[FT]フランスのアタル新首相が挑む「試験」

[FT]フランスのアタル新首相が挑む「試験」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB222280S4A120C2000000/

『2016年、当時経済相だったフランスのマクロン大統領は大統領選出馬のため社会党を離党し、人々の価値観や行動を大幅に変えて社会を近代化する必要があると訴えた。このメッセージは多くの若者を魅了した。

その一人が当時27歳のガブリエル・アタル氏だ。同氏はマクロン氏の選挙陣営に加わり、後に新党の議員に選出された。

17年に国内史上最年少の大統領となったマクロン氏だが、2期目に入り足元がぐらついている。態…

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『アナリストらはアタル氏が27年の大統領選でマクロン氏の有力後継候補になったとみる。だが、そのためには退任直後に大統領に選ばれた現職の首相は一人もいないという、いわゆる「マティニョン(仏首相公邸)の呪い」を克服しなければならない。再び勢力を伸ばしているマリーヌ・ルペン氏らの極右勢力を撃退する力があることも証明する必要がある。』

『マクロン氏同様、討論にたける

アタル氏はパリ郊外の裕福な家庭に生まれた。両親は2人とも映画のプロデューサーだった。

わずか9歳の頃から弁舌の才と並外れた自信を見せていた。通っていたパリの私立名門校を取り上げた1998年のテレビ番組は、同氏が主演俳優になる願望を公言する様子を映し出している。

その後、名門大学パリ政治学院に進み、早くに政界入りする。17歳で社会党に入党し、オランド政権下で保健相のスピーチライターとなった。

若い頃のマクロン氏の複製というのが政敵のアタル批判だ。両氏とも同じ細身の濃紺のスーツを好むだけでなく、どちらも強力なイデオロギーを持たない現実主義者だと批評されている。

マクロン氏と同様、アタル氏は討論や弁論にたけている。昨年の年金改革をめぐる国会審議では責め立てる野党に一歩も引かずに言い返した。』

『テレビで性的指向を打ち明ける

アタル氏は国民教育相に就任後間もなく、ゴールデンタイムのテレビのインタビューで女子生徒の「アバヤ」の着用を禁止すると発表し、話題を集めた。アバヤはイスラム教徒のゆったりとした丈の長い衣装で、一部の生徒が学校で着ていた。禁止は政教分離の原則を徹底するもので、世論の支持を得た。

この判断について、アタル氏を知る人たちは同氏の抜け目のなさが表れているという。国民が共感する問題をわかりやすい言葉で示すことで、数学の成績低下や教員不足といった解決が難しい問題から国民の目をそらすことができるからだ。

フランスでは政治家は私生活についてあまり語らないが、アタル氏は違う。それも人気を高めた理由といえる。

15歳の生徒がいじめに遭い、自殺する事件が起きた後、アタル氏はテレビ番組で自身も10代の頃にオンライン上で嫌がらせを受けたことを告白した。自身の性的指向を同級生からからかわれたことや、26歳の時、がんで死期が迫る父親に自分がゲイだと打ち明けたことなどを話した。』