豪比首脳会談、海洋安全保障で協力強化 中国に対抗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM290MA0Z20C24A2000000/
『【シドニー=今橋瑠璃華、マニラ=志賀優一】オーストラリアを訪問中のフィリピンのマルコス大統領は29日、首都キャンベラで豪のアルバニージー首相と会談した。海洋進出を強める中国を念頭に海洋安全保障での協力を強化すると確認した。
「わが国の主権領土を1平方インチたりとも奪おうとする外国勢力の試みを許さない」。マルコス氏は比首脳として初となる豪議会での演説で強調した。南シナ海で領有権や海洋権益を主張する…
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『両首脳は海洋安全保障やサイバー攻撃対策などでの連携を深める覚書に署名。マルコス氏は「有意義な会談だった」と振り返った。アルバニージー氏は「両国関係はかつてなく緊密で、戦略的関係を通じて多くの恩恵を両国民にもたらせる」と述べた。
22年にマルコス政権が発足して以降、豪比は安保協力を深めてきた。23年2月にマニラで国防相会談を開き防衛閣僚会議を毎年開催することを決めた。同年9月にアルバニージー氏がマニラを訪問して戦略的パートナーシップ協定に署名した。
南シナ海を巡っては、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年に中国の領有権の主張を否定する判決を下した。一方、同海のスカボロー礁(中国名黄岩島)や南沙(英語名スプラトリー)諸島で、比船が中国船から放水銃で妨害される事案が発生した。
マルコス氏は豪議会演説で「我々は法の支配や安定、平和への脅威に直面し、パートナーと協力することを求められている」と危機感を示した。「(米国のほか)訪問軍地位協定(VFA)を結ぶ唯一の国として、豪州の役割は大きい」と呼びかけた。
11月には南シナ海を含むフィリピンの排他的経済水域(EEZ)で豪比両軍が初めてとなる合同パトロールを実施した。豪州は軍事同盟国である米国と並び防衛面で協力関係を築いており、対中を念頭にさらなる連携を進める構えだ。
豪州側にはフィリピンと連携を深め、米英との枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた原子力潜水艦配備で近隣国の支持を広げる思惑もある。21年にはインドネシアやマレーシアが軍拡競争を招くとの懸念を示した。
24年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国は親中国のラオスだ。域内での国際会議で南シナ海問題の議論が停滞することを警戒していることから、フィリピン側には日米豪との連携を積極的に進めている面もありそうだ。
今後の焦点は豪比の安保協力が多国間連携へ発展するかだ。フィリピンは米国と合同パトロールを実施し、日本と2回目の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)実施に向けて調整が進む。23年6月に初めて日米豪比4カ国で防衛相会議を開いた。』