プーチン氏、大統領選挙で圧勝演出 15日から投票開始
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『2024年3月13日 17:23 (2024年3月13日 18:24更新)
ロシア大統領選の投票が15日に始まる。現職のプーチン大統領(71)は足元の得票率見通しでは約80%を占め、通算5選は確実だ。政権は言論統制を強めるとともに反体制の候補を排除し、圧勝ムードを演出する。政敵で2月に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏の葬儀には多くの人が参列した。反政権票が増える可能性は残る。
「いかなる指導者が選ばれても、ロシアは米国と協力する」。プーチン氏はロシア通信が13日に伝えたインタビューでこう述べた。自身の選挙前に11月の米大統領選の結果に触れたことは、当選への自信の表れと映る。
今回のロシア大統領選は、投票が15〜17日の3日間、開票は17日夜にそれぞれ実施される。立候補者はプーチン氏に加え、政党「新しい人々」のダワンコフ下院副議長(40)、ロシア共産党のハリトノフ下院議員(75)、自由民主党のスルツキー党首(56)の4人だ。
政府系の全ロシア世論調査センターが11日にまとめた選挙終盤の情勢動向によると、プーチン氏の得票率見通しは82%。6%の同率で並ぶ2位のダワンコフ氏とハリトノフ氏を圧倒する。プーチン氏の当選は揺るがない状況だ。
足元でプーチン氏の支持率は伸びている。ロシアの民間世論調査会社レバダセンターの調査では、プーチン氏の2月の支持率は86%と、2022年2月のウクライナ侵攻開始後で最高となった。
ウクライナ情勢でロシアが戦果を上げつつあるためだ。2月中旬にはロシア軍は東部ドネツク州の要衝アブデーフカを奪取し、プーチン氏の支持基盤である保守派に受け入れられているとみられる。戦況が優勢とみて「ウクライナ問題には『現実』に基づいて協議する用意がある」とも話した。
今回の大統領選では、ウクライナ侵攻に反対するボリス・ナデジディン元下院議員ら反戦候補2人の立候補が認められなかった。この結果、立候補者は過去最少となり、前回18年の大統領選から半減した。立候補したプーチン氏以外の3人も政権に従順とされ、政敵を徹底的に排除した形だ。
監視組織やメディアへの圧力も強めているようだ。
大統領選ではかねて選挙の不正が独立系メディアなどで報告されてきた。過去の選挙で与党の不正を暴露した選挙監視団体「ゴロス」の共同代表者は23年8月に拘束された。拘留は延長されており、ゴロスの実質的な弱体化を狙っているとみられる。
23年11月に施行された大統領選挙に関する法改正で、メディアへの規制がより厳しくなった。選管の会合に出席できるのは登録メディアに正規雇用されたジャーナリストのみとなった。選挙の監視が一段と難しくなるとみられる。
自らに有利な状況をつくり、選挙で圧倒的な勝利を収めて国民の支持を得たと主張する思惑だ。プーチン氏の前回の得票率は過去最高の76%で、今回は得票率の上昇を必達目標にしているとみられる。独立系メディアは大統領府が80%以上の得票を目指していると伝えている。
勝利が確実となるなかで、不安材料は反政権の動きが選挙結果にどれだけ反映されるかだ。前回の大統領選ではナワリヌイ氏が候補者登録を拒否された。ナワリヌイ陣営は今回の選挙でプーチン氏以外の候補者に投票するよう呼びかけていた。
当局は2月16日、ナワリヌイ氏が北極圏の刑務所で獄死したと発表した。欧米メディアによると、3月1日にモスクワで執り行われた葬儀には数千人が集まり、プーチン氏への批判やウクライナとの戦争に反対を訴える人もいたという。
プーチン氏を批判する対抗馬もおらず、政権に不満を持つ有権者の投票行動に注目が集まる。関心が低下すれば、前回の投票率(67%)を下回る可能性もある。
ロシアは一方的に併合したウクライナ東・南部4州でも投票を実施する。ロシアは制圧地域の既成事実化を進め、プーチン氏は大統領選での「圧勝」で領土の一体性を強調するとみられる。併合地域でも期日前投票が進んでいる。
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