東南アジア、相次ぐ現金給付 生活支援 財政悪化懸念も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM149YM0U4A210C2000000/
『2024年2月16日 19:16
【シンガポール=佐藤史佳】東南アジア各国が物価高に対応して家計支援策を拡充する。シンガポールは16日公表した2024年度予算案に商品券や現金の給付を盛り込んだ。タイのセター政権は過去最大規模の給付を計画する。政策効果を疑問視する見方や財政悪化の懸念も浮上している。
「今回の予算ではさらなる家計支援に取り組む」。シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は16日の予算演説で高騰する生活費への配…
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『シンガポールは1家庭あたり600シンガポールドル(約6万7000円)の商品券を配る。1月にも500シンガポールドルの商品券を支給したが、24年6月と25年1月にさらに300シンガポールドルずつ支給する。
背景には物価の高止まりが続く生活実感がある。シンガポール統計局によると、庶民が利用するホーカーセンター(屋台街)の料理の価格は23年に19年比15%上昇した。屋台料理「チキンライス」が2年で2割値上がりしたとの調査もある。
国民からは「生活コストが高すぎる」(50代の男性技術者)との悲鳴が漏れる。生活費高騰が家計を圧迫しており、シンガポール政府は支援を求める世論に配慮した。
他の東南アジア諸国でも現金給付が相次ぐ。タイは24年に総額5000億バーツ(約2兆円)を投じ、1人1万バーツをデジタルマネーで給付する。一定の条件を満たす16歳以上の国民が対象だ。タイは過去にも1人あたり数千バーツの給付を実施した例があるが、セター政権の給付策は対象者も予算規模も最大だ。
マレーシアは24年予算で低所得者向け現金給付の規模を100億リンギ(約3100億円)と、前年の80億リンギから拡大した。フィリピンも月収2万3000ペソ(約6万2000円)以下の家庭に5000ペソを支給する方針だ。
現金給付は政権の安定や選挙対策を狙った国民の人気取りの側面もある。タイの給付策は23年の総選挙でセター氏が率いるタイ貢献党が掲げた目玉公約だった。
インドネシアのジョコ政権も大統領選挙を前に現金給付を打ち出した。1月に低所得世帯に月20万ルピア(約1900円)を給付すると発表した。ジョコ氏が候補者のプラボウォ国防相を側面支援する狙いとの見方も出た。』
『東南アジアのインフレ率は足元でピークを越えて沈静化しつつあり、現金給付の効果には疑問も出ている。タイ中央銀行のセタプット総裁は1月、ロイター通信の取材に「応急的な景気刺激策で対応すべきではない」と語った。
各国は対象者を絞り込むなど給付額を抑える工夫をするが、財政収支が悪化する可能性がある。ニッセイ基礎研究所の斉藤誠・准主任研究員は、タイの給付策について「経済の活性化効果が見込めるが、財政健全化に逆行する」と指摘する。
東南アジア諸国は新型コロナウイルス対策で歳出が膨らみ、財政健全化が課題となっている。シンガポールやマレーシアは増税とセットで財政に目配りする。シンガポールは1月、消費税に当たる物品・サービス税(GST)の税率を8%から9%に引き上げた。マレーシアも24年にサービス税を6%から8%に上げる。』