米国・イスラエル、深まる確執 40年来の首脳関係効かず

米国・イスラエル、深まる確執 40年来の首脳関係効かず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15DY10V10C24A2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の確執が深まっている。パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦を巡る立場の違いは双方の国内世論を映し、40年超の個人的な関係を持つ2人が折り合う余地を見いだせずにいる。強硬姿勢を貫けばイスラエルが地域で孤立し、米国が描く中東安定の構想に影を落とす。

「ラファには弱い立場の民間人がいるという基本的な問題で我々はイスラエルに強く圧力をかけて…

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『バイデン氏は11日、ネタニヤフ氏との電話協議で地上侵攻に懸念を伝えた。市民を保護するため「しっかりとした実行可能な計画」を策定できるまで侵攻すべきでないと要求した。

「実行可能な計画」とはホワイトハウスが8日に発表した覚書を指す。米国から武器支援を受けている100カ国以上を対象に、戦争法に沿って使用する「信頼できる保証」を国務省に提出するよう義務付けた。強硬なイスラエルを抑えようとする意図は明らかだ。

背景には国際社会の批判の高まりに加え、再選を狙うバイデン氏の支持基盤の存在がある。リベラル派の代表格であるバーニー・サンダース上院議員らは米国の武器使用などに条件をつけるべきだと求めていた。

8日にはアラブ系米国人が全米で2番目に多い中西部ミシガン州にホワイトハウスの高官らを派遣した。ジャンピエール大統領報道官はアラブ系住民と会い「懸念を聞きたかった。直接話すことが重要だ」と説明した。』

『米メディアによると、アラブ系の指導者は「恒久的な停戦を望んでいる。イスラエルに送る軍事援助に制限と条件をつけてほしい」と注文をつけた。

バイデン氏は素早かった。4日後の12日、最低6週間の戦闘休止を働きかけており、より長期的な停戦をめざすと表明した。ラファでの軍事作戦を巡っては「避難民の安全を確保する実行可能な計画なしに進めるべきではない」と語った。

アラブ系米国人協会によると、17年時点のアラブ系有権者は28万人ほど。トランプ前大統領が勝った16年大統領選では民主候補との票差は1万票あまりで、得票率は0.3ポイント差だった。バイデン氏が奪還した20年も票差は約15万票だった。

ミシガンは選挙のたびに勝利政党が変わる「スイングステート(揺れる州)」のひとつ。大統領選の結果を左右する激戦州での支持離れを食い止める思惑だ。』

『一方、イスラエルは強気だ。イランを除くアラブ諸国とイスラエルの関係正常化による中東安定化をめざす米国がハマス壊滅をめざすイスラエルへの支援をやめられない事情を見透かす。

イスラエルは米国が年間数十億ドルの軍事援助を実施する同盟国のひとつ。13日に米上院が可決した総額953億ドルの緊急予算案のうち、140億ドルは対イスラエル支援になる。』
『米国の助言に耳貸さず

イスラエルの国内世論もハマス掃討を支持する。イスラエル民主主義研究所が1月中旬に実施した世論調査で、ユダヤ系市民の6割がガザでの人質解放などに伴う停戦に反対。極右政党を連立に加えてかろうじて国会で過半数を握る政権構造も妥協できない要因だ。

ハマスの奇襲を許した政権の責任を問う声は強い。近く国政選挙があれば与党リクードの惨敗と下野は確実とみられている。汚職疑惑で公判中の身であるネタニヤフ氏は、退陣すれば追及を受ける可能性がある。

ゴードン・グレイ元米国務次官補(中東担当)は「ネタニヤフ氏はハマス排除と人質解放に政治生命を賭けている」と指摘。「数十年にわたる個人的関係があるバイデン氏の助言に耳を貸す余裕はない」と分析する。

バイデン氏が30代の上院議員だった当時から付き合いが始まったネタニヤフ氏との関係を口にする場面は多い。同氏の執務室には当時のバイデン氏と並ぶ写真がいまも飾ったままだという。

「(ネタニヤフ氏の愛称)ビビを愛しているが、あなたの言うことにはまったく賛成できない」。もろい国内基盤に根ざした2人の溝が埋まる余地は乏しい。』

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察 残念ながら、イスラエルという言葉は、今や世界分断の象徴にさえなってしまいましたね。

一方で、多くのキリスト・ユダヤ教徒にとっては、彼の地は父祖建国の約束の地という思いが根底に強固にあるでしょう。しかし他方で、パレスチナの人々や周辺諸国にとっては、イスラエルは紛うことなき征服者であり、そして多くの欧米諸国は共犯者に見える事実は、消すことはできません。

無辜の民間人多数を含む2万8000人をほぼ一方的に殺戮してもなお、テロリストの芽を摘むことが出来ないというなら、その手段の有効性じたいも厳しく問われます。分断の悪化を止めるため、西側諸国はその事実をイスラエルに、より強く突き付けるべき時期でしょう。

2024年2月16日 8:01』