バイアスとノイズにまみれた人間の判断は必ず間違う
https://www.tachibana-akira.com/2024/03/14727
『ダニエル・カーネマンはエイモス・トベルスキーとともに、さまざまな独創的な実験によって、人間には多種多様な認知の歪み(バイアス)があり、選択や行動はつねに一定の方向にずれてしまうことを明らかにした。こうして行動経済学が誕生し、カーネマンは心理学者としてはじめてノーベル経済学賞を受賞した(トベルスキーはその前に死去)。
『NOISE(ノイズ) 組織はなぜ判断を誤るのか?』( 村井章子訳、早川書房)は、そのカーネマンが、「ナッジ(行動経済学の政策への応用)」で有名な法学者のキャス・サンスティーン、意思決定理論のオリビエ・シボニーとともに世に問うた新著だ。その主張をひと言で要約するなら、「意思決定が失敗する理由はバイアスだけではなく、それと同等か、それ以上に影響力の大きな要因=“ノイズ”がある」になるだろう。
バイアスがなくてもノイズは生じる
アメリカの裁判では、同じ犯罪であっても、若い黒人の有罪率は高く、童顔の白人だと執行猶予がつきやすい。これがバイアスで、裁判官や陪審員は、自分は人種差別とは無縁だと思っていても、無意識のうちに、白人よりも黒人を犯罪と結びつけている。
これだけでも不公平だが、こうした認知バイアスをすべてなくすことができたとしても問題は解決しない。裁判官に大きな裁量権が与えられていることで、同じ犯罪でも、どの裁判官に当たるかで判決や量刑が大きく異なっているのだ。』