【ガザ衝突の解決】パレスチナ国家樹立は米国の苦肉の策 イスラエルと中東諸国が受け入れられない背景

【ガザ衝突の解決】パレスチナ国家樹立は米国の苦肉の策 イスラエルと中東諸国が受け入れられない背景
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32927

『フィナンシャル・タイムズ紙の1月23日付社説‘Ending the cycles of violence in the Middle east’が、米国の後押しでアラブ諸国がイスラエルの承認と引き換えにパレスチナ国家の樹立を取引するという新たな中東紛争の解決案を用意しているが、この解決案の実現は困難であるが必要だとし、まずイスラエル側がパレスチナ国家の樹立の必要性を理解するべきである、と述べている。要旨は次の通り。 
 
イスラエルとハマスとの紛争が続く中、ガザ北部で爆発から立ち上る煙(ロイター/アフロ)

 アラブ諸国は、ガザを巡る衝突を終わらせ持続的な平和の基礎を築くプランを考えている。米国が支援するこのプランは、イスラエルに対してサウジアラビアを含めたアラブ、イスラム諸国との関係正常化という報酬を与える代わりにイスラエルは、パレスチナ国家の樹立のための不可逆的なコミットをするというものだが、実現するのは極めて困難だ。
 まず手始めに、イスラエルのハマスに対する攻撃を終わらせ、ハマスは人質を解放しなければならない。しかし、ハマスは戦い続けており、ネタニヤフ・イスラエル首相は、ハマスとの恒久的な停戦を拒否、ハマスの壊滅のみが人質を取り返しイスラエルの安全を保証する、と言い続けている。

 さらに、ネタニヤフは、二国家共存による解決案について話すことすら拒否している。去年の10月7日に起きたハマスによる攻撃を受け、ネタニヤフ以外のイスラエルの主な政治家達もパレスチナ国家樹立を支持することは無いであろう。

 イスラエル側の信頼を回復し、パレスチナとイスラエルの安全を保証するためには、パレスチナ指導部を根本的に立て直さないといけない。また、ハマスの軍事力はかなりのダメージを受けているが、引き続き二国家解決には反対し続けるだろう。』

『このような困難な状況の中でイスラエル側の考えをパレスチナ紛争の持続的な解決に変えさせることが極めて重要だ。サウジアラビア他の諸国がイスラエルとの関係を正常化するというのが(イスラエル側の態度を変える数少ない)インセンティブとなる。

 問題の解決のためには、11月の米国の大統領選挙の前に米国の継続的な、かつ、決意に満ちた外交的な努力が、イスラエルとパレスチナ双方の責任有る指導者とともに必要とされる。そして、米国と欧州諸国は、ニンジン(アラブ諸国のイスラエルとの国交樹立)だけでなく、ムチを振るってイスラエルの指導者達にパレスチナ国家の樹立は、彼らの利益となることを理解させなければならない。

 これは、ハマスと過激主義者達に対して対抗する唯一の方法であり、パレスチナ人が彼らの未来に希望を抱くことを守る方法である。イスラエルは、ハマスに対して大きな打撃を与えているが、その運動やイデオロギーを取り除くことは出来ない。それが出来るのはパレスチナ人だけだ。イスラエルの指導者達が現実を無視すれば、それは際限の無い暴力の連鎖を宣告することになる。

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論理的で正論であっても、非現実的

 ガザの衝突を終わらせるためにアラブ諸国がパレスチナ独立国家の樹立と引き換えにイスラエルを国家承認するというプランが報じられているが、このプランは、何十年もの間使い古されたプランだ。米国がこのプランを押しているとのことだが、ガザの衝突を止めさせるための米国の苦肉の策であろう。

 過去、このプランが日の目を見なかったのは、エルサレムの管理権の問題等が理由だが、現時点ではイスラエル側が二国家解決案を受け入れる心理的な状況にないので実現はなおさら困難であろう。

なお、2020年にアブラハム合意でバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)他がイスラエルとの国交を樹立した様に、現在、大多数のアラブ諸国はパレスチナ問題よりも自国の国益を優先し、イスラエルと経済的、技術的関係を持つことを望んでいる。

 このプランの主張は、要するに(1)パレスチナ問題の解決にはイスラエルとパレスチナ独立国家を共存させるしかない、(2)そのためには、殆ど全ての土地を支配しているイスラエルに圧力を掛けてパレスチナ独立国家の領土を譲らせなければならない、(3)イスラエルとパレスチナが二国家解決に向けた交渉をするためにはパレスチナ側の指導者の刷新が必要不可欠、というものだ。

 この主張は、論理的であり正論である。しかし、昨年10月のハマスによるイスラエル人の虐殺の後では二国家共存案を多くのイスラエル人が感情的に受け入れられないであろう。

 これはネタニヤフ首相だけの問題ではない。感情が高ぶっている間は正論であっても受け入れることができない。正論をイスラエル側が受け入れることが出来るようになるには、彼等が一時の興奮から醒め、冷静にならないと無理だろうが、それにはまだ時間が掛かるのではないか。』

『この社説は、11月の大統領選挙の前と書いているが、大統領選挙でトランプ前大統領が再選される可能性が高まっている。

彼が再選されれば、また、極端な親イスラエル政策を取るのは間違いなく、和平は遠のき暴力の連鎖が続こう。しかし、時間がなさ過ぎる。

パレスチナ側にも問題

 長年、このアラブ諸国のイスラエル承認とパレスチナ独立国家の樹立のパッケージが実現しなかった別の理由は、パレスチナ側の統治能力の問題である。

 イスラエルとしてもパレスチナ独立国家を認めた後、イスラエルの抹殺を主張するパレスチナ過激派がパレスチナ独立国家を拠点にイスラエルでテロを繰り返されては困る。

イスラエルの建国の理念は、600万人のユダヤ人が虐殺されたホロコーストの悲劇からユダヤ人が安心して暮らせるユダヤ人の国を持つというものであり、統治能力の無いパレスチナ独立国家は絶対に認められない。

 しかし、高齢のアッバース大統領のパレスチナ自治政府には統治能力が無に等しいというのは衆目の一致するところだ。イスラエルに圧力を掛ければ何とかなるというのは楽観的に過ぎると思われる。』