ガザ情勢下で進むイランの核開発 米国との交渉の今

ガザ情勢下で進むイランの核開発 米国との交渉の今
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32733

 ※ なるほど…。

 ※ 表(おもて)の話しでは、イランの息のかかった「武装勢力」による攻撃に脚光が当たっているが、水面下では、核開発⇔制裁の緩和…が、同時併行で交渉されているわけだな…。

『ウォールストリート・ジャーナル紙の2023年12月26日付け解説記事‘Iran adds to Pressure on U.S. With Nuclear Program Acceleration’が、イランの核開発の現状とそれを巡る米イラン間の緊張の高まりを報じている。主要点は次の通り。
(grynold/gettyimages)

 イランは、いったん減速させた濃縮ウランの生産速度を再び3倍に増加させた。これは米イラン間の緊張をより高め、米国とイランの間の静かな外交努力の崩壊を意味する。

 23年12月24日に国際原子力機関(IAEA)は、イランが2カ所の核施設でのウラン濃縮を再び3倍に加速させたと報告した。

この生産ペースの加速によりイランは、再び60%濃度の濃縮ウランを月々9キロ生産出来ることになる。

イランは2週間以内に60%の濃縮ウランを兵器級(90%)に濃縮することが可能であり、既に核爆弾3個分に十分な(60%の)濃縮ウランを保有していると言われる。

 米欧の政府関係者は、イランに対して、仮にイランが兵器級の濃縮ウランを生産するならば、イランに対する経済的、外交的な圧力を急激に高めるだろうと警告している。さらに、イスラエルは、濃度90%の濃縮ウランを生産すれば、軍事行動に出ると警告している。

 23年春、オマーンで米国とイランの間で何回か間接交渉が行われ、イラン側と米側は段階的な緊張緩和策を議論してきた。その結果、イランは、いったん、核開発を抑制した。
米側は、その見返りに米国が凍結したイランの数十億ドル分の資産の凍結解除、イラン産原油の禁輸を緩めることを示唆し、イランの核開発問題についての協議を再開することを期待した。

 10月中旬に次の間接交渉が予定されていたが、10月7日のハマスの攻撃をイランが支援したため米側は交渉をキャンセルした。

2万人以上の死者が生じているガザの紛争で中東地域のボラティリティが高まっている時にイランが核開発を加速したことは、イランと米国が衝突する潜在的可能性を一層高めている。

 イラクとシリアに駐留する米軍に対するイランの代理勢力による攻撃が続いている一方で、米国はヒズボラに対する抑止を強化するために2つの空母打撃群と原子力潜水艦を地中海東部に派遣している。

さらに、イランが支援するイエメンのフーシ派による商船への攻撃が拡大するのに対して紅海に任務部隊を編成し、空母アイゼンハワー打撃群をイエメン沖合のアデン湾に派遣した。

 米政府関係者によれば、イランの中東域内外における広汎な挑発に対して、バイデン政権はイランに対してどのようなアプローチをするべきかについてより激しい議論を行っている。イランの広汎な代理勢力を利用する能力は前例のない程であり、対処しなければならないという意見が以前より強くなっている由である。

*   *   *』

『昨年の10月に起きたハマスによるイスラエル奇襲攻撃後、国際的な中東への関心はガザ情勢に集中しているが、イランの核開発問題も看過出来ない問題であり、この記事はイランの核開発問題の現状について教えてくれている。

 イランがいったん減速させた濃縮ウランの生産速度を再び3倍に増加させたことは、ガザでの衝突を契機とするイランの代理勢力を用いた挑発が高まる中で米・イラン間の緊張をより高めるものである。さらに、このことは、米国とイランの間の静かな外交努力の崩壊を意味する。その結果、バイデン政権内では、イランに対して外交的解決よりもより厳しい対応するべきだという意見が強まっているようだ。

 昨年の春、オマーンで米国とイランが秘密の交渉を行っていることが暴露されたが、その合意内容は、米国は、拘束米国人の解放とその見返りに韓国で凍結されていたイランの原油代金の凍結解除、イランの原油の輸出に対する取り締まりを緩め、イラン側は濃度60%のウラン濃縮の速度を落とす、ということであった。しかし、10月のハマスの攻撃で、米国は再交渉を中止し、資金を再凍結した。

 イラン側もウラン濃縮のスピードを元に戻した。したがって、解説記事も指摘する通り、米国の望んだ外交努力は失敗したと言わざるを得ないだろう。

 そもそも、この交渉は、双方が問題の抜本的解決を目指したのでは無く、「時間稼ぎ」だっただろう。

米側は、イランの核開発をスピード・ダウンさせ、かつ、イスラエルとサウジアラビアの国交樹立を急いだ様に湾岸アラブ産油国の安全保障枠組みにイスラエルを加えるための時間稼ぎであり、イラン側は、既に核爆弾3個分相当の濃縮ウランを得ているので、恐らく、起爆装置の開発のための時間稼ぎだったのではないか。

紅海での〝衝突〟がおよぼす影響

 上記の記事は米政府関係者のブリーフに基づくものと思われるが、米政府内部で少なくとも代理勢力を通じた域内情勢への干渉に対して外交的解決以外の方法を考えるべきであるとの声が強まっているという。フーシ派の紅海での度重なる商船攻撃に対して米国が多国籍軍を結成したことは、そうした対処の一つとして挙げられよう。

 これは明らかに、フーシ派の船舶攻撃拠点に対して武力行使を行う前触れのように思われたが、果たして、1月12日、フーシ派の拠点を空爆し、さらに、米軍は、翌13日、再度空爆を行った。恐らく、フーシ派は怯まず、引き続き船舶攻撃を続けようとするだろう。
 気を付けなければいけないのは、船舶攻撃が成果を上げない場合、再度、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)への攻撃を再開する可能性である。その場合、ペルシャ湾情勢は急激に緊張し、油価は高騰しよう。』