危機的なアウディーイウカ、ウクライナ軍は夏に何も準備してこなかった

危機的なアウディーイウカ、ウクライナ軍は夏に何も準備してこなかった
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/audi-ivka-in-crisis-the-ukrainian-military-has-not-prepared-anything-in-the-summer/

『Kyiv Independent紙は10日「アウディーイウカに対する攻撃は予想されていたのに十分準備されていなかったと兵士が不満を漏らしている」「ロシアは冬攻勢と防衛ラインの強化を同時に行ったが、ウクライナ軍は夏攻勢の間に何も準備してこなかった」と報じた。
参考:Fate of Avdiivka uncertain as Ukrainian forces defending it struggle with fortifications, resources

少なくと「アウディーイウカの防衛上の不備」はウクライナ軍自身が招いた結果

“タブリア作戦軍のリホワ報道官は「敵はアウディーイウカ北部で主要な作戦を展開し、主要物流ルートを遮断して同市の包囲を達成しようとしている」と述べ、ここで戦う多くの兵士らは「守るよう命じられた陣地は穴があいているだけ」「アウディーイウカに対するロシア軍の攻撃は予想されていたのに十分準備されていなかった」と不満を漏らしている”

出典:アウディーイウカ周辺の戦況 管理人作成(クリックで拡大可能)

“第47機械化旅団のオレクサンドル氏(対戦車小隊所属の兵士)も取材に対して「配備された防御陣地の塹壕は0.5m程の深さしかなく身を守るのに不十分だった」「ロシア軍の迫撃砲弾が直ぐ側に着弾して負傷した」「容赦ない敵の砲撃が続いたため治療を受けるまで10時間もかかった」「最終的に周辺を守っていた仲間が3人死亡した」「戦う準備が出来ているものの最後まで守り続けられるか分からない」と涙ながらに証言、この内容は「アウディーイウカ近郊に準備の整った防御陣地が殆どない」という他の証言と一致している”

“ロシア軍の激しい砲撃に晒されているアウディーイウカに今から何かを作るのは不可能で、取材に応じた数十人の兵士らは「前線から数キロ後方にある第2防衛ラインは建設途中だ」と明かした。ロシアは冬攻勢と防衛ラインの強化を同時に行ったが、ウクライナ軍は夏攻勢の間に何も準備してこなかった。兵士らは「今あるもので何とかするしかない」と呟いたが、これは途切れることがないロシア軍の攻撃から「適切に兵士を保護できない」という意味だ”

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

“国防省はKyiv Independent紙の取材に対して「2014年からアウディーイウカ近郊に防御施設を建設してきた」「2022年からは最もリスクの高い地域に指定してきた」と述べたものの、ゼレンスキー大統領は2023年11月に主要戦線における防衛強化作業の加速を指示、ようやく軍は民間の建設業者を動員して第2、第3の防衛ライン構築に乗り出したが、リスクの高い第1防衛ラインの建設は軍が担当している。

専門家によると第1防衛ラインにどれだけの時間を費やしても「ロシア軍の圧倒的な火力によって直ぐに陣地が変質してしまう」「戦闘が行われている最中に工兵部隊が出ていくのは自殺行為だ」と指摘した”

ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は「十分時間があったのにアウディーイウカに第2防衛ラインが準備されていない」「ウクライナ軍司令部の中にアウディーイウカが包囲されると予測したものは1人もいないのだろう」「セベロドネツク、リシチャンシク、バフムートでも適切な防御陣地がないと問題になっていた」と厳しく批判、ウクライナ兵士も「アウディーイウカに準備の整った防御陣地がない」と何度も証言しているため、少なくと「防衛上の不備」はウクライナ軍自身が招いた結果だろう。

出典:Командування Об’єднаних Сил ЗС України

さらにKyiv Independent紙はアウディーイウカ防衛の見通しや課題についても以下のように書いている。

“ロシア軍がアウディーイウカを包囲するまで数キロしか残されておらず、この都市を2022年2月から守ってきた兵士(第110機械化旅団のこと)でさえ「ロシア軍の能力を考えるとアウディーイウカの陥落は避けられそうもない」と認めており、外交政策研究所のロブ・リー氏も「アウディーイウカの側面が大きく崩壊し過ぎた」「兵站ルートが敵の火力に晒されると街の維持が困難になる」「もしくは街を維持するコストが跳ね上がる」「この状況が続けばロシア軍はアウディーイウカを占領することが出来るかもしれない」と言及”

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

“軍事アナリストのセルヒイ・フラブスキー氏(ウクライナ軍元大佐)も「ロシア軍は大きな損害を出しても結果をだしてきた」「敵はアウディーイウカ南部の工場地帯に前進するよう命じられ実行した」「ここで異次元の損失を被ったものの損害と目標達成は別問題だ」「敵は戦術的にアウディーイウカ入城を果たして前進を続けている」「どの時点でアウディーイウカ防衛が非現実的になるかを言うのは難しい」「ロシア軍があと1km~2km前進すると撤退の決断が下されるかもしれない」と述べた”

“アウディーイウカ南部を守っている第59機械化旅団のミコラ少佐も「ロシア軍は街を包囲することが出来ないと思う」「但し、ウクライナ軍は戦力を温存するため何れ撤退するだろう」と、第425独立突撃大隊のヴィタリー氏(ドローン操縦者)は「アウディーイウカに投入されているロシア軍兵士はバフムートで遭遇したワグナーの傭兵よりも経験豊富だ」「ウクライナ軍と同程度の訓練を受けていると感じた」と述べている”

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

“ヘルソン反攻時の砲弾割当量は戦車1両につき120発だったが第59機械化旅団の戦車兵は「戦車1両に15発から20発の砲弾しか供給されない(12月時点)」と、砲兵部隊の兵士も「40発の122mmロケット弾を一斉射撃できるのに現在は1度に1発しか発射できない」と証言した”

“最前線からの報告の中で最も深刻な問題は歩兵不足だ。Kyiv Independent紙の取材に応じた兵士らは「大損害を受けた歩兵部隊を補充するため砲兵部隊や兵站部門の兵士を歩兵部隊に異動させている」と証言しており、歩兵の基本的スキルを知らない兵士を塹壕に放り込むということは「今以上に多くの死傷者を出す」という意味だ”

出典:Генеральний штаб ЗСУ

“第59機械化旅団の砲兵部隊に所属する兵士は「元々46人いた砲兵部隊から15人が前線送りになった」「その殆どが持ち場に到着してから数日で戦死した」「歩兵のことを殆ど何もしらなかったのが原因だ」「今でも生き残っているのは4人だけ」と証言、このような非効率極まりない補充方法はバフムートでも報告されていたが、軍事アナリストのフラブスキー氏は「現在のウクライナ軍は非効率極まりない方法を選択しなければならない状況にある」と述べている”

個人的には「アウディーイウカの状況をウクライナメディアは積極的に報じていない(恐らくクリンキーと同じように報道規制がかかっている)」と思っており、Kyiv Independent紙が書いた内容も「本ブログが過去に何度も取り上げた話の範囲」なので驚くような内容は見当たらないが、この状況下でアウディーイウカの現状を英語で報じたこと自体に意味があるのだろう。

出典:Сухопутні війська ЗС України

因みに本記事を執筆したのはKyiv Independent紙の寺島朝海さんで、ドニエプル川左岸の作戦状況について書いた記事の中で「ウクライナはドニエプル川左岸に関する報道のほとんどを禁止している。しかし兵士達のこうした声を聞き、彼らの犠牲を記憶しなければならないと信じている」と述べたことがある。

関連記事:ウクライナメディアもドニエプル川左岸の作戦を批判、作戦状況は絶望的
関連記事:ロシア軍がアウディーイウカ包囲に近づく、市内の幹線道路もグレーゾーンに
関連記事:アウディーイウカのウクライナ軍は危機的状況、街が南北に分断される寸前
関連記事:東部戦線の後退が止まらない、ロシア軍がシヴェルシクとドネツク西郊外で前進
関連記事:ロシア軍がバフムートで攻勢再開、アウディーイウカも危機的状況が続く
関連記事:アウディーイウカ市街戦、市内北東部に侵入したロシア軍が足場を拡大
関連記事:アウディーイウカの戦い、兵站ルート遮断まであと1kmの位置にロシア軍が前進
関連記事:ロシア軍はアウディーイウカ市内の線路を越え、ウクライナ軍は何もかもが不足
関連記事:アウディーイウカの戦い、街に通じる道路が砲撃を受けて困難な状況
関連記事:ウクライナメディア、アウディーイウカの危機は第2防衛ラインの欠如が原因
関連記事:アウディーイウカの戦い、ウクライナ軍は2ヶ月ぶりに兵力補充を受ける
関連記事:アウディーイウカの戦い、ロシア軍が防衛ラインを突破して市内に侵入
関連記事:アウディーイウカは危機的状況、北東市内に侵入したロシア軍が足場を築く

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_info

Tweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it 

投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 78  』