ロシア・ウクライナ戦争における主導性をめぐる闘いでの軍事作戦の現代的デザインについて (ヴァレリー・ザルジニーによる見解)
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『 2024年2月5日 / 最終更新日時 : 2024年2月5日 軍治
ロシア・ウクライナ戦争における主導性をめぐる闘いでの軍事作戦の現代的デザインについて (ヴァレリー・ザルジニーによる見解)
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CNNのニュースで「ウクライナ大統領、軍総司令官を解任へ 数日中に発表と情報筋」との報道がなされた。この報道のきっかけは、ウクライナ軍の総司令官のザルジニー氏がCNNに寄稿した「ON THE MODERN DESIGN OF MILITARY OPERATIONS IN THE RUSSO-UKRAINIAN WAR:IN THE FIGHT FOR THE INITIATIVE」である。その論旨は、CNNの「Ukraine’s army chief: The design of war has changed(2024.2.1付)」で確認できる。
ウクライナ軍の総司令官のザルジニー氏は、昨年11月にもロシアとの戦争が、「戦いの形態(form of warfare)」の変化をもたらしいている趣旨の記事を英誌エコノミストへ寄稿している。この記事ついてMILTERMの「現代陣地戦とそれに勝つ方法-Valerii Zaluzhnyi (athenalab.org)」で紹介したところである。この寄稿記事ではロシアに視点を置いて戦いの形態の変化を分析していた。
この新たな寄稿記事は、前寄稿記事でも触れていた科学・技術の急激な変化に触れ、ウクライナ軍としてこの技術的変化に対応した装備や人材の重要性について述べているものである。
ウクライナ軍の技術に関わる装備等の変革の必要性を述べていることで、ゼレンスキー大統領への不満を述べているとの報道に繋げる向きがあるが、現実にロシアとの戦争を指導している総司令官の分析は、軍事的には大いに参考となるものと考える。(軍事)』
『ロシア・ウクライナ戦争における主導性をめぐる闘いでの軍事作戦の現代的デザインについて
ON THE MODERN DESIGN OF MILITARY OPERATIONS IN THE RUSSO-UKRAINIAN WAR:IN THE FIGHT FOR THE INITIATIVE
ヴァレリー・ザルジニーによる見解
Opinion by Valerii Zaluzhnyi
2024年2月1日
20世紀後半から21世紀初頭にかけての戦争の戦略的ビジョンの基礎となった第二次世界大戦の最後の会戦から、私たちはほぼ80年を隔てている。
航空、ミサイル、宇宙アセット、通信と電子戦の発展という兵器と装備の急速な発展にもかかわらず、勝利戦略は敵を撃破し、領土を占領または解放することだった。
同時に、それを達成するための形態や方法は、開発レベルや使用する兵器の数に直接依存していた。
もちろん、戦略、作戦術(operational art)、戦術の基礎知識は、軍事専門家のキャリア・アップに伴うものでなければならず、主に2つのタスクを解決する役割を果たす。
最初のものはおそらく二次的なものだろう。それは、敵対行為の開始時に起こるであろう戦争の状況を予測するというタスクで、来るべき戦争のために指揮官を直接訓練することである。
このような超難題のタスクを解決するのは、あなたが機会に立ち上がり敵に相応しい反撃を与え、敵の打撃力を低下させ、主導性を握るための時間を稼ぐことである。
この全過程には大きなリスクと疑念が伴うが、それは限られた資源しかない小部隊にまともな抵抗を与えるチャンスが一度しかないことに起因する。
第二のタスクは、私の考えでは、それは主要なタスクである。
それは、技術進歩の発展、その結果としての兵器や装備の急速な発展、世界と国家自体の政治状況、経済状況などに関連する、戦争によって提示された要求を時間内に見つけることである。
したがって、それぞれの戦争には、新たな状況下で勝利への道(the way to the Victory)を見出すことができるような、独自の戦略と論理だけを見つける必要がある。
私たち自身の特殊な戦略について言えば、作戦の準備と実施の過程を記述した既存のドクトリンを完全に否定することは決してできない。ただ、それらは常に変化し、新しい内容で埋め尽くされていることを認識しなければならない。
作戦術(operational art)の原則は変わらない。したがって、今日の要求を考慮に入れれば、われわれの最も重要なタスクは、勝利を達成するために国防軍を使用する形態と方法について新しい視点を採用することである。
軍隊の戦略、形態、および運用方法の変化の主な理由は、言うまでもなく、兵器と装備、特に無人システムの開発であり、その使用が普及し、幅広いタスクを実行できるようになり、それは常に成長している。
したがって、無人システムは、他の先進的なタイプの兵器と同様に、陣地形態の軍事作戦から撤退するためのほぼ唯一のツールであるが、これは一連の理由からウクライナにとって時間の点で有益ではない。
同時に、現在の状況では、国防軍の新しい運用形態を模索する決定に間違いなく影響を与える多くの要因が依然として存在する。
その一部を以下に示す。
▪ウクライナ周辺の不安定な政治情勢は軍事支援の削減につながる。
▪ロシアがイスラエルとイエメンの例に倣い、多くの紛争を引き起こし、主要パートナーのウクライナ支援の妨げになる可能性が高い。
▪ウクライナにおける戦闘の激化と、世界的な推進薬不足を背景とした迅速な生産の不可能さにより、パートナーの砲兵および防空用のミサイルおよび弾薬の在庫が枯渇している。
▪制裁政策の有効性が不十分であり、その結果、ロシアとそのパートナー諸国における軍産複合体の能力が発揮され、少なくとも陣地消耗戦争の遂行に成功することになる。
▪敵の人的資源を動員する上で大きな優位性があり、ウクライナの国家機関は不人気な手段を使わずに国防軍の人員配置を改善することができない。
▪「我が国の軍産複合体を規制する規制枠組みの不完全性と、この産業の部分的な独占は、結果として国内弾薬の生産に困難をもたらし、その結果、ウクライナの同盟国への供給依存を深めている。
▪同盟国が支援の優先順位を決定する際の複雑さの結果として、このような規模の武力闘争のさらなる本質が不確実性。
▪特に2022年から2023年にかけてのウクライナ軍による戦闘作戦の経験は独特であり、今もなお我が国の遺産として残っているだけであるため、勝利への道を常に模索しており、戦闘作戦の結果が依存する既存の能力の監査を常に実施し、敵よりも優位性を獲得する方法を探すことを余儀なくされている。
さらに、敵対行為の結果のコンセプトを使用して、敵がさらなる侵略を拒否する条件を理解する。そして、そのような条件を作り出すことが、ウクライナ国軍の兵器庫で利用可能な能力の効果的な使用として知覚されている。
上述のことを考慮し、また今日の戦争の状況に応じて、おそらく優位性を獲得する主な選択肢は、急速に発展している比較的安価で近代的で非常に効果的なアセットの全兵器を使いこなすことである。
それは、科学的、技術的、技術的、戦術的な会戦に勝つことを可能にする新技術の開発の進歩の優位性を利用する試みであり、無条件の勝利だけでなく、ウクライナと私たちのパートナーによる資源の節約と保存にもつながる。
敵対行為の経過にポジティブな影響を与えるために、無人システムやその他の高度な技術システムの能力を大幅に向上させる必要性は、結果として、新たな形態や使用方法の探求を促進し、ひいては、確実に国軍とウクライナ国防軍の他の構成要素の両方に影響を与えることになるだろう。
以下の理由により、無人航空機システム(UAS)およびその他の最新システムが戦闘作戦の効率に及ぼす影響を高めることが可能である。
▪指揮官の状況認識が継続的に向上し、昼夜を問わず、あらゆる気象条件において作戦地域においてリアル・タイムで状況認識を維持できる可能性。
▪火力と打撃をリアル・タイムで24時間体制で保守する。
▪打撃に関するインテリジェンスをリアルタイムで提供する。
▪会戦地域の前端と縦深の両方で、敵とそのターゲトに対して正確かつ高精度の打撃を与える。
したがって、それは、軍事(戦闘)作戦の空間的・時間的指標に基づくだけでなく、作戦目的の実現に貢献する決定的条件の創出と適切な効果の達成を主眼とする、既存の技術能力を基盤とする新たな作戦のデザインを生み出す必要がある。
戦闘作戦の経験と武力闘争の発展予測に基づくと、そのような決定的条件は以下の通りである。
▪空中において、特に効果的な交戦、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)、兵站を提供する高度において、絶対的優越を達成すること。
▪敵の攻勢作戦・防勢作戦遂行の能力を奪うこと。
▪自部隊の移動性(mobility)を高め、敵部隊の移動性(mobility)を完全に制限すること。
▪特定の戦線に安全にアクセスし、地形の重要な地域を統制すること。
▪敵の失われた陣地を回復し、取組みを強化する能力を奪うこと。
一見したところ、これらは絶対的に保守的で古典的な条件であり、その達成には長年の形態と方法が役立つ。しかし、これは一見しただけで、それを達成する手段はすでに変化しており、古いアセットは、残念ながら、ウクライナ軍にとってはますます夢であり、それを達成する方法は先ず第一に変化している。
提示された「明確な条件を作り出す」という考え方に従えば、もちろん、それを達成する過程は、いくつかの作戦的タスクを解決することによって確実にされ、それぞれの作戦タスクを解決する間に、関係するアセットによって必要な効果が生み出される。
そして、技術的な優越を犠牲にしてでも、テンプレートとは異なる、少なくとも現在のドクトリンに沿った行動を取るべきなのは彼らなのだ。
必要な効果を生み出すことは、間違いなく、今日すでに運用システムの根本的な変化につながっている。
従って、必要な効果を生み出すための条件を実装するには、今日、以下のことを別々に考える必要がある。
▪戦場をデジタル化した作戦(digital field creation operation)
▪無線電子状況統制作戦。
▪無人航空機とサイバー・アセットの複合攻撃作戦。
▪兵站作戦。
リストに上げたすべての作戦は、すでに習得され、発展している。これらは単一のコンセプトと計画に従って遂行され、調整され、相互に関連しているが、内容は異なっている。
効果を上げるための直接作戦の遂行については、おそらくその内容において、基本的には防御的、攻撃的なものになると思われるが、その実行方法については、以下のようなものが考えられる。
▪敵の経済能力を低下させる作戦。
▪完全な孤立と消耗の作戦。
▪ロボットによる捜索と打撃作戦。
▪ロボットによる危機地域の統制した作戦。
▪攻撃アセットによる心理作戦。
▪防御技術による非接触作戦。
この作戦リストは、アセットそのものの発展とともに着実に増えていくだろう、もちろん、ドクトリン文書の変更や、敵対行為の準備と遂行に関するまったく新しい哲学の形成を促すことになるだろう。
新しい独立した作戦の出現やそれらの組み合わせは、新しい組織表を作る必要性につながる。
これらはすべて、国家機関が変化に柔軟かつ迅速に対応することで可能になる。
このように、古典的な防御作戦、攻撃作戦、安定化作戦の神髄と内容には変化が生じており、その計画策定と実施のアプローチは通常、線形的でテンプレートに基づいたものだった。
同時に、これらの作戦は、パートナーの見解に従うことも含め、本質的に組み合わされた。これに伴い、武力闘争の高い技術のアセットに起因する新たな状況におけるネットワーク中心戦(network-centric warfare)という古くから知られているコンセプトは、部隊の作戦を通じてではなく、適切な能力の助けを借りて効果を生み出し、決定的条件を達成することを通じて、その解釈を見出す。
さらに、戦闘作戦の有効性を向上させるだけでなく、ウクライナ国防軍の戦闘作戦の組織と遂行における多くの重要な問題を解決することができるのが、無人化されたその他の先端技術システムであることにも留意したい。
▪敵対行為を非接触で行う度合いを高め、その結果、これらのアセットの遠隔操作の可能性に起因する損失のレベルを下げる。
▪戦闘任務における伝統的兵器の関与の度合いを減らす。
▪重軍事装備の使用を制限して敵対行為の遂行を確実にする。
▪海軍艦艇が不足しているにもかかわらず、敵の水上部隊、潜水部隊とその沿岸インフラを、高い効率と最小限の人的リスクで、海上の戦域のほぼ全縦深にわたって撃破する。
▪作戦や生産に高価なミサイルや有人航空機を使用することなく、重要なインフラ施設や重要な通信手段に対して大規模な突然の打撃を加える。
この優位性のリストは不完全なものであり、間違いなく変化し、効果的な運用の幅を広げていくだろう。もちろん戦場では、敵は防護の方法を探し、主導性を握ろうとする。そのため、無人機を含む攻撃システムの能力向上とともに、防護システムや対抗システムの向上が極めて必要である。
したがって、新しい形態と方法を習得するために、国防軍は技術的再軍備のまったく新しい国家システムを構築する必要がある。
▪開発と科学的支援。
▪生産と整備。
▪要員の訓練と戦闘経験の一般化。
▪部隊の柔軟な資金調達。
▪兵站。
ほとんどの場合、将来的にはそれぞれのサブ・システムで別々の研究と開発が必要になるだろうが、今言えることは、システムは全体的であるべきであり、同時に関与できる主体に対しても、資金調達や生産の変更に対しても柔軟であるべきだということだ。
時間がかかるのは間違いないが、決定的なのはその時間だ。
すでに存在する運用システム、発見された技術的解決策、すでに確立された指揮・統制システム、そして得られた経験を考慮し、また現代の状況におけるパートナーの見解によれば、必要な生産量を備えたこのようなシステムの構築には、5ヶ月を要する。
この用語は、適切な組織表を作成し、その人員配置と装備、要員訓練、資源支援、必要なインフラストラクチャーの作成、兵站、ドクトリン上の枠組みを開発する必要があるためである。
このことを念頭に置いて、2024年、私たちは主な取り組みに集中する必要がある。
▪国防軍に高度技術のアセットを提供するシステムの作成。
▪制約を考慮したうえで、敵対行為の準備と遂行に関する新たな哲学を導入すること。
▪その結果、可能な限り短期間で、敵対行為の遂行のための新たな能力を習得する。
つまり、現代の状況では、ウクライナ国軍は、国防軍の他の構成要素とともに、敵を撃滅するだけでなく、国家の存続そのものを確実にする能力を有しているという事実について話しているのである。したがって、新たな戦争の条件によって提供される機会を活用し、最新の戦闘能力を最大限に蓄積することが極めて重要である。これにより、少ない資源で敵に最大の損害を与え、敵の侵略を止め、将来的に敵からウクライナを守ることができる。
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