ミャンマー内戦を中国が背後で糸を引く理由

ミャンマー内戦を中国が背後で糸を引く理由
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32651

『Economist誌12月23日号の解説記事‘China is backing opposing sides in Myanmar’s civil war’が、中国はミャンマーの軍事政権を支持しているが、2023年10月末の少数民族民兵によるシャン州における攻撃は、中国の安全の利益を害する詐欺グループの破壊という短期的利益のために、中国が背後で糸を引いて彼らにやらせたものだ、と解説している。要旨は次の通り。

(S-S-S/TAK/gettyimages)

 21年、軍がクーデタで政権を奪取して以来、中国は軍事政権を支持して来たが、23年10月末に至り、中国はその利益を再考したように見える。ミャンマー北部で、中国の情報機関と関係を持つ少数民族の連合軍(Three Brotherhood Alliance)は、軍に大きな攻撃を仕掛けた。

 この成功に力を得て、軍事政権に対抗する武装組織は攻撃を強化し、闘争は国の3分の2に拡散するに至った。しかし、少数民族の連合軍が、彼ら目標の一つは過去3年ミャンマー・中国国境に突如現れたオンラインの詐欺グループのネットワークを排除することだ、と発表したことが真相を物語る。

 11 月までに、中国が支持する陣営を取り替えたため、軍事政権の余命いくばくもないとの憶測が生じた。軍事政権は不快感を表明すべく、彼らの支持者が反中デモを行うことを許可した。

 以来、中国は軍事政権を安心させる措置を講じている。12 月 14 日には、中国は軍と少数民族民兵との間の一時的休戦を斡旋したと発表した。

 中国のミャンマーに対するアプローチには中国の長期的な利益と当面の利益との間の緊張が内在する。長期的にはミャンマーに大きな経済的利害関係を有し、ミャンマーが親西側の民主主義者の方向に転換することを阻止したい。短期的には、中国は安全を心配している。

 中国はミャンマーの軍の同盟者だが、ミャンマー政府はジャングルの国境地帯をコントロールできておらず、中国は2000kmの国境を越えて不安定性があふれ出ることを心配している。オンラインの詐欺産業はそうした種類の心配事である。

 オンライン詐欺の問題は中国にとって外交政策のプライオリティとなったが、ミャンマー軍には詐欺産業を破壊する能力はなく、かつ詐欺グループにカネで買われていたとみられ、何もしなかった。そこで、中国は少数民族を頼ることになったとみられる。

 中国は、軍事政権に再び擦り寄っている。軍事政権は依然としてミャンマーの空港、銀行、ネピドーを含む大都市のほとんどを支配している。西側の制裁にもかかわらず、軍事政権はジェット機を中国とロシアから買い、彼らの敵が支配する地域で民間人に対して無差別爆撃を行っている。中国は大体において軍事政権を支持しているが、時には彼らの敵を支持するであろう。

*   *   * 』

『昨年10月27日、ミャンマーのThree Brotherhood Alliance(3つの少数民族の民兵組織の連合体)が北東部のシャン州の中国に接する国境地帯で攻撃を開始し、多数の軍の拠点を制圧し、両国間の国境の出入口を含む幾つかの町をたちまち制圧した。この少数民族の攻勢で軍が守勢に立たされるに至ったことが、他の少数民族の民兵や民主派勢力のPDF(国民防衛隊)が攻勢に出ることを鼓舞することとなり、軍はカチン州、ザガイン地方域、カヤー州など多方面で同時に対応することを迫られることになった。

 この事態を受けて、ミャンマー情勢には2021年のクーデタ以来、初めて局面転換の展望が開けて来たとの分析が多く報じられることとなった。軍は急速に力を失いつつあり、軍が内部から崩壊して少数民族など各種勢力の対立を招来し、国が血生臭い混乱に陥ることすらあり得る、との分析もあった。

 しかし、過去2カ月余り、報道など多くの情報は伝えられたが、真に局面転換といえる情勢なのか明らかとはいえなかった。こうした中、上記のEconomist誌の記事は真相を解き明かしているのではないかと思われる。中国が軍事政権と少数民族との間の休戦を斡旋したとの断片的な報道もあったが、その辺りの真相も解る。

ミャンマーの局面展開はあるのか

 上記の記事によれば、10月27日に始まった少数民族の連合軍の攻撃は背後で中国が糸を引いてやらせたもので、その目的の一つは国境地帯を根城に活動する詐欺のネットワークを破壊することにあった。というのは、多数の中国人が詐欺の犠牲者と下手人として関与し、中国にとって看過出来ない安全の問題になっていたからである。

 中国は軍事政権に詐欺の取締りを要求したが、彼らにその能力はなく、従って、かねて影響力を維持してきている少数民族を頼ったというわけである。Three Brotherhood Alliance を構成するMyanmar National Democratic Alliance Armyはコーカン族の民兵であるが、彼らは民族的に中国人で中国語を話す。中国が軍とThree Brotherhood Allianceとの休戦を斡旋したのは、一仕事終わったので休戦させたという局部的なことのようである。
 そうだとすれば、ミャンマーが局面転換の展望を開くような情勢にあるのかは疑問に思われる。少数民族相互間あるいは少数民族と民主派勢力との間で調整が図られている様子はない。Three Brotherhood Allianceの攻撃は民主派の武装組織PDFと調整されたものではないとされている。

 しかしながら、過去2カ月の出来事は、軍事政権が民主派のPDFおよび少数民族民兵による政治的目標を共有する調整された軍事行動に当面した場合には、その結果として、国が混乱し分裂の危機に陥るようなことがあり得るということを示している。』