プーチンと習近平を利するヤバすぎる事態に…「トランプ復活」で、世界が直面する「悪夢」

プーチンと習近平を利するヤバすぎる事態に…「トランプ復活」で、世界が直面する「悪夢」
https://news.yahoo.co.jp/articles/aecabe289232930973629dce2f0314a6bb97ec18?page=1

『1/23(火) 7:03配信
現代ビジネス
他の候補を圧倒

photo by gettyimages

 先週水曜日(1月15日)、激震が西側世界のリーダーたちの間を走った。米国の大統領選びの初戦となる中西部アイオワ州の共和党予備選挙で、トランプ前大統領が得票率51%と他の候補を圧倒したとのニュースが駆け巡り、あの大統領の復権が現実味を増したからである。

【写真】韓国・文在寅の「引退後の姿」がヤバすぎる…!

 トランプ氏が西側の最大国家・米国の大統領に返り咲けば、ウクライナはロシアとの戦争遂行に支障を来たしかねない。そればかりか、もたつきながらも前進し始めた気候変動対策が再び白紙に戻され、高関税が横行して世界の貿易と経済がシュリンクするリスクも大きい。

 トランプ再任の障害として、同氏がいくつもの訴訟に直面しており、足もとをすくわれる可能性を指摘する声はある。中でも、トランプ氏が2021年1月の米議会占拠事件で暴動を煽ったとされる問題は、同氏の大統領選への出馬資格の剝奪に繋がるものとして注目されている。しかし、米連邦最高裁にこの問題の迅速かつ大胆な裁きを期待することは難しそうだ。

 結果として、米大統領選は、トランプ氏と民主党の現職大統領バイデン氏の一騎打ちになる可能性が強い。そして、わずかながら、バイデン氏は支持率で後れをとっている。まさに世界は今、また、あの異端の大統領に振り回されかねない窮地に立たされている。

 トランプ氏が初戦で大勝を収めたというニュースは、今月15日から始まったダボス会議(世界の政財界人を集めて毎年1月に開く世界経済フォーラムの年次総会)でも話題の的だった。ウクライナ戦争や中東で相次ぐ深刻な紛争、そして生成AI活用などが今年の焦点とされていたが、トランプ氏がそうしたテーマを脇に追いやったというのである。

 例えば、米政治専門メディア・ポリティコによると、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、トランプ氏への辛らつな評価を口にした。フランスのテレビ・インタビューで同氏復活の可能性を問われ、「歴史から教訓を得るとすれば、彼が最初の4年間の任期をどのように運営したかを見ればよい。それは明らかな脅威だ」「関税、NATOへの対応、気候変動への取り組みの3つをとっても、悉く米国とヨーロッパの利害は一致しなかった」と深刻な懸念を表明したのである。西側の国際機関のトップが、ここまで率直に米国大統領候補に疑問を呈することは異例である。
ポリティコは、ラガルド氏だけではなく、英国のジェレミー・ハント最高財務官もダボスで、「(保護主義への回帰を始めれば)深刻な誤りになる」と、トランプ氏の復権への警告を発したと報じている。

 ラガルド氏やハント氏が懸念するように、トランプ氏が米国大統領の座に返り咲けば、問題は、移民政策の厳格化のような米国の内政マターにとどまらない。世界の軍事・安全保障問題や気候変動対策、通商・経済などの問題で看過できない状況が生じ得る。

 最も懸念されるのは、ウクライナに侵略戦争を仕掛けたロシアのプーチン大統領や、台湾の武力統一を選択肢のひとつとしている中国の習近平・首席を利する結果になりかねないことだ。

 今回の大統領選挙でトランプ氏の最大のライバルになっている民主党のバイデン大統領は、在任中、同盟国との連携を重視。トランプ氏が破壊した欧州連合(EU)との関係改善に努め、日本を含む主要7カ国(G7)の結束の再構築に努めてきた。ウクライナへの軍事・経済支援を主導して、西側としてロシアの侵略戦争に対抗してきたことは、その象徴だ。以って、台湾への野心を燃やす中国をけん制してきた側面も見逃せない。

 しかし、トランプ氏が米大統領の座を取り戻せば、1期目と同様か、それ以上の強硬さで「米国第一主義」を実践するだろう。EUと北太平洋条約機構(NATO)の加盟国や日本に対し、ウクライナ支援の肩代わりを迫る一方で、米国がウクライナ支援を縮小することは既定路線とされている。

 トランプ氏自身は、米国の輸出拡大に繋がる台湾への武器売却には積極的な態度を見せるかもしれない。が、1月13日の台湾の総統選挙に勝利して、民進党・蔡英文氏の後を継ぐことになった頼清徳・政権は、同時に行われた議会に相当する立法院の選挙で過半数を失った。このため、国民党や民衆党の反対にさらされ、米国からの武器購入を円滑に進められない懸念がある。』

『「米国第一主義」の回帰

photo by gettyimages

 こうした状況は、中国が野心を膨らませ、台湾海峡で偶発的な衝突が起きるリスクを高めかねない。日本は、日本本土の米軍や自衛隊基地への中国の攻撃に備えざるを得ない窮地に立つことになる。

 気候変動対策で、トランプ氏が1期目にどういう振る舞いをしたかは、記憶に新しい。大統領に就任した途端、気温上昇を抑える国際的な目標のパリ協定から離脱、異常気象対策を形骸化させた“前科”があるのだ。

 気候変動対策は、依然として、実効性を担保するための罰則規定がないなど不十分な内容だ。とはいえ、トランプ氏が復権すれば、国際社会が過去数年かけて積み上げてきた実績が崩壊しかねない。

 トランプ氏に立ち止まる気配はない。バイデン政権の看板政策である電気自動車(EV)への移行を促す規制撤廃を公言する一方で、石油、天然ガスといった化石燃料の大幅増産へ向けて投資再開を促す方針も掲げている。

 経済、通商、貿易政策も「米国第一主義」と言う保護主義への回帰・拡大を目指すものになる。

 トランプ氏はすでに昨年8月、米メディアに「(外国企業が)米国で製品を販売する場合、自動的に、例えば10%の税金を払うべきだ」と言い放っている。自身の支持者に多い製造業の労働者の人気を獲得しようという意図は明らかだ。

 しかし、こうした関税は、報復合戦を招き、双方でインフレを招く懸念がある。思慮不足は明らかだ。さらに言えば、様々な物品の国際的なサプライチェーンに壊滅的な打撃を与えて、トランプ氏の意図に反して、雇用を減らし、経済を減速させるリスクもある。

 加えて、トランプ氏が中国いじめを目論んでいる。「中国の最恵国待遇(MFN)を撤廃する。世界中で米国の国家安全保障上の利益を損なっているからだ」と言うのである。不動産不況からの回復の遅れが目立つ中国経済にダメージを与えるだけでなく、形骸化が目立つ世界貿易機関(WTO)の自由貿易体制を揺るがす暴挙になりかねない。

 トランプ氏は、世界の軍事・安全保障や経済、通商、貿易、気候変動対策などに対する脅威となりかねない候補者だが、共和党の大統領候補選びでのトランプ氏のリードは圧倒的だ。

 トランプ氏が初戦のアイオワ州で見せた51%の得票は、2位のフロリダ州デサンティス知事の21.2%、3位のヘイリー国連大使の19.1%を圧倒するものだった。

 共和党はこの後、米国時間の今日(23日)に第2戦となるニューハンプシャー州の予備選挙を予定している。この州の予備選の焦点は、アイオワで3位にとどまったものの、共和党内では穏健派に位置するヘイリー元国連大使の巻き返しがあるのかだ。』

『トランプに待ったをかける要因

 ニューハンプシャー州は穏健派が比較的多い土地柄で、ヘイリー氏は同州知事のスヌヌ氏から推薦を取り付けているほか、ライバルと目されていたクリスティー前ニュージャージー州知事が撤退する幸運にも恵まれている。ただし、情勢は甘くないし、ニューハンプシャー州での巻き返しに失敗すれば、その時点で、選挙戦の継続が難しくなりかねない。アイオワで2位につけたデサンティスは22日、撤退を表明した。

 こうした中で、トランプ氏に待ったをかける要因として、司法の役割に注目する向きがある。

 以前にも本コラムで指摘したが、トランプ氏は、自身の不動産ビジネスなどでの事業記録の改ざんをめぐる34件の重罪の疑いや、金融詐欺の疑いで提訴されているからだ。

 これらの訴訟の中でも、特に深刻とみられているのが、トランプ氏が2021年1月の議会占拠事件で暴動を煽ったとされていることに関連した訴訟である。民主党支持者らの訴えを受け、コロラド州の最高裁は昨年末、「トランプ氏は宣誓した米国憲法の順守を怠っており、再び公職に就くことは許されない。したがって、大統領選挙に出馬する資格がない」との判決をくだした。同じ問題で、民主党所属のメーン州のベローズ州務長官も、トランプ氏の出馬資格を剝奪すると発表した。これらに対し、トランプ氏側が無効として提訴しており、連邦最高裁はこうした判決や判断の是非を審理している最中なのだ。

 だが、連邦最高裁がトランプ氏に大統領選への出馬資格を取り消すような判決や判断を今回の大統領選挙の期間中に降すとの見方は説得力を欠いている。というのは、連邦最高裁の顔触れがトランプ氏の大統領時代に任命された3人を含めて共和党の党派色が強いことだけが理由ではない。むしろ、これほど高度な政治判断は、司法の判断にそぐわないという理由から、連邦最高裁が選挙期間中の判断を嫌うと読む方が自然なのである。

 そして、この脈絡で考えると、トランプ氏は他の裁判でも選挙期間中に有罪判決を受けて刑務所に収監され、大統領選からの撤退に追い込まれる可能性はかなり小さいと見るべきだろう。

 結局のところ、トランプ氏が共和党の大統領候補の座を射止め、本戦は、民主党のバイデン大統領との一騎打ちになる可能性が高い。冷静に見れば、この2人はいずれも高齢であり、最後まで両者に健康リスクが残るものの、現在のところ一騎打ちのシナリオは動かないのだ。

 では、一騎打ちの軍配はどちらに下るだろうか。

 まず、選挙資金だ。バイデン大統領の選挙陣営と民主党全国委員会によると、バイデン陣営は2023年10~12月期に前期比約37%増の9700万ドルという巨額の選挙資金を集めたと発表している。この結果、23年末時点の選挙資金は1億1700万ドルと民主党候補として過去最大に達しているという。』

『バイデンは資金準備でリード

photo by gettyimages

 これに対し、トランプ陣営の集めた選挙資金は、23年7~9月の段階で約4550万ドルにとどまっていたという。

 バイデン陣営は資金準備で1歩リードしている格好だ。

 次に、政策面である。本来ならば、外交、安全保障面だけでなく、米国の有権者の関心の高い内政、経済面で、バイデン大統領の実績が高く評価されてもおかしくないはずだ。

 バイデン氏は、新型コロナウイルス危機の中で大統領に就任し、家計への直接給付を含む1兆9000億ドルの景気刺激策を実施した。この中には、1兆ドルを投じて道路、橋、鉄道といった老朽インフラの刷新と高速通信網の整備に取り組んだ「インフラ投資雇用法」や半導体産業を支援する「CHIPS法」、脱炭素の取り組みに補助金を出す「インフレ抑制法」などが含まれ、雇用を創出し、景気の後退を免れてきた。これらの政策では多くの共和党支持者も恩恵を受けたはずだ。これから効果が出て来る施策もあるだろう。

 しかし、高インフレに見舞われて消費者物価指数(CPI)が高騰した時期があり、家計、特に貧困層にとってはバイデン氏の政策に恩恵を感じるよりも、実質所得が減少して生活が窮乏したと実感している人が多いことも想像に難くない。こうしたことに強い不満を持つ労働者層の多くが、トランプ氏の支持基盤なのだ。バイデン氏が任期中に、社会の分断を修復して、十分に格差を解消できなかったことが、トランプ氏にとっての追い風になっている。

 トランプ大統領のスキャンダルは今なお、とどまるところを知らない。1月4日、米下院民主党は、トランプ氏が大統領在任中にファミリービジネスを通して、外国政府から780万ドル(約11億円)以上を受け取っていたと結論付ける調査報告書を公表した。

 最大の資金の出し手は、約557万ドルに達した中国だ。在米中国大使館、中国工商銀行、海南航空などが名を連ねている。これに、サウジアラビアの約62万ドル、カタールの約47万ドル、クウェートの約30万ドル、インドの約28万ドルなどが続いている。

 普通ならば、こうした資金の授受は大きな問題になるところだが、トランプ氏の場合は、支持者が民主党の仕掛けた謀略だと受け止めてしまい、選挙に響く兆候もない。

 直近(1月20日)の米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査によると、トランプ氏は46.6%と2.0ポイントの僅差ながら44.6%のバイデン氏をリードしている。

 選挙のたびに勝者が変わって趨勢を決めることで有名な7つの激戦州(スイングステート)を対象にした同サイトの調査をみると、トランプ氏の優勢はさらに鮮明だ。ウィスコンシン州で両者の支持率が45.80%で並んでいる以外は、ペンシルバニア、ネバダ、ジョージア、アリゾナ、ミシガンの6州でトランプ氏の支持率がバイデン氏のそれを上回っているのだ。

 このまま行けば、世界は再び、トランプ氏に振り回されることになりかねない。

町田 徹(経済ジャーナリスト)』