過去9度的中!トランプかバイデンか?注目の予測モデル
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『2024年1月11日
去る1984年から直近2020年まで過去9回にわたる米大統領選の結果すべてを的中させたことで知られるベテラン歴史学者のユニークな予測モデルが、今年11月5日に控えた選挙でも再び脚光を浴び始めている。
(Muhammad Farhad/Azure-Dragon/koyu/gettyimages)
選挙の決め手は演説や公約ではない
「American University」(在ワシントン)のアラン・リクトマン教授は去る1981年、地震予測に数理学的データを駆使したロシア人地質学者ウラジミール・ケリス・ボロク博士の協力を得て、「ホワイトハウスへの13のカギ(13 Keys to the White House)」と呼ばれる米大統領選当選者予測の〝ガイドライン〟を開発した。
リクトマン教授は開発に際し、1860年から1980年の120年間のすべての大統領選データと結果を詳細にわたり分析、勝敗の決め手となった要因を綿密に追跡した。
そしてその結果として、「有権者は実際は候補者の選挙期間中の演説や公約にさして影響されず、(再選めざす)現職大統領の実績いかんで票を投じる」、さらに「もし、現職大統領が出馬せず、同じ党から新たな候補者が指名された場合、在任中の失政が大きなマイナス要因となる」との結論を導き出した。
注目される「13のカギ」の具体的項目は以下の通りだ:
① 選挙年前年の中間選挙で与党は(4年前との比較で)下院議席増となった
② 大統領以外に与党内にまともな挑戦者がおらず、本格的予備選が行われない
③ 現職大統領が再選めざす選挙である
④ 与党候補以外に真っ向から挑戦できる第三政党または無党派候補がいない
⑤ 選挙期間中の国内経済状況は「堅調」を維持しているか「景気後退」を免れている
⑥ 長期的経済展望も力強い
⑦ 現政権下で顕著な国家政策の変更が行われた
⑧ 現政権下において長びく社会不安が存在しない
⑨ 現政権が直面する主だったスキャンダルが存在しない
⑩ 外交・軍事政策においても際立った失態はない
⑪ 外交・軍事面において大きな成功を収めた
⑫ 政権与党がカリスマ性のある、国民的英雄の候補を擁している
⑬ 野党候補者はカリスマ性もなく、国民的英雄でもない
リクトマン教授の理論によれば、上記「13のカギ」の各項目を、現職大統領候補(今年の場合、バイデン氏)にあてはめ、答えが「ノー」と判断される項目が6つ以上あれば敗退、5つ以下にとどまった場合は再選されると断じている。』
『バイデン政権の「成績」
そこで今、バイデン大統領の過去3年余りの実績を振り返りつつ、各項目の答えが「イエス」か「ノー」かについて、以下に筆者の主観も交え吟味していくことにする:
①2022年と18年の中間選挙における民主党の下院議席数を比較すると、18年には235議席で多数を制したが、22年では213議席に減らした。従って、答えは「ノー」
②今年の大統領選の民主党予備選でバイデン氏以外のまともな対立候補はおらず、答えは「イエス」
③バイデン大統領が再選をめざしており、答えは「イエス」
④与党候補(バイデン氏)に立ちはだかる有力な第三政党、無党派候補がおらず、答えは「イエス」
⑤直近経済状況は「好調」だが、今後11月にかけて「軟着陸」できるか「不況」に陥るかは予想できず、現段階では答えは「不明」
⑥長期的経済展望についても、専門家の意見が分かれるため、答えは「不明」
⑦バイデン政権発足以来、内政では、1兆2000億ドルと思い切った「インフラ投資拡大」法案を成立させ、コロナ不況からの脱却と景気回復に弾みをつけたほか、米国史上最大となる3690億ドル規模の太陽エネルギー、風力利用など気候変動関連技術投資に乗り出した。外交面ではアフガン戦争終結、トランプ前政権下で動揺した北大西洋条約機構(NATO)との関係修復など、大胆な政策変更を行った。答えは「イエス」
⑧深刻な人種間暴動、中南米諸国からの不法移民大規模流入による目立った社会不安はこれまでのところ存在せず、答えは「イエス」
⑨バイデン大統領は、次男が脱税、麻薬不法所持などの容疑で起訴対象とされているものの、同政権自体を巻き込んだ大きなスキャンダルは存在しない。答えは「イエス」
?バイデン政権はロシアによるウクライナ戦争、パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエル・ハマス間紛争の対応に苦慮しているものの、これまでのところ、米国の外交・安全保障政策上の大きな失態は露呈していない。答えは「イエス」
⑪バイデン政権は発足以来、同盟関係の再構築、前政権が脱退した「パリ協定」への復帰などの外交・安全保障面である程度の成果を挙げてきたものの、「顕著な成功」を収めたとは言い難い。答えは「ノー」
⑫与党候補バイデン氏は、大統領として比較的安定した政権運営を行っているが、カリスマ性があるとは言えず、国民的英雄ともみられていない。答えは「ノー」
⑬対立候補のトランプ氏は、国民的英雄からは程遠いが、強烈な性格の持ち主であり、良し悪しは別としてカリスマ性はあるといえるだろう。答えは「ノー」
以上の結果はもちろん、筆者自身の判断に基づくものであり、それぞれの項目について読者によっては異論があるだろう。
ただ、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルなど米国の有力紙のコラムニストの多くもほぼ同様の評価を下している。』
『「不明」の2項目が勝敗を分ける
その上で、改めて「13のカギ」の答えを総括すると、「イエス」が7項目、「ノー」が4項目、「不明」2項目という結果になる。
そして、もし、リクトマン理論が今年の大統領選挙においてもそのままあてはまるとすれば、バイデン大統領の再選はほぼ間違いなしとの結論が導き出される。
しかし、ここで問題となるのが、答えが現段階で「不明」のままとなっている2項目に関し、このまま11月の投票日前までに「イエス」か「ノー」のどちらかに変わるのか、あるいはそのまま投票日を迎えるのか、という点だ。
もし、「不明」が「ノー」に変われば、「ノー」は合わせて6項目となり、リクトマン教授の理論に従い、バイデン再選は消え、トランプ返り咲きという結果になる。
つまり、今年の大統領選挙は、直近および長期的経済状況次第、というわけだ。
その米国経済だが、2024年に限ってみた場合、さまざまな見方がある。
世界最大の銀行として知られる「J.P.Morgan Chase」のジンジャー・チャンブレス調査部長は、昨年12月22日付けの「2024年米国経済見通し」で以下のように指摘している:
1. 経済成長は減速し、2024年中に国内総生産(GDP)の伸びは0.7%程度となるが、失業率の急上昇を招くことなく物価を安定させるソフトランディングに向かう。住宅需要は改善する
2. 民間消費も前年と比べ減速するが、腰折れにはならならず、安定を維持する
3. 労働市場では求人難が幾分緩和に向かうとともに、企業による雇用も減少し始め、24年末までには失業率は4%半ばにまで増加が予想される。しかし、歴史的コンテキストからすれば、依然低水準にとどまる
4. 国内経済活動の足かせとなってきた半導体などの海外依存型サプライチェーン問題については、22年「半導体サイエンス法」および「インフレ抑制法」などの成立以来、国内生産重視型にシフトし、再編が始まっている
5. 他方で、米中摩擦の激化、ロシアによるウクライナ戦争、中東紛争などの地政学的リスクは依然存在する
これに対し、伝統ある経済問題シンクタンク「The Conference Board」は、昨年12月13日付けの「2024年米国経済予測」で、要旨次のように論じている:
「24年のGDPの伸びは前年の2.4%から0.9%に鈍化する。しかし、25年には好転し1.7%になると予測する。民間消費は24年第1四半期から第2四半期にかけて鈍化するが、同年後半にかけてインフレ率と金利が下がるにつれて、再び活発化するとみられる。
ベビーブーマー世代の現役引退などの要因による雇用ひっ迫状況は変わらず、経済成長の極度の悪化を回避したまま、年内には再びリバウンドを促すことになる。25年を展望すると、経済成長はコロナ危機以前のより安定的成長に回復し、インフレ率も2%近くにまで落ち着くものとみられる」』
『このように両者は、いくつかの関連数値に多少の違いがあるものの、米国経済が選挙年の24年に減速するとの見方では一致している。
投票行動を変えるのは国民の肌感覚
問題は、それが具体的に市民生活上、どの程度の「痛み」を伴うかであり、仮に景気がソフトランディングできたとした場合、全米有権者がそれを「悲観材料」ととらえるか、あるいは深刻な景気後退を避けられることで「安堵」の対象とするかによって、投票動向を左右することになるとみられる。
いずれにしても、結論として言えることは、24年米大統領選は、「13のカギ」予測モデルを参考にしたとしても、間違いなく接戦になるということだろう。』