世界の軍事費9%増329兆円 欧州・東アジア兵器増強

世界の軍事費9%増329兆円 欧州・東アジア兵器増強
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR130120T10C24A2000000/

『【ロンドン=江渕智弘、ソウル=甲原潤之介】英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)は13日、世界の軍事情勢を分析した「ミリタリー・バランス」の2024年版を公表した。23年の世界の軍事費は前年比9%増の2兆1999億ドル(約329兆円)と過去最大を更新した。米中対立とロシアのウクライナ侵攻に伴い、東アジアや欧州で抑止力確保に向けた兵器の増強が進む。

23年の世界の軍事費はウクライナ侵攻前の21…

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『23年の世界の軍事費はウクライナ侵攻前の21年と比べると15%増加した。IISSは24年も最大を更新するとみる。

世界の軍事費の4割を占める米国は9054億ドルで前年比8%増やした。ウクライナへの軍事支援やインフレの影響で膨らんだ。IISSは「ウクライナでの戦闘の長期化で弾薬を供給する米国の生産能力が逼迫し、増産に時間がかかる」と指摘する。

欧州に続き中東でも戦闘が起こり、米国は二正面の対応を強いられる。その間に中国や北朝鮮、ロシアが軍事力の強化を進めている。

中国が対米ミサイル拡充
世界第2位の軍事費を投じる中国はドルベースでの伸びは0.4%にとどまるものの、人民元換算で5%増やした。増強が目立つのがミサイルだ。IISSは中距離弾道ミサイル「DF26」の発射機数の推計値を「110以上」から「140以上」に上方修正した。

中国は西太平洋から米軍を排除する「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を推進する。日本の防衛省によると、DF26の射程は4000キロメートルで米領グアムの軍事基地や西太平洋で活動する米軍の空母を狙うことができる。

極超音速兵器を搭載できる新型の中距離弾「DF27」も実用化が進んでいるとの見方を示した。精密なミサイル攻撃に必要になる軍事衛星を2割ほど増やし、特に米軍などの動きの偵察に使う「ISR衛星」は7割増の92基とした。

北朝鮮の軍事費の水準は不明だが、IISSの推計では大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射機数が「10以上」から「17以上」に増加した。ロシアは東側の防衛にあたる太平洋艦隊の原子力潜水艦の保有数が3隻から4隻に増えた。

米国の増産余力が低下し中朝ロが軍備増強を続ける環境下で、東アジア各国・地域は自前の防衛力強化を急ぐ。台湾は23年の軍事費が19%の大幅増となった。日本は23年の4%増から24年は10%増と伸び率が高まると見積もる。韓国は23、24年に4%の増額が続く。

欧州でもウクライナ侵攻以降、防衛力強化に拍車がかかっている。

ロシアの23年の軍事費はドルベースで横ばいだが、ルーブル換算では25%の大幅増となった。国家予算の3割を軍事費につぎ込んだ。米欧の支援を受けて戦闘を続けるウクライナは8.7倍の308億ドルに増えた。22年の50位圏外から13位に浮上した。

ロシア、戦車2900両超を損失
IISSはロシアが戦闘で2900両超の主力戦車を失ったと推計する。旧式の数千両の退役戦車を投入して補っているとみられ、今後3年ほどは損失が続いても補充できる見通しという。

ウクライナを支える欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国も増額基調だ。隣国ポーランドは8割の大幅増となる。国防費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げると宣言したドイツは23年に20%増額した。フランスは11%、英国は2%増やした。

ドイツは迎撃ミサイル「アロー3」をイスラエルから調達することで合意した。ポーランドは米ロッキード・マーチンの高機動ロケット砲システム「ハイマース」の大量購入を決めた。英国は砲弾の在庫の積み増しを急いでいる。

長年の投資不足で低下していた欧州の防衛産業の生産能力は徐々に回復しつつある。ウクライナ支援の打ち切りやNATO加盟国の防衛義務を順守しない可能性に言及したトランプ前米大統領が復帰すれば、欧州にさらなる軍事費の増額圧力がかかる。

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突に伴い中東情勢も悪化している。国防費はサウジアラビアが6%、アラブ首長国連邦(UAE)が2%増額した。サウジやUAEは韓国から地対空ミサイル「天弓」など防衛用のシステムの購入を進めている。』