韓国出生率23年「0.72」、過去最低更新 子育て不安重く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM279SN0X20C24A2000000/
『【ソウル=藤田哲哉】韓国統計庁は28日、2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数、暫定値)を「0.72」と発表した。22年の「0.78」からさらに低下し、過去最低を更新した。出生数は5年前と比べて3割減り、23万人となった。
物価上昇や子育て負担の増加、若者の将来への不安感から結婚・出産をためらう人が多くなった。韓国政府は少子化対策を打ち出してきたものの出生率の反転上昇はみら…
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『韓国の出生率は1984年(1.74)に2を割り込み、2018年には0.98と初めて1を下回った。経済協力開発機構(OECD)の平均(21年=1.58)を大きく下回る。日本(22年=1.26)と比べても格段に低く、世界最低水準だ。
23年に生まれた子どもの数は前年比7.7%減の23万人と、8年連続で前年を下回った。出産した年齢別にみると30〜34歳で出産した人の割合の落ち込みが大きい。』
『韓国の出生率が低いのは複合的な要因が絡んでいる。子どもを有名大学に入学させるための高額な教育費や、育児との両立が難しい労働環境、高い住宅価格などが大きな要因だ。
教育費は高校生1人あたりの塾代が07〜15年に月平均で20万ウォン前後だったが、16年以降に急上昇し22年は46万ウォンに達した。ソウル在住者に限れば70万ウォンを超す。
韓国の不動産価格も文在寅(ムン・ジェイン)政権下の5年間で急騰した。KB国民銀行によると、マンション売買価格は全国平均で81%上昇した。政策金利の上昇を受けて22年夏以降に価格上昇は収まったものの、高止まりの状態が続く。
ソウル一極集中も出生率の低下を加速させている。23年のソウル市の出生率は22年の「0.59」からさらに低下し「0.55」となった。新型コロナウイルスのため婚姻数が減少した影響も残る。』
『人口問題などの研究機関、韓国保健社会研究院の李常林・人口モニタリング評価センター長は「将来的な不安感から結婚・出産すると不幸になると思っている若年世代が急増している。伝統的な家族観や価値観が変容し、儒教思想、家族中心主義の呪縛から逃れたいと思っている」と説明する。
韓国は20年から本格的な人口減社会に入った。今回の統計庁発表によると、2023年は死亡数が出生数を12万人上回った。急速な少子高齢化の進展は国民年金の財政を圧迫し、徴兵制の維持を難しくするなど韓国政府に社会インフラの改革を迫る。
韓国に先駆けて少子化が進んだ日本も解決の道筋は見えていない。厚生労働省は27日、23年の出生数(外国人を含む)が前年比5.1%減の75万人8631人と発表した。人口減少幅は初めて80万人を超えた。』