米陸軍がFARA中止を表明、ウクライナで航空偵察が根本的に変わった

米陸軍がFARA中止を表明、ウクライナで航空偵察が根本的に変わった
https://grandfleet.info/us-related/u-s-army-announces-cancellation-of-fara-fundamentally-changing-aerial-reconnaissance-in-ukraine/

『2024.02.9

米陸軍はOH-58の後継機プログラムとしてFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft:将来型攻撃偵察機)を進めていたが、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長は「ウクライナで航空偵察が根本的に変わったと学んだ」と述べてFARA中止を表明した。

参考:Army cancels FARA helicopter program, makes other cuts in major aviation shakeup
参考:US Army spent billions on a new helicopter that now will never fly

戦場認識力の確保を「高価で高性能なFARA」から「安価で数を揃えられる無人機」に変更するという意味

米陸軍は回転翼機(AH-64/OH-58/UH-60/CH-47など)の後継機開発をバラバラに行うのではなく、センサー、アビオニクス、エンジン等のコンポーネントを共通化=ファミリー化することでコスト削減や開発期間の短縮を狙い「FVL(Future Vertical Lift:将来型垂直離着陸機計画)プログラム」を立ち上げ、UH-60の後継機プログラム=FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft:将来型長距離強襲機)をV-280 ValorとDefiant-Xとが争っていた。

出典:Bell

FLRAAの勝者に選ばれたのはティルトローター技術を採用してきたV-280 Valorで、二重反転式ローターとプッシャープロペラを採用してきたDefiant-Xは敗れてしまったが、FLRAAとは別に退役したOH-58の後継機プログラムとしてFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft:将来型攻撃偵察機)も進められており、こちらには360 InvictusとRaider-Xが提案されていたものの、米陸軍は8日「FARAを中止する」と発表して注目を集めている。

米陸軍のジェームズ・レイニー大将は8日「我々は世界の出来事に注意を払い調整を続けている」「何故なら今夜、今週末にも戦争が起こる可能性があるからだ」と、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長も「我々は戦場での出来事、特にウクライナで航空偵察が根本的に変わったと学んだ」「様々な無人機システム、宇宙ベースのセンサーや武器は今まで以上にユビキタスな存在となった」「しかも安価で遠くまで到達することができる」と述べてFARAの中止を表明。

ブッシュ陸軍次官補も「今年の予算案にはFARA関連の資金が盛り込まれているため開発作業を継続することになると思うが、10月1日からの2025年会計年度でFARAの開発は終了することになる」と明かし、米陸軍はFARAが提供するはずだった能力取得を諦めていないものの「OH-58の後継機」を取得するつもりはなく、この資金は無人機分野に投資して航空偵察の能力を拡張する予定(具体的な計画の策定には時間がかかる)らしい。

つまり戦場認識力の確保を「高価で高性能なFARA」から「安価で数を揃えられる無人機」に変更するという意味だが、FARAを中止するためには議会の承認が必要なので「FARA中止が中止される可能性もある」と報じられている。

出典:public domain RQ-7B

因みにブッシュ陸軍次官補は「RQ-7BシャドーやRQ-11レイヴンを全て退役させる」「高価なUH-60Vの州兵配備を中止してUH-60Mに切り替える」「UH-60Vへのアップグレードを2025年度で終了する」「FARA中止で浮いた資金をCH-47F BlockIIの生産やFLRAAの開発に投資する」とも言及しており、特に興味深いのはRQ-7BとRQ-11の全廃(時期不明)だ。

米陸軍のRQ-7導入は2000年頃に開始され、何度かのバージョンアップやアップグレードを経て500機以上(正確な数は不明)のRQ-7B BlockIIを保有しているものの、同機の設計は雨天運用を想定しておらず、搭載されているEO/IRセンサーも雲で遮られた場所を観測できないなど制限が多く、米海兵隊はRQ-7をRQ-21で更新したが、米陸軍は雨天運用とセンサーを強化したBlockIIIを開発してBlockIIからのアップグレードに「6億ドルを投資する」と2021年に発表。

出典:Photo by David Hylton Increment2の最終選考に残ったGriffon AerospaceのValiant

出典:Photo by David Hylton Increment2の最終選考に残ったTextron SystemsのAerosonde

出典:Photo by David Hylton Increment2の最終選考に進めなかったSierra Nevada CorporationのVoly-T UAV

出典:Photo by David Hylton Increment2の最終選考に進めなかったNorthrop Grumman(Shield AI)のV-Bat

但し、RQ-7B BlockIIIは後継機選定までのギャップを埋める存在でしかなく、RQ-7Bの後継機選定はIncrement1とIncrement2に別れ、Increment1の勝者にはAeroVironmentの「Jump20」が選ばれ、Increment2の最終選考にはGriffon Aerospaceの「Valiant」とTextron Systemsの「Aerosonde」が残っており、戦術的な無人航空機運用に革命を起こすとまで評された「V-Bat」はIncrement2でも採用を勝ち取れなかった。

最終的にRQ-7Bの後継機がJump20になるのか、Increment2の勝者になるのか、Increment1とIncrement2の勝者を並行して調達するのかは不明だが、FARA中止によって無人機分野への投資が増えるためRQ-7Bの後継機調達は拡大・加速するだろう。

関連記事:米陸軍、UH-60の後継機にティルトローター機のV-280を選択
関連記事:米陸軍が進める将来型攻撃偵察機の競争試作は茶番、F-35の失敗から何も学んでない
関連記事:米陸軍が力を入れる戦場の認識力拡張、RQ-7Bの能力向上に600億円以上投資
関連記事:RQ-7B後継機選定の前哨戦にJump20が勝利、革命を起こすと評されたV-Batは敗退

※アイキャッチ画像の出典:Bell
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 19 

コメント

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    ラムゼイ
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

かつてのミサイル万能論にちなんで、無人機万能論が蔓延していませんかね?
妨害電波などの対ドローン対策が進み、有人機の開発リソースを削減したことが裏目に出なければいいですけど……。
26
        匿名
        2024年 2月 09日
        返信 引用 

    ウクライナでもロシア側の妨害装備が進んだ場所ではドローンが活躍できていないと記事がありましたよね。
    親露のイランに対して米国は対ドローン技術の向上を手伝ってきた歴史もありますしお金掛かりそう…。
    (そういやトルコのバイラクタルの続報が聞こえてこないけど活躍出来てるんだろうか。
    3
        qwerty
        2024年 2月 09日
        返信 引用 

    無人機万能論じゃなくて、無人機にも限界はあるが数を揃えるコストと人命喪失のリスクがある有人機のほうが(少なくとも攻撃偵察任務では)より限界が大きいと思ったんだろう。
    ドローンに関して対策が進んでも全ての前線で満遍なく常にドローンを撃ち落とせる状況は現実的に不可能だし、そもそもそんな状況を作れるくらいコストや労力を掛けれるなら尚更有人ヘリは使えない。
    15
    ras
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

開発中止決定だが今年は予算が降りてるから開発続行するってプロジェクト参加者どういう気持ちでやればよいのか…
18
    Whiskey Dick
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

V-280のようなティルトローター機だと対戦車型に転用できるのか疑問です。オスプレイですら武装の搭載に苦労している。「長い主翼に武装を吊り下げホバリングモードのみで使用する」若しくは「武装を全て胴体に格納する」のでしょうか。
長い主翼が存在することで狭い場所に着陸できない欠点もありそうです。
4
         
        2024年 2月 10日
        返信 引用 

    V-280は輸送専門
    なのでそういう使い方はしない
    5
    NA
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

コマンチくんまた生まれる前に中止されてる
13
    無印
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

あら~中止ですか
確かに最近の無人偵察機の爆発的普及を見てると、有人偵察ヘリ要るかな?
とは思ってましたが、ある意味陸自の判断を後押しする決定な気がします
カイオワの後継は「偵察ヘリ」ではなく、「小型で少人数を素早く運べる」空飛ぶハンヴィーみたいなヘリにした方が良かったんじゃないかな

頭切り替えてV-247来い!
高価そうだしダメかな…?
8
    幽霊
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

将来的にはアメリカ軍も攻撃ヘリ廃止に動くんだろうか?
個人的には攻撃ヘリが好きなので存続して欲しいけど。
9
        Easy
        2024年 2月 09日
        返信 引用 

    ウクライナ戦でロシア側のKa-52が大活躍してますから,まだしばらくの間はリストラは免れると思いますよ。
    ただまあ、敵が航空優勢も無いのに装甲車で突撃してくるというかなりのレアケースでしか活躍できそうにありませんが・・・
    8
            名無し
            2024年 2月 10日
            返信 引用 

        榴弾砲から、無人機/地上観測拠点/偵察ヘリよりレーザーポインティングした装甲車両宛にレーザー誘導砲弾をお届け、が、個人の感覚的には一番しっくり来るんだよなあ。
        ナゴルノ・カラバフでも、バイラクタルは後半戦では、搭載数が4発と限られるMAM滑空爆弾ではなく、榴弾砲の目標指示と着弾観測での攻撃支援に専念してたし。
         
        2024年 2月 10日
        返信 引用 

    攻撃ヘリは攻めの兵器じゃなくて守りの兵器
    待ち伏せして攻めて来た敵を返り討ちにするのが本来の戦術
    防空兵器で守られている要塞や陣地の防衛で本領を発揮する
    3
    765
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

まさかの陸自大勝利。ただしあっちは戦闘ヘリの陳腐化だけが理由だけじゃなく、欠陥や調達の失敗といった部分も大きいんだろうけど

個人的に思うのは、輸送ヘリの護衛は汎用ヘリの武装型で充分だと思うんですよね
戦闘ヘリに比べたら武装ヘリの能力は圧倒的に劣るだろうけど、そもそも戦闘ヘリの火力が必要になる戦場で果たして戦闘ヘリは生存できるのか?と言うのが大きな理由
20
        TKT
        2024年 2月 09日
        返信 引用 

    RQ-7B BlockIIを保有しているものの、同機の設計は雨天運用を想定しておらず、搭載されているEO/IRセンサーも雲で遮られた場所を観測できないなど制限が多く・・・・、ではとてもユビキタスな存在、つまりどこでも使えるとは言えません。

    ロシア軍の妨害電波を考慮すればなおさらです。

    汎用ヘリの武装型で十分というのは確かにもっともな意見で、どれほど高性能化させようとも、ヘリコプターはしょせんヘリコプターであり、武装したヒューイや、せいぜいハインドくらいで十分、それ以上高性能化させたところで、無敵にはなれないし、そんなに大差はないでしょう。

    トヨタの高機動車はロシア軍でも活躍していますが、軍用自動車なんかもあれくらいで十分で、あれ以上高性能化させても、かえって修理が難しくなって実用的でなくなるということかもしれません。自動運転自動車でも雪の日や雪道では危険と言われます。自動運転高機動車とかもかえって使いにくいかもしれません。
    2
        黒丸
        2024年 2月 09日
        返信 引用 

    輸送ヘリの護衛は汎用ヘリから操縦されるドローンになりそうな気がします。
    汎用ヘリが予定地に近づいたらドローンを射出、ドローンのデータで偵察しながら
    敵を見つけたらドローンで攻撃して無力化してその後に輸送ヘリが到着
    余ったドローンは回収して次の戦場へ
    汎用ヘリ搭載のドローンで対処できない規模なら、作戦失敗
    汎用ヘリは空母のような攻撃基地と情報集約・指揮の役割を果たすようになり
    ヘリボーン作戦は、空母部隊と強襲揚陸部隊による上陸作戦のような形になるのではないかと
    8
             
            2024年 2月 10日
            返信 引用 

        それってまんま
        アパッチガーディアンじゃん!

        既にあるよ
        4
    ユーリ
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

AH-64後継も有人機を選定せず無人機のみになるかどうかはともかく、
OH-58の後継は4度目の失敗であり流石に純減になりそうな気もします
ここまで続くのは軽量でリソースが小さいと大きな性能的向上が見込めないのが
問題なんですかね
    ido
    2024年 2月 09日
    返信 引用 

これMH6の後継どうするんでしょう…無いというわけには行かないでしょうし。個別開発になるんでしょうか。
1
    荒川の渡り鳥
    2024年 2月 10日
    返信 引用 

アメリカという国はどこかスゲー高性能なヘリコプターに夢があって(こう、エアーウルフ的な・・・・)、その受け皿として将来型攻撃偵察機という計画があったのでは? と考えてしまう。
(戦略的に必要だからじゃなくて)
何かしらの理由をつけて、「高性能な有人ヘリ」の開発は続くんじゃないかな・・・・・
(今度は「将来型長距離強襲攻撃偵察機」だ!   とか・・・・)

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