「もしトラ」のアジア政策は 日系人の元米軍大将に聞く

「もしトラ」のアジア政策は 日系人の元米軍大将に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN11CI30R10C24A3000000/

『トランプ前米大統領が再選したらアジアを含む米国の安全保障政策はどうなるのか。日本人の母を持つ日系人で、アジア太平洋の米海軍トップである太平洋司令官などを歴任したハリー・ハリス元海軍大将に展望を聞いた。

――11月に米大統領選があります。次期大統領に対中国政策をどう助言しますか。

日本人の母と米国人の父の間に神奈川県横須賀市で生まれた。アジア太平洋の米海軍トップ太平洋軍司令官などを務め、トランプ政権だった2018年に韓国大使に就任。海軍大将はアジア系として海軍の過去最高位になる。日本政府には次期政権で要職に就く期待がある
「米国はさまざまなグローバルな課題で中国とうまく連携してきたが、決定的な問題で意見が全く異なる。自国民への人権侵害、途

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『自国民への人権侵害、途上国債務の武器化、台湾への威嚇など中国は約束を守らない国だ。バイデン政権のアプローチは前政権と変わらない点は強調したい。新政権でも根本的な変化はないだろう」』

『――米国はウクライナや中東での紛争に軍事資源を割かざるを得ない状況です。対中抑止戦略に影響しませんか。

「私はいつも『歩きながら同時にガムをかめる 』と言っている。米国は欧州や中東で起きている事態に対処しながら、同盟国に条約上の義務を果たせる。2国間の防衛条約を結ぶ国は日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイの5カ国だけで、全てインド太平洋の国だ。防衛する義務がある」

「バイデン政権は米国最大の圧倒的な強みは同盟国と協力するネットワークであると明確にしている」』

『――前大統領は1期目に在日米軍の駐留経費や在韓米軍の削減に言及しました。日韓や欧州の駐留米軍の配置を再検討する必要がありますか。

「戦略的な位置づけを不断に見直すのは大切だ。過去にとらわれて未来の青写真を見るべきではない。特定の国では戦力を減らすのではなく、むしろ増やしたいと考えるかもしれない」

「米軍を駐留させている国は防衛費の負担に協力すべきだ。日本に5万5000人、韓国に2万8000人の軍隊を駐留させる費用を米国の納税者が100%負担すべきでないが、2カ国の負担額は厳しい交渉の末に合意される。大半は適切な状況にある」

「例えば日韓防衛は米国自身の国益のためでもある。日本にいる米軍は中国の脅威への対処など地域での戦略的利益になる。だから全額負担を求めたりはしない。平等な交渉に基づき金額を決める」』

『――米国の対北朝鮮政策は行き詰まっています。

「核開発計画の放棄を見すえた現在の北朝鮮との交渉は限界にきている。検討可能な非核化という合意を得られるとは楽観視していない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が核を放棄するという考えは全くの空想だろう」

「北朝鮮の脅威から身を守る能力を向上させなければならない。米韓同盟の強度を高める必要がある。韓国は合同演習の再開で能力を向上させたのは喜ばしい。日本も中朝の脅威を正しく認識している。希望的観測ではなく、日米韓が現実の軍事力をもって対応すべきだ」』

『――岸田文雄首相は金総書記との首脳会談を探っています。

「岸田首相が金総書記と会うこと自体は称賛されるべきで、批判されるべきではない。北朝鮮は首相が提起できる議題に厳しい制限を設けており、それに同意するかどうかは彼の責任になる」

「日朝関係の根幹の課題のひとつが日本人拉致問題だ。テーブルの上にないなら何を達成できるのかはわからない。金総書記がミサイル発射をやめるとも思えない。しかし過去に驚かされたこともあった。注視したい」』

『――インドは同盟国ではないが、重要な戦略的パートナーです。

「世界最大の民主主義国家で、対立点より共通点の方がはるかに多い。インドがロシア批判に抑制的で、エネルギー取引などを続けていることには失望している。どの国も国益のために懸命だ。米印関係は過去最高の状態にある」

――インドは日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」での安全保障協力に慎重です。

「その通りだ。これまでワクチン流通や人道支援活動などに取り組んだ。同じ志を持つ国の集まりで、課題や展望を共有している。防衛協定ではない。(米欧の軍事同盟)北大西洋条約機構(NATO)になれないし、なるべきでもない」

「クアッドは新規加盟国を検討しなければならない。もっと多くの国を参加させるべきだ。韓国大使だった時に韓国人から非公式に『どうすればメンバーになれるのか』と何度も聞かれた。正式な事務局やメカニズムが必要だ」 』