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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)2月10日(土曜日)
通巻第8125号 <前日発行>
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著者は元防衛省情報本部主任分析官。
ウクライナvsロシア戦いを「情報戦」に絞り込んで、とくにプロパガンダ、フェイクニュースを如何に見つけ出し、どう処理、対応するかに本書の焦点が当てられている。
いち早く入手した情報を正確に評価し、適切に処理する方法やフェイクニュースの認知と拡散原因の分析方法など、さすがに専門家の解析が光る。
戦争の勝敗は物理的なアングルから言えば損傷、犠牲、消耗、武器残など、目に見える。数字が物理的な状況を物語り、どちらが勝ったか、勝敗が明確に分かる。
ただし双方が大本営発表であり、西側のメディアはウクライナ贔屓であり、宇宙衛星や通信回線から物理的な証拠を積み上げていくしかない。
さて、目に見えないのが「情報戦」である。勝敗も、作戦効果も「数字化」ができないからよくわからない。
本書は後者「情報戦」をロシアvsウクライナ戦争に絞り込んで解明しつつ、フェイクニュースに欺されないための訓練、その情報処理のノウハウを具体例をあげて懇切に解説する。
フェイクニュースがSNS空間を飛び交っているが、そこには「いいね!戦争」と「ナラティブの戦い」があるという。
情報に「いいね」のボタンを押す。そのシェアによって次の状況が導かれる場合がある。イスラエルのガザ攻撃にしても「人質救出」「奇襲テロへの報復」から「ジェノサイド」へと世論の激変があった。
くわえて映像操作がなされた。別の残虐場面のフイルムを生成AIや、チャットGPTですぐさま加工し、世論の動向を左右する。
となると冷静かつ客観的な判断は難しい。このSNSという新しい情報空間が旧来のメディアの影響力を凌ぐ規模となった。したがって政治家からセレブ、芸能人から経済評論家など何億もの人々が参戦し、侃々諤々の議論をかわす「戦場」となった。
この新しい戦場で「情報戦」が激越に戦われているのである。
また「ナラティブの戦い」とは物語の原義を超えて、「人々に強い感情、共感を生み出す、真偽や価値判断が織り混ざった伝播性の強い通俗的な物語」を意味し、特徴は「シンプル」「共鳴」「目新しさ」であるという。
ロシアはゼレンスキーらを「ネオナチ」とするナラティブが効果上がらずと見るや、「テロリスト」と呼び方を変えた。
フェイク画像はTIKTOKに投稿され、世界中に拡散する。ユーザーは10億人だからニューヨークタイムズが逆立ちしても適わない。
実例として著者の樋口氏はウクライナのフェイク画像、爆撃に様相画面をあげる。
「これは国外で取られた映像に2020年にレバノンで起きた爆発事故の音声を重ねた」フェイクだった。
また本書はノルドストリーム爆破事件を克明に追及し、事故の発生から各国の対応、捜査の進展ぶり段階を追って解析すると同時に当時の国際情勢、とりわけ米英独の思惑、ロシアからのパイプラインで潤っていた西欧の経済事情、ロシアにとって爆破は何の利益にもならないことなどをチャートといくつかのポイントで通信簿をつけるように評価していく。すると、残る疑惑は米国とウクライナの仕業だったということになる。
セイモア・ハーシェは、CIAの仕業だとしたが、追跡調査が為されていない。それにしても、パイプラインの破壊でガス輸入を絶たれ、致命的打撃を喰らったはずのドイツが、なにも反応していないのは摩訶不可思議である。
複雑怪奇な情報戦争の実態を要領よく解題した本である。
◎◎み○☆や◎☆ざ○☆き◎☆◎ま○☆さ◎☆ひ◎◎ろ○☆