[FT]移民政策の「二枚舌」は限界 流入抑制は見せかけ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB160OH0W4A110C2000000/
『豊かな国の政府は長年、移民管理政策について奇術師のように人の注意をそらす技を使ってきた。もう何十年も前から、米国と西欧(特に英国)は亡命希望者を中心とした、少数の移民集団に関して、見せかけの受け入れ反対姿勢を示してきた。
これは大量の経済移民を静かに受け入れるための隠れみのとなってきた。排外主義的な有権者は原理的に求めているものを手に入れ、人手不足に悩む企業は働き手を確保できた。
この組織的な偽…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『オランダ人の社会学者ハイン・デハース氏が移民に関する新著で説明しているように、各国政府は(3つを同時に達成できないという)トリレンマに直面している。経済の開放、外国人の人権尊重、そして自国市民の反移民志向の実現をすべて達成することはできないのだ。
「3つのうち1つをあきらめなければならない」とデハース氏は話す。「政治家にとって最も魅力的な選択肢は、移民政策の本音部分を隠し、移民を取り締まると示す大胆な政治的パフォーマンスをすることだ」』
『デハース氏は各国政府が本気でルールに沿っていない移民流入を抑制したいのであれば、国境警備に費やす支出を減らし、労働力に紛れ込んだ不法移民の発見と強制送還に費やす予算を増やすはずだと話す。
厳しい国境政策で悪名高い米移民・関税執行局(ICE)は米国内の国土安全保障関連の捜査に予算の8分の1しか費やしていない。不法移民を雇うことが刑事犯罪になった1986年以降、一般的に訴追件数は年15〜20件しかなく、罰金も583〜4667ドルの微々たる額しか科されていない。欧州でも同様に取り締まりが不十分だ。
だが、一部の有権者と議員はついにトリックに気づいたのだろうか。英国では、保守党出身の首相としてジョンソン氏の政策を受け継いだリシ・スナク氏がとてつもなく非現実的なルワンダ計画を実行に移そうとしたが、徒労となっている。計画の失敗は多くの保守党議員の間で反移民感情をあおった。
英国のEU離脱後、保守党内では企業に優しい穏健な中道右派が失脚し、排外主義的なイデオローグ(理論家)に立ち向かう下院議員がほとんど残っていない。スナク氏はイデオローグを懐柔することを余儀なくされており、経済的に打撃をもたらす対策を導入している。
たとえば、家族ビザ支給の給与基準を引き上げたり、英国が留学生により高等教育でサービス収支が大幅に黒字となっているにもかかわらず、留学生が親族を英国に連れてくることを阻止したりしている。
EUでは、反移民の波に乗って2022年に政権を握ったイタリアの右派ポピュリスト(大衆迎合主義者)のメローニ首相のような指導者は、まだ二枚舌を使っている。メローニ政権は人道支援団体が地中海で移民を救出するのを妨害する一方、EU域外出身の移民向けに50万件近い就労許可証を発行した。』