薄毛用の内服薬、髪は増えてもED・性欲減退生じないわけ

薄毛用の内服薬、髪は増えてもED・性欲減退生じないわけ
カラダづくり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD01E2S0R00C24A2000000/

『ある程度の年齢になると、髪が薄くなっていく男性は多い。命にかかわらないとはいえ、人によっては深刻な悩みだろう。なぜ髪が薄くなるのか、医学的なエビデンスのある治療法にはどんなものがあるのかを知っておこう。

薄毛の原因は男性ホルモンの変性

頭頂部や前頭部の髪が薄くなる男性特有の薄毛を医学的には男性型脱毛症(AGA)と呼ぶ。20〜60代の6509人の男性を対象にした調査によると「抜け毛・薄毛を認識してい…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『20〜60代の6509人の男性を対象にした調査によると「抜け毛・薄毛を認識している」人の割合は29.0%。30代では2割程度だが年齢とともに増え、60歳を過ぎると4割を超える。

なぜ髪が薄くなっていくのか。「主な原因はテストステロン(主要な男性ホルモン)が毛根部にある5α還元酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変わること。

これが頭頂部や前頭部の髪に作用し、毛髪の成長期を短くして軟毛化させてしまう」と東京医科大学病院皮膚科で脱毛症外来を担当する内山真樹兼任講師は説明する。その結果、髪が太くならないうちに抜けて全体に薄くなっていく。

薄毛はアルコールやストレスより遺伝・体質

DHTは全ての人の体内で作られるが、髪が薄くなる人とならない人がいるのは感受性に個人差があるため。アルコールやストレスがいけないなどといわれるのは俗説だ。

東京メモリアルクリニック(東京・渋谷)の栁沢正之院長は「AGAの原因はDHTに対する感受性なので、遺伝・体質が全て。生活習慣の影響はほとんどない」と明言する。

日本皮膚科学会によるAGAのガイドラインは3種類の治療法を強く推奨している。

フィナステリド(商品名プロペシアなど)の内服、デュタステリド(同ザガーロなど)の内服、ミノキシジル(同リアップなど)の外用だ。

内服薬が効果を発揮するしくみ

医師が処方するフィナステリドとデュタステリドは5α還元酵素をブロックし、テストステロンがDHTに変わるのを防ぐ。

「5α還元酵素には1型と2型があり、フィナステリドは2型だけに、デュタステリドはどちらにも働く」(内山講師)。

髪に作用するのは主に2型だが、1型にも働くデュタステリドの方がいくらか効果が高いとされる。

フィナステリドを10年以上飲み続けた日本人男性532人では実に91.5%が改善。20代から髪が薄くなり始めた栁沢院長も「7〜8年フィナステリドを飲んでおり、効果を実感している」という。

テストステロンが減少する心配はない

これら5α還元酵素阻害薬を飲むとED(勃起障害)になると信じる人も少なくないが、副作用調査では性欲減退が0.2%、EDは0.1%と一般の有病率よりも低い。

「これらはテストステロンを下げるのではなく、DHTに変わるのを防ぐ薬。DHTが作られないことで、むしろテストステロンは上がるくらい」(栁沢院長)

一方、ミノキシジルは血管を拡張させ、髪の毛母細胞を増殖させる作用があり、成長期を長くする。

ドラッグストアでも購入できるが「AGA以外に円形脱毛症など他の脱毛症の可能性もあるので、一度は皮膚科を受診するべきだ」と内山講師は助言する。

AGAの治療に健康保険は適用されず、中には悪質なクリニックもある。「通常、フィナステリドで月5千〜1万円、デュタステリドで月7千〜1万2千円程度。それ以上は高すぎると思う」と栁沢院長は話す。

薬物療法以外では、後頭部などの自毛を髪が薄くなった部分に植える手術も広く行われている。

最近注目されているのは、1本の髪を数十〜数百本に培養してから植毛する再生医療。

薬で回復が不十分な重症者だけでなく、生まれつき毛髪が少ない人への治療も期待できる。東京メモリアルクリニックでは理化学研究所と共同で研究を進めており、近く臨床試験を始める予定だという。
 
(ライター 伊藤 和弘)

「NIKKEIプラス1」のX(旧Twitter)アカウントをチェック
【関連記事】

・あすか製薬系、毛髪や爪でストレス検査 ホルモン量測定
・脱毛と育毛を巡る物語 』