ロシアで続く不審死 ナワリヌイ氏死亡、選挙前に排除か

ロシアで続く不審死 ナワリヌイ氏死亡、選挙前に排除か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR16E1F0W4A210C2000000/

『ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が16日、北極圏の刑務所で死亡したとロシア当局が発表した。死因については現在調査中だが、過酷な環境での収監に伴う「殺人」との見方も出ている。ロシアでは反政権活動家などの不審死が相次いでおり、3月の大統領選を控えプーチン政権がナワリヌイ氏の排除に動いたとの疑念も強まりそうだ。

ナワリヌイ氏は北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で死亡した。ロシア当局は…

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『ロシア当局は死因について「調査中」としている。一部のロシアメディアは血栓症が原因だと関係者の話として伝えた。

ロシアのペスコフ大統領報道官はナワリヌイ氏の死因について、当局が規則に沿って調査し明らかにすると述べ、プーチン大統領にもナワリヌイ氏の死亡は報告されたと説明した。

だが、ナワリヌイ氏は2023年12月に北極圏の刑務所に移送され、過酷な環境が同氏の健康状態に深刻な影響を与えた可能性は高いとみられる。21年にノーベル平和賞を独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」編集長として受賞したドミトリー・ムラトフ氏は16日、収監時の寒さや低カロリーの食事などが死亡につながったとの見解を示し「殺人」だと指摘した。

プーチン氏の批判を一貫して続けてきたナワリヌイ氏は20年の毒殺未遂疑惑でも、政権の関与が指摘されていた。ウクライナ侵攻が始まった22年以降は獄中から反戦デモを呼びかけていた。

24年3月にロシアは大統領選を控える。ナワリヌイ氏の陣営はプーチン氏以外の候補者に投票するよう呼びかける運動を開始したと発表しており、政権が批判や異論の排除に動いた可能性も考えられる。

ロシアでは反政府活動家などの不審死が相次いでいる。ウクライナ侵攻を巡って23年6月に武装蜂起を起こしたロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は同年8月、登場していたサンクトペテルブルクに向かう小型機が墜落し死亡した。

政権は関与を否定している。だが米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは同年12月、西側当局者らによる情報としてプーチン大統領の側近であるパトルシェフ安全保障会議書記がプリゴジン氏の暗殺計画に関わったと報じた。

過去にはプーチン氏と敵対した元連邦保安局(FSB)職員のリトビネンコ氏や反体制派で元第1副首相のネムツォフ氏も暗殺された。

戦時統制下にあるロシアでは反政府デモの取り締まりは厳しく、集会などへの市民の参加は拘束されるリスクを伴う。ただ、ナワリヌイ氏が死亡した16日には首都モスクワで同氏の死を悼んで政治弾圧犠牲者の記念碑に献花する人々の姿がみられた。

モスクワの検察当局は同日、インターネット上で大規模集会への参加を扇動する動きが起きているとして、許可されていない集会への参加者は逮捕される恐れがあると警告した。

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察 海外報道では、既にロシアでは追悼・集会に参加した100人以上が逮捕されていますね。ヨーロッパ各都市ではロシア大使館前での抗議も始まっており、「プーチンをハーグへ」というプラカードも目立つようです。昨年プーチン大統領に戦争犯罪で逮捕状を発した、国際刑事裁判所の所在地ですね。

ナワリヌイ氏は「散歩の後に倒れた」との情報もありますが、直接の死因は、なお不明でしょう。また今後の世界への更なる影響は、専門家の皆さんに委ねたいと思います。

ただ、私たちはこうした事態に麻痺してはいけない。この世界はこんなもんだと諦めてもいけない、と感じます。

2024年2月17日 7:49 (2024年2月17日 8:59更新)
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