寒波の死者90人超える 航空便7万便に影響

米寒波の死者90人超える 航空便7万便に影響
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22CP70S4A120C2000000/

『【ニューヨーク=西邨紘子】1月半ばから全米を直撃した大寒波の余波が続いている。気温がマイナス40度を下回った地域もあり、米メディアは、22日までに凍死や交通事故など寒波による死者が少なくとも95人に達したと報じた。凍結や積雪により、全米各地で交通網は混乱している。

航空情報サイトのフライトアウェアによると、寒波が本格化した12日から21日までに米国発着便の約3割に当たる7万4000便が遅延し、1万4900便が欠航した。23日も午後の時点で米国発着便の約2700便が遅延、1200便が欠航している。

米東部ニューヨーク州のフレデリックダグラス・グレーター・ロチェスター国際空港では18日、着陸したアメリカン航空の航空機が誘導路から滑り落ちる事故が発生した。乗客53人は全員無事だった。14日には、中西部イリノイ州シカゴのオヘア国際空港で成田行き全日空機とデルタ航空機が接触する事故も起きていた。

寒さが一段落した22日以降も南部から北東部にかけて荒れ模様の天気が続く見通しで、空の便の正常化には時間がかかりそうだ。

北極気団の南下による大寒波は、カナダ国境からメキシコ湾岸沿いの各州に達した。米国国立気象局は14日、米人口の3分の1に当たる1億1000万人の居住地域に寒冷警報を発令し、低体温症の発生に注意を呼びかけている。

カナダ国境沿いのモンタナ州ボーズマンでは13日、過去最低気温のマイナス45度を記録した。シカゴ周辺では、地元メディアが鉄道管理業者が運行を続けるため線路に火を放ち、氷を溶かす様子を報じた。

低温でバッテリー充電が機能せず、シカゴ市外の電気自動車(EV)充電所では立ち往生する車両が多発したもようだ。インディアナ州ミシガン・シティでは19日、1メートル近い積雪を記録。市当局が20日にかけて「降雪非常事態」を宣言した。

例年は温暖な西海岸や南部の州では、路面氷結による交通事故が目立った。米CBSニュースによると寒波の影響による死亡が最も多いのはテネシー州で、22日までに少なくとも25人が死亡した。西部オレゴン州でも16人が死亡。悪天候で切れた電線が自家用車の車の屋根に接触、車外に出た3人が感電死する事故などが発生した。

南部ミシシッピ州では12人が死亡した。州当局は、道路の氷結による危険が深刻として不要不急の運転を避けるよう呼びかけた。

南部テキサス州では、15〜16日にかけて特に気温が低下。送電網を管理するテキサス電力信頼性評議会(ERCOT)は節電を呼びかけた。今回の寒波では約17%の確率で大規模停電が発生する可能性があるとしていた。テキサス州では2021年の大寒波で停電が発生し、240人以上が死亡しただけに、安堵が広がっている。

大寒波は大西洋に抜けたものの、一部地域では週末にかけて悪天候が続く見通し。米気象局は、メキシコ湾岸から北上する低気圧の影響で、各地で気温が例年を上回る水準に急上昇する見通しだと報じた。雪や氷が急速に溶け出し、一部地域では降雨も予想されるとして米気象局が洪水や鉄砲水の発生に注意を呼びかけている。

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