「トランプ再選」は日本経済にとってリスクだらけ?専門家は「1期目より過激化する恐れ」「米国株投資は……」

「トランプ再選」は日本経済にとってリスクだらけ?専門家は「1期目より過激化する恐れ」「米国株投資は……」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3288ce629518d31be452498026e72a185733a6de

『11月の米大統領選に向けて、トランプ氏が共和党の候補に指名されることが濃厚になってきた。何かと強権的な姿勢が目立つ同氏が再選となると、日本経済にはどのような影響が及ぶのだろうか。

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 共和党の候補者選びの第2戦、ニューハンプシャー州の予備選挙もトランプ氏が勝利したことで、大統領選はバイデン氏とトランプ氏の一騎打ちになると見込まれている。いよいよ、トランプ政権の復活が現実味を帯びてきた。

「実際にトランプ氏が大統領に返り咲いたら、日本経済にも様々なリスクが生じてくると予想されます」

 そう指摘するのは、ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏。これまでのトランプ氏の言動から、「第二次トランプ政権」が日本経済に及ぼす影響を以下のように分析する。

米国のインフレが日本にも影響

「まずはトランプ氏の通商における姿勢です。再選したら『輸入品には原則10%の関税をかける』という方針を掲げています。しかし、これが実現すれば、日本の輸出産業にとって打撃になることは間違いないでしょう。アメリカへの輸出品は、自動車や機械設備などすそ野の広い製品も多いので、その影響は小さくありません」

 アメリカ側としても、輸入品の価格が上がることによって米国内でのインフレリスクが高まるというが、

「せっかく落ち着きつつあったのにまたインフレに振れるとなると、FRBはさらなる利上げに踏み切るでしょうから、米国経済にとって強い逆風になります。また、日米の金利差が一層広がり、今以上に過度な円安状態に陥る可能性がありますから、日本国内での輸入品価格も高騰し、消費に悪影響を及ぼしてしまう。賃上げの追い付かない物価上昇が、より深刻になる恐れもあるということです」

 日本にも悪影響を及ぼしかねないアメリカのインフレ。トランプ大統領誕生となれば、あの“ライバル国”との向き合い方にもそのリスクが潜むようで、

「関税という意味では、特に中国に対しては厳しい措置をとると予想され、すでに『中国の最恵国待遇を撤廃する』という意思も表明しています。中国に進出している日本企業は直接的な影響を被るでしょうし、またアメリカにとって中国は日本以上の貿易相手国ですから、やはり米国内ではいっそうインフレリスクが高まると言わざるを得ません。さらに、中国との間で関税の引き上げ合戦が始まり、再び“米中貿易戦争”の体を成してくる可能性もあります。そうなれば、日本どころか世界経済全体が大きく影響を受ける事態が予測されます」』

『米国株に投資している人は……

 米国内における政策も、日本経済に大きく影響するという。

「トランプ氏は、以前から減税を強く掲げています。例えば2017年に成立したいわゆる『トランプ減税』のうち、25年に失効予定の所得減税は、恒久化を計画しているといわれています。これによって消費が刺激され、インフレが再加速する可能性があります。また、トランプ氏の掲げる移民の抑制も人手不足を通じてインフレ要因になり得ますから、やはり日本にとってはリスクになりえるでしょう」

 税率が引き下げられるのであれば、米国株価にはポジティブに働くということなのだろうか。

「減税策によって株価が上昇する可能性もあります。ただし、結局はアメリカ経済が失速するかどうかにかかっているので、不確実な部分が大きい。日本でも米国株への投資熱が高まっていますが、NISAを活用している方なら、基本的には長期保有を前提としているものでしょうから、トランプ氏の任期4年間に一喜一憂する必要はないのではないかと思います」

 一方、金融政策に目を向けると、円安ではなく円高に振れてしまう可能性まである、と続ける。

「“利上げ嫌い”“ドル高嫌い”で知られるトランプ氏ですから、金融緩和の方針を打ち出し、FRBに対して急ピッチな利下げを要求する可能性もあるといえます。その場合は、急激な円高になるリスクが生じますので、日本からの輸出にはネガティブな影響が出てしまいます。賃上げの機運にも水を差しかねません。近年は大幅な円安が進んできましたので、マイルドな円高であればむしろ望ましいとの見方もありますが、これが急激な円高となると、悪影響が強く出てきてしまうわけです」

 予測不能なところが、トランプ大統領の真骨頂か。その意味では、「環境政策」からも目は離せない。

「『地球温暖化』という事象そのものに疑義を唱えています。再びパリ協定を離脱する公算が大きいと目されていますが、中国に次ぐCO2排出国であるアメリカが抜けるとなると、世界的に脱炭素の機運が後退しかねませんし、日本も含めて、アメリカ以外の国の環境負担が増すことも考えられます。脱炭素ビジネスにシフトしてきた企業は影響を免れないでしょう。また、ガソリン車に比べて製造工程が少ないEVに対しても、雇用維持の観点からトランプ氏は反対の立場を貫いています。もし再選となれば、米国でEV製造のための投資をしていた日本のメーカーにとっては、はしごを外される形になり、投資の回収が大幅に遅れてしまうということが考えられます」』

『1期よりも過激に

 通商に外交と、こうまで強硬姿勢が目立つトランプ氏に対しては、日本政府としても難しい向き合い方が求められそうだ。

「前政権のときは、安倍晋三元総理との良好な人間関係が、日本に対する過激な対応を和らげる役割を果たしていたと思われます。もし再選されれば、来年1月20日からトランプ政権が再始動することになりますが、そのときの首相が誰になるのか、どんな関係性を築けるのかという点に、日本経済は大きく左右されることになるでしょう」

 1期目以上に過激な行動に出る可能性もあると、上野氏は見る。

「前政権時代もすべての公約を実行したわけではありませんから、先に挙げたすべてのリスクが現実になるわけではないと思います。

しかし、アメリカの大統領は2期までと合衆国憲法で定められているので、次の選挙を見据えていた1期目とは違って、『どうせ最後だから』と、より過激な政策を打ち出すことも十分考えられます。

1期目では気に入らない側近を次々に解任していましたから、今回も“イエスマン”だけで周りを固めていくことになれば、より強権性を発揮する可能性は高まるといえます。

一方で、同時に行われる議会選の結果、民主党が上下院のいずれかで過半を獲得すれば、トランプ氏の政策実行力が制約されることになります」

デイリー新潮編集部

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