウィック州にあり
ます。
現在のカナダ政府は、原子力発電をエネルギーミッ
クス上の重要な構成要素と見なしています。2011年
3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事
故後もその方針に変更はありません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
カナダでは、原子炉から取り出された使用済燃料
は、その時点で“廃棄物”と見なされており、「核燃料
廃棄物」と呼ばれています。天然ウラン(自国で産出)
を燃料としているために燃焼度が低く、従って含有す
るプルトニウム量も少ないために、再処理は経済的に
適さないと考えられています。
原子力発電所で発生した使用済燃料(=核燃料
廃棄物)は、発生元の発電所で貯蔵されています。
原子炉から取り出された使用済燃料は、プールで6〜
10年間冷却した後、乾式の管理施設へ移されます。
2019年6月時点での貯蔵量は約293万体(ウラン換
算で約57,000トン)、うち約150万体が乾式貯蔵され
ています。
[1]CANDU炉
カナダ原子力公社(AECL)が開発。原子炉の減速材
と冷却材に重水(天然水中に0.02%含まれる)を使用す
る圧力水型の原子炉であり、燃料として天然ウラン(ウ
ラン235を濃縮していない)を利用します。バンドルと
呼ばれる長さ約50センチメートルの短尺燃料集合体を
原子炉に横置きで装荷する設計であり、原子炉の運転を
止めずに燃料交換できる点が特徴です。CANDU炉はカ
ナダを含む7カ国で運転されており、中国に2基、韓国に
4基あります。
カナダの原子力産業の国際競争力を強化するという政
府方針に基づき、2011年にAECLの商業用の発電用原
子炉部門が民間(CANDUエナジー社)へ売却されまし
た。
カナダの原子力発電事業者
電気事業者 原子力発電設備容量
オンタリオパワージェネレーション (OPG)社 (オンタリオ州営オンタリオ・ハイドロ社の子会社) 661万 kW
ブルースパワー社 (民間出資) 660 万 kW (※オンタリオ・ハイドロ社か ら発電設備を長期リース)
ハイドロ=ケベック社 (ケベック州営) 一
ニューブランズウィック(NB)パワー社 (ニューブランズウィック州営) 64 万 kW
これまでに22基導入されたCANDU炉のうち、OPG社のピツカ
リング発電所の2基、ハイドロ=ケベック社のジェンティリー発電
所の1基が廃止済み。
ウェスタン廃棄物管理施設での使用済燃料の乾式貯蔵
(出典:NWMO, Backgrounder 2010: Project Description)
156
カナダ!3
◎原子力発電の利用•導入状況
カナダの電力供給構成(発電量一 2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
2018 年 カナダ 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 6,543.99 132.00 -614.06 6,061.93 5,243.62
◎原子力発電設備容量
合計19基1,355.4万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
157
高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
◎処分方針
カナダでは使用済燃料を「核燃料廃棄物」として
いることからもわかるように、再処理せずに高レベル放
射性廃棄物として処分する方針です。核燃料廃棄
物の長期管理アプローチは「適応性のある段階的管
理」(APM : Adaptive Phased Management)と
呼ばれるもので、2007年6月にカナダの国家方針とし
て決まりました。このアプローチは、最終的には地層
処分を目指すものですが、その達成までの期間(300
年またはそれ以上)を下の表のように3つのフェーズ
に分けて取り組むものです。
地層処分の実施だけを見ると、第1期での地層処
分場サイト選定、第2期の地下特性調査施設での技
術実証と確認を経て、第3期(約60年後)から核燃
料廃棄物の処分を開始できる予定です。しかし、地
層処分場が利用可能となるまでに、現在行われてい
る各原子力発電所での使用済燃料貯蔵に代えて、1
カ所に集めて貯蔵する方針となった場合の計画をあら
かじめオプションとして組み込んでいます。この場合に
は、第2期(約30年後から)において、地下浅部で
の中間貯蔵を実施する予定です。このための貯蔵施
設は、地層処分場と同じサ仆に立地する計画です。
各原子力発電所にある使用済燃料をどこか1カ所に
輸送するのに約30年を要すると考えられています。
第1期 集中管理の準備 (約30年) 適応性のある段階的管理を進める政府決定
〇原子炉サイトにおける使用済燃料の貯蔵及びモニタリングを継続 〇関与プログラム、サイト選定プロセスの策定、実施 〇集中施設(地下特性調査施設、地層処分場、浅部岩盤空洞)の選定作業 〇集中施設のサイト特性調査、安全解析及び環境評価(輸送についても対象) 〇技術開発 〇カナダ環境評価法に基づく環境評価プロセス(許認可手続き)
関与プログラムを通じて「浅部岩盤空洞」での集中貯蔵を行うかどうかを決める オプション
〇地下特性調査施設の許認可手続き 〇浅部岩盤空洞施設の許認可手続き
第2期 集中貯蔵と技術実証 (約30年) 〇原子炉サイトでの貯蔵継続 〇地下特性調査 〇地層処分場としての適合性確認 i〇使用済燃料の輸送(30年要す) 1 !〇浅部岩盤空洞施設での集中貯蔵

◊関与プログラムを通じて最終設計を準備、地層処分場と付属施設の建設時期を決定 ◊地層処分場の建設許可を得る   

第3期 長期閉じ込め、隔離、 モニタリング ◊地層処分場へ使用済燃料を輸送(30年要す) 〇浅部岩盤空洞施設の廃止措置 ◊モニタリング・性能評価のため、必要に応じて回収可能とするためにアクセスを維持
〇閉鎖前モニタリングは最大3〇〇年間=60年(原子炉サイト等での貯蔵)+240年(処分施設) 処分場を閉鎖するかどうかを決めるー閉鎖、廃止措置
カナダの核燃料廃棄物の長期管理アプローチ「適応性のある段階的管理」(APM)の概要
(原子力環境整備促進•資金管理センターにて整理•作成)
参考:NWMO, Choosing a Way Forward: the future management of Canada’s used nuclear fuel, Final Study (2005)
□処理施設
Bアクセス坑道
E!アクセス立坑
I1換気立坑
S浅部岩盤空洞施設
eキャスク貯蔵
□地下特性調査施設
□封入施設
E!製造施設
[0廃棄物搬送用立坑
制定置スペース
[0搬送用キャスク
[0処分キャスク
第2期集中貯蔵と技術実証
(浅部岩盤空洞施設で集中貯蔵を実施する場合)
第3期長期閉じ込め、隔離、モニタリング
158
◎処分方針が決定するまでの経緯
カナダにおける高レベル放射性廃棄物処分事業
は、当初は、カナダ原子力公社(AECL)が中心と
なって進めていました。1978年に、連邦政府とオンタ
リオ州は核燃料廃棄物管理計画に関する共同声明
を発出し、AECL主導のもとで地層処分の研究開発
が開始されました。AECLは、その成果を環境影響
評価書として1994年に公表しました。
環境影響評価書をレビューする組織として、天然
資源省(NRCan)が1989年に設置した“核燃料廃
棄物管理•処分概念の評価パネル”(環境評価パネ
ル)は、1998年2月に「技術的には可能だが、社会
的受容性が不十分である」と結論した勧告を連邦政
府に提出しました。連邦政府は1998年12月に、環
境評価パネルの勧告にほぼ同意するとの政府見解を
発表しました。
その後、NRCanは、実施主体の設立、核燃料廃
棄物(使用済燃料)の長期管理アプローチの策定、
資金確保制度の確立などを目的とした法整備を進め
ました。2002年6月に核燃料廃棄物法が成立、2002
年11月から施行されました。この法律に基づいて、核
燃料廃棄物管理の実施主体として核燃料廃棄物管
理機関(NWMO)が設立されました。
核燃料廃棄物の長期管理アブローチとして3つ
の選択肢ー①地層処分、②原子力発電所のサイ
卜内貯蔵、③集中貯蔵一を含む複数アプローチを
NWMOが検討してカナダ政府に提案することが核
燃料廃棄物法で定められました。
NWMOは、2003年から2005年にかけて協議報
告書を作成・公表するとともに、各地で対話集会、ワー
クショップや専門家との対話•円卓会議などを行って
2005年11月に最終報告書『進むべき道の選択:カナ
ダの使用済燃料の管理』を取りまとめました。この中
でNWM0は、最終的には地層処分を行うが、当面
約60年間は、サイト貯蔵、集中貯蔵を実施するとい
う“適応性のある段階的管理” (APM)を提案しまし
た。その後、天然資源大臣の勧告を受けてなされた
2007年6月の総督決定により、APMがカナダの使用
済燃料の長期管理アプローチとして決定しました。
使用済燃料の長期管理アプローチが決定するまでの経緯
1978 年 連邦政府とオンタリオ州による核燃料廃棄物 管理計画の策定
1994 年 AECLが核燃料廃棄物の処分概念に関する環 境影響評価書を発表
1998 年 環境評価パネルが、「技術的には可能だが社 会的受容性が不十分」という報告書を連邦政 府へ答申 連邦政府が環境評価パネルへの見解を公表
2001年 天然資源省が核燃料廃棄物法案を議会に提出
2002 年 核燃料廃棄物法が施行され、原子力事業者 が実施主体として核燃料廃棄物管理機関 (NWMO)を設立。事業規制•監督官庁とし て核燃料廃棄物局(NFWB)が天然資源省 (NRCan)内に設置
2005年11月 NWM〇が最終報告書を提出し、「適応性のあ る段階的管理(APM)Jを政府に提案
200フ年6月 天然資源大臣がNWM〇の提案を承認し、政 府が管理アプローチを決定
nwmo
Choosimo
WTbe Future Management
做め
Forward
Final Study
NWMOが2005年11月に取りまとめた核燃料廃棄物の
長期管理アプローチに関する最終報告書
『進むべき道の選択:カナダの使用済燃料の管理』
159
地層処分計画と技術開発>>>
II-地層処分計画と技術開発
1.処分計画
ポ^2ン
カナダでは、核燃料廃棄物を、当面(60年間)は、サイト貯蔵、必要に応じて集中貯蔵を実施し、
最終的には地層処分するという長期管理アプローチ「適応性のある段階的管理」(APM)に基づ
いて管理することとしています。
◎地層処分対象の球性廃棄物
カナダの原子力発電所で運転されている原子炉は
いずれもCANDU炉と呼ばれる形式です。この炉で
は燃料として天然ウランを用い、長さ約50センチメー
トルの短尺燃料集合体を使用しています。既存の原
子炉が予定通り運転される場合、CANDU炉から発
生する使用済燃料の総数は約552万体(ウラン換算
で約106,000トン)となる見込みです。
使用済燃料は再処理せず、燃料集合体の形状の
ままバスケットに束ねて、処分用のキャニスタ内に密封
して処分する方法を検討しています0
◎処分場の建設予定地の地質構造
カナダでは地層処分場のサイト選定が進行中であ
るため、処分場の建設予定地は未定です。ただし、
カナダ国家方針である使用済燃料の「適応性のある
段階的管理」(APM)では、地層処分場の候補岩
種として、カナダ盾状地⑵の結晶質岩(約45億年
前〜5.4億年前に形成)、もしくはオルドビス紀の堆積
岩(約4億5,000万〜5億年までの間に形成)が考え
られています。
◎処分場の概要(処分概念)
カナダでは地層処分場のサイト選定が進行中であ
るため、処分技術の開発において複数の処分場設
計を検討している段階です。2010年5月に処分の実
施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が
公表したサイト選定プロセスの最終案を示した報告書
『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場
選定プロセス』では、地層処分場の深さは、サイトの
地質に応じて約500mと想定されています。
使用済燃料は、特別に設計、認可された輸送容器
に原子炉サイトで封入され、処分場で耐食性のある
処分容器に再び封入されます。容器は岩盤に掘削さ
れた処分孔まで搬送された後、ベントナイト製の緩衝
CANDU炉用の燃料集合体
〇直径約〇•lm、長さ約0.5m、重さ約24kg
〇酸化物セラミックペレットのウラン燃料を収納
(1体あたり約19kgの天然ウランを含有)
(出典:NWMO 技術レポー HTR-2012-01)
カナダ盾状地の花崗岩の分布
(出典:NWMO『適切な問題設定をしているか?』2003¢)
[2Jカナダ稲状地
北米大陸の北東部に広がっている先カンブリア紀(約
45億年前〜5.4億年前)に形成された岩盤です。西洋の
・盾を伏せた形状に似ていることから、このように呼ばれ
ます。
160
ボックスに収納され、処分孔内の定置空間へ定置さ
れ埋め戻されます。
NWM0は、使用済燃料の処分容器として大きく 2
種類の予備設計を行っていましたが、小型軽量化を
目指していたコンテナ(マーク2)を選択しました。こ
れは、使用済燃料使用済燃料48体を収納する設計
で、重量は3トン未満になります。
使用済燃料は、地層処分の実施の全段階を通じ
てモニタリングされ、さらに、どの時点でも回収可能
なようにされます。アクセス坑道や立坑は、自治体、
NWMO、及び規制機関が適切であると合意した場
合のみ埋め戻し、密封されます。
◎処分事業の実施計画
NWM0は、長期管理アプローチ「適応性のある
段階的管理」(APM)を実施しています。この計画
では、アプローチを進める決定がなされた時点から起
算して、処分開始を約60年後としています。カナダ
国内の使用済燃料を全て1カ所の地層処分場に移
すには約30年かかるため、地層処分場での使用済
燃料の定置は60年後から90年後までの期間になさ
れる予定です。非常に長い時間枠ですが、NWMO
は「適応性のある段階的管理は柔軟であり、条件が
整えば必ず加速できる」としています。
使用済燃料の定置期間中と定置後も、アプローチ
の採用決定時点から300年後まではモニタリングを継
続できると想定しています。適切なモニタリングのあり
方と期間は将来の社会が決定し、NWM0は自治体
等とともにモニタリングを実施すると考えです。また、
処分場を最終的に閉鎖する時期と方法についても将
来の社会が決定するとしています。
NWMOが2020年に策定した2020〜2024年の実
施計画では、今後5年間の7つの優先事項、①工学
技術、②サイト評価、③安全性、④人材の確保、⑤
許認可、⑥パートナーシップ、⑦許認可、を中心に取
り組んでいくとしています。特に、これまで、「公衆の
関与」としていた優先事項は、「パートナーシップ」に
変更され、地層処分プロジェクトの実施に必要となる
好意的かつ弾力性を備えたパートナーシップを構築す
るため、自治体と協働していくとしています。
また、2023年の好ましいサ仆の特定後の操業開
始までのスケジュールについて、2024年にサイト特性
調査及び専門技術センター建設を開始し、2028年に
許可申請書の提出、2040 ~2045年ころの地層処分
場の操業開始を見込んでいるとしています。



地層処分場の概念図
(出典:NWM〇技術レポートTR-2017-01)
161
地層処分計画と技術開発>>>
2.研究開発•技術開発
ポ^2ン
処分の実施主体であるNWMOは、核燃料廃棄物処分の長期的アプローチとして採用された
「適応性のある段階的管理」(APM)の実施をサポートするための技術的な研究を進めていま
す。技術プログラムは、NWM〇の他、カナダ国内の大学を含む専門技術者によって実施され、ス
ウェーデン、フィンランド、スイス、フランス、英国、日本などの海外の組織とも連携して進められ
ています。
◎研究機関
核燃料廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体で
あるカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、
核燃料廃棄物処分の長期的アプローチとして採用さ
れた「適応性のある段階的管理」(APM)の実施
をサポートするための技術的な研究を進めています。
事業の段階的な進展に合わせた技術プログラムが、
NWM0のほか、カナダ国内の大学を含む専門的な
技術者によって実施されており、スウェーデン、フィン
ランド、スイス、フランス、英国、日本などのj毎タ・の組
織とも連携して研究を進めています。また、技術プロ
グラムの実施状況については、独立した評価グルー
プにより年に一度レビュー⑶されています。
◎研究計画
2007年6月にカナダ政府が「適応性のある段階的
管理」(APM)の実施を決定した後、NWMOは、
向こう5年間の行動計画をまとめた「APM実施計画
書」を2008年以降毎年作成しています。これには研
究や技術開発の計画も含み、パブリックコメントを受け
るために事前に公表され、公衆の意見を考慮して正
式に発行されます。このような計画書の作成は法律
では義務づけられていません。2020年に策定された
2020~2024年の実施計画では、優先項目として示し
た工学技術、サイト評価、安全性について、具体的
な実施内容を説明しています。
研究や技術開発に関する成果を含むNWM0の
活動状況のレビューは、年次報告書と3年次報告書
で行われています。これら2種類の報告をNWMO
が行う義務は、核燃料廃棄物法で定められており、
環境大臣は、NWM〇の年次報告書に関する声明書
を毎年発表しています。
[3]独立した評価グループによるレビュー
NWM〇は、技術プログラムの実施状況を每年レビュー
するため、核燃料廃棄物の地層処分プロジェクトの実施
の分野において国際的に認められた専門家で構成され
る独立した評価グループを設置しています。適切な科学
的・技術的手法が実施されているか、国際的な知識と一
致しているかどうか、APMを実施するための適切な科学
的技術的、リソースの基盤を有しているかについて確認
をしています。
2008年〜2013年は、独立技術評価グループが設置さ
れ、NWM〇の技術知識を進歩させているかや、NWMO
の使命を果たすために十分な技術的リソースを有してい
るかについて評価を行いました。2013年からは、サイ
卜選定プロセスの第3段階(潜在的適合性の予備的評価)
に入ったことから、サイト評価が一貫性のある追跡可能
な方法で実施されるよう、APM地球科学評価グループ
(APM-GRG)が設置されました。
NWMOが作成している適応性のある段階的管理実施計画書
活動計画をテーマ/分野別に簡略的に示しています。活動の狙いや
背景情報の提供を重視した構成です。
162
◎地下研究所
NWM 0が2002年に設置される以前に高レベル放
射性廃棄物の処分•管理の研究開発を実施してい
たカナダ原子力公社(AECL)は、マニトバ州のホワ
イトシェル研究所近郊に地下研究所(URL)を建設
しています。この施設は花崗岩の地下約450mにあ
り、処分候補母岩の存在するカナダオ盾状地を対象と
した原位置試験が行われていました。
この地下研究所では、地表及び地下の特性調査、
地下水•核種の移行研究、地下水の地球化学及び
微生物学、温度及び時間の経過に伴う岩盤の変形
及び破壊の特性分析、コントロールボーリング及び発
破とその影響の評価、埋戻し材の開発と性能評価な
どの研究が行われました。1998年|こAECLはURL
を含むホワ仆シェル研究所での作業を終了させるこ
とを発表し、その後、URLの閉鎖作業が2006年か
ら開始されました。立坑の入口部分と240mレベルに、
圧密ベントナイトをコンクリート構築物で挟んだシール
を設置した後、地下空間は人工的に注水されており、
2010年に恒久的に閉鎖されています。
◎安全性の確認と知見の蓄積
カナダでは、2002年にNWM0が設立される以前
は、核燃料廃棄物の地層処分研究はAECLが実施
していました。AECLは1994年10月に取りまとめた『カ
ナダの核燃料廃棄物の処分概念に関する環境影響
評価書』(EIS)において、仮想的な処分システムに
対する最初のケーススタディと位置付けた安全評価を
行いました。AECLの処分概念に関するケーススタ
ディは2004年までの間に計3回実施されました。
NWM0は自身が検討している地層処分場の概念
を対象とした処分場閉鎖後の安全性に関するケース
スタディを行っており、2012年から複数回にわたって
報告書を公表しています。
NWMOが2020年に策定した2020〜2024年の
実施計画では、サイト固有の予備的な安全評価を開
発していくとしています。
AECLの旧地下研究所(URL)
2010年に恒久的に閉鎖されました。“URL”は地下研究所の英語で
の略語でもありますが、この研究所の名称としても使われました。
放出開始からの時間[年]
105 106 107 108
1km
放射性物質の移行挙動のシミュレーション例
処分場から漏洩した物質が地下水とともに地表に漏出するまでの時
間を粒子追跡法で解析したもの
(出典:〇PG社「サード•ケーススタディー閉鎖後安全評価」2004年)



163
処分事業の実施体制と資金確保»>
HI.処分事業の実施体制と資金確保
1.実施体制
ポ^2ン
カナダでは、使用済燃料の管理責任を有する原子力企業が、核燃料廃棄物管理組織を設立する
ことが規定されており、これに従い、核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の管理実施
主体として、原子力企業にょ02002年に設立されました。
また、核燃料廃棄物管理の監督は、天然資源省(NRCan)内の核燃料廃棄物局(NFWB)が所
管しており、地層処分場に係る許認可の発給はカナダ原子力安全委員会(CNSC)が担当します。
◎実施体制の枠組み
核燃料廃棄物管理に関わる主な行政機関として、
核燃料廃棄物局(NFWB)とカナダ原子力安全委
員会(CNSC)があります。NFWBは天然資源省
(NRCan)の内部組織であり、核燃料廃棄物法に
基づき核燃料廃棄物管理全体を監督します。また、
CNSCは、原子力安全管理法によって設立され、原
子力と放射性物質の使用に関する規制機関としての
役割を担っています。
◎実施主体
カナダでは、2002年に制定された核燃料廃棄物
法において、使用済燃料の管理責任を有する原子
力企業が核燃料廃棄物管理組織を設立することが
規定されました。原子力企業とは、オンタリオ・パワー
ジェネレーション(OPG)社、ハイドロ =ケベック社、
ニューブランズウィック・パワー社、及びカナダ原子力
公社(AECL)を指します。2002年にこれら4社が
共同して、核燃料廃棄物の長期管理アプローチの政
府への提案、並びに政府が承認•決定したアプロー
チを実施する組織として、核燃料廃棄物管理機関
(NWMO)を設立しました。
NWMOは2009年より、NWM0を設立した原子
カ企業の一つであるOPG社の委託を受けて、原子
カ発電所から発生する放射性廃棄物の地層処分場
(DGR)の安全評価を含む技術支援や地元コミュニ
ケーションなどの業務も実施しています。OPG社は、
自社のウェスタン廃棄物管理施設(ブルース原子力
発電所の敷地内)に建設するDGRプロジェクを2001
年から進めてきました。DGRで核燃料廃棄物(使用
済燃料)が処分されることはありません。OPG社は、
DGRの許認可申請に向け地質調査や環境影響評価
を行い、2011年にCNSCへ許認可申請を提出しまし
行政
規制行政機関
カナダ原子力
安全委員会
(CNSC)
監督 規制
民間
実施主体I
核燃料廃棄物 設立
管理機関
(NWMO)
諮問
発電会社]
・オンタリオ•パワー
ジェネレーション社
・ハイドロ=ケベック社
•ニューブランズウィック
パワー社
諮問評議会
処分事業の実施体制
た。2015年に連邦政府の合同評価パネルは、環境
に重大な影響が及ぶ可能性は低いと結論していまし
た。しかしながら、2020年1月末に、DGRの建設予
定地のあるブルース半島の先住民の投票結果を受け
て、OPG社はDGRプロジェクトの中止を表明しました。
DGRプロジェクトに関して、2009年1月に、OPG
社とNWMOは、DGRに係る許認可申請に向けて、
NWMOが技術支援等を行う契約を締結しました。
DGR関連業務に従事していたOPG社の人材が
NWM0に移り、地質調査や安全評価、環境評価、
地元とのコミュニケーションなどの業務をNWMOが
継承しました。OPG社は、2011年にDGRの許認可
申請を提出しましたが、この申請書に添付された環境
164
カナダ!3
影響評価書、予備的安全評価書などはOPG社のた
めにNWMOが準備しました。
NWMOは核燃料廃棄物の処分実施主体ですが、
OPG社の委託を通じて、異なる種類の放射性廃棄
物を対象とした地層処分場の安全評価を実施してお
り、こうした活動はNWM0の能力向上にも役立って
いると考えられます。
◎安全規則
原子力安全に関しては「カナダ原子力安全委員会
(CNSC)の設置及び関連法の改正のための法律」
(原子力安全管理法、1997年3月20日)により、安
全規制当局としてCNSCが設置されています。原子
力施設の所有•運転にはCNSCの許認可が必要で
す。CNSCは、原子力安全管理法に基づいて、原子
力の利用や放射線防護に関する規則を策定する権
限を有しています。許認可取得者が遵守すべき一般
的な要件は、一般原子力安全管理規則に示されてお
り、許認可保持者に対して、原子力施設の廃止、許
可の更新や修正、廃止においてCNSCに対する申請
を求める規則などが定められています。
CNSCは、放射性廃棄物管理施設を含むクラスI
原子力施設について、該当施設のサイト準備、建設、
操業、廃止措置の実施の際には許可が必要であると
規定しています。放射線防護規則において、許認可
取得者が原子力従事者に対して放射線防護に関す
る義務等を規定しており、線量限度については国際
放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿った値を採
用しています。
これらの規則の他に、CNSCは法律や規則を補足
する規制文書を策定しています。放射性廃棄物処
分に関係する策定済の規制文書規制文書としては、
rREGDOC-2.il廃棄物管理カナダにおける放射
性廃棄物管理及び廃止措置の枠組み」rREGDOC-
2.11.1, 第3巻:廃棄物管理 放射性廃棄物管理の
長期安全性の評価」があります。
OPG社の低・中レベル放射性廃棄物処分場の概念図
(オンタリオ州キンカーディン自治体に建設を計画していた)
(出典:〇PG社、環境影響報告書)



165
処分事業の実施体制と資金確保»>
◎処分に関わる法令の体系図
一般原子力安全管理規則
安全規制
原子力安全管理法
放射線防護規則
クラスI原子力施設規則
REGDOC-2.11廃棄物管理
カナダにおける放射性廃棄物管理
及び廃止措置の枠組み
REGD0C-2.11.1第3巻:廃棄物管理
放射性廃棄物管理の長期安全性の評価
環 境
影響評価法
166
カナダ!3
◎処分の法制度
内 容
事業規制 カナダでは「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(核燃料廃棄物法)」により国内の原子炉から発生する核燃 料廃棄物を長期的管理するための枠組みが定められています。 核燃料廃棄物法では、原子力発電を行なっている企業に対し、廃棄物管理プログラムを実施する主体組織を設 立すること、廃棄物管理のための資金確保の方策として信託基金を創設することなどが定められています。実施 主体組織は、核燃料廃棄物を長期的に管理するためのアプローチを研究し、研究成果としてアプローチを連邦政 府に提案し、承認されたアプローチの実行に責任を有しており、 これらを行うこととされています。また、廃棄 物の長期管理に対し提案されたアプローチ及び要求された報告書を吟味しコメントすることを目的とした諮問 組織を創設することとされています。 核燃料廃棄物法を受けて核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の管理実施主体として、原子力企業 により設立されました。
安全規制 「カナダ原子力安全委員会(CNSC)の設置及び関連法の改正のための法律」(原子力安全管理法)により、安 全規制当局としてCNSCが設置されています。CNSCは、原子力安全管理法に基づいて、原子力の利用や放射 線防護に関する規則を策定する権限を有しており、原子力施設の所有•運転にはCNSCの許認可が必要とされ ています。 放射性廃棄物管理施設はCNSCによりクラス|原子力施設として分類されており、そのサイト準備、建設、操 業、廃止措置の実施の際には許可が必要であるとされています。また放射線防護規則において、許認可取得者が 原子力従事者に対して放射線防護の観点から行わなければならない義務等が規定されています。 また、CNSCは規則の他に、法律や規則を補足するための規制文書を策定しています°
資金確保 廃棄物管理のための資金確保については、核燃料廃棄物法により、核燃料廃棄物の管理の責任を持つ事業者 が、信託基金を創設することが定められています。 事業者は核燃料廃棄物法で定められた一定の金額を毎年、信託基金に納付することとされており、廃棄物管理 プログラムの主体組織のみが信託基金から資金を引き出すことができます。
環 境 影響評価法は、対象となるプロジェクトが与える影響について、環境影響に限定せず、経済、社会及び健康面 での正の影響と負の影響を評価しようとするものです。 本法では、カナダ影響評価庁(IAAC)が全ての対象プロジェクトの影響評価を主導することとなりますが、原 子カ関連のプロジェクトでは、カナダ原子力安全委員会(CNSC)と協力して評価を実施することとされていま す。
原子力責任 原子力損害賠償に関しては、原子力損害の民事責任に関する法律(原子力賠償法)において規定されていま す。原子力賠償法では、原子力事業者に対して、自身の施設における事故で発生した損害を、1件の事故につき 7,500万カナダドル(61.5億円)まで賠償する責任を課しています。また、原子力賠償法の適用範囲や原子力 事故から生じる補償請求の処理のための委員会の設置、責任賠償額がフ,500万カナダドルを超える場合の措置 等が定められています。 2013年12月に署名した原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)を受けて、賠償額が現在の7,500 万カナダドルから1〇億カナダドルに引き上げられる見通しです。
167
処分事業の実施体制と資金確保»>
2.処分事業の資金確保
a
ポ^2ン
核燃料廃棄物の地層処分場の建設以降で発生する将来費用を確保するために、核燃料廃棄物法
に基づき、使用済燃料の管理責任を有する原子力企業4社は独自に設立した信託基金に每年預け
入れをしています。
◎処分費用の確保制度
2002年の核燃料廃棄物法において、核燃料廃棄
物の長期管理に必要な資金を確保する仕組みが導
入されました。使用済燃料の発生者である原子力
発電事業者3社(オンタリオ•パワージェネレーション
(OPG)社、ニューブランズウィック・パワー社、ハイド
ロ=ケベック社)とカナダ原子力公社(AECL)は、そ
れぞれ独自に信託基金を設立し、この基金に毎年預
け入れることになっています。信託基金には、核燃料
廃棄物の地層処分場の建設及びそれ以降で発生す
る費用を確保します。これらの信託基金からの資金
の引き出しは、処分実施主体である核燃料廃棄物管
理機関(NWMO)だけができると定められています。
各社は信託基金に対して、年末の残高が前年6月
時点で発生している核燃料廃棄物を将来に処分する
ために現時点で保有すべき金額(割引後の金額)を
超えるように毎年預け入れます。2019年末時点で、
信託基金の残高合計は約48億カナダドル(約3,840
億円)となっています。
なお、サ仆選定活動などNWM0が将来に立地
する地層処分場の建設許認可を受けるまでに発生す
る費用は、NWM0を設立した原子力電力事業者3
社とAECLが核燃料廃棄物の処分量比率に応じて
分担しており、年度毎に会計処理されています。
◎NWMOによる処分費用の見積額
原子力発電事業者3社とAECLの信託基金への
拠出額を算定するために、NWM0は処分費用の見
積りを行っています。見積額は、2016年に見直され、
予想される使用済燃料520万体を地層処分する「適
応性のある段階的管理」(APM)プログラムの実施
に必要な費用を約230億カナダドル(2015年価格、
約1兆8,900億円)としています。
各事業者が設立した信託基金の状況
(百万カナダドル)
2019 年 拠出額 2019 年 12月末残高
オンタリオ・パワージェネ レーション(OPG)社 60.5 4,399
ハイドロ=ケベック社 0 158
ニューブランズウィック・ パワー社 3.6 183
カナダ原子力公社(AECL) 0.8 55
合計 64.9 (約51.9億円) 4,795 (約3,840億円)
(出典:NWMO 2019年次報告書)
168
費用の見積額には、地層処分場や専門技術セン
ターの開発、建設および運営、ならびに使用済燃料
の輸送にかかる費用が含まれます。NWMOは、プロ
ジェクトの最終的な費用は、使用済燃料の量、施設
の場所、設計、集中貯蔵管理の期間など、さまざまな
要因の影響を受けるとしており、次回の見直しを2021
年に計画しています。
こうした仮定は信託基金の形で確保される資金額
を合理的な範囲で早期に多くする意図で設定してい
るものであり、「適応性のある段階的管理」(APM)
に含まれている浅部地下空洞での集中貯蔵のオプ
ションを排除したわけではありません。
◎長期管理アプローチ別の処分費用の比較
NWMOが使用済燃料の長期管理アプローチを研
究した際(2002-2005年)には、4つの選択肢につ
いて実施開始から1,000年間を対象とした費用比較
をおこなっています。4つの選択肢は次のものです。
① 地層処分
② 原子力発電所のサイト内貯蔵の継続
③ 集中貯蔵の継続
④ 適応性のある段階的管理(APM) •••集中中間
貯蔵を折込みつつ、最終的に地層処分
選択肢の②と③では、貯蔵施設を300年ごとに建
て替えると仮定しています。選択肢①は30年後から
地層処分を開始し、100年後から処分場を閉鎖する
スケジュールを仮定したものです。
選択肢④はカナダの長期管理アプローチとして決
定したものであり、30年後から30年間の集中中間貯
蔵を組み込み、60年後から地層処分を開始、最大
300年後まで処分場の閉鎖を延期するスケジュールを
仮定しています。その後、処分場の閉鎖には25年を
要するとしています。
「適応性のある段階的管理」(APM、選択肢④)
の実施に必要となる費用は、処分の前段階として地
下浅部での集中中間貯蔵施設を建設する場合には
244億カナダドル(約1兆9,520億円)、建設しない場
合には226億カナダドル(約1兆8,080億円)と推定
されていました。
–①地層処分
— -②原子力発電所のサイト内貯蔵の継続
–③集中貯蔵の継続
④適応性のある段階的管理(APM)
使用済燃料の長期管理アプローチの選択肢別コスト比較
(出典:NWMO『進むべき道の選択』2005年11月)
使用済燃料の長期管理アプローチの費用見積り
選択肢 費用累計(億カナダドル)
350年後まで 1,00〇年まで
①地層処分 162 163
②原子力発電所のサイト内貯 蔵の継続 176 684
③集中貯蔵の継続 200 470
④適応性のある段階的管理 (APM) * 244 226 244 226
※上段は地下浅部での集中中間貯蔵を建設する場合、下段は建設し
ない場合の額
(出典:NWMO『進むべき道の選択』2005年11月)
169
処分地選定の進め方と地域振興>>>
IV.処分地選定の進め方と地域振興
1.処分地の選定手続き・経緯
ポ^2ン
核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は2010年から9つの段階で構成されたサイト選定プロセス
を開始しました。22の自治体がプロセスに関心表明を行い、初期スクリーニング結果が良好となっ
た21自治体が第3段階の予備的評価へ進みました。第3段階の前期机上調査、後期現地調査に
より絞り込みがなされ、2自治体がサイト選定プロセスに残っています。
◎処分地選定の進め方
核燃料廃棄物の長期管理アプローチとして「適応
性のある段階的管理」(APM)の採用が決定した
後、NWMOは、地層処分場のサイト選定プロセスに
関する具体的検討を開始し、2009年5月にサイト選
定計画案を公表しました。サイト選定計画案について
NWM 0は、意見募集を行うとともに、同案を評価・
議論するための公衆との対話集会などを実施しまし
た。NWMOは、これらの活動において収集した意見
を含めて計画案の最終化を進め、2010年5月に9つ
の段階で構成されるサイト選定プロセスを含むサ仆
選定計画の最終版『連携して進む:カナダの使用済
燃料の地層処分場選定プロセス』を公表するととも
に、プロセスの第1段階を開始しました。
サイト選定プロセスの策定と進撲の経緯
※カナダの核燃料廃棄物処分場のサイト選定は、核燃料廃棄物法に
基づいて検討、決定した使用済燃料管理の長期的なアプローチの
一環として実施されており、特にサイト選定方法やプロセスを規
定した法令は存在しません。
2008年8月 NWM〇が地層処分場サイト選定手続き に関する協議文書を公表
2008年9月〜12月 NWM〇がサイト選定手続きに関する意 見募集を実施
2009年5月 NWM〇がサイト選定計画案を公表し、 意見募集及び協議を開始
2010年5月 NWM〇がサイト選定計画の最終版を公 表し、全9段階からなるサイト選定プロ セスの第1段階を開始
2012年9月 NWM〇がサイト選定プロセスへの参加 に対する関心表明の受付を一時中断
◎サイト選定における実施主体の行動原則
NWM0はサイト選定プロセスを構想する際に、①
カナダ国民が大切にしている価値や目標に沿ってい
て、②オープンで、透明、公正、包括的であり、③科
学、専門性及び倫理的な最高の基準に適合するよう
に配慮しました。NWMOは、サイト選定プロセスの
過程で学習し、後続段階に反映させていく考えです。
目標から逸脱しないように、NWM0がサイト選定を進
める上で守るべき行動原則を決めました。右に示す
13項目の簡潔な表現で示しています。
この原則(4番目)にあるように、NWM0はサイト
選定プロセスを「原子力立地州」ーオンタリオ、ケベッ
ク、ニューブランズウィック、サスカチュワンの4州一
に焦点を当てる考えです。この原則は、NWM0が
2002年から3年間行った核燃料廃棄物の長期管理
アプローチに関する研究過程において、カナダ国民と
の対話で生み出されたものです。“公正ざは核燃料
サイクルと直接の関係をもつ州に焦点をあてることで
最も良く達成されるという考え方です。
サイト選定プロセスにおいてNWMOが守るベ言行動原則

  1. 安全性を重視
  2. 規制要件を満たす、または上回る
  3. 地元自治体の理解と意思を尊重
  4. 原子力立地州に焦点
  5. 撤退の権利
  6. サイト選定を主導するのは関心をもつ自治体
    7•先住民の権利、協定、土地所有権
  7. 決定事項を共有
  8. 包括志向
  9. サポート能力の構築
  10. プロセスでの情報公開
  11. 自治体の福祉
  12. 連邦と州の政府の関与が継続的になるように配慮
    170
    カナダ!3
    ◎9段階のサイト選定プロセス
    NWM 0によるサイト選定プロセスは下の表に示す
    ように、9つの段階で構成されています。このサイト選
    定手続きは、手続きに関する情報を求める自治体や
    地域を公募し、地層処分プロジェクトに対し関心表明
    を行った地域の中から処分場候補地を選定していく
    ものです。NWM0は、プロセスに参加する地域や自
    治体は、第6段階において処分場の受け入れに関す
    る最終的に同意するまで、プロセスから撤退できると
    しています。
    NWMOは、サイト選定における検討事項として安
    全性を確保するための基準のほか、社会、経済、文
    化等の安全性以外の要素を評価するための基準も
    提示しています。後者の要素は、NWM0がプロジェ
    クトに関与する自治体の長期的福祉または生活の質
    の向上を目指していることを反映したものです。
    サイト選定計画の最終版「連携して進む:カナダの
    使用済燃料の地層処分場選定プロセス」
    9段階で構成されるサイト選定プロセス
    (段階数は参加している自治体に対してのみ言える点に注意)
    準備段階 カナダ政府及び州政府、国と州の先住民の自治組織•規制機関などと協議した後、NWM〇が最終版としたサイト選定計画を 公表する。
    第1段階 NWM〇は、サイト選定プロセスを開始し、処分事業及びサイト選定計画についての情報提供、質疑応答等によりプロジェクト とサイト選定プロセスに対するカナダ国民の意識を高める。
    意識啓蒙活動は、サイト選定プロセスの全期間にわたって継続する。
    第2段階 詳しく知りたい自治体に対して、NWM〇が詳細な情報提供を行う。初期スクリーニングを実施する。
    自治体からの要請があれば、NWM〇が初期スクリーニング基準に基づいて自治体の潜在的な適合性を評価する。〔1〜2カ月〕
    第3段階 関心を示した自治体に対して、潜在的な適合性の予備的評価を実施する。
    NWM〇は自治体との協力の下で、自治体内のサイトが処分事業の詳細要件を満たす可能性があるかについてフィージビリ ティ調査を行う。〔1〜2年〕・
    第4段階 関心のある自治体に対して、影響を受ける可能性のある周辺自治体を参加させるとともに、詳細なサイト評価を完了する。
    NWM〇は、地域調査や複数年におよぶサイト評価に対する関心を正式に表明した自治体から一つ、もしくは複数のサイトを 選定する。NWM〇はサイト調査をサポートする専門技術センターを開発する。関心のある自治体とともに、影響を受ける可能 性のある周辺自治体、先住民の政府、州政府の参加を得て、広域を対象とした環境影響評価を行う。〔約5年〕
    第5段階 適合性のあるサイトの存在が確認された自治体(複数)が、処分場の受入意思があるかどうかを決定し、プロジェクトを進める 条件を提示する。
    第6段階 好ましいサイトのある自治体(1つ)とNWM〇が処分場受入に関して正式に合意する。
    第7段階 規制当局は、独立した正式な公的プロセスを通じて処分事業の安全性を審査し、全要件が満たされる場合、事業を進めること を承認する。
    環境評価、サイト準備、建設及び操業に関する許認可プロセスを通じ、規制機関によるレビューが実施される(使用済燃料の輸 送に関する規制機関の承認も必要とされる)。
    第8段階 地下実証施設の建設•操業
    NWM〇はサイトの特性を確認するための地下実証施設の活動をサポートする専門技術センターを開発する。
    第9段階 地層処分場の建設•操業



    ※実際のサイト選定プロセスでは、第3段階は前期と後期(第い第2フェーズ)に分けられ、前期(1〜2年)は机上調査、後期(3〜4年)は
    現地調査を実施。
    171
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    ◎核燃料廃棄物管理機関(NWMO)によるサイト
    選定プロセスの進搜動向
    地層処分場のサ仆選定プロセスは、2010年5月か
    ら開始されました。カナダのサイト選定プロセスの段階
    は、自治体がたどる段階を示す形で示しており、プロ
    セスに参加している自治体によって、現在の段階数が
    異なります。自治体がNWM0に対して「知識を深め
    ることの関心表明」を行うことで第2段階がスタート。
    2012年9月末までに22の自治体が関心表明を行い、
    NWM 0は既に受け付けた自治体の調査や対応に注
    力するためにサイト選定計画への関心表明の受付を
    一時中断しています。
    第2段階では、関心表明を行った自治体全域を対
    象として、NUMOが既知の情報に基づく初期スグノー
    ニングを実施。右に示す5項目の基準と照らした結
    果、関心表明を行った22自治体のうち1自治体では、
    地層処分場の母岩として潜在的に適する地層を含む
    可能性が低いことからサイト選定プロセスから除外さ
    れました。初期スクリーニングをパスした21自治体は、
    2014年末までにいずれも第3段階に進むことを望みま
    した。
    カナダの地方自治体について
    地方自治制度は連邦ではなく州の管轄であり、州に
    よって異なっています。上層自治体と下層自治体の二層
    制、州の下に基礎自治体がある一層制が混在しています。
    二層制の場合、上層自治体はリージョンや郡(カウン
    ティ)と呼ばれ、下層自治体とは権限や役割が異なりま
    す。下層自治体は主として人口によって呼称が異なり、
    市(City)x町(Town)、村(Village)、タウンシップ
    (Township)などがあります。
    第2段階で実施する初期スクリーニングの適性基準
    〇サイトには、地上及び地下施設を収容できる大きさの
    土地がなければならない。
    〇利用可能な土地は、保護区域、遺産地域、州立公園、国
    立公園の外側でなければならない。
    〇利用可能なサイトは、将来の世代による擾乱の可能性
    がないよう、飲用、農業及び工業用途に使用される既
    知の地下水資源が処分場の深さに含まれていてはなら
    ない。
    〇利用可能な土地は、処分場サイトに将来の世代による
    擾乱の可能性がないよう、既知の経済的に利用できる
    天然資源が賦存していてはならない。
    〇利用可能な土地は安全性の要因を考慮し、サイトの安
    全性を妨げるような地質及び水文地質学的特性を持つ
    区域に入っていてはならない。
    初期スクリーニングで良好と
    判断された21地域の
    サイト選定プロセス参加状況
    (2021年1月時点)
  13. イングリッシュリバー先住民族
    保留地
  14. パインハウス村
  15. クレイトン・タウンシップ
  16. イアーフォールズ・タウンシッ
  17. イグナス・タウンシップ
  18. 二ピゴン・タウンシップ
  19. シュライバー ・タウンシップ
  20. マニトウェッジ・タウンシップ
  21. ホーンペイン・タウンシップ
  22. ホワイトリバー ・タウンシップ
  23. ワワ自治体
  24. ブラインドリバー町
    13•エリオットレイク市
  25. ノースショア・タウンシップ
    15•スパニッシュ町
  26. アラン=エルダースリー自治体
  27. ソーギーンショアーズ町
  28. ブロツクトン自治体
  29. ヒューロン=キンロス・タウン
    シップ
  30. サウスブルース自治体
  31. セントラルヒューロン自治体
    ハドソン湾
    マニトバ州
    サスカチュワン州
    スペリオ
    オンタリオ湖
    ミシガン湖
    エリー湖


    オンタリオ州
    ケベック州
    • NWMOが除外
    / 初期ボーリング調査の
    •第3段階第2フェーズ 計画検討用のグループ
    • NWMOが第2フェーズ実施を選択せず
    / または自治体がプロセスからの撤退を選択
    •第3段階第1フェーズ
    •第2段階
    •初期スクリーニング結果が不適
    ユー ロン湖
    サイト選定プロセスに参加している自治体の位置
    172
    第3段階では、使用済燃料の処分プロジェクトの
    受け入れに関する自治体の潜在的な適合性の予備
    評価が実施されています。主な検討事項は、①人間
    及び環境に対する安全性とセキュリティ、②地域の福
    祉、③地域がプロセスに残留する可能性、④周辺地
    域の福祉です。
    第3段階の調査にあたり、NWM0は当初の計画
    を修正して、前期と後期(第1•第2フェーズ)に分け
    ました。机上調査を行う前期(1〜2年)と現地調査
    を行う後期(3〜4年)の間で中間評価を行い、後期
    を実施する自治体の絞り込みがなされます。
    NWM0は自治体の要請により、第3段階第1フェー
    ズの調査過程で地層処分場の立地見通しが低いこと
    を示唆する情報を得た場合には、その旨を早めに当
    該自治体に通知しています。自治体側からサイト選定
    プロセスからの撤退を決定した自治体も1つあります。
    2015年10月にサ仆選定プロセスへの参加が最も
    遅かったセントラルヒューロン自治体での第3段階第1
    フェーズの調査が完了し、結果として11自治体が第
    3段階第2フェーズに進む結果となりました。
    第3段階第2フェーズでは、技術的なサイト評価要
    件を満たす可能性のあるエリアを特定するための初
    期調査として空中物理探査、環境調査等を実施する
    とともに、サイト選定プロセスを進めるために、自治体
    や周辺地域、先住民の持続的な関心を促進する関
    与プログラムが行われています。
    NWM0は2015年3月に、空中物理探査などの現
    地調査の結果から地質構造が複雑であり、地下に多
    くの亀裂があることから立地見通しが低いと判断され
    た2自治体(172ページの図中③⑦)を除外し、2017
    年6月には、ボーリング調査など地質工学的な調査を
    進めていく上で、当該地域の住民に十分な信頼感を
    与えるほどには関心•学習を拡大できなかったとして、
    さらに2自治体(図中⑩㉑)を除タ・しました。
    また、NWM0は、第2フェーズの後半の調査とし
    て、限定的なボーリング調査を実施するために、プロ
    セスに残っていた7自治体を、地理的な近さに応じて
    4地域(図中〇で囲んだ地域)にまとめ、調査の実施
    計画の策定やパートナーシップの構築を進めることとし
    ました。
    2017年12月に、現地調査枠内でボーリング調査を
    計画するなかで、調査対象エリアへのアクセスが地
    形の起伏が激しいために困難である1地域(2自治体
    (図中⑫⑬))を除外しました。
    2019年11月、NWM0は「2023年までに1カ所の
    好ましいサイトを特定する」という目標に向け、残って
    いる3地域を対象に、これまで得られた結果を予備的
    に評価して、「どの地域が高い可能性を持っているか」
    「より詳細な調査や評価の重点をどの地域におくべ
    きか」を検討した結果を取りまとめました。評価の観
    点は、①処分の安全性、②輸送の安全性、③パート
    ナーシップ構築の可能性の3項目としました。NWMO
    は観点①と②では差がなく、③の観点で「深く、幅の
    あるパートナーシップの可能性」が見込める2地域(3
    自治体(図中⑤⑲⑳))での活動に注力することを決
    定しました。
    NWM0は2019年5月から、土地所有関係が複
    雑であるオンタリオ州南部のヒューロン=キンロス•夕
    ウンシップ(図中⑲)及びサウスブルース自治体(図
    中⑳)において、土地所有者からフィールド調査を行
    う許可を得るための「土地アクセスプロセス」(Land
    Access Process)を公表し、NWM0と土地所有
    者との双方に有益な関係の構築を進めていました。
    2020年1月、NWM0はサウスブルース自治体で複
    数の土地所有者との合意が得られ、フィールド調査
    の実施にとって十分な広さである合計で約1,300エー
    カー(526ヘクタール)の土地が確保できたとしました。
    NWM0は、土地アクセスプロセスの結果により、2自
    治体のどちらか一方でサイト選定プロセスを進めてい
    くとしており、サウスブルース自治体で土地が確保でき
    たため、ヒューロン=キンロス・タウンシップを除タ・しま
    した。現在、カナダの使用済燃料処分場のサイト選
    定プロセスに残る自治体は、オンタリオ州北部のイグナ
    ス・タウンシップ(図中⑤)と同州南部のサウスブルー
    ス自治体の2つに絞り込まれています。
    173
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    2.地域振興方策
    a
    ポ^2ン
    カナダでは地域振興を目的とする法的枠組みはありません。しかしながら、実施主体である核
    燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、処分事業は自治体及び地域の長期的な福祉や生活の質を向
    上させるように実施する考えです。
    ◎地元の長期的福祉への貢献
    地層処分場プロジェクトの関連施設やインフラが建
    設•操業されると、地元に何十年間も大きな経済的利
    益が生じると予想されています。技術の移転や習得
    機会など、受け入れ地域や州に大規模な雇用と所得
    収益を提供すると考えられています。一方、社会的、
    経済的環境を大きく変えてしまう可能性があることか
    ら、地域社会の長期的健全性と持続可能性を確かに
    するために慎重に対処する必要があるとしています。
    このような認識から、核燃料廃棄物管理機関
    (NWMO)は、サイト選定プロセスにおける行動原
    則に挙げているように、「自治体の福祉」を重視して
    います。地層処分場を受け入れる自治体は利益を得
    る権利をもっと認め、自治体や地域の長期的福祉ま
    たは生活の質を高める方法でプロジェクトを実施する
    と確約しています。
    NWM0のサイト選定プロセスでは、第4段階にお
    いて、技術的安全性と地域社会の福祉面に関する
    評価を目的として「専門技術センター」を設置する計
    画です。このセンターの在り方は、地元とのパートナー
    シップを通じて具体化する考えです。自治体の福祉
    を促進する計画概要については、サイト選定プロセス
    の第6段階において、地元自治体と取り交わす協定
    書に盛り込むとしています。現在の所、カナダでは地
    層処分場の立地に関連して、地元の地域振興を目的
    とする法的枠組みはありません。
    174
    V.情報提供•コミュニケーション
    1.公衆との対話
    ポ^2ン
    実施主体の核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、核燃料廃棄物の長期管理アプローチの提案
    にあたって、約3年の国民対話と研究を踏まえてアプローチ案に反映しました。また、NWM〇は
    サイト選定プロセスの実施にあたっては、影響を受ける利害のある地域社会と協力してサイト選定
    プロセスを開発・実施することを公約としています。サイト選定プロセスの策定においてNWMO
    は、関心を表明した自治体の住民がプロジェクトについて学習できるようにするために、自治体が
    行う支援活動に対して資金提供を行っています。
    ◎公衆の関与プログラム
    2002年に制定された核燃料廃棄物法には、処分
    主体の設立目的が明記されました。これに基づき、力
    ナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、①連邦
    政府に対して、核燃料廃棄物の管理のための複数の
    アプローチを提案し、②採用が決定したアプローチを
    実施します。NWM0がアプローチを提案する際には、
    その具体的内容や実施スケジュールに加えて“公衆
    の関与プログラム”を含めることが求められています。
    NWM0は、約3年の国民対話と研究を踏まえて
    2005年に取りまとめた最終報告書『進むべき道の選
    択』において「適応性のある段階的管理」(APM)
    アプローチを提案しました。このなかでNWMOは、
    アプローチの実施過程の節目となる、重要な意思決
    定ポイントを複数設定するとともに、それらの時点で行
    われる関与プログラムの性格と範囲も明確にしていま
    す。
    実施の役目を持つNWMOは、段階的実施と適応
    を図る上で、専門家と一般市民の双方の参加が継
    続的かつ積極的、発展的であることが重要であり、そ
    れがNWMOの実施能力の向上につながると考えて
    います。
    ◎サイト選定における地元との
    コミュニケーション
    NWM0は2005年の報告書『進むべき道の選択』
    において、サイト選定プロセスでは「自主的に名乗り
    を上げる立地地域を特定することが、管理アプローチ
    一意思決定の判断材料となる関与一(抜粋)※



    1.候補エリアの特定(複数)
    〇適切な立地プロセスと基準を決定するための、潜在的に影響を受け
    る地域及びその他の利害のあるコミュニティとの対話結果
    4.原子力発電所からの使用済燃料の輸送をいつ開始するか
    〇直接影響を受ける利害のあるコミュニティの間で輸送を進めるため
    に十分なレベルの安全を立証すること
    2.有望なサイトの選択(1カ所)
    。候補地域及びその他の潜在的に影響を受ける地域からのフィージビ
    リティ調査及び分析の継続に対する合意
    5,いつ地層処分場を建設するか
    〇安全が十分に実証されたことの、立地地域及び他の直接影響を受け
    る利害のあるコミュニティからの確認及び深地層処分場を建設する
    合意
    3.浅部地下貯蔵施設を建設するかどうか
    〇原子炉サイトの地元からの廃棄物撤去の要求の強まり。セキュリ
    ティ向上のために燃料を集中管理することがより望ましくなる予期
    せぬ進展
    〇立地地域及びその他の直接影響を受ける利害のあるコミュニティか
    らの地下貯蔵施設建設に対する合意
    6,いつ地層処分場を閉鎖するか
    。使用済燃料への容易なアクセスがもはや優先事項でなくなったと社
    会が結論付けるようになる進展
    〇立地地域及び他の直接影響を受ける利害のあるコミュニティとの、
    深地層処分場の閉鎖の時期と方法に関する対話
    「適応性のある段階的管理」における意思決定ポイント
    (NWMO『進むべき道の選択』(2005年)の「意思決定へのインプットとしての関与」から、地元や社会に関するものを抜粋して作成)
    175
    情報提供•コミュニケーション>>>
    の実施に対する地域の協力と積極的関与の基礎を
    築く上で中核となる」と述べています。このことは、処
    分場プロジェクトの成功について国民が求めている水
    準の保証を提供するためには、サイトの技術的側面
    に対する確信だけでは足りず、影響を受ける個人と
    地元地域の社会的、文化的、経済的志向を尊重し
    続ける倫理的な方法でプロジェクトをダイナミックに展
    開する必要があるという考えが背景となっています。
    実施には、起こりうる影響について十分情報を持ち、
    NWMOと協力して主要な実施決定を具体化し、方
    向付けることに専心する地元の存在が前提であると
    いう認識です。
    地元の“自主性”(処分場を立地する意欲)を表明
    する方法は自治体側の問題であるとしつつも、表明さ
    れた“自主性”の程度が立地を進める上で十分か否
    かの判断はNWM 0の責任となると考えられています。
    こうした考えからNWM0は、影響を受ける利害のあ
    る地域社会と協力してサイト選定プロセスを開発・実
    施することを公約としています。
    ◎地元協議・コミュニケーションを支える
    財政支援
    NWMOは報告書『連携して進む:カナダの使用
    済燃料の地層処分場選定プロセス』(2010年5月)
    において、自治体とNWM0がプロジェクト受け入れ
    に係る正式協定に調印する前までの複数の段階にお
    いて、プロジェクトへの関心の評価に広範囲の市民の
    参加と関与が達成されるように働き掛けるとし、必要な
    リソース(人・資材•資金)を供給することを確約し
    ています。
    NWM0は、自治体が行う住民向けの学習支援活
    動に資金提供を行っています。これには、住民会合
    の開催費用のほか、サ仆選定プロセスで行われる初
    期スクリーニングの結果をレビューするために自治体
    が第三者の専門家を雇う費用、放射性廃棄物の貯
    蔵施設を見学するための旅費などがあります。また
    NWM0は、第3段階第1フェーズの調査が完了した
    自治体に対して、地元福祉の向上に利用できる資金
    として、40万ドル(3,200万円)を提供しています。さ
    らに、第3段階第2フェーズにおいてプロセスから除
    外された自治体に対しても、同様の目的のための資金
    を提供しています。
    『連携して進むーサイト選定プロセスの設計』
    (NWMO、2008年8月)
    サイト選定プロセスを策定するにあたり、NWM〇は事前に公衆の意
    見を聴く目的で協議文書をまとめました。この協議文書には、サイト
    選定のスケジュールなどの具体案は含まれておらず、代わって考慮
    すべき原則、目的、重要事項に主眼をおいて説明しています。意見を
    求めたい6つのポイントを質問形式で本文中に掲載しているのが特
    徴的です。NWM〇はサイト選定プロセスの策定に約2年を費やして
    います。
    176
    カナダ!3
    2.意識把握と情報提供
    ポ^2ン
    地層処分場のサイト選定を開始した核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、サイト選定プロセス
    への参加に関心表明を行った自治体において、“ラーン•モア”(もっと学ぼう)プログラムと呼ば
    れる情報提供活動に取り組んでいます。
    ◎サイト選定プロセスにおける広報活動
    (情報提供)
    2010年5月から開始されたサイト選定プロセスでは、
    自治体がカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)
    に対して「知識を深めることの関心表明」を行うこと
    で第2段階がスタートします。関心表明を行った自治
    体にでは“ラーン・モア”(もっと学ぼう)プログラムと
    呼ばれる情報提供活動が行われています。このプロ
    グラムは、サイト選定を行うNWM0が行っているもの
    です。
    このプログラムの重点は、自治体住民に向けて「適
    応性のある段階的管理」(APM)の全体像や進め
    方のほか、地層処分場のサイト選定プロセスがどの
    ように進むのかといった説明です。こうした情報提供
    や、住民との対話を図るために、オープンハウスでの
    展示会のほか、住民グループや先住民コミュニティな
    どの求めに応じた会合が開催しています。
    展示会では、ポスターボードを使った説明や体験
    型展示、ビデオ上映が行われるほか、NWM0の専
    門家とコミュニティ代表者を交えた公開会合などの
    企画もあります。住民が寄せる質問や意見に対して
    NWM0の職員や専門家が直接応える機会を通じ
    て、相互学習を図るねらいです。
    サ仆選定プロセスの第2段階では、当該自治体に
    おける地層処分場立地の潜在的適合性を評価する
    ために、既知の情報に基づいた初期スクリーニングが
    行われます。ラーン•モア・プログラムでは、スクリーニン
    グ結果に関する説明や質疑応答も行われています。
    サ仆選定プロセスの第3段階の現地調査が実施
    されている自治体に、ラーン•モアセンターを開設し、
    模型展示やパンフレット、関連資料等を設置し、地域
    住民への情報提供や対話活動を行っています。
    情報提供と対話のためのオープンハウスの様子(上)と
    オープンハウス等で使用されるNWM0の展示物の例
    (2012年1月付NWMOニュースレターより引用)



    177
    情報提供•コミュニケーション>>>
    ◎国民意識と住民意識(主な世論調査結果)
    NWMOは、社会調査プログラムの一環としてこれ
    までに2回(2005年8月と2008年11月)の全国的な
    世論調査を実施(外部の専門会社に委託)していま
    す。2002年設立のNWM0の最初の仕事は、使用
    済燃料の長期管理に向けて、国民と協力して「社会
    に受け入れられ、技術的に優れ、環境責任を果たし、
    経済的に無理のない」管理アプローチを開発すること
    でした。2007年6月にカナダの方針として“適応性の
    ある段階的管理” (APM)が決定しました。世論調
    査は、管理アプローチの提案や適応性のあるようにア
    プローチを実施する上で、社会の懸念や関心を理解
    するためのツールとなっています。
    これまでの世論調査での設問には、地層処分場の
    立地受け入れで生じる便益とリスクの捉え方だけで
    はなく、原子力発電の将来、他の社会問題と比較し
    ての核燃料廃棄物の管理の重要性に対する認識、
    APMの実施に関わるステークホルダーに対する信頼
    度なども含まれています。
    設問:核燃料廃棄物やそれらがどのように管理されているか
    についてどの程度知っていますか。
    口よく知っている 口少しなら知っている 口あまり知らない
    2008 年
    22% 15% 63%
    2005 年
    19% 14% 67%
    (出典:Views and Attitudes toward Nuclear Waste.
    NWMO SR-2008-37. December 2008)
    178
    諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
    2020年12月現在
    ・米国における
    高レベル放射性廃棄物の処分について
    ICE 面S]
    屈REE以® 四
    ALAS]
    •ユッカマウグ處^
    (処分場予定地»/
    『‘イ /UEka*^ashingt0n^J
    gllHiED STATESJg^gMERIGXj^
    fWITi:
    胸ElS

    函 Ml攻あ N
    米国の基本データ
    面積 9,833,517 平方キロ
    人口 327,096 千人(201 8 年)
    首都 ワシントンD.C.
    言語 英語
    通貨 ドル(!ドル=105円)

高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
I-高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

米国には、ネバダ州のユッカマウンテンを高レベル放射性廃棄物の処分場開発のサイトとして承
認するとの法律があります。ただし、民主党のオバマ政権は、ユッカマウンテン計画を中止する方
針とし、代替案を検討しましたが、共和党のトランプ政権は当初、ユッカマウンテン計画を継続す
る方針でしたが、計画が進まないため、代替の解決策を開発する方針に転換しょうとしていまし
た。なお、2021年1月に誕生した民主党のバイデン政権は、方針を決定するに至っていません。
◎原子力エネルギー政策の動向
米国における商業用の原子力発電所は全部で84
カ所あり、そのうち56カ所にある94基の原子炉が運
転中です。30カ所にあった35基の原子炉は既に廃
止措置されています。米国の原子力発電会社には
公営と私営の電力会社が含まれるとともに、所有者と
運転者が同一でない場合が多く、原子力発電会社
の数は非常に多く存在しています。2011年3月の東
京電力(株)福島第一原子力発電所の事故を受け、
原子力規制委員会(NRC)が事故の評価を行った
上で、原子炉の安全性を確保するための規制対応を
行っていますが、新規原子炉の計画を含めて大きな
政策の転換には至っていません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
米国では、商業用原子力発電所から発生した使
用済燃料が、2016年末で合計約77,90Obン(重金
属換算、以下同じ)蓄積されていると見積られていま
す。エネルギー省(DOE)は、2012年時点で運転中
だった104基の原子炉が全て60年間運転した場合
には、使用済燃料の量は140,000トンに達すると推定
しています。発生した使用済燃料は、原子力発電所
サイト内でプール貯蔵、または乾式貯蔵キャスクなど
で貯蔵されていますが、一部はサイト外で中間貯蔵さ
れています。サイト外での中間貯蔵施設は、イリノイ
州のモリス中間貯蔵施設(プール貯蔵方式)が米国
で唯一です。この施設は、ゼネラルエレクトリック社が
建設していたかっての民間の再処理工場の使用済
燃料プールを活用したものであり、イリノイ州の原子力
発電所で発生した674トンの使用済燃料を!972年か
ら貯蔵しています。
特殊なものとしてスリーマイル島原子力発電所2号
機の事故に伴って発生した燃料デブリ及び使用済燃
料をアイダホ国立研究所(INL)において、乾式貯蔵
キャスクに収納して貯蔵しています。
米国では、1973年以降、商業用原子炉で発生し
た使用済燃料の再処理は行われておらず、使用済
燃料をそのまま高レベル放射性廃棄物として処分す
る直接処分方式を取っています。ただし、バックエン
ド対策の代替案の検討が行われており、使用済燃料
の再処理もその一環として検討が進められています。
◎処分方針の策定経緯と現状
1982年放射性廃棄物政策法においては、高レ
ベル放射性廃棄物を処分することは連邦政府の責
任であり、処分費用の負担は発生者及び所有者
の責任とすべきと事実認定されました。同法におい
て「処分」という用語が定義され、高レベル放射性
廃棄物を地層処分する方針となりました。また、エネ
ルギー省(DOE)に「民間放射性廃棄物管理局」
(OCRWM)が処分の実施主体として設置され、処
分候補地の選定、サイト特性調査が進められました。
1987年放射性廃棄物政策修正法において、ユッ
カマウンテンを唯一の処分候補地とすること、ユッカマ
ウンテン以外でのサ仆特性調査を停止すること、ユッ
カマウンテンでの処分量は70,000bンに制限して、地
層処分の研究プログラムを実施することになりました。
1982年放射性廃棄物政策法に基づく手続きを経
て、2002年にネバダ州ユッカマウンテンが最終処分地
に決定し、2008年6月にはDOEが処分場の建設認
可に係る許認可申請書を原子力規制委員会(NRC)
に提出しました。
2009年1月に発足した民主党のオバマ政権は、ユッ
カマウンテン計画を中止する方針として、「米国の原
子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブ
ルーリボン委員会」という。)を設置して検討を行い、
2012年1月に、地層処分場の必要性は再確認するも
のの、同意に基づくサ仆選定、超深孔処分の研究、
中間貯蔵施設の設置などの代替案が勧告されまし
た。
180
米国
仙参考資料
◎原子力発電の利用•導入状況
米国の電力供給構成(発電量- 2018年)
(Energy Statistics 2020, IEA より作成)
2018 年 米国 国内供給 電力量 国内電力 消費量
総発電電力量 輸入 輸出
単位:億kWh 44,554.39 582.66 -138.05 44,999.00 39,008.64
◎原子力発電設備容量
合計94基9,655.3万kW
(2021年1月)
◎原子力発電所及びその他の原子力関連施設の所在地
DOEハンフォード・サイト
リッチランド低レベル
放射性廃棄物処分場

ユッカマウンテン
処分場予定地
スカルバレー中間貯蔵施設
ラス”ガス予定地(NRC許可済)

  • DOEアイダホ国立研究所
    WCS・テキサス低レベル
    放射性廃棄物処分場
    ■ 原子力発電所(商業用、運転中)
    ■ 低(中)レベル放射性廃棄物処分場
    ▼ 集中中間貯蔵施設
    • 処分場予定地・特性調査施設
    ■ ガラス固化施設•貯蔵施設
    廃棄物隔離パイロット
    プラント(WIPP).
    DOEサバンナ
    リバー・サイト
    • バーンウェル低レベル
    放射性廃棄物処分場
    181
    高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針»>
    共和党のトランプ政権は、ユッカマウンテン計画を
    継続する方針を示していましたが、2021会計年度の
    予算要求では、ユッカマウンテン計画の膠着状態を
    打破して進展を図るため、代替の解決策を見出すと
    の方針を示していました。なお、2021年1月に誕生し
    た民主党のバイデン政権は、現状で方針を示してい
    ません。
    ◎原子力発電以外から発生する
    高レベル放射性廃棄物
    米国における高レベル放射性廃棄物としては、
    ① 商業用原子力発電所から発生した使用済燃料、
    ② DOE保有の使用済燃料(研究炉や海軍の船舶
    炉などから発生するもの)、③核兵器製造及びかって
    実施された商業用原子力発電所からの使用済燃料
    の再処理によって発生したガラス固化体があります。
    DOEは、核兵器製造用の原子炉、研究炉、海軍
    の船舶炉、原型炉などから発生する使用済燃料を保
    有しており、処分する必要がある量は、2035年には
    約2,500トンになると推定しています。また、以前に行
    われていた商業用原子力発電所から発生した使用
    済燃料の再処理によって生じたものも含め、DOEの
    国防施設や国立研究所で生じた高レベル放射性廃
    液が、DOEの4力所のサイトにある地下タンク内で貯
    蔵されています。この廃液をガラス固化した場合、最
    終的に約36,000本のガラス固化体が発生すると推定
    しています。
    その他、大学の研究炉、DOEの研究施設、商業
    用研究炉、商業用核燃料製造プラントなど、約55の
    施設から少量の使用済燃料や高レベル放射性廃棄
    物が発生しています。
    また、冷戦の終結によって、公称値で約60トンの兵
    器級の余剰プルトニウムが発生するとされています。
    DOEは、そのうちの過半は商業用原子力発電所で
    MOX燃料として利用することの他、MOX燃料に適
    さないプルトニウムをニューメキシコ州カールスバッドの
    廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で処分するこ
    となどの計画について、環境影響評価書(EIS)の
    検討を実施しています。現在、MOX燃料での利用
    は、費用の関係で中止されており、WIPPでの処分に
    絞って検討されています。なお、DOEはすでに、一
    部の兵器級プルトニウムを希釈してWIPPで処分して
    います。
    廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)
    (DOE WIPPウェブサイトより作成)
    ブルーリボン委員会の報告書では、同意に基づいて処
    分場を立地することが勧告されていますが、米国には、
    地元の理解を得て順調に操業を続けている地層処分場が
    あります。ニューメキシコ州カールスバツド近郊の「廃
    棄物隔離パイロットプラント」(WIPP)は、国防活動で
    発生した超ウラン元素を含むTRU廃棄物を対象とした
    地層処分場であり、地下約655mの岩塩層の中に設置さ
    れています。1999年3月からエネルギー省(DOE)が、
    環境保護庁(EPA)及びニューメキシコ州の許認可を受
    けて操業を行っています。WIPPの開発は1970年代か
    ら開始された非常に長い歴史を持っていますが、ブルー
    リボン委員会の報告書の中でも立地の良好な事例である
    として、今後の高レベル放射性廃棄物の戦略を考える上
    での重要なものとされています。
    特に、連邦政府から資金の提供を受けてニューメキシ
    コ大学内に設置された環境評価グループ(EEG)は、独
    立で信頼できる技術的情報やWIPPプロジェクトのレ
    ビューを提供し、州や地域コミュニティの信頼を得るの
    に重要な役割を果たしたと評価されています。
    wippでは、順調に処分が実施されていましたが、
    2014年2月に火災事故、放射線事象が発生しており、操
    業を停止して事故調査を行うとともに、復旧計画に基づ
    いて復旧活動が行われ、2016年12月23日に操業再開
    が決定し、2017年1月4日に操業を再開して廃棄物の定
    置が行われました。また、2017年4月10日には、操業
    再開後で初となるTRU廃棄物の輸送、受入れも開始され
    ています。
    廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)での廃棄物定置状況
    (DOE WIPPウェブサイトより引用)
    182
    米国
    II-地層処分計画と技術開発
    1.処分計画(ユッカマウンテン計画)
    ポ^2ン
    米国では、1987年に法律によりネバダ州のユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物の唯一の
    処分候補地としてサイト特性調査が行われ、2002年に法律で処分場サイトとして指定されました。
    ユッカマウンテン計画では、商業用原子力発電所から発生する使用済燃料、エネルギー省
    (DOE)が保有する国防活動関連等から発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)及び使
    用済燃料の3種類を、地表から200〜500mの深さに地層処分する方針でした。ただし、2009年
    に発足した民主党のオバマ政権は、ユッカマウンテン計画を中止し、代替案を検討する方針でした
    が、2017年に誕生した共和党のトランプ政権は、最終的に代替の解決策を模索する方針を示しま
    したが、当初は、ユッカマウンテン計画を継続する方針を示していました。
    ◎3種類の高レベル放射性廃棄物を地層処分
    ユッカマウンテンで処分予定の高レベル放射性廃棄
    物は3種類あります。①商業用原子力発電所から発
    生した使用済燃料が63,00Obン(重金属換算、以下
    同じ)、②DOE保有の使用済燃料(研究炉や海軍
    の船舶炉などから発生するもの)カヾ2,333トン、③核
    兵器製造及びかって実施された商業用原子力発電
    所からの使用済燃料の再処理によって発生した高レ
    ベル放射性廃棄物が4,667トンです。合計で70,000トン
    です。
    ◎処分形態
    処分対象の高レベル放射性廃棄物は、外側がアロ
    イ22と呼ばれるニッケル基合金、内側がステンレス鋼
    の二重構造の廃棄物パッケージに封入して処分され
    ます。外側の合金が腐食に耐える役割を、内側のス
    テンレス鋼が力学的な荷重に耐える役割を担います。
    商業用原子力発電所で発生した使用済燃料の約
    90%は、発電所で輸送・貯蔵・処分(TAD)キヤ二
    スタに収納してからユッカマウンテンに輸送する計画
    であり、残りは処分場においてTADキャニスタに収
    納する計画です。このTADキャニスタを上述したニ
    重構造の廃棄物パッケージに封入して処分します。
    廃棄物パッケージは、収納する廃棄物の種類に応
    じて、民間の使用済燃料を収納したTAD廃棄物パッ
    ケージ、軍事用の高レベル放射性廃棄物を収納した
    もの、舶用の使用済燃料を収納したものなどの6種
    類があります。
    高レベル
    商業用使用済燃料 放射性廃棄物
    沸騰水型加圧水型
    原子炉 原子炉
    (BWR) (PWR)
    TADキャニスタ
    (21-PWR/44-BWR)
    亀—-已g;-
    ウバ実ジ
    DOE使用済燃料海軍用使用済燃料
    その他250種類
    以上の燃料
    廃棄体
    II
    ハン
    フォード・
    サイト
    I
    サバンナアイダホ
    リバー・国立工学・
    サイト 環境研究所
    廃棄物パッケージの種類


    (21-PWR/44-BWR)
    183
    地層処分計画と技術開発>>>
    ◎処分場の建設予定地の地質構造
    ユッカマウンテン周辺の岩盤は、約1,100〜1,400
    万年前の一連の噴火によって生じた火山灰が堆積し
    た凝灰岩です。年間の降水量が少なく蒸発量が多
    い砂漠地帯にあって、地下水面が地表から500〜
    800mと深いところにあります。
    ◎処分場の概要(処分概念)
    処分場は、地表から200〜500mの深さ、地下水
    面より平均約300m上部に建設することが考えられて
    います。こうした地質構造の特徴に加え、放射性廃
    棄物を環境から長期間隔離するための人工バリアに
    よる多重バリアシステムによる処分概念が考えられて
    います。処分場の規模は、総面積が約5km2.処分
    坑道の延長距離は約64kmと予定されています。
    下図のB-B,の区間を横切る、ユッカマウンテンと
    その周辺地域の東西方向の地質区分
    (出典:Day et al.1998, cross section B-B; Potter et al. 2002, plan view.)
    処分場は、地上施設と地下施設から構成されてお
    り、地上施設の主要な構成要素としては、輸送•貯
    蔵•処分(TAD)キャニスタに収納された使用済燃
    料を輸送用キャスクから取り出して処分または貯蔵に
    振り分けるための「受入施設」、輸送キャスクにそのま
    まの状態で運ばれてきた使用済燃料などをTADキャ
    ニスタに収納するための「湿式取扱施設」、TAD
    キャニスタなどを処分用の廃棄物パッケージに収納す
    るための「キャニスタ受入•密封施設」、使用済燃料
    を冷却貯蔵するための「貯蔵施設」などがあります。
    ユッカマウンテン処分場の全体レイアウト
    (DOEウェブサイトより引用)
    また、地下施設の主要な構成要素としては、直径
    約5.5mで11,000本の廃棄物パッケージを定置する
    「処分坑道」、定置される様々な形態の「廃棄物パッ
    ケージ」、廃棄物パッケージの上部に設置されて処分
    坑道壁面からの液滴•岩石の落下から防御する「ド
    リップシールド」があります。
    廃棄物パッケージは、処分坑道に設置されたパレッ
    卜に定置されます。
    なお、チタン製のドリップシールドは、処分場の閉鎖
    時に設置される計画となっています。
    また、処分場は段階的な建設が考えられており、地
    下施設については、初期段階の建設が完了した時点
    で操業許可を受けて廃棄物の受け入れが開始され
    ます。残りの部分については、廃棄物の定置と並行
    して処分場の建設が進められる予定です。
    定置坑道と廃棄物パッケージの概念
    (DOEウェブサイトより引用)
    184
    米国
    ◎処分事業の実施計画
    米国における高レベル放射性廃棄物処分の基本
    方針は、1982年放射性廃棄物政策法に定められて
    おり、同法第301条では、DOEはプログラムの包括
    的な計画を示した「ミッション・プラン」を作成すること
    が規定されています。
    1985年のミッション・プランでは、処分場の操業開
    始を1998年に計画していました。しかし、その後、
    1987年に1982年放射性廃棄物政策法が修正され、
    サイト特性調査活動をユッカマウンテンのみに限定す
    ることになり、1987年のミッション・プランの修正版で
    は、操業開始は5年遅れの2003年とされました。そ
    の後、1989年にさらに7年の遅れが発表され、2000
    年に公表された「民間放射性廃棄物管理プログラ
    ム•プラン第3版」では、操業開始を2010年と計画し
    ていました。
    約20年間の調査研究の後、ユッカマウンテンの大
    統領へのサイト推薦が2002年に行われ、連邦議会の
    承認を経て最終処分場サイトとして決定されました。
    その後、予定からは遅れたもののユッカマウンテン
    の建設認可に係る許認可申請の準備作業が進めら
    れ、DOEは、2008年6月3日に許認可申請書(約8,600
    ページ)、及び同月中には最終補足環境影響評価書
    などを原子力規制委員会(NRC)に提出し、2008年
    9月8日にはNRCが正式に受理しました。安全審査は
    一時中断があったものの審査が行われ、2015年1月
    29日までに、安全審査の結果を取りまとめた5分冊か
    らなる安全性評価報告(SER)が作成されています。
    安全性評価報告(SER)の分冊構成•公表日
    換気立坑 換気立坑
    ユッカマウンテン処分場予定地のレイアウト
    (補足環境影響評価書案より引用)

    2002
    2008
    2011
    2016
    NRCに建設認可申請を提出
    処分場閉鎖の可能性
    NRCからの許可取得後、
    廃棄物受け入れ開始
    廃棄物受入のための許可申請
    (操業許可の申請)
    エネルギー長官が大統領にサイト推薦し、
    大統領がサイトを承認し、議会に推薦
    ネバダ州知事から反対通知があったが、
    連邦議会がサイト指定の合同決議を可決、
    大統領署名により法として成立
    建設認可申請を準備
    ユッカマウンテンでの処分に関する
    スケジュール及びマイルスI-ーン
    (DOEウェブサイトより作成)
    NRCから認可取得後、建設開始
    分冊名 公表日
    第1分冊「一般情報」 2010¢ 8月 23 日
    第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」 2015年1月29日
    第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」 2014年10月16日
    第4分冊「管理上及びプログラム上の 要求事項」 2014年12月18日
    第5分冊「許認可仕様」 2015年1月29日
    閉鎖のための許可修正の可能性
    処分場閉鎖開始
    185
    地層処分計画と技術開発>>>
    ◎サイトの適合性の確認
    エネルギー省(DOE)は、ユッカマウンテン・サイト
    適合性指針(10 CFR Part 963)に従って、処分場
    閉鎖前及び閉鎖後の期間でのサイト適合性を判断す
    ることとなっています。この指針では、処分場閉鎖前
    の期間については、処分場が本来の機能を果たし、
    発生確率が1万分の1以上の事象による影響を防止
    あるいは軽減できるかを、ユッカマウンテンに適用され
    る安全基準に照らして評価することが規定されていま
    す。また、閉鎖後の期間については、トータルシステ
    ム性能評価(TSPA)を用いて評価することが定めら
    れています。
    このTSPAでは、右図に示されるように、処分シス
    テムによる廃棄物の隔離性能に対して影響を与え得
    る水文地質学、地球化学、熱、応力等のさまざまな
    プロセスモデルを組み込み、サ仆特性調査で得られ
    たデータ等を用いて、1万年を超える長期間にわたる
    処分場の性能についての発生確率、不確実性を考
    慮に入れた確率論に基づくシミュレーションが行われ
    ます。結果は、適用される安全基準との比較により、
    定量的に評価されています。
    なお、サイト推薦に向けたTSPA (2002年12月
    版)は、経済協力開発機構(OECD)の原子力機関
    (NEA)による国際的なピアレビューも受けています。
    レビューチームからは、このTSPAは改善の余地は
    あるものの、サイト推薦の十分な根拠を与えるものだと
    の結論が示されています。
    ユッカマウンテン•サイト適合性指針では、処分場
    システムの性能にとって重要なプロセスに対応した適
    合性基準として、以下のものが示されています。
    ① サイト特性(地質学、水文学、地球物理学、地
    球化学)
    ② 不飽和帯での水の流動特性
    ③ ニアフィールドの環境特性
    ④ 人工バリアシステムの劣化特性
    ⑤ 廃棄体の劣化特性
    ⑥ 人工バリアシステムの劣化と水の流動、放射性
    核種の移行に関する特性
    ⑦ 不飽和帯での水の流動と放射性核種の移行特

    ⑧ 飽和帯での水の流動と放射性核種の移行特性
    ⑨ 生物圏の特性
    TSPA
    事前TSPA
    要約された性能評価モデル
    概念モデルとプロセスモデル
    解析モデル報告書と
    プロセスモデル報告書
    サイト及び設計情報、
    技術データ
    設計及びサイトデータ、
    その他の情報
    トータルシステム性能評価(TSPA)の方法
    (ユッカマウンテン•サイト適合性評価報告書より作成)
    トータルシステム性能評価(TSPA)報告書と
    OECD/NEAのピアレビュー報告書
    186
    米国
    また、ユッカマウンテン•サ仆適合性指針では、以
    下の3つのシナリオについて評価することも定められ
    ています。
    i) 起こることが予測される
    「通常シナリオ」
    ii) 発生確率は低いが潜在的に有意な影響をもた
    らす「破壊的シナリオ」(火山活軌地震、核
    的臨界等)
    閉鎖後のトータルシステム性能評価の結果
    iii)探査目的の掘削による
    「人間侵入シナリオ」
    2008年6月にNRCへ提出されたDOEの許認可
    申請書には、NRCの10 CFR Part 63の改定案での
    規定内容に従って実施されたトータルシステム性能評
    価(TSPA)の結果が示されています。
    処分後1万年間 1万年〜100万年
    個人防護基準 0.15mSv/ 年 1.OmSv/ 年 口
    評価結果 0.0024mSv/年 0.0096mSv/年 2)
    線量の出現時期 1万年後 〜72万年後a
    人間侵入での個人防護基準 0.15mSv/ 年 1.OmSv/ 年 口
    評価結果 OmSv/ 年 0.0001 mSv/年
    1) 40 CFR Part197及び1〇CFR Part 63の最終版で規定された線量基準値
    2) 線量の評価結果及び出現時期は中央値について示している。40 CFR Part197最終版では、算術平均で
    の計算によることとされている。
    (ユッカマウンテンの許認可申請書及び40 CFR Part197 •10 CFR Part 63最終版より作成)
    廃棄物パッケージ及び
    ドリップシールドの劣化
    人工バリアが水分をそらす
    機能
    廃棄体の劣化と放射性核種の
    放出
    人工バリアシステム内での
    放射性核種の移行
    不飽和帯での水流
    放射性核種の崩壊
    熱が水分の移動』
    に与える影響
    坑道内の
    物理的•化学的環境
    生物圏
    蘆艦”


    南側
    飽和帯での
    放射性核種の移行
    I-ータルシステム性能評価(TSPA)のためにモデル化されたプロセスの概略
    (ユッカマウンテン科学・工学報告書改訂第1版より引用)
    187
    地層処分計画と技術開発>>>
    2.処分計画(民主党オバマ政権でのブルーリボン委員会の勧告を受けた処分計画)
    ポ^2ン
    米国では、2009年に発足した民主党のオバマ政権が、ユッカマウンテン計画を中止し、代替案
    を検討する方針を示し、大統領の指示によりエネルギー長官が設置した特別委員会(ブルーリボン
    委員会)で放射性廃棄物管理を含むバックエンド対策の代替案が検討されました。
    この代替案の実施には法律の改正が必要であり、連邦議会による検討も行われました。以下で
    は、このブルーリボン委員会勧告を受けた処分計画について示します。
    ◎政権交代によるユッカマウンテン計画の中止
    〜バックエンド対策の代替案の検討
    ユッカマウンテン計画については、共和党から政権
    交代した民主党のオバマ政権は、計画を中止し、代
    替案を検討する方針でした。これを受けて、エネル
    ギー長官は、放射性廃棄物管理を含むバックエンド
    政策の代替案を検討する「米国の原子力の将来に
    関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委
    員会」という。)を2010年1月に設置しました。2年
    以内での最終報告書の提出に向け、原子炉・核燃
    料サイクル、輸送・貯蔵、処分の3つの小委員会を
    設置して検討を進めました。2011年5月13日には各
    小委員会の勧告案、弓|き続いて2011年5月末から
    201I年6月初頭にかけて各小委員会のドラフト報告
    書が公表され、意見募集が行われました。さらに、ブ
    ルーリボン委員会は、2011年7月29日に、1年半以
    内に提出が求められていたドラフト報告書を公表しま
    した。このブルーリボン委員会の全体としてのドラフト
    報告書には、各小委員会のドラフト報告書に対する
    意見募集により得られた意見が反映されています。ド
    ラフト報告書が公開された以降は、2011年10月31
    日まで意見募集が行われ、この期間中には全米の5
    カ所でパブリックミーティングも開催されました。提出
    ブルーリボン委員会の
    最終報告書(2012年]月)
    http://www.brc.gov
    期限の2年以内に当たる2012年1月26日には、ブルー
    リボン委員会の最終報告書が公表され、下に示した
    8項目の勧告が行われました。
    ブルーリボン委員会が行った8つの勧告
  1. 将来の放射性廃棄物管理施設の立地のための同意に
    基づく新たなアプローチ:適応性があり、段階的で、
    同意に基づき、透明性があり、基準及び科学に基づい
    て、放射性廃棄物管理及び処分施設のサイト選定を行
    い、開発するための新たなアプローチ
  2. 廃棄物管理プログラムの実施のみを目的とし、成功を
    遂げるための権限及び資源を与えられた新たな組織:
    国内での放射性廃棄物の輸送、貯蔵及び処分のため、
    集中的で、統合されたプログラムを開発し、実施する
    という単一の目的を有する新たな組織
  3. 原子力発電の消費者が放射性廃棄物管理のために提
    供している資金の利用権:放射性廃棄物基金の積立
    金と每年の拠出金から放射性廃棄物管理プログラム
    に必要な資金が供給されること
    4.1つまたは複数の地層処分施設を開発するための迅
    速な取組み:使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物
    の安全な処分のための1つまたは複数の地層処分施
    設を開発するための可能な限り迅速な取組
    5.1つまたは複数の集中貯蔵施設を開発するための迅
    速な取組み:核燃料サイクルのバックエンドの管理
    のための計画の一部として、1つまたは複数の集中中
    間貯蔵施設を開発するための可能な限り迅速な取組
  4. 集中貯蔵施設•処分施設が利用可能になった時点で
    使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物を最終的にそ
    の施設に大規模に輸送できるようにするための迅速
    な取組み:輸送量の拡大に対する公衆の懸念を払拭
    するための輸送基準等の更新、地方政府に対する技術
    支援・訓練資金の提供
  5. 原子力エネルギー技術における米国の技術革新の継
    続と人材の育成のための支援:先進的な原子炉及び
    核燃料サイクル技術に関する研究開発•実証のため
    の安定した長期的なサポート
  6. 安全性、廃棄物管理、核不拡散及び安全保障上の懸念
    に対処するための国際的取組みにおける米国の積極
    的リーダーシップ:全世界の原子力施設及び核物質
    の安全性及びセキュリティを向上させるための国際
    的なリーダーシップ
    188
    米国
    ◎地層処分の基本方針は不変
    ブルーリボン委員会の勧告では、同意に基づくサイ
    卜選定プロセスなど、これまで進められてきたユッカマ
    ウンテン計画とは異なる処分場開発、中間貯蔵施設
    開発の進め方が示されています。しかし、どのような
    核燃料サイクル政策を採用したとしても地層処分は
    必要との結論が示されています。また、地層処分の
    オプションとしては、従来進められてきた坑道型の地
    層処分場は妥当な選択肢とした上で、超深孔処分も
    有望な選択肢として研究開発を進めるべきと勧告し
    ています。
    また、処分場の母岩については、これまで研究が
    進められてきた岩塩、結晶質岩、粘土層、頁岩、凝
    灰岩、玄武岩など様々な岩種で処分が可能であり、
    岩種自体よりも地質環境と定置方法の選択が重要と
    の見解が示されています。
    ◎エネルギー省(DOE)の処分戦略
    ブルーリボン委員会の最終報告書を受け、連邦議
    会の指示に基づいて、DOEは、2013年1月11日に「使
    用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理•処分
    戦略」(以下「DOE戦略」という。)を公表し、2025
    年までに使用済燃料の中間貯蔵施設が使用可能と
    なるようにサイト選定と許認可を実施すること、2048年
    までに地層処分場を実現するように処分場のサイト選
    定とサ仆特性調査を進めることなどのスケジュールを
    中«、とした右図のような戦略を示しました。
    このDOE戦略では、廃止措置した原子力発電所
    で貯蔵されている使用済燃料の早期の引取りなどを
    進めるため、中間貯蔵のパイロット施設の開発を進め
    ることとされています。
    ◎連邦議会での法案の検討
    ブルーリボン委員会の勧告を実現するためには、
    ユッカマウンテンを最初の処分場候補地として定めて
    いる1982年放射性廃棄物政策法の改正が必要にな
    るため、連邦議会でも法案の検討が行われました。
    2019年4月30日に上院に提出された「2019年放
    射性廃棄物管理法」の法案では、ブルーリボン委員
    会の勧告にほぼ沿った形で、新しい放射性廃棄物管
    理組織の設置、同意に基づくサ仆選定プロセス、中
    間貯蔵施設の早期実現に向けた制度、新しい基金
    の創設などが織り込まれていました。
    商業
    原子力発電
    プラント
    閉鎖済み
    原子炉
    パイロット
    中間貯蔵
    施設
    2021年 2025年
    操業開始 操業開始
    国防
    核物質生産
    サイト
    時間
    集中中間
    貯蔵施設
    2048 年
    操業開始

    DOE戦略:想定される貯蔵・処分システムのパス
    (出所:DOE,11 Strategy for the Management and Disposal of Used Nuclear Fuel
    and High-Level Radioactive Waste”より引用)
    上院エネルギー天然資源委員会での法案検討の公聴会
    (上院エネルギー ・天然資源委員会ウェブサイトより引用)

    189
    地層処分計画と技術開発>>>
    ◎エネルギー省(DOE)が管理する高レベル放射
    性廃棄物の処分
    DOEが管理している高レベル放射性廃棄物につい
    ては、これまでは民間の原子力発電所から発生する
    使用済燃料等と一緒に処分することとしていましたが、
    これとは切り離して独立した処分を行うことが計画され
    ました。DOE管理の高レベル放射性廃棄物の独立し
    た処分計画は、2015年3月24日に、オバマ前大統領
    も法律に基づいて是認するとした覚書を出しています。
    ただし、連邦議会上下院で検討された「2019年
    放射性廃棄物政策修正法案」の第204条では、ユッ
    カマウンテン処分場の建設認可が発給されるまでは、
    DOEが独立した処分場を計画•建設することを制限
    すると規定されていました。
    3.研究開発•技術開発
    ポ^2ン
    エネルギー省(DOE)の民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)は、1982年放射性廃棄物政
    策法に基づいて、ユッカマウンテンにおいてサイト特性調査を行い、処分場としての適合性を評価
    するための研究を行いました。また、DOE/OCRWMは、ユッカマウンテン•サイトに探査研究
    施設(ESF)を建設して、地層の岩石学的性質や水文地質学的特性を把握するため、熱や水の移
    動などに関する試験を行いました。
    ◎研究機関
    1982年放射性廃棄物政策法では、エネルギー
    省(DOE)が処分場を開発すると定めており、また、
    DOEの中に民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)
    を設置することを規定しています。この0CRWMが
    実際の処分計画を遂行し、サ仆特性調査を行い、処
    分予定地としての適合性を評価するための研究を行
    いました。DOEが地下での試験•評価施設の建設、
    操業及び保守を実施することも規定されています。
    OCRWMは、米国内の研究機関や管理•操業契
    約者(M&O)への委託等によって、処分技術や安全
    評価などに関する研究を進めました。2006年1月には、
    主導的研究所としてサンディア国立研究所(SNL)が
    寸旨定されました。また、カナダ、日本、フランス、スウェー
    デン、スイス、スペインの各国と放射性廃棄物処分に
    関する情報交換や共同研究を行いました。
    ◎研究計画
    1982年放射性廃棄物政策法の第211条は、エネ
    ルギー長官が高レベル放射性廃棄物及び使用済燃
    料の重点的かつ統合的な研究開発プログラムを作成
    しなければならないことを規定しています。この計画
    には、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研
    究を実施し、そのための技術を統合的に実証するた
    めの施設の開発も含まれています。
    ◎地下特性調査施設
    原子力規制委員会(NRC)が策定した高レベル
    放射性廃棄物処分基準(10 CFR Part 60)では、
    DOEがユッカマウンテン地層処分場の建設認可に係
    る許認可申請を行うに当たり、地下試験の実施を義
    務づけていました。ユッカマウンテンでの探査研究施
    設(ESF)の建設は1995年に開始され、1997年に
    完成しました。ESFの深度は約300mであり、本坑の
    全長は約7.9kmとなっています。ESFでは、ユッカマ
    ウンテンにおける地層の岩石学的性質や水文地質学
    的特性を把握するために、熱や水の移動に関する実
    験などが行われていました。
    探査研究施設(ESF)でのヒーターテストの様子
    (DOEウェブサイトより引用)
    190
    米国
    ◎民主党オバマ政権でのブルーリボン委員会の勧
    告に対応したDOEによる「使用済燃料処分等
    プログラム」(UFDプログラム)
    2013会計年度のエネルギー省(DOE)の予算要
    求資料において、ブルーリボン委員会の勧告への対
    応に関連した研究開発として「使用済燃料処分等プ
    ログラム」(UFDプログラム)が実施されていることが
    示されています。
    2012会計年度のUFDプログラムにおいては、短
    期的な優先事項として、①標準的な輸送•貯蔵・処
    分コンテナの開発及び許認可のサポート、②処分場
    の地層の特性調査、③サ仆に依存しない地層処分
    に関する研究開発、④貯蔵オプション及びそれぞれ
    の利点の評価、⑤有力なパートナーシップの仕組みを
    含め、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の代
    替管理方策の評価の開始、⑥使用済燃料の貯蔵の
    安全性に関連した課題へのDOEの評価能力の強
    化のような研究開発を実施しているとされています。
    2013会計年度のUFDプログラムでは、①集中中
    間貯蔵及び輸送の課題の評価(最初は廃止措置さ
    れた原子炉サイトを対象)、②産業界と協力して使用
    済燃料管理アプローチの標準化、③使用済燃料貯
    蔵の長期化をサポートするため材料試験の実施、④
    使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の安全輸
    送に関する全米科学アカデミー(NAS)レポートのレ
    ビューによって特定された実施作業の開始、⑤代替
    環境での地層処分の研究の開始(システムモデル
    化、天然バリア、人工バリア、設計概念の評価及び
    試験)のような研究開発を行うことが示されており、
    2014年1月16日に可決した2014年包括歳出法案に
    よるUFDプログラムを含む燃料サイクル研究開発プ
    ログラムに係る歳出予算として実施されるものとなりま
    す。
    ブルーリボン委員会に端を発するUNFD研究開発
    プログラムは、オバマ政権からトランプ政権に代わっ
    た後も、基本的な部分が現在も継続されています。
    2020会計年度での研究開発の活動内容、2021会
    計年度でのDOEの予算要求での活動内容を以下
    の表に示します。UNFD研究開発プログラムは、貯
    蔵及び輸送の研究開発と処分の研究開発で構成さ
    れていますが、処分の研究開発では、処分に関する
    研究開発活動は、粘土、頁岩、岩塩、結晶質岩の3
    つの主要な岩種における処分システムの長期的な性
    能の理解を深めることが目的となっています。
    会計年度 活動内容
    2020 〇地質媒体を通過する水の動きの強化されたモデリング、高温での埋め戻し材の性能、システム全体の性能システムの進歩など、 様々な廃棄物及び使用済燃料のための潜在的な代替処分オプションに関連した優先的な研究開発の継続 〇様々な地質媒体で実施されている研究開発を活用するため、国際的なパートナーとの協力の継続 〇現在の輸送・貯蔵兼用キャニスタで燃料を処分することにより、使用済燃料を再パッケージすることを排除する技術的実現可 能性の評価の継続
    2021 〇粘土質岩及び結晶質岩における処分に係る性能評価ツールとプロセスレベルのモデルの統合及び実施手法の評価。不確実性の 定量化と感度解析の解析ソフトウェアを含む統合モデル化ツール 〇岩塩における発熱性廃棄物の処分に係る科学的・工学的技術基盤の継続 〇様々な地層で実施されている研究開発を活用するための国際的パートナーとの協力を含め、様々な廃棄物及び使用済燃料の廃 棄体の代替処分オプション探求に関連した研究開発活動の継続 〇キャニスタの再パッケージの必要性を解消することができるよう輸送•貯蔵兼用キャニスタの直接処分の技術的フィージビリ ティを評価 〇新しい事故耐性燃料の貯蔵・輸送•処分性能特性の試験、評価


    191
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    HI.処分事業の実施体制と資金確保
    .実施体制
    ポ^2ン
    米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第111条等によって、高レベル放射性廃棄物及び使
    用済燃料の処分の責任は連邦政府にあると定められています。具体的にはエネルギー省(DOE)
    が処分の実施主体となっています。
    高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関としては、原子力規制委員会(NRC)が処分
    場の建設等の許認可の審査、許認可に係る技術要件•基準の策定を、環境保護庁(EPA)が高レ
    ベル放射性廃棄物の処分に適用する環境放射線防護基準の策定の役割を担っています。
    ◎実施体制の枠組み
    下の図は、米国における高レベル放射性廃棄物
    処分に係る実施体制を示したものです。高レベル放
    射性廃棄物に係る規制行政機関として、処分基準
    については、民間の原子力利用の規制、施設関連
    の許認可を行う原子力規制委員会(NRC)、その処
    分基準に組み込まれる環境放射線防護基準の策定
    については環境保護庁(EPA)が担っており、NRC
    及びEPAが規則を制定するに当たっては全米科学
    アカデミー(NAS)の勧告に従わなければならないこ
    とが1992年エネルギー政策法で定められています。
    また、諮問機関については、技術面についての独
    立の評価機関として放射性廃棄物技術審査委員会
    (NWTRB)の設置が1982年放射性廃棄物政策法
    (198?年修正)の第501条以下で定められています。
    ◎実施主体
    米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第111
    条において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料
    の処分の責任は連邦政府にあると定められています。
    具体的にはエネルギー省(DOE)が処分の実施主体
    として定められ、特に同法第304条によりDOE内部
    に設置された民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)
    が施策の実施に当たることとされています。
    しかし、民主党のオバマ政権によるユッカマウンテン
    計画中止の方針に従って、OCRWMは廃止されてお
    り、DOEの原子力局(NE)がその責任を引き継いで
    います。
    告見言告
    勧意助報
    議会 行政府
    報告
    独立機関 実施主体
    エネノレ—自
    (DOE)
    全米科学アカデミー
    (NAS*)
    放射性廃棄物技術
    審査委員会
    (NWTRB)
    告見-=ロ
    勧意助
    原子力局
    (NE)
    規制行政機関
    告見言告
    勧意助報
    環境保護庁
    (EPA)
    支援機関
    米国地質調査所
    (USGS)
    国立研究所
    _
    民間会社 放射性廃棄物規制解析センター
    (CNWRA)
    処分事業の実施体制
    ※NASは、処分の進め方の全般にわたる意見、勧告などを行う立場にあります。
    192
    米国
    ◎安全規則・・・安全評価による安全性の確認(許
    認可申請)
    米国では、高レベル放射性廃棄物の処分の安全
    基準として、ユッカマウンテンの処分場に適用される
    基準と、ユッカマウンテン以外の処分場に適用され
    るー般基準とがあります。後者の一般基準は、原子
    カ規制委員会(NRC)によって策定されているもの
    (「地層処分場における高レベル放射性廃棄物の処
    分」(10 CFR Part 60))と、環境保護庁(EPA)に
    よるもの(「使用済燃料、高レベル放射性廃棄物及
    びTRU廃棄物の管理と処分のための環境放射線
    防護基準」(40 CFR Part191)の2種類があります。
    一方、ユッカマウンテンについては、EPAは全米
    科学アカデミー(NAS)の勧告に基づいてユッカマ
    ウンテンのみに適用する処分の安全基準を策定する
    こと、NRCはこの基準に適合するように技術要件基
    準を変更することが1992年エネルギー政策法によっ
    て規定されました。これを受けて、EPAの「ネバダ州
    ユッカマウンテンのための環境放射線防護基準」(40
    CFR Part197)、NRCの「ネバダ州ユッカマウンテン
    地層処分場での高レベル放射性廃棄物の処分」(10
    CFR Part 63)が、それぞれ2001年6月、2001年
    11月に策定されました。EPAの40 CFR Part197で
    は、個人に対する防護や人間侵入に対しての安全基
    準の他に、地下水についても保護基準が設けられて
    います。
    EPA の 40 CFR Part 197 及びNRC の10 CFR
    Part 63は、2004年7月に、1992年エネルギー政策
    法でのNASの勧告に基づいて策定するとの規定を
    満足せずに1万年の遵守期間が設定されたことから、
    遵守期間が規定されている限りにおいて一部無効で
    あるとの連邦控訴裁判所判決が出されました。これ
    を受けて、EPAは2005年8月に、NRCは2005年9
    月に地質学的に安定な期間(処分後100万年間で
    終了すると定義されている)までの性能評価を求める
    とした改定案を公表していましたが、EPAは2008年
    10月に、処分後の1万年から100万年後までの期間
    について線量基準値をImSv/年とする連邦規則最
    終版を連邦官報に掲載しました。NRCは、2009年3
    月に、EPAの連邦規則に整合させた10 CFR Part
    63の最終版を連邦官報に掲載しています。
    ◎ブルーリボン委員会の勧告を受けた実施体制の
    検討
    ブルーリボン委員会が2012年1月26日に公開した
    最終報告書においては、過去60年間の米国の放射
    性廃棄物政策の歴史を検討して、輸送、貯蔵及び
    処分のための集中的、統合的なプログラムを実施す
    るため、新たな、単一目標の組織が必要であるとの
    結論が示されています。具体的な法人形態としては、
    議会によって設立を許可される連邦公社が最も期待
    できるとされ、1933年に設立されたテネシー渓谷開発
    公社(TVA)が既存の有用な事例とされています。
    連邦公社のような法人形態の場合、①政治的な管理
    の影響を受けにくい、②外部条件の変化に対応する
    ための柔軟性などの性質をより多く有し、③費用やス
    ケジュールを管理するための能力がより大きくなると指
    摘されています。また、新たな廃棄物管理法人には
    強力な最高経営責任者(CEO)のリーダーシップが
    必要とするとともに、CEOは、上院の助言及び同意に
    よって大統領によって指名される取締役会の自己裁
    量で選ばれ、7年間の任期で1回の更新が可能など
    の具体的な提案がされています。
    組織の責任の範囲については、1982年放射性廃
    棄物政策法(1987年修正)において連邦政府に割
    当てられている機能に限定することが勧告されていま
    す。
    なお、連邦議会上院で検討された「2019年放射
    性廃棄物管理法案」では、実施主体はブルーリボン
    委員会が勧告する公企業ではなく、行政府に置かれ
    る独立組織とすること、組織の長官は大統領が指名
    して上院の承認を経て任命されることなどが規定され
    ていました。
    193
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    ◎処分に関わる法令の体系図
    194
    米国
    ◎処分の法制度
    内 容
    事業規制 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みは、1982年放射性廃棄物政策法(198フ年修正)によっ て定められています° 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)は、高レベル放射性廃棄物処分についての連邦政府の責任及び 明確な政策の確立を目的として、処分場の選定等における連邦政府内の手続や、連邦政府と処分場立地の可能性 のある州政府との関係について規定しています。 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)は、処分事業の実施をエネルギー長官が行い、そのための実施 主体としてDOEの内部に民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)を設置することを定めています。 放射性廃棄物処分場としてのサイトの適合性評価に使用する規定としては、「放射性廃棄物処分場のサイト 推薦のための一般指針」(10 CFR Part 960)が定められており、全ての選定段階に適用することを規定して います。ただし、!982年放射性廃棄物政策法の1987年の修正によって、ユッカマウンテンがサイト特性調 査を実施する唯一の処分候補地となったのを受け、ユッカマウンテンサイトの処分場サイトとしての適合性を 判定するためにD〇Eが適用する手法及び基準を規定した、「ユッカマウンテン・サイト適合性指針」(10 CFR Part 963)が定められています。 なお、ブルーリボン委員会の最終報告書で示された勧告を受けて、同意に基づくサイト選定プロセスによる処 分場及び中間貯蔵施設の開発、新たな実施主体の設置などを図る「2019年放射性廃棄物管理法案」が連邦議会 上院で検討されました。
    安全規制 高レベル放射性廃棄物処分場の安全性・安全基準については、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正) の下に、地層処分場の建設、操業等の許認可要件、条件を規定する「地層処分場における高レベル放射性廃棄物 の処分」(10 CFR Part 60)と、「使用済燃料、高レベル及びTRU廃棄物の管理と処分のための環境放射線防 護基準」(40 CFR Part191)が定められています。 ただし、ユッカマウンテンに関する許認可要件及び環境放射線防護基準としては、1992年エネルギー政策法 に基づいて、「ネバダ州ユッカマウンテン地層処分場の高レベル放射性廃棄物の処分」(10 CFR Part 63)及 び「ネバダ州ユッカマウンテンのための環境放射線防護基準」(4〇CFR Part197)が適用されることになつ ています。 2004年7月、連邦控訴裁判所によって環境放射線防護基準を一部無効とする判決が出されたことを受け、 2005年に環境保護庁(EPA)及び原子力規制委員会(NRC)により、40 CFR Part197及び10 CFR Part 63の規則案がそれぞれ公表されました。EPAの40 CFR Part197は2008年10月]こ、NRC010 CFR Part 63は2009年3月にそれぞれ最終規則が発行されています。
    資金確保 高レベル放射性廃棄物処分に関する資金確保については、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に よって定められています。 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)では、高レベル放射性廃棄物の発生者が処分に必要な資金を負 担すること、そのために放射性廃棄物基金を設立することが規定されています。 また、「使用済燃料または高レベル放射性廃棄物の処分のための標準契約」(10 CFR Part 961)によって、 契約により、発生者が負担する費用を特定することを規定しています。
    環 境 高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定、建設等における環境影響評価については、1969年国家環境政策 法によって定められています° 1969年国家環境政策法では、人間環境に影響を与える法案、その他の連邦政府の主要な行為に当たっては、 事前に環境影響評価を実施することを規定しています。評価では、提案されている行為に代わる代替案を研究、 開発、説明することも要求しています°環境影響評価手続については、1969年国家環境政策法の施行手続(40 CFR Part 1 500-1 508、1 0 CFR Part 1021)に定められています。
    原子力責任 高レベル放射性廃棄物処分に関する原子力損害賠償については、1954年プライス・アンダーソン法(2005 年修正)によって定められています° 1954年プライス・アンダーソン法(2005年修正)では、高レベル放射性廃棄物処分に関して、DOEと管理・ 運営契約者との補償契約を締結することを規定しているほか、放射性廃棄物基金から資金供給されるものに起 因する公的責任は、限度額内で放射性廃棄物基金から賠償することを定めています°
    195
    処分事業の実施体制と資金確保»>
    2.処分事業の資金確保
    ポ^2ン
    高レベル放射性廃棄物の処分費用は、1982年放射性廃棄物政策法の第111条により、廃棄物
    発生者及び所有者が負担することとなっており、そのために同法第302条により放射性廃棄物基
    金(NWF)が財務省に設置されています。廃棄物発生者である原子力発電事業者は、発電1kWh
    当たり1ミル(約0.1円)を同基金に拠出しています。処分費用の総額は2007年価格で、約962
    億ドル(約10兆1,000億円)と見積られています。また、同基金の積立額は2020年9月末の時
    点で約543億ドル(約5兆7,000億円)です。ただし、裁判所の判決に基づいて、2014年5月よ
    り同基金への拠出が停止されました。
    ◎処分費用の負担者
    米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第111
    条により、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を
    永久処分することは連邦政府の責任となっています
    が、処分に要する費用の支払いは高レベル放射性廃
    棄物及び使用済燃料の発生者及び所有者の責任で
    あると規定されています。
    ◎処分の資金確保制度
    米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第302
    条に基づいて放射性廃棄物基金(NWF)が財務省
    に設置され、また、廃棄物発生者である原子力発電
    事業者は、同基金に拠出金を支払うことによって処分
    事業に必要な費用の負担責任を果たすように規定さ
    れています。拠出金は、使用済燃料を発生させる原
    子カ発電の販売電力!kWh当たり1ミル(0.001ドル)
    とされており、これは電力利用者の電気料金に反映
    されています。
    放射性廃棄物基金(NWF)では、下記に列挙す
    る高レベル放射性廃棄物処分に必要な資金が確保
    されることになっています。
    1.1982年放射性廃棄物政策法に基づいて設置
    される地層処分場、中間貯蔵施設、試験・評
    価施設のサイト選定、開発、許認可活動、廃止
    措置及び廃止措置後の維持及びモ二ダノング
    2.1982年放射性廃棄物政策法に基づく研究開
    発及び実証(一般的なものを除く)を実施する
    ための費用
    3.地層処分場での処分、中間貯蔵施設での貯
    蔵、試験•評価施設での使用のための、高レベ
    ル放射性廃棄物の輸送、前処理、パッケージへ
    の封入
  7. 地層処分場サイトの施設、中間貯蔵施設サイト
    の施設、試験•評価施設サイトの施設、並びに
    これらの施設の必要施設もしくは付随施設の取
    得、設計、改造、建て替え、操業、建設
  8. 州、郡及びインディアン部族への補助金
  9. 高レベル放射性廃棄物プログラムの一般管理
    費用
    また、1982年放射性廃棄物政策法では、基金に
    組み入れられるすべての資金は財務省によって管理
    され、財務省短期証券と呼ばれる米国債を通じて投
    資運用するように定められています。2020年9月末
    で保有されている米国債の市場価格は、約543億ドル
    (約5兆7,000億円)です。
    DOEの ‘・ータル・システム・ライフサイクル・
    コスト分析報告書
    (Analysis of the Total System Life Cycle Cost of the Civilian Radioactive Waste
    Management Program, Fiscal Year 2007)
    196
    米国
    なお、連邦控訴裁判所の2014年11月19日の判決
    により、放射性廃棄物基金への拠出金額を1ミル/
    kWhからゼロに変更する提案が2014年5月16日に
    有効となり、放射性廃棄物基金への拠出が実質的に
    停止されました。
    ◎処分費用の見積額
    米国における高レベル放射性廃棄物の処分費用
    の総額は、2007年価格で約962億ドル(約10兆1,000
    億円)と見積られています。このうち、1983年から
    2006年の間に135億ドルが支出され、残りの826億ド
    ルは2007年から処分場が閉鎖される2133年の間に
    支出されると想定されています。この見積りは、商業
    用の原子力発電による使用済燃料!09,300トン(重
    金属換算、以下同じ)、政府が所有する使用済燃料
    2,500トン及びガラス固化体19,667本(10,300トン相
    当)の受け入れ及び処分に伴うすべての費用を回収
    することを前提として試算されています。したがって、
    1982年放射性廃棄物政策法での処分量の制限とは
    異なり、全部で122,100トン以上の受け入れが可能な
    一つの処分場での処分が仮定されています。費用
    見積額の内訳としては、地層処分費用が約647億ドル
    (約6兆7,900億円)、廃棄物受け入れ•輸送費用
    が約203億ドル(約2兆1,300億円)など、さまざまな
    費用が想定されています。
    ◎民主党オバマ政権でのブルーリボン委員会が勧
    告した資金確保策
    ブルーリボン委員会が2012年1月26日にエネルギー
    長官に提出した最終報告書においては、長期的な措
    置として、新たな廃棄物管理組織が単年度予算から
    独立し、連邦議会の監督のもとで、自らの民間放射
    性廃棄物関連の義務を果たすことができるよう、基金
    の未使用残高を新たな廃棄物管理組織に移管する
    ための法律が必要であると勧告しています。
    この勧告を受け、連邦議会上院で検討された
    「2019年放射性廃棄物管理法案」では、放射性廃
    棄物管理の独立組織が歳出予算措置を経ずに利用
    可能となるような、新しい運営資本基金を財務省に創
    設し、電力会社が拠出金を払い込むことなどが規定
    されていました。
    3Z 及皿&MH 卜00OJ
    $2,000
    $1,800
    $1,600
    $ 1,400
    $ 1,200
    $1,000
    $800
    $600
    $400
    $200
    $0
    co CO CO co co co co co co co co co co co
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    i— t— ai C\J ai C\J C\J C\J ai C\J C\J c\j C\J C\J
    年度
    年次別にみた費用の概要
    ※同報告書では、2017年に処分場の操業を開始する前提で費用見積を実施
    (2007年度トータル・システム・ライフサイクル・コスト分析報告書より作成)
    197
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    IV.処分地選定の進め方と地域振興
    1.処分地の選定手続・経緯(ユッカマウンテン計画)
    ポ^2ン
    1982年放射性廃棄物政策法では、処分候補地として3地点を選定してサイト特性調査を実施す
    ることが規定されていましたが、1987年放射性廃棄物政策修正法が成立し、ユッカマウンテンが唯
    ーのサイト特性調査を実施する処分候補地となりました。その後、1999年にドラフト環境影響評価
    書(DEIS)が公表され、2002年2月にはエネルギー長官が大統領に最終処分場サイトとしてユッ
    カマウンテンを推薦し、翌日には大統領が連邦議会に推薦を通知しました。2002年4月にはネバ
    ダ州知事が不承認を連邦議会に通知しましたが、これを覆す立地承認決議案が2002年7月に可決
    され、大統領の署名を得て法律となり、ユッカマウンテンが処分場サイトとして決定しました。
    ◎処分場サイト選定の状況と枠組み
    1957年に全米科学アカデミー(NAS)より地層処
    分が妥当であるとの検討結果が示されており、1980
    年に公表された「商業活動から発生した放射性廃
    棄物管理に係る最終環境影響評価書(FEIS)Jと、
    これに伴い開催された公聴会を経て、エネルギー省
    (DOE)は処分の基本方針を決定しました。
    1982年放射性廃棄物政策法により、実施主体とし
    てDOEの民間放射性廃棄物管理局(0CRWM)
    が設置され、米国の処分政策の枠組みが定められま
    した。
    DOEは、1983年に9カ所の候補サイトを選定し(ユ
    タ州ラベンダーキャニオン、ユタ州デービスキャニオン、
    ミシシッピー州サイプレスクリークドーム、ネバダ州ユッ
    カマウンテン、ミシシッピー州リッチトンドーム、テキサス
    州デフスミス、テキサス州スウィッシャー、ルイジアナ州
    可能性のあるサイトの選定初
    特性調査に適したサイトの指定”
    ヽノ
    特性調査に適したサイトの決定・3
    ~’ヽ^^^^
    サイト特性調査
    ーヽノ—
    処分場としてのサイトの決定※く
    建設認可(Authorization)^5
    ——-、ノ——-
    建設
    ーヽノ—
    廃棄物受け入れの許可(License)
    廃棄物の受け入れ
    地点選定
    申請前の審査
    バチェリードーム、ワシントン州ハンフォ・ード)、翌1984
    年にはこれらの候補サイトについての「環境アセスメン
    卜案(DEA)Jが公表され、公聴会が開催されてい
    ます。1986年に、DOEはサイト特性調査の実施に適
    したサイトとして5カ所(デービスキャニオン、ユッカマ
    ウンテン、リッチトンドーム、デフスミス、ハンフォード)を
    指定し、このうち3カ所(ユッカマウンテン、デフスミス、
    ハンフォード)をエネルギー長官が大統領に推薦し、
    大統領の了承を得ました。
    しかし、1987年には、放射性廃棄物政策修正法
    が成立し、サイト特性調査を行う処分候補地として
    ユッカマウンテン1カ所が指定されました。その後、ス
    ケジュールが大幅に遅れて予算も削減される中で、
    DOEはプログラムの見直しを行い、ユッカマウンテン
    がサイトとして実現可能であることを示す「実現可能
    永久閉鎖の修正許可
    永久閉鎖
    許可終了の修正許可
    •モニタリング・閉鎖
    許認可
    ※!予備的なボーリング、物理探査の実施サイト:1983年に9地点を選定
    ※21986年に5地点を選定
    ※31986年にエネルギー長官が3地点を大統領に推薦し、決定
    1987年放射性廃棄物政策修正法により、対象はユッカマウンテンのみと
    する
    ※4 2002年2月15日に大統領は、エネルギー長官の推薦を受け、ユッカマ
    ウンテンを連邦議会へ推薦
    ネバダ州知事の不承認通知に対し、連邦議会が立地承認決議を可決し、サ
    イト選定手続が終了
    ※5 2008年6月3日にエネルギー省(DOE)は、原子力規制委員会(NRC)
    に許認可申請書を提出
    2008年9月8日にNRCは、許認可申請書を正式に受理
    ※6 2010年3月に,DOEは許認可申請の取り下げ申請を行い、NRCで検討中
    米国における処分場事業の流れ
    198
    米国
    性評価(VA)報告書」を1998年に公表しています。
    その翌年の1999年には、ユッカマウンテン処分場開
    発の「環境影響評価書案(DEIS)Jが公表され、そ
    のための公聴会も開催されました。
    2001年に、大統領へのサ仆推薦に必要な情報を
    含んだ「ユッカマウンテン科学•工学報告書」、「予
    備的サイト適合性評価報告書」が公表され、DOEは
    パブリックコメント期間中にサ仆周辺地域を中心とし
    た約20力所でサ仆推薦に関する公聴会を開催して
    います。一方で、サイト推薦のためのDOEによる規
    則「サイト推薦一般指針及びユッカマウンテン•サイト
    適合性指針(10 CFR Part 960 及び10 CFR Part
    963) Jは、2001年11月に策定されました。
    最終的なサ仆推薦•決定は、右の図のような流れ
    で行われ、大統領の推薦に対するネバダ州の不承認
    通知が行われましたが、立地承認決議案が連邦議
    会で可決され、大統領の署名を得て法律となったこと
    により、ユッカマウンテン・サイトの法的決定手続は終
    了しました。エネルギー長官によるネバダ州知事への
    サイト推薦決定の通知に始まるこれら一連の手続は、
    全て1982年放射性廃棄物政策法に定められている
    ものです。
    なお、ネバダ州等からはこのユッカマウンテンのサイ
    卜指定が憲法違反であるなどの訴えが起こされまし
    たが、連邦控訴裁判所は2004年7月にこれを退け
    ています。ただし、DOEが当初2004年末までに行う
    としていたNRCへの許認可申請書提出のスケジュー
    ルは、許認可関連書類の登録の遅れ、2004年7月
    の連邦控訴裁判所による環境放射線防護基準のー
    部無効判決、予算制約などの要因から遅れが生じま
    した。
    2005年10月にDOEは、輸送・貯蔵・処分(TAD)
    キャニスタの採用により処分場の地上施設を簡素化
    する設計変更の方針を示し、2006年7月にはNRC
    への申請書提出を2008年6月、処分場操業開始を
    2017年とするスケジュールを示しました。その後、申
    請書の提出は予定通り行われたものの、予算削減の
    影響による遅れを反映して処分場操業開始を2020
    年3月とするスケジュールが2009年1月に示されてい
    ます。
    1月1〇日
    エネルギー長宮が
    サイト推薦をする決定について
    ネバダ州知事•議会に通知
    30



    エネルギー長宮が大統領にサイトを推薦
    大統領が連邦議会にサイト推薦
    ネバダ州知事が連邦議会に不承認通知
    立地承認決議案の連邦議会提出
    下院本会議で立地承認決議案承認
    60



    5月8日
    90



    1982年放射性廃棄物政策法の定めによる日数期限
    7月9日
    上院本会議で立地承認決議案承認
    7月23日
    大統領が立地承認決議案に署名
    (法律として成立)
    サイト推薦から決定までの動き(2002年)
    また、2004年4月に告示された鉄道敷設等の環境
    影響評価に加え、処分場施設の設計変更等に伴う
    補足環境影響評価が実施されており、2008年6月に
    は最終補足環境影響評価書が公表されています。
    なお、ユッカマウンテン計画に対するネバダ州の反
    対は根強く、政治情勢も影響して民主党のオバマ政
    権でのユッカマウンテン計画中止の方針に繋がりまし
    たが、ユッカマウンテンが立地するネバダ州のナイ郡
    は、ユッカマウンテン計画を支持し、復活に向けた取
    り組みを見せています。
    199
    処分地選定の進め方と地域振興>>>
    2.処分地の選定手続(民主党オバマ政権でのブルーリボン委員会の勧告を受けた処分計画)
    ポ^2ン
    民主党のオバマ政権によるユッカマウンテン計画の中止の方針を受け、バックエンド政策の検討
    を行ったブルーリボン委員会がまとめた最終報告書では、同意に基づくサイト選定プロセスが重要
    との考え方が示されました。この勧告を受けて、エネルギー省(DOE)及び連邦議会において、
    同意に基づくサイト選定プロセスについて法制化に向けた具体的な検討が行われました。
    ◎ブルーリボン委員会が最終報告書で勧告した処
    分地選定の進め方
    ブルーリボン委員会が2012年1月26日に公表した
    最終報告書においては、米国及び海外における数十
    年に及ぶ放射性廃棄物施設の立地を考察し、今後、
    放射性廃棄物管理•処分施設の立地及び開発への
    新たなアプローチを採用する必要があるとの結論が
    示されています。
    今後の放射性廃棄物管理・処分施設の立地プロ
    セスは、それらが以下の条件を満たす場合に成功の
    可能性が最も高くなるとの考えが示されています。
    ① 同意に基づいている。:影響を受ける自治体が、
    施設の立地決定を受入れるかどうかについて決
    定する機会を得て、地元の大きな主導権を維持
    できる。
    ② 透明性がある。:すべてのステークホルダーが重
    要な決定を理解し、そのプロセスに意義深い方
    法で関わる機会を得る。
    ③ 段階的である。:重要な決定が前もって確定され
    るのではなく、その過程で再考され、必要に応じ
    て修正される。
    ④ 適応性がある。:プロセスそのものに柔軟性があ
    り、新たな情報や新たな技術的、社会的、政治
    的展開に反応する決定を生み出す。
    ⑤ 基準及び科学に基づいている。:すべての施設
    が、安全及び環境の保護に関する厳格かつ客
    観的で、一貫性をもって適用される基準を満たし
    ているという確信を公衆が持てる。
    ⑥ 実施主体と受入れ先の州、地方自治体等との間
    のパートナーシップ契約または法的に強制力のあ
    る協定によって規律される。
    ◎エネルギー省(DOE)や連邦議会での検討
    ブルーリボン委員会が最終報告書で勧告した同意
    に基づく立地プロセスは、DOEや連邦議会における
    検討でも、その方針が受け継がれていました。連邦
    議会上院で検討された「2019年放射性廃棄物管理
    法案」では、以下のような流れでのサイト選定の進め
    方が規定されていました。この手続は、一部を簡略化
    した形で、中間貯蔵施設のサイト選定についても適用
    されることになっていました。
    「2019年放射性廃棄物管理法」の法案における
    サイト選定の流れ
    ※赤文字部分は処分場の場合のみ必要とされる手続
    (2019年放射性廃棄物管理法の法案より作成)
    なお、同法案では、複数のサ仆候補から選定を行
    う場合、例えば中間貯蔵施設と処分場など、複数の
    施設の立地を希望するサイトが優先されることになっ
    ています。
    200
    米国
    3,地域振興方策
    ポ^2ン
    立地地域への財政支援として、1982年放射性廃棄物政策法においては、立地を受け入れたネ
    バダ州と関係1〇郡に対し、使用目的に制限がない補助金の交付や、国が行う処分場開発活動に対
    する課税相当額を補填する制度が創設されています。
    ◎制度的な支援
    1982年放射性廃棄物政策法では、立地地域への
    直接的な財政支援として、第116条(c)と第170条
    に基づく 2つの制度が設けられています。
    [州等の参加を支える財政支援(Ml16条(c))
    1982年放射性廃棄物政策法の第116条(c)に基
    づく特別の財政措置には、補助金の交付と課税相当
    額(PETT)の補填という2種類があります。課税相当
    額とは、処分場開発活動は連邦政府が行うために州
    の売上税等の課税対象とはならないことから、仮に課
    税が認められるとした場合の税収相当額を放射性廃
    棄物基金(NWF)から州に補填するという制度です。
    これらの財政措置の金額は毎年の予算の中で定
    められ、放射性廃棄物基金が財源となります。
    また、補助金は、地元のネバダ州と関係する10郡
    が、以下のような独自の評価や活動を実施できるよう
    に交付されるものです。
    〇処分場による経済的•社会的な影響、公衆の健
    康•安全、環境への影響の評価
    〇サイト特性調査活動の監視•評価
    〇地元住民への情報提供活動
    〇DOEへの情報要求、見解や提案の表明など
    [処分場の受け入れに対する給付(第170条)
    ユッカマウンテン・サイトへの処分場立地をネバダ
    州が受け入れた場合、州や自治体等は、その見返り
    として使用目的に制限のない特別の資金給付を受け
    ることができます。この資金給付は、DOEと州が契約
    を結ぶことにより決定されますが、その交渉では関係
    する自治体等とも協議を行うこととされ、金額の3分の
    1以上は州から自治体等に分配されることが決められ
    ています。なお、この契約を結んだ後は、州は大統領
    が連邦議会に対してサイト推薦を行う際に反対するこ
    とができなくなります。
    1982年放射性廃棄物政策法で定められた給付金
    額は以下の通りであり、契約を締結してから処分場が
    閉鎖されるまで毎年、さらに処分場が操業を開始する
    ときには一時金が支払われます。これらの給付は、放
    射性廃棄物基金(NWF)から行われます。
    契約締結 使用済燃料引取開始 処分場閉鎖
    (サイト特性調査、建設中)I (処分場の操業中)
    1,00〇万ドル/件 A 2,000万ドル/件
    (約10.5億円)/牛 (約21.〇億円)’牛
    一時金:2,000万ドル(約21.0億円)
    1982年放射性廃棄物政策法で定められたネバダ州への給付金額
    (1982年放射性廃棄物政策法より作成)
    その他、1982年放射性廃棄物政策法では、連邦
    政府の研究プロジェクトの立地について処分場立地
    州から提案がある場合には特別の考慮をすることも
    定められています。
    ◎民主党オバマ政権でのブルーリボン委員会の勧告
    ブルーリボン委員会の最終報告書に示された勧告
    では、同意に基づく処分地選定の進め方が必要とさ
    れていますが、この仕組みの中でも、国家的問題の解
    決を支援する州や自治体等には便益が提供される必
    要があるとしています。
    具体的には、支払金額は上に示した現在のネバダ
    州向けの金額を大幅に上回る水準が必要で、実施
    主体が州や自治体と取決めを出来るようにすること、
    他の連邦プロジェクトの立地が優先して行われるよう
    に法律を拡張・改正すること、影響を受けた住民など
    は妥当な実費の補償を受けるべきことなどが勧告され
    ています。
    ブルーリボン委員会の勧告を受け、連邦議会上院
    で検討された「2019年放射性廃棄物管理法案」で
    は、実施主体と立地州•自治体等の間で締結される
    協力協定や立地の同意協定の中で、金銭的補償や
    インセンティブ、経済開発の援助について決定するも
    のとされていました。


    201
    情報提供•コミュニケーション>>>
    V.情報提供•コミュニケーション
    1.公衆との対話
    ポ^2ン
    1982年放射性廃棄物政策法では、エネルギー長官がユッカマウンテンを処分場サイトとして推
    薦するに当たり、地域の住民に対して、検討状況について情報を提供し、サイト推薦に対する意見
    を求めるため、サイトの近辺で公聴会を開催することを定めています。その他、環境影響評価の
    手続でも、住民やさまざまな関係者に情報を提供し、意見を求めることが必要とされています。
    また、地元ネバダ州には、サイト推薦に不承認の意思を表明することが認められていますが、連邦議
    会はそれを覆すことが可能とされており、2002年7月に連邦議会の立地承認決議が行われました。
    ◎情報提供と住民のコメント募集
    ネバダ州ユッカマウンテンを処分場サイトとして推薦
    し、処分場建設の許認可を行うためには、2つの枠
    組みで情報の提供とコメントの募集が行われることと
    なっています〇
    1つは環境影響評価の手続で、計画段階やドラフ
    卜環境影響評価書の公表後に公聴会やパブリックコ
    メントの募集が必要とされています。ユッカマウンテン
    の環境影響評価でも、計画段階で15回の公聴会が
    1995年に行われたのを始め多くの公聴会が開催さ
    れ、2002年のサイト推薦までに1万件以上のコメント
    が寄せられ、エネルギー省(DOE)の回答が示され
    ています。
    もう1つは1982年放射性廃棄物政策法で定めら
    れた処分場に特別な手続です。特に、エネルギー長
    官による大統領へのサイト推薦に際しては、同法第
    114条等により、ユッカマウンテン•サイト周辺の住民
    に対し、情報の提供とコメント募集のため、事前にサイ
    卜周辺で公聴会を行うことが求められています。
    [情報提供]
    DOEは、サ仆推薦のための情報提供として、公
    聴会などに先立って、科学的根拠を示した「ユッカマ
    ウンテン科学•工学報告書」とドラフト環境影響評価
    書の補足書、「予備的サイト適合性評価報告書」な
    どを公表しています。
    [住民のコメント募集]
    DOEは、2001年5月から12月にかけて、ユッカマウン
    テン・サイト周辺での公聴会と、ユッカマウンテンのサ
    仆推薦に関するパブリックコメントの募集を行いまし
    た。公聴会はネバダ州17郡とカリフォルニア州1郡で
    開催されました。
    パブリックコメントは約4,600件が寄せられ、その
    結果を検討した上で、上の「情報提供」の項で示し
    た各報告書が改定されています。また、寄せられた
    コメントの要約とそれに対するDOEの回答をまとめた
    「サイト推薦コメント要約文書」も発表しています。
    ◎地元の意思表明と許認可手続への参加
    1982年放射性廃棄物政策法では、州や地元自治
    体等が処分場開発に係る意思決定手続に参加でき
    る仕組みも定められています〇
    まずサイト推薦の手続では、エネルギー長官が大
    統領に処分場のサイト推薦を行う決定をした場合に
    は、事前にネバダ州知事と州議会に通知を行うこと
    が必要とされています。そして、州知事または州議会
    は、大統領から連邦議会へのサイト推薦について、
    60日以内に不承認通知を連邦議会に提出することが
    できることも決められています。しかし、この州の不承
    認通知は、連邦議会が覆すことが可能となっていま
    す。ユッカマウンテンのサ仆推薦では、前述の通り、
    この手続に従って連邦議会が立地承認決議を行い、
    地元ネバダ州の不承認は覆されています。
    また、米国では原子力施設の許認可手続では裁
    判に似た形で審理が行われますが、州と関連する自
    治体などは、この審理に当事者として参加することが
    認められています。ユッカマウンテンの審理手続では、
    ネバダ州及び同州の7つの郡の他、カリフォルニア州
    なども当事者として参加が認められ、特にネバダ州
    は、200件以上の論点を提出して、争う姿勢を示して
    いました。
    202
    米国
    なお、原子力規制委員会(NRC)の2020会計年 マウンテン関連予算は歳出法で計上されませんでし
    度の予算要求では、裁判形式の裁決手続の再開準 た。
    備などで約41億5千万円となっていましたが、ユッカ
    2.意識把握と情報提供
    ポ^2ン
    実施主体のエネルギー省(D〇E)は、インターネツトやインフォメーション・センターなどによつ
    て、地元住民だけでなく国民全体の理解促進のためにユッカマウンテン•プロジェクトの情報提供
    活動を行っていましたが、民主党のオバマ政権によるユッカマウンテン計画中止の方針に伴い、こ
    うした情報提供活動は廃止されました。
    ◎広報•情報提供活動
    実施主体のエネルギー省(DOE)は、1982年放
    射性廃棄物政策法で必要とされる地元住民や公衆
    に対する情報提供活動の他に、地元住民や国民全
    体の理解促進のための情報提供活動も行っていまし
    た。その主な方法としては、小冊子やインターネットに
    よるものと、インフォメーション・センターによるものカヾあ
    ります。
    [小冊子やインターネットでの情報提供]
    DOEの民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)
    は、許認可申請書等の正式文書や専門的な分析報
    告書など膨大な情報の公開に加え、一般市民にも理
    解しやすいように工夫されたパンフレットなども作成し、
    ウェブサイトでも提供していました。
    2002年1月には、ユッカマウンテンのサイト推薦関
    連の情報提供として、『何故、ユッカマウンテンか?』
    及び『ユッカマウンテン・プロジェクトのQ&A』などの
    小冊子がウェブサ仆でも公開されたほか、『科学、社
    会、そしてアメリカの放射性廃棄物』というオンライン
    教育カリキュラムも1992年から改定を重ねて公開され
    ていました。
    2008年6月の建設認可に係る許認可申請書の
    提出後には、『ユッカマウンテン安全性説明書』及び
    『ユッカマウンテンにおける国の処分場』という小冊
    子が作成され、ウェブサイトでも公開されていました
    が、民主党のオバマ政権によるユッカマウンテン計画
    中止の方針に従ってウェブサイトは廃止されています。
    DOEウェブサイトで入手できる資料の例


    203
    情報提供•コミュニケーション>>>
    [インフォメーション・センター]
    ユッカマウンテンの最寄りの町であるパーランプに
    は、DOEの0CRWMのインフォメーション•センター
    が設置されていました。同センターでは、展示、ビデ
    才・ディスプレイ、対話型コンピュータ・プログラム、そ
    の他教育プログラムが整備され、また、バーチャルリア
    リティにより処分場の内部に入る擬似体験ができるよ
    うになっていました。
    ただし、その後の予算削減の影響や民主党オバマ
    政権によるユッカマウンテン計画中止方針が示された
    以降、現在もインフォメーション・センターは閉鎖され
    ています。
    拡張・移転されたパーランプのインフォメーション•センター
    (DOEより提供)
    204
    韓国、中国、ロシアにおける地層処分
    中国
    ロシア
    は韓国

韓国における地層処分»>
韓国における高レベル放射性廃棄物処分の概要

放射性廃棄物を安全かつ効率的に管理することを目的とする放射性廃棄物管理法が2009年1月
に施行され、同法に基づいて韓国原子力環境公団(KORAD)が放射性廃棄物管理を実施してい
ます。
2016年7月に「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」が策定され、許認可用の地下研究所、中
間貯蔵施設、最終処分施設を同一のサイトにおいて段階的に建設する方針が示されました。ただ
し、2017年5月に発足した文在寅政権により、見直しが進められています。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
運転中の発電用原子炉は2020年12月現在で計
24基あり、その内訳は加圧水型原子炉(PWR)が21
基、加圧重水型原子炉(PHWR、カナダ型重水炉)
が3基です。
韓国の原子力発電事業者は、韓国電力公社
(KEPCO)の子会社である韓国水力原子力発電
株式会社(KHNP)だけです。このためKHNPは、
高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の国内におけ
る唯一の発生者であり、また低中レベル放射性廃棄
物の大部分(90%)の発生者でもあります。
◎実施体制
2009年に施行された放射性廃棄物管理法に基づ
き、国内の全ての放射性廃棄物の管理事業(主に最
終処分に関連する業務)の実施を担う唯一の管理公
団として韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が
設立されました。2013年6月に名称が「韓国原子力
環境公団」(KORAD)に変更されました。KORAD
は、「月城(ウォルソン)低中レベル放射性廃棄物処分
センター」において、2015年7月より低中レベル放射
性廃棄物の処分を開始しました。
原子力・放射性廃棄物行政に関係する省庁につ
いて、韓国産業通商資源部(MOTIE)は、原子力
エネルギー開発、放射性廃棄物の管理、処理・処分
の長期計画等の政策の立案などを担当しています。
韓国科学技術情報通信部(MSIT)は、原子力に
関する研究開発計画を担当しています。なお韓国の
「部」は、わが国の「省」に相当します。
KORADが実施する放射性廃棄物の管理に要す
る費用は、放射性廃棄物基金として確保することに
なっています。放射性廃棄物の発生者は、廃棄物を
KORADに引き渡す際に、低中レベル放射性廃棄物
の管理費用及び使用済燃料の負担金等をKORAD
に納付します。放射性廃棄物基金の運用管理は
KORADが行っています。
大統領
首相
原子力振興委員会
韓国科学技術情報通信部 韓国環境部 韓国産業通商資源部
(MSIT) (MOE) (MOTIE)
監督
規制
原子力安全委員会
(NSSC)
実施主体I
規制支援機関
韓国水力原子力発電株式会社
(KHNP)
韓国原子力環境公団
(KORAD)
韓国原子力安全技術院
(KINS)

韓国核不拡散核物質管理院
(KINAC)

韓国における放射性廃棄物処分の実施体制
206
◎処分方針(使用済燃料の管理方針)
韓国では、2016年7月に「高レベル放射性廃棄物
管理基本計画」(以下「基本計画」)が策定され、高
レベル放射性廃棄物(使用済燃料)管理について
基本方針が示されました。
この基本計画は、2015年6月末に「使用済燃料
公論化委員会」から提出された勧告を踏まえ、韓国
産業通商資源部(MOTIE)により案が策定され、公
聴会等を経て、原子力振興委員会にて承認されたも
のです。
基本計画では、高レベル放射性廃棄物の管理に
ついて、国民の安全の最優先や現世代による管理責
任の負担、廃棄物発生者による管理費用の負担等
の原則を示した上で、以下の方針を示しています。
〇許認可用の地下研究所、中間貯蔵施設、最終
処分施設の同一のサイトへの段階的建設
•科学的サイト調査と民主的方式によるサイト選

•サイト選定後の中間貯蔵施設の建設と許認
可用地下研究所の建設•実証研究の同時進

•許認可用地下研究所における実証研究を10
年以上実施後、最終処分施設へと拡張
•中間貯蔵施設の操業までの、原子力発電所
サイト内での使用済燃料管理
〇国内での処分サ仆選定と併行した、国際協力に
よる国際共同貯蔵•処分施設の確保への取組
〇許認可申請用地下研究所とは、別途建設する
地下研究所での、処分施設のサイト選定、設計、
建設、操業等のための研究実施
〇安全性と経済性を両立した管理技術の確保
〇管理施設の操業に関する情報公開と、地域住
民との持続的コミュニケーション
◎使用済燃料管理サイトの選定について
基本計画では、使用済燃料の中間貯蔵施設と処
分施設の両方を立地するサ仆の選定手続きを以下
のステップで進めるとしており、全体で12年間の所要
期間を見込んでいます。
(1) 不適合な地域の除外
(2) サイトの公募
(3) 基本調査
(4) 住民の意思の確認
(5) 詳細調査
◎基本計画の見直し
2017年5月に発足した文在寅大統領による政権の
下、MOTIEは2019年5月に「使用済燃料管理政
策再検討委員会」を設置し、2016年7月に策定され
た基本計画の再検討に着手しました。同委員会は、
2019年11月に設置された専門家検討グループや、
2020年5月に全国民から選出された549名で構成さ
れる市民参加団等からの意見をもとに、検討を進め
ています。
使用済燃料の処分施設等に関する所要期間の見込み(2016年策定の基本計画より作表)
基本計画では、各工程の所要期間の見込みを示しているが、処分場の操業開始年は明示していない。なお、基本計画は現在見直し中である。
207
中国における地層処分>>>
中国における高レベル放射性廃棄物処分の概要

中国では、放射性廃棄物全般についての管理の枠組みを定めるものとして、2018年1月に施行
された原子力安全法があります。この法律において、高レベル放射性廃棄物を集中的に地層処分
することが規定されています。
2006年2月に「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」が公表され、今
世紀半ばまでに処分場を建設することが明記されました。今後、各種の法制度が整備されるとと
もに、サイト選定、地下研究所の建設•試験、地層処分の安全性評価等が行われる予定です。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
中国では原子力発電を国家における重要なエネル
ギー戦略の一環として位置付けており、原子力発電
所の建設を推進することで、経済発展に伴うエネル
ギー需要の増加に対応し、環境保全を図り、工業技
術等のレベル向上を図ろうとしています。2020年末
時点で運転中の原子炉がある原子力発電所が16力
所あり、合計49基一加圧水型原子炉(PWR)が47
基、カナダ型重水炉が2基一から使用済燃料が発生
しています。また新たに11基が建設中です。
使用済燃料は各発電所の原子炉建屋内の燃料
プールなどで貯蔵されています。
◎実施体制
中国における高レベル放射性廃棄物処分の実施
主体は、国営企業体である「中国核工業集団公司」
(CNNC)です。CNNCは地層処分の研究開発だ
けでなく、ウラン探鉱、核燃料施設の操業、原子力発
電等の事業も行っています。CNNCの下部組織とし
て、研究開発や技術支援を担う機関が複数存在して
います。
原子力施設の安全監視や高レベル放射性廃棄物
の管理等の原子力安全全般に関わる規制機関とし
て、中国生態環境部(MEE)の下部組織である国
家核安全局(NNSA)カヾあります。また原子力エネル
ギー開発、放射性廃棄物の管理、処理•処分の長
期計画等の政策の立案、研究開発資金の確保等の
実務管理•監督を国務院に代わって行う国の機関と
して、国家原子能機構(CAEA)があります。
放射性廃棄物の処分費用は廃棄物発生者である
事業者が負担することになっています。この費用の拠
出方法については、CAEAやその他機関が2010年
7月に策定した「原子力発電所の使用済燃料の処理
処分基金の徴収、使用及び管理に関する暫定手続
き」で定められています。営業運転の開始以降5年
以上が経過した加圧水型原子炉の売電量に応じて、
IkWh当たり0.026 A民元(約0.4円)(1人民元=
16円で換算)が徴収されます。
国務院
中国工業情報化部 科学技術部 中国生態環境部
’ ゝ , ‘ (MEE)
国家核安全局
(NNSA)
国家原子能機構 あ貫」• 中国核工業集団公司
(CAEA) (CNNC)
中国核電工程有限公司 中国放射線防護研究院I 北京地質研究院 中国原子能科学研究院
(CNPE) (CIRP) (BRIUG) (CIAE)
研究開発(CNNCの下部組織)
中国における放射性廃棄物処分の実施体制
208
中国

◎処分方針(使用済燃料の管理方針)
中国では、核燃料を十分に活用するため、軽水炉
(PWRなど)から発生する使用済燃料は再処理し、
発生する高レベル放射性廃液をガラス固化した後に
処分する方針です。ただし、天然ウランを燃料として
用いる加圧水型重水炉(PHWR)の使用済燃料は
再処理せず、直接処分します。これらの廃棄物は、
高レベル放射性廃棄物に区分されています。
中国における放射性廃棄物の全般的な管理方針
は、2003年10月施行の「中華人民共和国汚染防止
法」で規定されていましたが、2018年1月施行の「原
子カ安全法」でもほぼ同様の内容が条文に盛り込ま
れました。この法律では、高レベル放射性廃棄物は
集中的に地層処分を行うとしています。
◎処分事業の経緯
中国では、1985年に旧核工業部科技核電局(現
CNNC)が「高レベル放射性廃棄物地層処分研究
発展計画」(DGD計画)を策定しました。この計画
では、花崗岩を母岩とする地層処分場を2040年頃
に建設する予定としていました。
DGD計画に基づき、1986年2月からサイトの1次
選定が始まり、5つの候補地域が選出されました。そ
の後、各地域からボーリング調査を含むサイト調査の
対象区域が複数選定され、うち西北地域にある甘粛
省北山(ペイシャン)及びその周辺での調査に注力し
ています。2012年に西北地域の西側に位置する新
疆ウィグル地域が追加され、現在では候補地域数が
6つに増えています。また、2000年以降、北京地質
研究院(BRIUG)は北山及びその周辺の20近くの
地点でボーリング調査を実施しています。
2006年2月に、国防科学技術工業委員会(2008
年に新設の中国工業情報化部に業務移管)、科学
技術部及び国家環境保護総局(2018年に中国生態
環境部(MEE)に改組)が共同で作成した「高レベ
ル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画カ、’
イド」力ヾ公表されました。
このガイドによれば、中国における高レベル放射性
廃棄物の地層処分は、右に示す3つの段階で進めら
れることになっています。
西北地域(北山)
ウィグル地域 内モンゴル地域
華東地域
西南地域
広東北部地域
中国における高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域
(中国核工業集団公司資料より作成)
「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画
ガイド」(2006年)の活動計画
1) 2006 年〜2020 年
国による関連法規制及び技術基準の制定に向けて、
技術面でのサポートを行うとともに、地下研究所の
設計及び処分場の概念設計、核種移行メカニズム等
の研究及び安全評価研究を行う。また北山サイト以
外の候補地も含めた上で処分場サイトを選定し、様々
な地質調査を行い、必要なデータを取得する。
2) 2021年〜2040 年
地下研究所の建設、地下研究所での試験・研究を
通じて、既存の施工技術、研究成果を検証するととも
に、原位置での各種データを取得し、プロトタイプ処
分場のフィージビリティ評価と建設の安全審査に向
けた評価を実施する。
3) 2041年〜今世紀半ば
処分サイトの最終確認を行うとともに、プロトタ
イプ処分場での実廃棄体を用いた試験によって処分
場の総合的な機能を検証し、処分場の建設申請と安
全評価及び環境影響評価を実施する。また処分場の
操業管理、閉鎖及びモニタリング計画について検討
し、処分場操業の申請と安全審査に向けた評価を実
施する。
2016年3月には、北山(ペイシャン)において北京
地質研究院(BRIUG)が地下研究所のサイト評価
のためのデータ取得を目的としたボーリング孔の掘削
を実施しました。
209
ロシアにおける地層処分>>>
ロシアにおける高レベル放射性廃棄物処分の概要

ロシアでは原子力発電所から発生する一部の使用済燃料を再処理しています。2011年に放射性
廃棄物管理法が制定され、今後地層処分を前提とした放射性廃棄物管理のための統一的な国家制
度が整備される予定です。放射性廃棄物処分場として花崗岩地帯の候補地域が提案されています。
◎使用済燃料の発生と貯蔵
ロシアでは2020年末時点で原子力発電所が11力
所あり、合計38基の原子炉が稼働しています。この
なかには、ナトリウムを冷却材として用いる高速増殖
炉2基や海上の浮体式原子力発電所の小型モジュー
ル炉2基も含まれます。
ロシアの核燃料サイクル政策は、核物質は可能な
限り再利用することであり、原則的に使用済燃料を再
処理する方針です。そのため、ロシアでは使用済燃
料を放射性廃棄物に分類していません。
原子力発電所から発生した使用済燃料は、一部
(VVER-400型とBN-600型の原子炉から発生した
もの)が再処理されていますが、それ以外は発電所
内または集中貯蔵施設で貯蔵されています。ロシア
で貯蔵されている使用済燃料の量は、原子力発電
所内や再処理プラント、集中貯蔵施設で保管されて
いるものを含めて、2016年末で約22,500bン(重金
属換算)です。また、2011年の使用済燃料の再処
理量は発生量の16 %に留まっています。
◎使用済燃料の再処理
生産合同マヤーク(P.A. Mayak)が操業する
RT-1と呼ばれる再処理工場がチェリャビンスク州オ
ジョルスク市にあり、1971年から使用済燃料を引き受
けています。RT-1の再処理能力は年間400トン(重
金属換算)です。この施設で扱える使用済燃料の
種類の制約などから、実際の再処理量は2012年頃
に年間約100トン程度に留まっていましたが、施設を
更新して扱える使用済燃料の種類を増やした結果、
2015年には年間約230トン程度に増加しています。
フィンランド
モスクワ
ウクライナ・
乙一」」/ y ノ、) 】
ノヴォウラリスク浅地中処分場
マ 、・
オジョルスク浅地中処分場マヤーク再処理施設
(予定地)(RT-1)
[ロシア】
エニセイスキー
(地下研究所の建設予定地)
セベルスク浅地中処分場
(予定地)
カザフスタン
t 原子力発電所(商業用、運転中)
a 再処理施設
▼ 集中中間貯蔵施設
地下研究所•地下特性調査施設
■ 低レベル放射性廃棄物処分場
鉱業化学コンビナート
(MCC)
モンゴル
ロシアの原子力施設の所在地

210
RT-1では、フィンランドや旧東ドイツなどから返送され
た使用済燃料を受け入れて再処理していましたが、
外国からの受け入れは1990年代にほとんど打ち切ら
れています。
RT-1で回収されたウランは、RBMK型の核燃料と
して使用しています。一方で分離されたプルトニウム
はMOX燃料として利用する計画ですが、現在は貯
蔵しています。再処理に伴って発生する高レベル放
射性液体廃棄物はガラス固化した後、マヤークのサイ
卜内で貯蔵しています。
また、クラスノヤルスク地方ジェレズノゴルスクの鉱
業化学コンビナート(MCC)では、再処理工場RT-2
が計画されています。1984年からRT-2の建設を開
始しましたが、資金不足により建設が一時中断され
ていました。一方で、MCCでは複数の再処理技術
を試験実証するための試験実証センター(PDC)を
2015年に建設しています。最初に年間10トン程度の
ホット試験を開始し、最終的に年間250トン規模まで
拡大しての操業が計画されています。その後、PDC
の施設を拡張する形で、2025年頃には年間700トン
の使用済燃料を再処理することが可能なRT-2施設
が操業を開始する見込みです。RT-2が操業を開始
した後は、2030年頃にRT-1施設を廃止措置するこ
とが予定されています。
◎使用済燃料の集中貯蔵
鉱業化学コンビナート(MCC)では、使用済燃料
貯蔵プール(貯蔵容量6,000トン)が1985年に完成
し、現在はVVER-1000型の原子炉から発生する使
用済燃料が集中的に中間貯蔵されています。集中貯
蔵施設の貯蔵容量は現在8,400トンまで拡張されて
います。
MCCの集中貯蔵施設では、ロシア以タ・にもウクラ
イナやブルガリアからのVVER-1000型原子炉由来
の使用済燃料を引き受けて貯蔵しています。
また、MCCでは乾式の集中貯蔵施設を2004年よ
り建設しており、2012年からは最初のフェーズとして
RBMK-1000型の原子炉から発生する使用済燃料
の受入れと貯蔵を開始しています。この施設では将
来的にはVVER-1000型原子炉由来の使用済燃料
も含めて37,000トンの使用済燃料を貯蔵する計画と
なっています〇
ロシアの原子炉の型式
OVVER : ロシア型加圧水型原子炉
ORBMK :黒鉛減速沸騰水型原子炉
OEGP :黒鉛減速沸騰水圧力管型原子炉
OBN : 高速増殖炉
ウラン プルトニウム高レベル
ガラス固化体
貯蔵
VVER-1000型原子炉 .(発電所£集中施設)初
(一部再処理)※3
RBMK-1OOO型原子炉
貯蔵
(発電所と集中施設)※2
EGP-6型原子炉
貯蔵
(発電所)
※1:集中貯蔵は、鉱業化学コンビナート(MCC)で湿式貯蔵
※2 :集中貯蔵は、鉱業化学コンビナート(MCC)で乾式貯蔵
※3 :生産合同マヤークにて一部再処理
ロシアにおける使用済燃料管理の状況
211
ロシアにおける地層処分>>>
◎放射性廃棄物の管理
ロシアで発生する放射性廃棄物は、採鉱•燃料加
ェ•原子力発電所の運転•使用済燃料の再処理と
いった核燃料サイクルのプロセスに伴い発生する廃
棄物、医療・産業•研究活動に伴う廃棄物、原子力
施設の廃止措置や汚染された地域の環境修復に伴
い発生する廃棄物があります。2016年末時点でロシ
アに蓄積された低レベル•中レベル・高レベル放射性
廃棄物の総量は、固体状•液体状を含めて約5億6
千万立方メートルと見積もれられています。これらの
放射性廃棄物はロシア連邦の50の地域において、
174の企業の897カ所の一時貯蔵施設、及び3力所
の液体廃棄物注入施設において貯蔵されています。
また、各原子力発電所や、マヤーク等の施設にお
いて様々な種類の放射性廃棄物は再溶融、ガラス固
化、焼却、セメント固化等の処理が行われています。
◎放射性廃棄物関連の法整備㈱兄
ロシアにおける原子力分野の活動及び原子力
利用の分野の許可活動を規制する安全規制機
関として、ロシア連邦環境•技術•原子力監督局
(Rostekhnadzor)が2004年に設置されています。
放射性廃棄物管理に関する活動には同局の許認可
が必要です。
ロスアトム社の放射性廃棄物管理計画をサポートす
るための法整備が進められており、2011年7月に「放
射性廃棄物管理法」が制定されました。この法律に
おいて、高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベ
ル放射性固体廃棄物は地層処分し、低レベル放射性
固体廃棄物と短寿命の中レベル放射性固体廃棄物
は浅地中処分することが定められました。また、同法
で規定された安全で経済的な放射性廃棄物管理を
放射性廃棄物管理法によって定められた
国家事業者の役割
〇処分のために引き受けた放射性廃棄物の防護と安全性
確保
〇放射性廃棄物処分施設の操業と廃止措置
〇放射性廃棄物処分施設の設計と建設
〇放射性廃棄物の発生量の分析と予測、及び放射性廃棄
物管理インフラの開発
〇放射性物質と放射性廃棄物の財務と管理に関する国家
システムのための技術と情報支援
〇ロシア連邦法に基づくその他の活動
実施する国家事業者として、2012年3月に国営企業
ノオラオ(NO RAO)カヾ設立されました。国営企業ノ
オラオの役割は囲みに示されているように定められて
います。
放射性廃棄物管理法では廃棄物発生者が処分の
ための費用を特別基金に積立をすることについても
定めています。
なお、放射性廃棄物管理法の適用範囲外としてい
る使用済燃料の管理については、ロスアトム社が使
用済燃料管理に関係する法整備を別途計画してい
ます。
◎処分方針と実施体制
制定された「放射性廃棄物管理法」に基づき、放
射性廃棄物の処分計画は、国内の原子力関連企業
を束ねる国営原子力企業ロスアトム社が主導して検
討しています。ロスアトム社の前身はロシア連邦原子
カ庁ロスアトムであり、2007年に改組されて同じ名称
の国営企業に変わりました。
放射性廃棄物の発生者は放射性廃棄物を中間貯
蔵し、国家事業者が受入可能な状態に廃棄物を処
理することとしています。国家事業者は発生者から廃
棄物を受け入れて処分を実施します。放射性廃棄物
管理法では発生者が中間貯蔵する廃棄物の量や貯
蔵期間について制限することを定めています。
高レベル放射性のガラス固化体の処分についてノ
オラオ社は、クラスノヤルスクの鉱業化学コンビナート
(MCC)に近いエニセイスキー(Yeniseysky)と呼
ばれる場所に地下研究所を建設し、最終処分場を立
地する計画です。このサイトには、ニジュネカンスキー
花崗岩塊と呼ばれる岩盤が存在することが知られて
います。ノオラオ社は2018年に地下研究所の建設
作業を開始しており、今後、そこでの地下特性調査
や人工バリア等に関する現場での処分技術開発、設
備・装置•掘削工法の設計や試験を行うことによって、
2029年までにこの場所に高レベル放射性廃棄物を処
分するかどうかを決定することとしています。
なお、低中レベル放射’性廃棄物については、スヴェ
ルドロフスク州ノヴォウラリスク市のロシア初となる浅地
中処分場(PPZRO)において2016年より処分がなさ
れています。さらに、トムスク州セベルスク市とチェリャ
ビンスク州オジョルスク市においても低中レベル放射
性廃棄物の浅地中処分が予定されています。
212
資料編
2020年12月現在
資料編>>>
フィンランド資料
フィンランドの地方自治体制度
(Municipalities)
地方
Local level
自治体議会
(Municipal Council)
•地方法の公布
•執行機関、自治体職員への指示や規制
•予算の承認
•自治体の総合計画の承認
参事会
(Municipal Board)
•自治体の運営
•自治体の利益の保護
•議会が決定するための草案作成
委員会
(Committees)
•特定の業務を実施
※括弧内の数字は個数
(「フィンランドの地方自治」財団法人自治体国際化協会、「Find out aboutフィンランド」オタヴァ出版社、
諸外国の国土政策•地域政策に係る動向分析及び支援方策等に関する調査国別報告書〔フィンランド〕国土交通省国土政策局、
及びフィンランド地方自治体協会ウェブサイトを参考にして作成)
214
フィンランド+|
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 使用済燃料
中レベル放射性廃棄物 主に原子力発電の運転により発生する運転廃棄物及び廃炉廃棄物
低レベル放射性廃棄物 主に原子力発電の運転により発生する運転廃棄物及び廃炉廃棄物
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
オルキルオト原子力発電所貯蔵施設(KPA貯蔵施設) テオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社) 使用済燃料 原子力発電所
ロヴィーサ原子力発電所の中間貯蔵施設 フォルツム・パワー ・アンド・ヒート社(FPH社) 使用済燃料 原子力発電所
(ポシヴァ社報告書より作成)
◎低中レベル放射性廃棄物の処分
設備 所有者/運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状況 閉鎖後のモ二 タリング期間
オルキルオト 処分場 テオリスーデン・ ヴォイマ社 (TVO 社) 原子力発電所 浅地層 サイロ :深度 60〜1 00m 約 8,432m3 6,595m3 (2019年末) 1992年より 操業開始 未決定
□ヴィーサ 処分場 フォルツム・ パワー•アンド• ヒート社(FPH社) 原子力発電所 浅地層 坑道: 深度11〇m 約 5,400m3 2,063m3 (2019年末) 1998年より 操業開始 未決定
(ポシヴァ社報告書、放射性廃棄物等安全条約に基づくフィンランド国別報告書(第7回)より作成)
◎オルキルオト処分場
◎ロヴィーサ処分場
輸送トンネル
ホール
輸送
トンネル
1L坑
ホール
中レベル運転廃棄物
低レベル運転廃棄物
(テオリスーデン•ヴォイマ社(TV〇社)報告書より引用)
メンテナンス
固化された廃棄物
(フォルツム・パワー ・アンド・ヒート社(FPH社)より引用)



215
資料編>>>
スウェーデン資料
スウェーデンの地方自治体制度
※県と自治体の括弧内の数字は個数
・スウェーデンの県は国の地方行政区(21に分かれている)であり、それぞれに国の出先機関である「県域執行機関」が設置されています。県域執行機関の
長官はわが国の県知事に相当しますが、政府によって任命されます。
・スウェーデンにおける県と自治体は異なる行政実務を行っており、上下関係にはありません。
•地方自治における“県”の役割は大部分が広域医療であり、その他に県域内の開発・交通などの特定業務だけを行っています。それ以外の行政は自治体が
行います。例外的にバノレト海の島にあたるゴトランド県には、県議会が設置されておらず、自治体の行政機関が業務を代行しています(県議会の数は2〇
となります)。
•自治体及び県の行政は、それぞれの議会議員から構成される執行委員会によって監督されます。実質的に、執行委員会の会長が自治体の首長に相当します。
※国の中央行政執行機関と県域執行機関について
•中央行政執行機関と県域執行機関は総称。個別の機関はいずれも何らかの省に属しますが、執行機関の活動内容と権限は法令で定められます。執行機関の
日常業務に対して省が直接指示することはありません(禁止されています)。
(Level of Local Democracy in Sweden. Swedish Association of Local Authorities and Regions及びスウェーデン政府ウェブサイトより作成)
216
スウェーデン
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 使用済燃料
中レベル放射性廃棄物 主に原子力発電に伴い発生する運転廃棄物 及び廃炉廃棄物のうち、放射性物質濃度の 局いもの
低レベル放射性廃棄物 主に原子力発電に伴い発生する運転廃棄物 及び廃炉廃棄物のうち放射性物質濃度の低 いもの
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
CLAB 所有・運転:スウェーデン 核燃料・廃棄物管理会社 (SKB 社) 使用済燃料 原子力発電所
(放射性廃棄物等安全条約に基づくスウェーデン国別報告書(第7回)
及びActivities 2〇12より作成)
©CLAB (集中中間貯蔵施設)
容量 貯蔵量 操業状況
8,000トン (ウラン換算) 約6,800トン (2019年末) 1985年より 操業開始
(SKB提供)

(SKB社提供資料より引用)
◎低中レベル放射性廃棄物の処分
設備 所有者/運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状況 閉鎖後のモ二 タリング期間
SFR-1 所有・運転:スウェーデン 核燃料・廃棄物管理会社 (SKB 社) 原子力発電所 研究活動 その他 浅地中サイロ 及びトンネル 深度:60m 63,000m3 約 40,000m3 (2019年末) 1988年より 操業開始 必要なしとさ れている
(SKB提供)
OSFR (低中レベル放射性廃棄物の処分場)
(SKB社提供資料より引用)



217
資料編>>>
フランス資料
フランスの地方自治体制度
国の機関
大統領
内閣
首相
大臣1
省庁
州地方長官
(prefet de region)
州における政府の代表として、国の活
動の調停、仲裁、合法性、一貫性の保
持の任務を負う
県地方長官
(prefet de departement)
県における政府の代表として、国家利
益、法の遵守、公的秩序の維持に関す
る任務を負う
注)
•州及び県の「知事(prefet)Jは政府
の出先機関であるが、1982年の地
方制度改革により、自治体たる州及
び県の執行機関とし’ての役割を解か
れ、地方自治体に対する監督権限も
縮小されている。従って、それ以前の
状況と区別するために、ここでは「知
事」の代わりに「地方長官」という呼
称を用いる。
•州地方長官、県地方長官並びにコ
ミューン長は、地方において国益を
代表する職務を担う。
•州、県、コミューンの議会議長は、直
接選挙により選出される議会議員に
よる互選で選出される。
※カッコ内の数字は自治体の数
(「フランス地方文献15年」財団法人自治体国際化協会及びフランス国立統計経済研究所(Insee)資料より作成)
218
フランス
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 ガラス固化体
長寿命中レベル放射性廃棄物 主に再処理によって発生する廃棄物(ハル・エンドピース、廃液処理による沈澱物)、再処理工場 及び研究所における補修管理廃棄物
長寿命低レベル放射性廃棄物 主にラジウム含有率の高い廃棄物及びGCRの廃炉による黒鉛廃棄物
短寿命低中レベル放射性廃棄物 主に原子力発電所、核燃料サイクル関連工場などで発生する運転、解体廃棄物
極低レベル放射性廃棄物 主に原子力発電所、燃料サイクル施設等の運転、保守、解体廃棄物
(2013年12月27日付デクレ第2013-1304号より作成)
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
ラ・アーグ再処理工場内貯蔵施設 Oranott (旧 AREVA 社) ガラス固化体 再処理工場
(Nuclear Safety In France in 2017, ASN Annual Reportより作成)
◎低中レベル放射性廃棄物の処分
設備 所有者/運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状況 閉鎖後のモ二 タリング期間
ラ・マンシュ 処分場 放射性廃棄物 管理機関 (ANDRA) 原子力発電所、 核燃料サイクル、 研究、 放射性同位体 浅地中の コンクリート ピット 約52.7万m3 約52.7万m3 (1969 〜94 年) 1969年操業 開始 1994年操業 終了 3〇〇年
オーブ処分場 放射性廃棄物 管理機関 (ANDRA) 原子力発電所、 核燃料サイクル、 研究、 放射性同位体 浅地中の コンクリート ピット 約100万m3 34.5 万 m3 (2019年末時点) 1992年操業 開始 3〇〇年
モルヴィリエ 処分場 放射性廃棄物 管理機関 (ANDRA) 原子力発電所、 核燃料サイクル、 研究、 放射性同位体 浅地中の トレンチ 約65万rrP 39.6 万 m3 (2019年末時点) 2003年操業 開始 30年
(ANDRA資料、放射性廃棄物等安全条約フランス国別報告書(第6回)、Nuclear Safety In France in 2005, ASN Annual Report、オーブ県条例より作成)
◎ラ・マンシュ処分場
◎オープ処分場
(写真提供:ANDRA)
(写真提供:ANDRA/4 vents)



219
資料編>>>
スイス資料
州(26)
(Canton)
~’ [———— 参 事
州議会 州民集会
知 事
部及び課
•地域開発
•環境保護
•水質保全
•食料品取引管轄機関
•登録管理機関
•軍事組織管轄機関
市町村(2,202)
(Commune)
※カッコ内の数字は個数
(「スイスの連邦制度と地方自治のあらまし」及び「スイスの地方自治」財団法人自治体国際化協会及びスイス連邦統計局資料より作成)
220
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 ガラス固化体及び使用済燃料
α廃棄物 α線放射体の含有量がコンディショニングされた廃棄物1g当たり20,000Bqを超える廃棄物 (本文中の「TRU廃棄物」に該当するものです)
低中レベル放射性廃棄物 高レベル放射性廃棄物及びα廃棄物以外の放射性廃棄物
(原子力令より作成)
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
ヴユレンリンゲン放射性廃棄物 集中中間貯蔵施設(ZZL) ヴユレンリンゲン中間貯蔵会社 (ZWILAG 社) 使用済燃料 ガラス固化体 国外の再処理施設、原子力発電所など
ベツナウ中間貯蔵施設 (ZW 旧 EZ) AXPOtt 使用済燃料 ガラス固化体 国外の再処理施設、原子力発電所など
(NAGRAウェブサイト、放射性廃棄物安全条約に基づくスイス国別報告書(第7回)より作成)
◎け廃棄物•低中レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
廃棄物の種類 管理状況
再処理過程から発生するα廃棄物 ヴユレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)で貯蔵
原子力発電所の運転廃棄物 ヴユレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)、ベツナウ 中間貯蔵施設(ZW旧EZ)、各原子力発電所サイト内で貯蔵
医療、産業、研究施設で発生するα廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物 パウル・シェラー研究所(PSI)で貯蔵
(放射性廃棄物安全条約に基づくスイス国別報告書(第7回)より作成)
◎ヴユレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)
(NAGRAウェブサイトより引用)



221
資料編>>>
ドイツ資料
議員を任命
州(16※)
首相
州議会
自治体(Gemeinden)
(郡、市町村、郡独立市等)
自治体議会
(郡議会、市町村議会、郡独立市議会)
首長/旨我長/旨我ZZ
(代表者は州によって異なる)
地方自治体の詳細は、州毎の憲法•地方自治法等で規定
T自治体の組織は州によって異なる。
•任意的自治事務(社会福祉等施設設置、公営交通、公営企業経営等)
•義務的自治事務(上下水道、廃棄物処理、都市計画、小中学校建設、
消防、保険等)
•指示による義務的自治事務(建築確認、営業監督、住民登録等)
•委託事務(戸籍登録、国勢調査、保健所、選挙、社会福祉関係等)
※カッコ内の数字は個数
(rドイツ地方行政の概要」財団法人自治体国際化協会及び「ドイツ法入門」村上淳一他より作成)
222
ドイツ
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
発熱性放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物等) 廃棄物の発熱による処分空洞壁面の温度上昇が3度以上のもの。ガラス固化体、使用済 燃料、及び中レベル放射性廃棄物の一部(ハル・エンドピースなど)
非発熱性放射性廃棄物(低中レベル放射性廃棄物) 廃棄物の発熱による処分空洞壁面の温度上昇が3度未満のもの
◎発熱性放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物等)の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
ゴアレーベン 連邦中間貯蔵機関(BGZ) 使用済燃料・ ガラス固化体・ 原子力発電所
アーハウス 連邦中間貯蔵機関(BGZ) 使用済燃料・ 原子力発電所
ノルト ノルト・エネルギー社 使用済燃料・ 原子力発電所(旧東ドイツ)
サイト内貯蔵施設(各原子力発電所) 連邦中間貯蔵機関(BGZ)等 使用済燃料 原子力発電所
・現在は受入されていない
(放射性廃棄物等安全条約に基づくドイツ国別報告書(第6回)及び連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)ウェブサイト等より作成)
◎非発熱性放射性廃棄物(低中レベル放射性廃棄物)の処分
設備 所有者/運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状況 閉鎖後のモ二 タリング期間
モルスレーベン 処分場 (ERAM) 連邦放射性廃棄物 機関(BGE) 原子力発電所、 研究所、RI 旧岩塩鉱山: 深度約500m 約5万 4,000m3 約 3万7,158m3 (〜1998年) 1978年より 操業開始 1998年の受入 を最後に2001 年閉鎖決定 未定
コンラッド 処分場 連邦放射性廃棄物 機関(BGE) 原子力発電所、 研究所、RI 旧鉄鉱山: 深度約800 〜1,300m 約30万 3,000m3 未操業 2027年に 操業準備完了 予定 未定
(Low-level waste repositories: an analysis of cost, OECD/NEA及び放射性廃棄物等安全条約に基づくドイツ国別報告書(第6回)等より作成)
◎コンラッド処分場
◎モルスレーベン処分場
(連邦放射線防護庁(BfS)ウエブサイトより引用)
(DBE社ウェブサイトより引用)
223
資料編>>>
英国資料
英国の地方自治体制度
※カッコ内の数字は自治体の数
(「英国の地方自治(概要版)一 2017年改訂版ー」一般財団法人自治体国際化協会などから作成)
224
英国
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 かなりの発熱を伴う廃棄物で処分施設の設計時に、この要因を考慮する必要のある廃棄物
中レベル放射性廃棄物 放射能濃度が低レベル以上で処分施設の設計時に、その発熱量を考慮する必要のない廃棄物。主に使用済燃料の再処理によって発 生する廃棄物
低レベル放射性廃棄物 一般廃棄物との共同処分が適切でない放射性物質を含み、α放射能濃度が4GBq/t、B – ¥放射能濃度が12GBq/tを超えない廃 棄物
極低レベル放射性廃棄物 放射能濃度が非常に低く一般廃棄物との共同処分ができる廃棄物。(病院や原子力産業以外で発生する廃棄物なども含む)または 総放射能濃度が4MBq/tを超えず、特定の埋設施設で処分可能な廃棄物
(放射性廃棄物等安全条約に基づく英国国別報告書(第5回)、白書「放射性廃棄物の安全な管理」(Cm. 7386), Defra, 2008より作成)
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵(廃液貯蔵含む)
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
セラフィールド 原子力廃止措置機関(NDA)/セラフィールド社 使用済燃料 高レベル放射性廃液 ガラス固化体 原子力発電所 再処理施設
ドーンレイ 原子力廃止措置機関(NDA)/ドーンレイサイト復旧会社(DSRL) 使用済燃料 高レベル放射性廃液 原子力発電所 再処理施設
サイト内貯蔵施設(各原子力発電所) 各発電所所有者 使用済燃料 原子力発電所
(放射性廃棄物等安全条約に基づく英国国別報告書(第6回)、NDA Strategy Draft for Consultationより作成)
◎中レベル放射性廃棄物の貯蔵
原子力発電所•再処理施設等の発生場所で貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物との併置処分が検討されている。
◎低レベル放射性廃棄物の処分
設備 所有者/運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状況 閉鎖後のモ二 タリング期間
低レベル放射性 廃棄物処分場 (LLWR) 原子力廃止措置機 関(NDA)/ 低レベル放射性廃 棄物処分場会社 原子力発電所、 核燃料サイクル 施設、研究所な ど 浅地中のトレンチ またはボールトに 埋設 トレンチ: 約80万m3 ボールト8〜14 : 約130万m3 トレンチ: 約80万(満杯) ボールト8〜14 : 約23万m3 (2017年1〇月時点) 1959年より 操業開始 少なくとも 100年間
ドーンレイ 低レベル放射性 廃棄物処分場 原子力廃止措置機 関(NDA)/ ドーンレイサイト 復旧会社 原子力発電所、 核燃料サイクル 施設、研究所な ど 浅地中のピット/ ボールトに廃棄物 パッケージを処分 約17.5万m3 約 3,130m3 (2017年1〇月時点) 1959年より 操業開始 300年まで
(放射性廃棄物等安全条約に基づく英国国別報告書(第6回)、NDA、LLWR社及びDSRLウェブサイトより作成)
◎低レベル放射性廃棄物処分場(ドリッグ村近郊)
◎セラフィールド再処理施設、ガラス固化施設
及び貯蔵施設
(LLWR社ウエブサイトより引用)
(セラフィールド社ウェブサイトより引用)



225
資料編>>>
カナダ資料
州(10)及び準州(3)
連邦内閣の助言に
基づき任命
州総督

州議会(一院制) 州首相•内閣 州裁判所
省庁•行政機関
単層自治体地域
上層
自為体
リージョン
カウンティ
上層自治体の役割:
幹線道路、福祉、土地利用計画、警察等。交通・上下水道は
上下層の分担が地域により異なる。
タウン

器体市タウン村タウンシップ
タウンシップ

下層自治体の役割:
地方道路、消防、文化•レクリエーション、公園、建築検査等
※制度は州によって異なる。上記はオンタリオ州の場合
(財団法人自治体国際化協会「カナダの地方団体の概要」、内閣府「IT革命の中での諸外国の中長期財政計画に関する調査報告書」、Maple Leaf Webウェブサイト等より作成)
226
カナダ!3
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
区分 種類
高レベル放射性廃棄物 使用済燃料
低中レベル放射性廃棄物・ 歴史的廃棄物・*
燃料製造、原子力発電、放射性同位体製造及び使用、原子力研究に伴い発生する放射性廃棄物
ウラン鉱山及び鉱淳
・取扱いと中間貯蔵時の遮へいの必要性の有無により、低レベル廃棄物と中レベル廃棄物に区分されています。
*・歴史的廃棄物は、過去の活動で発生した廃棄物で、発生者不明などにより十分な管理ができないため、現在はカナダ原子力研究所(CNL)により
管理されています。
(放射性廃棄物等安全条約に基づくカナダ国別報告書(第6回)より作成)
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
サイト内貯蔵施設 各発電所所有者等 使用済燃料 原子力発電所等
(放射性廃棄物等安全条約に基づくカナダ国別報告書(第6回)より作成)
◎低中レベル放射性廃棄物の貯蔵
カナダには、低レベル放射性廃棄物処分場がないため、管理状況を記述。
廃棄物の種類 管理状況
歴史的廃棄物 オンタリオ州、ポートホープ等の貯蔵施設で貯蔵
燃料製造、原子力発電、放射性同位体製造及び使用、原子力研究に伴 い発生する放射性廃棄物 原子力発電所サイト内及びAECLチョークリバー研究所の施設で貯蔵
(放射性廃棄物等安全条約に基づくカナダ国別報告書(第6回)より作成)
◎低中レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設計画
オンタリオ•パワー・ジェネレーション(〇PG)
社は、ブルース原子力発電所(オンタリオ州)の
サイト内に、低中レベル放射性廃棄物の地層処分
場建設を計画。この建設プロジェクトは許認可申
請の前段階として、カナダ環境評価局(CEAA)
とカナダ原子力安全委員会(CNSC)の合同評
価パネルによる環境影響評価が行われ、2015
年には建設計画を進めるよう勧告が出された。し
かし環境省が〇PG社に対し追加調査を要請した
ため、0PG社は2017年1月に調査結果を提
出した。その後、環境省よりさらに、先住民の文
化遺産に対する潜在的な累積影響に関する評価が
求められ、プロジェクト実施の可否は先送りさ
れていた。2020年1月末に〇PG社は、DGR
の建設予定地のあるブルース半島に居住する先住
民の投票結果を受けて、キンカーディン自治体で
のDGRプロジェクトの中止し、先住民や関心の
ある自治体の関与を含む新たなサイト選定手続き
の策定を進めることを表明した。
(0PG社資料より引用)
(http://www.opg.com/power/nuclear/waste/dgr/)



227
資料編>>>
米国資料
米国の地方自治体制度
連邦
連邦議会
(上院•下院)
大統領
連邦政府
州議会
州(50)
(State)
知事
州政府
準自治体は、州等により設置
された歴史的経緯を持つ
自治体
(Municipality)
3,031 準自治体 (Quasi-municipality)

郡の役割:
課税、徴税、警察、検屍、検察、
裁判、刑務所、保健、医療、扶助、
生活保護、道路、農業関係、
小中学校、図書館等
市(City)
町(Town)
村(Village)
—(Borough)
市の役割:
教育、保健衛生、警察、司法、
消防、福祉、道路、都市計画、
上下水道の管理、交通等
タウン(Town)
タウンシップ(Township)
特別区(Special District)
学校区(School District)
特別区の役割:
公立学校の教育行政や社会教育、港湾
施設、上下水道、交通等(既存自治体
の区域を超えて広域での対応が可能)
※括弧内の数字は各州、自治体の数
(財団法人自治体国際化協会ウェブサイト及びGovernment Organization, U.S. Census Bureauより作成)
228
米国
◎放射性廃棄物の区分
◎高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵(廃液貯蔵含む)
区分 種類
高レベル放射性 廃棄物(商業用) 主に原子力発電により発生する使用済燃料
高レベル放射性 廃棄物(DOE) 主に軍事用原子炉により発生する使用済燃料、ガ ラス固化体、高レベル放射性廃液
超ウラン(TRU) 廃棄物 核兵器研究•製造、使用済燃料の再処理等の活動 によって発生する廃棄物のうち、半減期が20年 を超えるα放射体の超ウラン元素が廃棄物1g当 たり3,700Bq (100nCi/g)以上含まれるもの
低レベル放射性 廃棄物(商業用) 主に原子力発電所の運転によって発生する運転廃 棄物及び廃炉廃棄物(長寿命及び短寿命核種の濃 度に応じて、クラスA、クラスB、クラスC、クラ スCを超える(GTCC)の4区分に分類される)
低レベル放射性 廃棄物(DOE) 政府所有の廃棄物及び政府所有サイトで発生また は所持している廃棄物で、高レベル放射性廃棄物、 超ウラン廃棄物、lie. (2)副生成物廃棄物以外 のもの
11 e. (2) 副生成物廃棄物・ ウラン鉱浮等
・副生成物廃棄物は原子力法第11条e (2)において定義されている
(放射性廃棄物等安全条約に基づく米国国別報告書(第フ回)より作成)
設備 所有者/運転者 受入廃棄物 廃棄物発生源
サイト内貯蔵施設(各原子力発電所) 各電力会社 使用済燃料 原子力発電所
ハンフォード・サイト (ワシントン州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 高レベル放射性廃液 国防関連
アイダホ国立研究所(INL)及び アイダホ•サイト(アイダホ州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 高レベル放射性廃液等 国防関連
アルゴンヌ国立研究所 (アイダホ州、イリノイ州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 国防関連
サンディア国立研究所 (SNL)(ニューメキシコ州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 国防関連
ウエストバレー実証プロジェクト (ニューヨーク州) エネルギー省 (DOE) ガラス固化体 原子力発電所
サバンナリバー・ サイト(SRS) (サウスカロライナ州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 ガラス固化体 高レベル放射性廃液 国防関連
オークリッジ保留地 (テネシー州) エネルギー省 (DOE) 使用済燃料 国防関連
モリス(イリノイ州) ゼネラル・エレク トリック社 使用済燃料 原子力発電所
(放射性廃棄物等安全条約に基づく米国国別報告書(第7回)より作成)
◎低レベル放射性廃棄物. TRU廃棄物の処分
設備 所有者 運転者 廃棄物発生源 処分施設概要 (方式、深度) 容量 処分量 操業状兄 閉鎖後のモ二 タリング期間
バーンウェル 処分場 (サウスカロライ ナ州) エナジー ソリュー ションズ社 民間の原子力利用(発電、工業、研 究、医療)、エネルギー省(DOE)を 除く連邦政府、州政府 クラスA、クラスB、 クラスCの低レベル 放射性廃棄物を浅地 中のトレンチに埋設 約88万m3 約80.0万m3 (2019年12月時点) 1971年操業開始 2008年7月以降は、 協定州のみから受入れ 100年以下
リッチランド 処分場 (ワシントン州) U.S. エコロジー社 民間の原子力利用(発電、工業、研 究、医療)、エネルギー省(DOE)を 除く連邦政府、州政府 クラスA、クラスB、 クラスCの低レベル 放射性廃棄物を浅地 中のトレンチに埋設 約170万rrP 約40万rrP (2019年12月時点) 1965年操業開始 100年以下
クライブ処分場 (ユタ州) エナジー ソリュー ションズ社 核兵器開発による汚染を含むエネル ギー省(DOE)及び民間の環境修復 によって発生する廃棄物など。 低レベル放射性廃棄物の他に「lie. (2)副生成物廃棄物」なども処分 天然の土壌•粘土を 用いた浅地中埋設 (クラスAのみ。ク ラスβ、cについて は許可取得を断念) 約882万rrP 約557万m3 (2019年12月時点) 1988年操業開始 100年以下
WCSテキサス 処分場 ウエースト・ コントロール・ スペシャリスト (WCS)社 民間の原子力利用(発電、工業、研 究、医療)、連邦政府(lie. (2)副 生成物廃棄物を含む)、州政府 クラスA、クラスB、 クラスCの低レベル 放射性廃棄物を浅地 中のトレンチに埋設 民間用: 約53万m3 連邦用: 382 万 m3 約3.6万m3 (2019年12月時点) 2012年操業開始 100年以下
DOEの各研究所 等の処分施設 エネルギー省 (DOE) DOE関連施設 処分施設毎に設計は 異なる 不明 約2,08〇万rrP (2019年9月末時点) 操業中 100年以下
廃棄物隔離 パイロット プラント(WIPP) エネルギー省 (DOE) DOE関連施設 (超ウラン(TRU)廃棄物) 深度約655mの岩 塩層中のトンネルに 処分 約17.6 万 rrP 約9.9万m3 (2020年12月時点) 1999年操業開始 放射線事象等により 2014年2月に操業 停止したが、2017年 1月4日に操業再開 100年以上
(放射性廃棄物等安全条約に基づく米国国別報告書(第7回)、Country Waste Profile Report for United States of America Reporting year :2008,
IAEA/WMDB/4 2002, Low-Level Radioactive Waste – Disposal Availability Adequate in the Short Term, but Oversight Needed to Identify Any Future Shortfalls,
GA0-04-0604,原子力規制委員会(NRC)ウェブサイト、WIPPウェブサイト、WCS社ウェブサイトより作成)
◎バーンウェル処分場
◎廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)
(GTS Duratek社パンフレットより引用)
(DOE WIPPウェブサイトより作成)



229
資料編>>>
諸外国における高レベル放射性廃棄物処分事業
に関連する地域振興策
(2020年12月時点)
国 名 処分場建設予定地・調査地などの名称: ① 地理的特性 ② 社会環境特性 ③ 近郊での原子力関連施設の有無 地域振興策(地域のべネフィット)
法的枠組(交付金や優遇税制等) 実施主体や廃棄物発生者等の取組
フィンランド •エウラヨキ自治体 〔最終処分地であるオルキルオトがある〕 ① 沿岸部(島) ② 農業、林業、加工業、サービス産業が主 要産業、自治体の人口は約9,400人 ③ 原子力発電所、低中レベル放射性廃棄 物処分場 〇固定資産税:通常施設の税率0.5〜1.0%に対して、原子力 施設の場合に上限3.1%とする優遇措置(立地自治体に対す る上記以外の恩恵を法的には認めていない)。 〇ポシヴァ社の移転 〇ポシヴァ社による旧高齢者用住居施設の 賃借・改装(事務所として利用、会議室 などを一般にも開放) 〇新しい高齢者用住居施設建設のための自 治体への貸付
スウエ|デン •エストハンマル自治体 〔処分場建設予定地のフォルスマルクが ある〕 ① 沿岸部:71%が森林 ② 漁業/造船、鉄/鉄鋼、農業から、原 子カ発電事業等へ。 ③ 原子力発電所、低站レベル放射性廃棄 物処分場 •オスカーシャム自治体 〔サイト調査実施地のラクセマルがある〕 ① 沿岸部:75%が森林 ② 造船、農林業から、工業とエネルギー 産業へ。 ③ 原子力発電所、使用済燃料集中中間貯 蔵施設 〇自治体が行う情報提供活動に要する費用支出:自治体当たり 年間500万クローネ(6,000万円) 〇エストハンマル自治体、オスカーシャム 自治体(いずれもサイト調査地の所在自 治体)、SKB社、原子力発電事業者4社 の計7者間で、2自治体の開発に関する 協力協定をSKB社が処分場の建設予定 地を決める前に締結 02025年までに総額20億クローネ (240億円)の付加価値事業を実施。処 分場が立地される自治体に25%、立地 されない自治体に75%を配分する内容 〇 2009年6月にSKB社が処分場の建設 予定地をフォルスマルクに決定したこ とを受けて、配分比率がオスカーシャム 75%、エストハンマル25%になった
フランス ムーズ県/オート=マルヌ県境のビュー ル地下研究所近傍より 選定される予定 ① 内陸部の段丘地 ② 農畜産業中心の非人口密集地域 ③ 無し 。地域振興策実施のために、施設設置県に公益事業共同体 (GIP)を設置:地域主導の柔軟な制度。農業・観光事業活性 化等の地域振興に以下の資金を活用 -2010年以降:年間3,000万ユーロ(37.2億円) 02019年10月に政府と地方自治体、GIP、ANDRA、廃棄物 発生者等の間で、インフラ整備や地域経済の開発等に関し、 地域開発計画(PDT)を調印 〇廃棄物発生者(EDF社、Orano社、OEA) による取組:地元雇用創出のためのプロ ジェクトの実施(省エネ設備の戸別設置 支援、次世代バイオマス燃料生産のため の木材ガス化の開発・生産施設設置等) ※ビュール地域を将来のエネルギー基幹都市とし て位置付けた取組み
スイス (サイト未定) 〇地域振興目的の法的枠組みはないが、サイト選定手続などを 定めた特別計画「地層処分場」は、サイトの確定前に交付金に ついて検討することを規定 (現段階では未定)
ドイツ •ニーダーザクセン州 〔ゴアレーベンで地下探査を実施’〕 ① 内陸のエルベ川沿岸 ② 非人口密集地域。隣接に放射性廃棄物 関連施設。 ③ 中間貯蔵施設(使用済燃料、ガラス固 化体、他) ※2020年に探査施設は閉鎖が決定 (地域振興を目的とする法的枠組みはない) 〇連邦とニーダーザクセン州との協定に基 づき、連邦から当該州へ補助金支給 -1979年の協定: 1979年〜1988年にかけて合計3 億2,000万マルク(約44〇億円) -199〇年の協定: 1990.9I年に合計6,00〇万マルク (約53億円)
英 国 (サイト未定) 〇地域振興目的の法的枠組みはないが、政策文書において、地 域社会、政府及び開発事業者などの協議により検討していく ことを明記 ーサイト選定プロセスの初期段階に関与する地域社会への投 資額:年間最大100万ポンド(1億3,700万円) 一地下侵入を伴うボーリング調査を行う地域社会への投資 額:年間最大250万ポンド(3億4,250万円) 〇開発事業者はサイト選定プロセスの進撞 に応じて、資金の投資方法を地域社会と 協議する予定
米 国 •ネバダ州 〔ユッカマウンテンは法律上の処分場〕 ① ラスベガス北西約160kmの砂漠地 ② ネバダ核実験場に隣接する連邦政府所 有地 ③ 核実験場、エネルギー省(D0E)の低 レベル放射性廃棄物処分場 。地域が行う情報提供活動等に対する補助金の交付:2000年 までに約2億ドル(約210億円)の支給 〇事業及び不動産に対する課税相当額の地元への支払:2000 年までに約5,500万ドル(約57.8億円)の地元への支払 〇立地を受入れた州との契約に基づいて、州に年間1,000〜 2,000万ドル(10.5億〜21億円)の使途制限のない資金 を提供 なお、「2019年放射性廃棄物政策修正法」の法案では、年間 1,500〜4,000万ドル(15.8〜42億円)への増額が検討 されていた。 (左記以外に地域振興策はない)
B 本 (サイト未定) 〇電源三法交付金制度:文献調査に応募した市町村及びその周 辺地域に対し、年間10億円(期間内交付金総限度額20億円) 概要調査地区に対し年間20億円(期間内交付金限度額70 億円) 〇精密調査以降については今後検討 〇最終処分施設建設までに原子力発電環境 整備機構(NUM0)の本拠地移転 〇地域からのNUM0職員の雇用及び事業 への地域産業の活用
※為替レートは、2020年12月時点の日銀の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を使用しています(1米ドル=105円、1ユー ロ二124円、1英ポンド=13フ円、1スウェーデン•クロー
ネ =12 円)。
なお、!999年以前のユーロ導入以前については1ユーロ=1.95583マルク(ドイツ)で換算しています。
230
・日本における地層処分
2020年12月現在
日本における地層処分»>
日本における地層処分の概要
※2020年12月末時点の法制度に基づく状況を整理しています。

原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理した後に残った廃液を固化したガラス固化体が
処分対象の高レベル放射性廃棄物となります。高レベル放射性廃棄物の処分については、平成12
年(2000年)度に法整備と実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の設立が行われ、
地下300 m以深に地層処分することが基本方針とされています。
平成27年(2015年)5月に基本方針が改定され、公募に基づくサイト選定に加えて、国が地域
の科学的特性を提示した上で申し入れを行うプロセスが追加されました。平成29年(2017年)7
月に国は科学的特性マップを公表しました。令和2年(2020年)10月には、北海道の寿都町が文献
調査へ応募し、国が神恵内村への文献調査申し入れをして、11月から文献調査が開始されました。
日本の処分方針
平成12年(2000年)の「特定放射性廃棄物の最
終処分に関する法律」において、原子力発電から発
生する使用済燃料を再処理した後に残る高レベル放
射性廃棄物はガラス固化体とし、300m以上深い地
層において処分することが定められました。平成19年
(2007年)の法改正により、一部のTRU廃棄物が
地層処分の対象に加えられました。地層処分では、
地下深くの安定した地層(天然バリア)に、複数の人
エ障壁(人工バリア)を組み合わせた「多重バリアシ
ステム」により、最終的にはモニタリングなどの人為的
な管理を終了しても安全を確保できるようにしていま
す。
平成27年(2015年)5月に最終処分に関する基
本方針の改定が行われ、現世代の責任を将来世代
に先送りしないよう、地層処分に向けた対策を確実に
進めるとともに、可逆性・回収可能性を担保し、将来
世代が最良の処分方法を選択できるような形で技術
開発を進めるとしています。
日本における地層処分の実施主体は、原子力発
電環境整備機構(以下FNUMOJ)です。NUMO
は平成12年(2000年)に、「特定放射性廃棄物の
最終処分に関する法律」に基づいて設立が認可さ
れた法人です。
監督に関わる主な行政機関は経済産業省です。
経済産業大臣は法律に基づいて最終処分に関する
基本方針を定め、また5年毎に最終処分計画を定め
ます。こうした方針及び計画を定めるに当たっては、
原子力委員会と原子力規制委員会の意見を聴き、閣
議決定を経ることが必要とされています。
経済産業大臣
〇基本方針の策定
〔平成27年(2015年)5月改定〕
•現世代の責任と将来世代の選択可能性
•全国的な国民理解、地域理解の醸成
•国が前面に立った取組
•事業に貢献する地域に対する支援
•推進体制の改善等
〇最終処分計画の策定
〔平成20年(2008年)3月改定〕
•最終処分の実施時期、処分量
•(今後、概要調査地区などが選定されたときはその所在地)
ほか
拠出金額の決定
発電用原子炉設置者
処分事業の基本スキーム
資金の流れ
設立認可•監督
実施計画の承認
不測の事態への
対応
解散の歯止め
電力会社ほか
拠出金の納付
処分実施主体
実施計画の策定
原子力発電環境整備機構
処分地の選定/最終処分の実施/拠出金の徴収ほか
積立金の取戻し
(経済産業大臣の承認要)
積立金の外部管理
資金管理主体
臣・叔 原子力環境整備促進・資金管理センター
寸日疋 • hE」 資金の管理•運用 ほか
232
サイト選定の進め方
NUMOは平成14年(2002年)12月から高レベル
放射性廃棄物の最終処分施設の設置可能性を調査
する区域の公募を開始していますが、その最初となる
文献調査にも着手できていない状況が続いていました。
このことから、平成27年(2015年)5月改定の最
終処分に関する基本方針では、国が前面に立った取
組の必要性から、国が科学的により適性が高い地域
(科学的有望地)を提示し、文献調査の実施を市町
村に申入れを行う新たなプロセスが追加されました。
基本方針を受けて、国は平成29年(2017年)7月
に地下環境等の特性を示す次ページの「科学的特
性マップ」を提示しました。地域の科学的特性をマッ
プにて提示することは、地層処分に対する各地域の
適性を客観的に示しつつ、最終処分問題を国民全体
が認識・理解するためのきっかけとするものです。
令和2年(2020年)10月には、北海道の寿都町が
文献調査へ応募し、国が神恵内村への文献調査申
し入れを行いました。これを受けて、NUMOは事業
計画の変更を申請し、11月の国の認可をもって、文献
調査を開始しました。
今後、「対話の場」を設置し、文献調査の進拶を
説明し、地層処分事業の仕組みや安全確保、地域の
発展ビジョンの具体化などについて議論していく予定
です。
!文献調査»
文献資料などにより
地震などの自然現象による地層の著しい
変動の記録がないことなどを調査
①「概要調査地区」の選定
4概要調査・
ボーリングなどにより最終処分施設を
設置しようとする地層が長期間にわたって
安定しているかどうかなどを調査
②「精密調査地区」の選定
法律に基づく処分地選定調査
<精密調査» 測定・試験施設を地下に設けて 地層の性質が最終処分施設の設置に 適しているかどうかなどを調査 処分地の選定プロセス! 地域住民などの意見反映のしくみ(概要調査地区の選定段階) 233 日本における地層処分>>>
科学的特性マップ
〇特性区分と要件・基準
1•特性区分
•地層処分技術WGで議論された要件•基準と特性区分の関係は、下図のとおりである。「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」
は、将来的に段階的な調査の対象になる可能性があると整理されている。
•「科学的特性マップ」は、それぞれの地域が処分場所として相応しい科学的特性を有するかどうかを確定的に示すものではなく、処分場所を選定す
るまでには、「科学的特性マップ」には含まれていない要素も含めて、法律に基づき段階的に調査・評価していく必要がある。
<要件•基準>(※1)
火山の近傍
活断層の近傍
隆起・侵食が大きい範囲
地温が高い範囲

一つでも
診当する
場合
一つでも
咳当する
建合
油田・ガス田、炭田等(※2)コT
(※1)火山中心の精査が必要な火山、鉢量が不 明確な炭田、火山性熱水•深部流体、金属 鉱物については、処分地選定調査時に考 慮する必要のある事項あり。 1いずれも !咳当しな 好ましい特性が確秘できる 可能性が相対的に高い 将来!!査する場合に考慮する 必要がある事項(楽1) •>グリーン
該当する
海岸からの距離が短い範囲 ー 場合 、グリーン
(沿岸海底下や島蝶部を含む) A 輪送面でも好ましい ■J マ沿岸部
(※2)当該資源が存在しうる範囲を広域的に示したものであることに留意が必要。
抽出された要件•基準と地域の特性区分の関係
2.蔓件•基準
•好ましくない範囲の要件•基準
要件 基準 参照先
火山・ 火成活動 マグマの処分場への貫入と地表への噴出にょ リ、物理的隔離機能が喪失されないこと 第四紀火山の中心から15km以内 第四紀の火山活動範囲が15kmを超えるカルデラの範囲 ※火山中心の精査が必要なものについては処分地選定訓査時に好ましくない範囲を明らか にする必要あり 別添①
断層活動 断層活動による処分場の破壊、断層のずれに 伴う透水性の增加等により閉じ込め機能が喪失 されないこと 活断層に、破砕帯として断層長さ(活動セグメント長さ)の1/100程度(断層の両側 合計)の幅を持たせた範囲 活断層に、破砕帯として断層長さ(起震断層長さ)の1/100程度(断層の両側合 計)の幅を持たせた範囲 別添②
隆起•侵食 著しい隆起・侵食に伴う処分場の地表への著し い接近により、物理的隔離機能が喪失されない こと 全国規模で体系的に整備された文献•データにおいて、将来10万年間で隆起と 海水準低下による侵食量が300mを超える可能性が高いと考えられる地域(具 体的には、海水準低下による最大150mの侵食量が考えられる沿岸部のうち、 隆起速度最大区分(90 m以上/10万年)のエリア) 別添③
地熱活動 処分システムに著しい熱的影響を及ぼす地熱 活動により、閉じ込め機能が喪失されないこと 処分深度において緩衝材の温度が100°C未満を確保できない地温勾配の範囲 ※「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性一地層処分研究開発 第2次取りまとめ」における検討を参照すると、約15”/100mより大きな地温勾配の範囲 別添④
火山性熱水・ 深部流体 処分システムに著しい化学的影響を及ぼす火 山性熱水や深部流体の流入により、閉じ込め機 能が喪失されないこと 地下水の特性として、pH4.8未満あるいは炭酸化学種濃度0.5mol/dm3(mol/L) 以上を示す範囲 ※エリアで表現することが困難であり、処分地選定調査時に好ましくない範囲を明らかにす る必要あり 別添⑤
未固結 堆積物 処分場の地層が未固結堆積物でないこと 深度300m以深まで更新世中期以降(約78万年前以降)の地層が分布する範囲 別添⑥
火砕流等 操業時に火砕物密度流等による影響が発生す ることにより施設の安全性が損なわれないこと 完新世(約1万年前以降)の火砕流堆積物•火山岩•火山岩屑の分布範囲 別添⑦
鉱物資源 現在認められている経済的価値の高い鉱物資 源が存在することにより、意図的でない人間侵 入等により地層処分システムが有する物理的 隔離機能や閉じ込め機能が喪失されないこと 鉱業法で定められる鉱物のうち、全国規模で整備された文献データにおいて、 技術的に採掘が可能な鉱量の大きな鉱物資源の存在が示されている範囲(た だし、当該地域内においては、鉱物の存在が確認されていない範囲もあり、調 査をすればそうした範囲が確!2できうることに留意する必要がある。) ※炭田については、紙量が示されているか否かに留意が必要 ※金属鉱物については、エリアで表現することが困難であり、処分地選定調査時に好ましく ない範囲を明らかにする必要あり ⑧⑨⑩ 添添添 8 8 8
•好ましい範囲の要件•基準
要件 基準 参照先
輸送 海岸からの距離が短いこと 沿岸から20km程度を目安とした範囲 ※WB1.500m以上の場所は除く 別添⑪
234
■ R 1 4 賢心・ マグマの・・・への・人と・・ヘ6»18Iユ 1. ・笑さこと ■・祀灰山の・I。から15§内 ■■Wの大山活・・・的 A塩•4いル ・ »««〇 s;、、I •■・・・niMo-ixcvaBtiu・ et©I’lOOWPMe・・ ■iHoetWfcefcaa “.に.m»<^aiiM«ien««>jAVKKiMrtf>»fi* hの・,・た曾わ・・ M»2
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    (出典:経済産業省資源エネルギー庁ホームページをAOサイズからA4サイズに縮小)
    235
    日本における地層処分>>>
    日本資料
    安全規制
    核原料物質、核燃料物質
    及び原子炉の規制に
    関する法律
    核原料物質、核燃料物質
    ー 及び原子炉の規制に
    関する施行令
    •第一種廃棄物埋設事業に関
    する規則
    一 ・設計及び工事の方法の記述
    基準に関する規則

    資金確保
    — 特定放射性廃棄物 最終処分に関する法律 — 特定放射性廃棄物の 最終処分に関する 法律施行令 し一 一 — 単位数量当たりの 最終処分業務に必要な 金額を定める省令

環 境 一 環境影響評価法
※ただし、地層処分事業は適用対象事業に指定されていない
原子力 _ 原子力損害の賠償に
損害賠償 関する法律
236
日本・
放射性廃棄物
◎放射性廃棄物の区分
廃棄物の種類 廃棄物の形態 廃棄物の概要
高レベル放射性廃棄物 ガラス固化体 再処理の過程において使用済燃料から分離されるストロンチウム90、セシ ウム137に代表される核分裂生成物と、アメリシウム241、ネプツニウム 237に代表されるアクチニドを含む放射能レベルの高い廃液をガラス固化し たもの
低レベル放射性廃棄物 発電所廃棄物 炉心等廃棄物 制御棒、炉内構造物 原子力発電所で発生する放射性廃棄物
低レベル放射性廃棄物 廃液、フィルタ、廃機材、 消耗品等
極低レベル放射性廃棄物 コンクリート廃材、 金属廃材等
長半減期低発熱放射性廃棄物 (TRU廃棄物) 燃料体の部品等、廃液、 フィルタ 再処理施設やM〇X燃料加工施設の操業・解体に伴って発生する低レベル放 射性廃棄物
ウラン廃棄物 消耗品、スラッジ、 廃機材 ウラン濃縮工場、ウラン燃料成形加工工場で発生する放射性廃棄物
研究施設等廃棄物 廃液、金属廃材、コンク リート廃材、プラスチッ ク廃材、フィルタ、使い 捨ての注射器等 医療機関及び研究施設等から発生する放射性廃棄物
放射性物質として扱う必要のない もの(クリアランス相当の廃棄物) コンクリート廃材、 金属廃材等 原子力施設の運転、解体に伴い発生する廃棄物で、放射能濃度が放射線による 障害の防止のための措置を必要としないもの
(使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約日本国第4回国別報告書、平成23年(2011年)1〇月より作成)
◎高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター
(青森県六ヶ所村)
◎低レベル放射性廃棄物埋設センター
(青森県六ヶ所村)
〇フランス及び英国から返還されるガラス固化体を最終処分するまでの間、
冷却のために貯蔵する施設です。
〇平成フ年(1995年)より操業開始
(日本原燃㈱より提供)
〇原子力発電所から発生した低レベル放射性廃棄物を処分しています。
〇平成4年(1992年)より操業開始
(日本原燃㈱より提供)



237
用語集>>>
用語集
用 語 解 説
ここでは、本冊子で用いられている用語についての解説をします。ほとんどのものは「高レベル放射性廃棄物
の地層処分研究開発等の今後の進め方について」〔平成9年(1997年)4月15日 原子力委員会原子力バックエン
ド対策専門部会〕等の国の報告書i)、2)、3)、4)より引用し、難しい用語については補足していますが、その中にない
用語については本冊子で独自の解説を行っています。なお、地層処分の技術的な用語については、「高レベル放
射性廃棄物の処分について考えてみませんか」(経済産業省資源エネルギー庁)等の関連冊子に詳しく載ってい
ますので、そちらも参照して下さい。
アクセス坑道
人間、機械、空気などが出入りする、地表と地下施
設とを結ぶ通路。立坑、斜坑、スパイラル坑道などが
ある。(-•・立坑、斜坑、スパイラル坑道)
安全評価
高レベル放射性廃棄物の地層処分システムが安全
上受け入れられるものか否かを判断するため、人間と
その生活環境への影響を解析した結果を基に、適切
な安全基準と比較、評価すること1)。
オーバーパック
ガラス固化体を包み込み、ガラス固化体に地下水
が接触することを防止し、地圧などの外力からガラス
固化体を保護する容器。人工バリアの構成要素の一
つ。候補材料は炭素鋼などの金属である°。

核種
特定の原子番号と質量数により特定される元素の
種類のこと。例えば、ウラン元素には、核種としてU-
235 (原子番号92、質量数235)やU-238 (原子番号
92、質量数238)などが含まれているが。
核種分離技術
高レベル放射性廃棄物や使用済燃料に含まれる
核種を、それぞれの核種の物理的あるいは化学的
特徴を利用して、核変換の方法や利用目的に応じ
ていくつかのグループ、元素あるいは核種に分離
する技術2)。
核変換技術
分離した後、中性子や泌泉等の放射線を照射するこ
とにより、長寿命の放射性核種を短寿命または非放射
性核種に変換する技術刀。
ガラス固化
再処理の過程において使用済燃料から分離される
高レベル放射性廃液を、ガラス繊維と一緒に高温で
加熱することにより水分を蒸発させるとともに非晶質に
固結(ガラス化)し、物理的•化学的に安定な形態に
するプロセス。廃液はステンレス製の堅牢な容器(キャ
ニスタ)に閉じ込められた状態でガラス固化され、人
エバリアの構成要素のひとつであるガラス固化体とな
る。ガラス固化体は放射性物質を安定な形態に保持
し、地下水に対する耐浸出性に優れることが特徴・。
緩衝材
オーバーパックと地層の間に充填し、地下水の浸入
と放射性物質の溶出・移行を抑制するもの。さらに地
層の変位を物理的に緩衝するクッションの働きや、地
下水の水質を化学的に緩衝して変化を抑える働きをも
つ。人工バリアの構成要素の一つ。候補材料はベン
トナイトなどの粘土であるし。
環境影響評価
高レベル放射性廃棄物の処分場の開発によって、
大気、水域、地圏、生物圏(生態系)などの自然環境
及び地域経済•社会、土地利用、景観、歴史的遺産
などの社会環境に対し、どのような影響があるかを予
測・解析した結果をもとに、適切な環境指標及びその
基準値と比較、評価することを環境影響評価(略して
環境評価、あるいは環境アセスメント)と言う。
また許認可手続などで正式に行われる環境影響評
価の結果を示した報告書のことを米国などでは環境
影響評価書(EIS)、フィンランドなどでは環境影響評
238
価報告書(EIA)と言う。
さらに米国では、本格的に環境影響評価を実施す
る前に、十分な証拠揃えと解析を行ってから正式な環
境影響評価書(EIS)を作成するかどうかを決めるた
め、予備的に環境アセスメントを行うことがあるが、こ
れを環境アセスメント書(EA)と言う。
キャスク
もともとは、放射性物質を密封し、内容物の漏出を
阻止し、放射線を容器外で規定値以下に保持し、核
的臨界を防止し、容器外側での温度を規定以下に保
持するとともに、規定で定められた耐火条件、落下衝
突条件、浸漬条件においても内容物を保護するように、
輸送物を収納した輸送用の容器を言う。フラスコと呼
ぶ場合もある。現在は、キャスクを貯蔵用に用いる国
が増えている。また、ドイツのように、処分用の容器に
用いる国もある。
キャニスタ
高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を収納する
容器を言う。使用済燃料を直接処分する国では、使
用済燃料を収納する容器をいうことが多く、その場合
の容器はわが国のオーバーパックの機能を有している
場合が多い。米国では廃棄物パッケージという。(—
オーバーパック)
拠出金
放射性廃棄物、特に高レベル放射性廃棄物の処分
事業などに要する費用を賄うために、法令によって設
置された放射性廃棄物基金に、費用負担責任のある
放射性廃棄物発生者が払い込む資金を拠出金と言う。
拠出金は、国によってさまざまな呼び方がある。米
国などは料金、スウェーデンなどは納付金、フィンラン
ドなどは積立金、スイスなどは分担金と言う。
結晶質岩系
地層処分の観点から分類された岩石のひとつで、
マグマが冷えて固まってできた岩石(火成岩)や、既
存の岩石が熱•圧力によって構造が変化してできた岩
石(変成岩)を指す。性能評価の観点から最も重要な
特徴は、地下水の流動に対して亀裂状媒体(割れ目
の中を選択的に地下水が移動する)として扱われるこ
と。例:花崗岩体1)。
建設・操業・閉鎖
建設は、高レベル放射性廃棄物定置のための地下
施設(地下坑道群)と地上施設を構築することを指す。
操業は高レベル放射性廃棄物の受け入れ、廃棄物や
緩衝材の搬送•定置、さらにその後に行われる処分
坑道、主要坑道の埋め戻し作業を指す。閉鎖は、連
絡坑道、アクセス坑道及びボーリング孔を埋め戻し、さ
らに地上施設の解体•撤去を指す。
高レベル放射性廃棄物
再処理の過程において使用済燃料から分離される
ストロンチウムー90、セシウムー137に代表される核分裂
生成物とアメリシウムー241、ネプツニウムー237に代表さ
れるアクチニド(原子番号89番以上の元素。放射性
元素である)を含む高レベル放射性廃液、またはそれ
をガラス固化したもの。発熱量と放射能は時間ととも
に減衰する。ガラス固化体の発生量は、100万kWの
原子力発電所の1年間の運転に対して現状の技術で
はおおよそ30本程度である1)。(ーガラス固化)
なお、使用済燃料を再処理せずに廃棄物として直
接処分する国の場合は、使用済燃料自体が高レベル
放射性廃棄物となる。(ー使用済燃料)
個人線量
体内に摂取された放射性物質あるいは体外から個
人が受ける放射線量を個人線量といい、個人に対す
る放射線影響の程度を表す尺度となる。通常は、実
効線量(単位:Sv (シーベルト))で表す1)。

再処理
原子炉で使用した燃料の中には、燃え残りのウラン
や新しくできたプルトニウム等燃料として再び利用でき
るものと、ウラン等が分裂してできた核分裂生成物が含
まれている。これらを化学的プロセスにより、再び燃料と
して利用できるウラン、プルトニウムと高レベル放射性
廃棄物に分離する作業をいうい。(一高レベル放射性
廃棄物)
サイト選定
地層処分を行う場所(サイト)を選定すること。また、
そのプロセス。わが国では、法令に基づき、概要調査
239
用語集>>>
用語集
地区の選定、精密調査地区の選定、最終処分施設建
設地の選定の3段階の選定プロセスを経て行われる
ことになっているが、国によって段階の区分や呼び方
は異なっている。
サイト特性調査
処分予定地において、処分施設の設計や処分シス
テムの性能評価に必要な情報を取得するために実施
する調査。地表からのボーリング調査や物理探査、地
下施設を用いた調査などにより、地表から地下深部ま
での地層及び地下水の性質(例えば、地質構造、岩
盤物性、地下水の水質や流動特性など)を体系的に
調べるい。いずれの国においても、サイト特性調査の
手順は、文献等既存の情報に基づく調査、地表からの
ボーリング等調査、地下施設を用いた調査の順番に行
われるが、区分や呼び方は国によって異なっている。
シナリオ
放射性廃棄物が人間環境に及ぼす影響を評価する
観点から、地層処分システムの処分直後の状態を基に、
長期間のうちにその状態を変化させる可能性のある
一連の現象を想定し、これらを組み合わせて地層処分
システムの長期挙動を描いたもの。シナリオを作成す
る目的は、地層処分システムの長期挙動を時系列的に
記述することにより、地層処分システムの性能を解析
するための道筋を規定し、その解析に必要なモデルの
開発やデータ収集の枠組みを与えることである1)。
斜坑
人間、機械、空気などが出入りする、地表と地下施
設とを斜めに結ぶ通路。(•アクセス坑道)
使用済燃料
原子炉燃料として使用され、規定の燃焼度に達し
た後に原子炉から取り出された燃料をいう2)。
処分坑道
処分場において高レベル放射性廃棄物を運搬、埋
設するための地下深部の水平坑道い。
人工バリア
多重バリアシステムの構成要素のひとつで、ガラス
固化体、オーバーパック及び緩衝材から成る部分。高
レベル放射性廃棄物が人間の生活環境に影響を及ぼ
さないようにする障壁として、人工的に形成したもの°。
スパイラル坑道
人間、機械、空気などが出入りする、地表と地下施
設とを螺旋状に結ぶ通路。(•アクセス坑道)
制度的管理
処分を適切に実施するため、法令に従って当局ある
いは指定機関が行う管理のこと。能動的な管理(人間
による処分場の管理•保守、環境放射能のモニタリン
グなど)及び受動的な管理(フェンスやマーカーの設置、
記録の保管、土地使用の制限など)に分けられるい。
性能評価
地層処分システム全体、あるいはその要素である
個別システムが有する機能について解析した結果を
適切な基準と比較し、その性能について判断を行うこ
と。解析の対象が地層処分全体で、比較の基準が安
全性に関わるものである場合には、性能評価は安全
評価と同義であるK

堆積岩系
地層処分の観点から分類された岩石のひとつで、
海底や河床などに運ばれた堆積物や火山の噴出物な
どが固まってできた岩石を指す。性能評価の観点か
ら最も重要な特徴は、地下水の流動に対して多孔質
媒体(岩石の粒子の間の空隙中をほぼ均一に地下水
が移動する)として扱われること。例:泥岩層1)。
多重バリアシステム
高レベル放射性廃棄物を、長期間にわたり生物圏
から隔離し、放射性物質の移動を抑えることにより、処
分された放射性廃棄物による影響が、将来にわたって
人間とその環境に及ばないようにするための多層の
防護系から成るシステム。工学技術により設けられる
人工バリアと、天然の地層である天然バリアにより構
成される°。(-人工バリア、天然バリア)
立坑
人間、機械、空気などが出入りする、地表と地下施
240
設とを垂直に結ぶ通路1)。(ーアクセス坑道)
地下研究所•地下特性調査施設
地下深部の地質環境データの取得やさまざまな試
’験を行うことを目的とした施設。本冊子では、純粋に
学術的研究等を目的として処分予定地以外の地下に
設けられたものを地下研究所、処分予定地の地下に
設けられたものを地下特性調査施設と呼んで区分し
ている。ただし、フランスの場合は法令に基づき地下
研究所と呼んでいるが、同法令によれば処分場となる
可能性があるとされており、実態としては地下特性調
査施設に近い位置づけのものである。なお、地下研
究所•地下特性調査施設の名称は国によって異なって
おり、例えばわが国の地下研究所は深地層の研究施
設と呼んでおり、深地層の研究施設は、学術的研究
の場であるとともに、国民の地層処分に関する研究開
発の理解を深める場としての意義を有し、その計画は、
処分施設の計画と明確に区分して進めることが必要
である、としている3)。
地下水シナリオ
処分場に埋設された高レベル放射性廃棄物に地下
水が到達し、廃棄物中の放射性物質が地下水にょっ
て運ばれることにより、影響が生物圏へ及ぶことを想
定するシナリオ1)。
地球化学特性
地質環境の化学的な性質をいう。岩石の鉱物・化学
組成や、地下水の化学組成、pH、酸化還元電位など。。
地質環境
地層処分の観点からみて重要な、地層を構成する
岩石やそこに含まれる地下水などの要素から成る地
下の環境い。(一地質環境条件)
地質環境条件
地層処分システムの性能にとって重要な、地質環境
の現在の性質(地質環境の特性)と長期的な将来に
わたる安定性(地質環境の長期安定性)とを一括して
地質環境条件と呼ぶ。また、地質環境条件に関する
調査研究によって取得、収集されたデータや知見など
を総称して「地質環境についての情報」と呼ぶい。
地層処分
高レベル放射性廃棄物などの最終処分として、ガ
ラス固化体などを地下数百メートルより深い地層ある
いは岩体中に隔離する方法をいう。処分後のいかな
る時点においても人間とその生活環境が高レベル放
射性廃棄物中の放射性物質による影響を受けないよ
うにすることを目的とする。なお、英語0″geological
disposal”に対して用いられている「地層処分」という
用語の「地層」には、地質学上の堆積岩を指す「地層」
と、地質学上は「地層」とみなされない「岩体」が含
まれている。単独で用いる「地層」という用語につい
ても同様であるし。
地層処分システム
適切な地質環境の下に多重バリアシステムを構築
することによって、処分された高レベル放射性廃棄物
による影響が将来にわたって人間とその生活圏に及
ばないようにするための仕組みい。(ー多重バリアシ
ステム)
定置技術
ガラス固化体を内包したオーバーパックを処分場の
所定の位置に収納するための技術°。
TRU廃棄物
再処理施設やウラン-プルトニウム混合酸化物
(MOX)燃料加工施設の操業・解体に伴って発生
する低レベル放射性廃棄物。TRU廃棄物のうち、ハ
ル・エンドピースの圧縮体は発熱量が比較的大きく、
発生時点で約60W/本(25年後で約4.5W/本)程
度。一方、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)
の発熱量は固化直後で約2,300W/本(50年後で約
350W/本)程度である。また、TRU廃棄物にはハル•
エンドピース以外に、ベータ線核種であるヨウ素一129
の濃度が比較的高い廃銀吸着材、硝酸塩を含む濃縮
廃液等を固化したもの、不燃性廃棄物等がある。(一
再処理、高レベル放射性廃棄物、ガラス固化、核種)
天然バリア
処分された廃棄物と人間の生活環境との間にある
地層などを指し、天然のものではあるが、廃棄物が人
間の生活環境に影響を及ぼさないようにする障壁とし
ての役割も期待されるい。
241
用語集>>>
用語集

ナチュラルアナログ
廃棄物埋設後の放射性核種の挙動や人工バリアの
腐食•変質など、地層処分システムにおいて想定され
る現象と類似した、自然界で過去に起こった長期的変
化に関する現象。火山から噴出した火山ガラス、古代
の遺跡などから発掘される銅鐸、地下に埋設された
古い鋳鉄管などは、人工バリアの候補材であるガラス
や金属に類似しているため、これらの地下での長期
的な変化を調べることにより、人工バリアで生じ得る現
象を確認したり、評価方法の妥当性をチェックすること
ができる。また、天然の放射性核種を含むウラン鉱床
などは、天然バリアを含めた地層処分システム全体の
ナチュラルアナログの研究の場として利用できる1)。

廃棄物パッケージ
(•キャニスタ)
破砕帯
断層活動に伴う断裂・圧砕などの作用によって、岩
石が角れき状や粘土状に破砕された部分。断層が動
いた面を中心にほぼー定の幅をもった帯を形成する1)。
引当金
電力会社による資金確保方策の一方式で、原子力
発電など、今やっている活動によって、放射性廃棄物の
処分費用など、将来に費用が発生することが確実な場
合に、その費用を見込んで計上することを引当と言い、
そのように計上された金額を引当金と言う。
分離変換技術
(•核種分離技術、核変換技術)
併置処分
異なるレベルの放射性廃棄物等を同一のサイト内
に処分する処分方法のことをいう。
ベントナイト
(ー緩衝材)
放射線量
放射線が人体影響の原因となると考えたときの原因
量を放射線量あるいは線量と呼ぶ。使用目的に応じ
何種類かの線量が定義されているが、最も基本的な
ものは吸収線量(単位:Gy (グレイ))であり、単位質
量に吸収されるエネルギーで表される。人体への影
響を評価する場合には、吸収線量に放射線の種類や
臓器の感受性の違いなどによる補正を行って求める
実効線量(単位:Sv (シーベルト))が用いられる°。
ボーリング
(—►ボーリングデータ)
ボーリングデータ
地下の地質状況などを調べるために、地中深く、直
径数cm-20cm程度の円筒状の孔を掘ることをボー
リングという。ボーリング孔を掘る際に採取した岩石試
料を用いた室内試験やボーリング孔を利用した各種
計測によって、地下の岩石や地下水に関する様々な
情報を取得することができるが、このようにして得られ
た情報を総称してボーリングデータというい。
リスク
放射線被ばくによる有害な影響の生じる確率。ある
線量の被ばくを受ける確率と、その被ばくによる健康
への重大な影響を引き起こす確率との積で表される°。
用語解説の出典
1) 高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今
後の進め方について
〔平成9年(1997年)4月15日
原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会〕
2) 長寿命核種の分離変換技術に関する研究開発の現
状と今後の進め方
〔平成12年(2000年)3月31日
原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会〕
3) 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画
〔平成12年(2000年)11月24日 原子力委員会〕
4) 長半減期低発熱放射性廃棄物の地層処分の基本的
考え方一高レベル放射性廃棄物との併置処分等の
技術的成立性一
〔平成18年(2006年)4月18日
原子力委員会長半減期低発熱放射性廃棄物処分技術検討会〕
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諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
改訂新版 第18版 令和3年(2021年)2月1日発行©
発 行 経済産業省資源エネルギー庁
制 作 公益財団法人原子力環境整備促進•資金管理センター
高レベル放射性廃棄物について.もっとくわしく知りたい方のために
以下のウェブサイトでは、
原子力に関する各種情報が提示されています。
〇経済産業省資源エネルギー庁………………..https://www.enecho.meti.go.jp/
(放射性廃棄物のホームページ)
…..https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/
〇文部科学省…………………………………….https://www.mext.go.jp/
〇原子力委員会…………………………………….http://www.aec.go.jp/
〇原子力規制委員会…………………………………https://www.nsr.go.jp/
〇国立研究開発法人日本原子力研究開発機構……………..https://www.jaea.go.jp/
〇原子力発電環境整備機構(NUM〇)………………….https://www.numo.or.jp/
〇公益財団法人原子力環境整備促進.資金管理センター …….https://www.rwmc.or.jp/
〇一般社団法人日本原子力産業協会……………………..https://www.jaif.or.jp/
〇一般財団法人日本原子力文化財団……………………https://www.jaero.or.jp/
〇一般財団法人電力中央研究所…………………….https://criepi.denken.or.jp/
〇電気事業連合会………………………………….https://www.fepc.or.jp/
〇日本原燃株式会社…………………………………https://www.jnfl.co.jp/
〇使用済燃料再処理機構(NuR〇)………………………http://www.nuro.or.jp/
以下の施設では、原子力に関する文書など
各種資料を閲覧できます。
。原子力関係資料閲覧室(原子力規制庁)
〒106-8450 東京都港区六本木1丁目9番9号 六本木ファーストビル18階
利用時間などはホームページでご確認ください
1 https://www.nsr.go.jp/procedure/disclosure/etsuran.html
経済産業省資源エネルギー庁
電力・ガス事業部放射性廃棄物対策課
〒100-8931東京都干代田区霞が関1-3-1TEL : 03-3501-1511(代表)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/
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