プーチン批判の先鋒、ナワリヌイ氏刑務所で死亡
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/33520393.html
※ 今日は、こんな所で…。
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ロシア北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所は16日、反政権運動指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が死亡したと発表した。ナワリヌイ氏はロシアのプーチン政権批判の急 先鋒せんぽう として知られる。3月の大統領選に向け、プーチン大統領以外の候補者への投票を呼びかけるキャンペーンを獄中から実施していた。
発表によると、ナワリヌイ氏は16日、散歩の後で「体調が悪い」と申し出た後、意識を失った。刑務所の医師が対応し、救急車を呼ぶなどしたものの、死亡が確認されたという。死因は調査中だとしているが、臆測を呼びそうだ。
ロシアの独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ」によると、ナワリヌイ氏の弁護士が14日、刑務所で面会した際には体調に問題はなかったという。タス通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ナワリヌイ氏の死亡がプーチン氏に報告されたと記者団に明らかにした。
ナワリヌイ氏は、反プーチン政権の象徴的な存在だ。元々は弁護士で、2011年の下院選で政権与党による不正を追及し、大規模デモを主導したことで知名度を高めた。インターネットで政権の腐敗ぶりを暴露し、13年のモスクワ市長選では、プーチン大統領側近の現職に対抗して立候補した。そこで善戦したことで、政権側が弾圧強化に転じたとされる。18年の大統領選には出馬を認められなかった。
20年には、露国内で猛毒ノビチョク系の神経剤による襲撃を受けた。21年に療養先のドイツから帰国と同時に拘束された後、過去に受けた有罪判決の執行猶予が取り消されて収監され、昨年末に北極圏の刑務所に移送されていた。
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世の中には、私ごときでは、理解の片鱗にも触れられない人がいます。このナワリヌイ氏も、私に、そう思わせる一人です。こういう人が存在する事を知る事は、この世の中が小さな自分の頭では、まったく理解できる存在では無い事を思い知らされます。
このナワリヌイ氏という人物、実はドキュメント映画が製作されています。題名が「ナワリヌイ」。単純に反体制活動家だから映画が製作されたわけではありません。普通の感性の人間ではなく、個人で、ここまで巨大な権力に正面から逆らった人間も珍しいと言える行動を取ったからドキュメントになった人物です。彼が亡命先で、ロシアしか使わない暗殺毒を使用して、誰がやったか判るように暗殺されかけたのは、かなり有名な事件です。ロシア政府と暗殺が公然とイメージとして結びついたのは、彼のような身元のはっきりした毒で殺される亡命者が出たからです。敵対者に対する脅しも兼ねているので、敢えてバレる暗殺の仕方をして、シレッと「我々ではない」と言うのが、ロシアのスタイルです。こうした毒とは別に、放射性物質に内部被曝させて、殺す方法も良く使われます。
彼のエピソードを聞くと、「狂人」という言葉が思い浮かびます。彼は、もともと、投資家として財を築いた人物です。なるほど、そういうスリルのある世界で生きてきた人間だからこそ、リスクに対する感性が独特なのだなぁと思います。なので、ロシア政府と対立した理由が、思想とか政治的な信念ではなく、「中途半端な資本主義経済で、ちゃんとリスクを取ったヤツが儲けられないじゃん。政治家と結託したインサイダー取引野郎が得する、インチキ市場が大手を振るっているロシア経済はクソだ。そういうのを認めている政府もクズだ。だったら、汚職を暴いて正してやるぜ」という、自分がちゃんと博打をやりたいから、反体制政治家になった人です。
いや、この理由のモチベーションで、大統領選挙出馬まで人気を集めるのは、やはり判る人にしか判らないカリスマがあるんでしょう。普通に考えたら、ありえない事です。実際、プーチン政権から危険人物扱いされて、国営の石油会社の利権や、最も有名になったのは、プーチン氏が隠していた宮殿のような別荘の存在を暴いた事件です。彼は公には、「国家の為に」国の指導者としては、物凄く安い給料で働いている事になっています。しかし、隠し蓄財で、保養地に豪勢な御殿を所有し、半端ではない規模のクルーザーも所有している事を暴きました。つまり、立場を利用して、良い暮らしをしていたわけです。「嘘つけ、お前、そんなタマじゃないだろ。スカタンが」という事を、ロシア国内で、個人と協力者だけで、やっていたのがナワリヌイ氏です。
ちなみに、この選挙の時から、虚偽の罪で逮捕されるを複数回、繰り返されています。相手の被選挙権を剥奪する為の、罪の捏造です。これ、単純にナワリヌイ氏が、思想活動家だったり、ジャーナリスト出身だったら、「殺して終わり」だったはずです。しかし、ある意味、プーチン氏と同じタイプの人間なんですね。ようは、カリスマ持ちで、悪口を言われながらも、彼を被写体にしたカレンダーが売れちゃったり、写真集が売れちゃったり、マトリョーシカがお土産で売れたりするタイプの人間です。そういう同族から、「お前、かっこつけてイキってるだけのインチキ野郎だから。普通に金も権力も大好きだろ? 愛国者を気取っているじゃねえよ」とかって反抗されたら、手に余るのですね。しかも、ボディーガードとか侍らせて、自分を守らず、単身で堂々としているし、こうなると返って手が出しにくいのです。
それでも、とうとう飛行機で移動中に毒を盛られて、ドイツの病院に入院します。この毒がノビチョクという猛毒です。この毒は、ロシアが暗殺用に開発した神経毒で、他に所有している国がありません。つまり、「私がやりました」と手を挙げつつ毒殺を試み、それに口出しをさせない事で、国威を示すという発想がチンピラな事を、一国の大統領が、命じているわけです。ナワリヌイ氏は、この時は瀕死の状態から回復するわけですが、この時の言動が常人じゃありません。「プーチンが毒殺を命じた明確な証拠が手に入った。あいつは、やはりバカだ。やったぜ」と喜ぶんですよね。その後に、「頭の回るヤツならピストルで撃ち殺すよな」とも言っています。もう、この辺りのコメントが普通じゃないです。
この事件は、かなり有名になったので、孤軍奮闘のナワリヌイ氏に味方が付きます。「ベリングキャット(猫に鈴を付ける)」という団体で、彼らは国家の嘘を暴くのを目的とした組織です。今まで、シリアの行った生物兵器による住民虐殺や、ロシアが行ったマレーシア航空機の撃墜事件などの真実を暴いてきました。その団体が、彼の飲み物に毒を入れた暗殺者を突き止めるのですね。といっても、ピンポイントで相手を特定したわけではなく、FSBの関係したと思われるプロの殺し屋の5人のうちの誰かである事まで、特定します。すると、暗殺されかけた本人が、直接相手に電話するのですよ。この時、「調書を作成する為に、暗殺失敗について調べているFSBの上司」という体を装って、相手を騙します。
その5人のうちの一人のコンスタンチン・クドリアチェフという化け学が得意なスパイが、騙されてしまい供述に応じて犯人が暴露されます。服毒の方法についても、飲み物に混入したのでなく、彼の肌着に染み込ませて、皮膚から吸収させたとゲロっちゃうわけです。で、こういう事があった後に、自分の意思でロシアに帰るのですね。つまり、亡命しちゃったら、今までタイマン張ってきたスタイルを捨てる事になるので、相手が権力に隠れてコソコソやるなら、堂々と正面突破で、「大統領選挙に出馬する為に帰国してやるよ」という理由で帰るのです。で、しっかり捕まって、架空の罪で9年の懲役刑に服していたわけですが、上記の引用記事の通り、やはり殺されましたね。判っていて、相手の懐に丸腰で飛び込むという行動の気持ちは、私には一生理解できないでしょうねぇ。しかし、そういう人間も存在するのです。ただ、「自由だ権利だと喚くヤツは、それを守る覚悟を正面から実証してみせる義務がある。奴らの企みが証拠付きで明らかになった今、自分がロシアに丸腰で戻る事に意味がある」という事ではないかと思います。
ちなみに、この大ポカをやらかした、暗殺犯のクジリアチェフという男は、現在、行方不明で、生きていないだろうと言われています。』