守勢に転じたウクライナ軍、建設が進む防衛ラインの様子を報道陣に公開
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukrainian-army-on-the-defensive-reveals-to-the-press-the-progress-of-construction-of-the-defense-line/
『ゼレンスキー大統領は昨年11月「主要な全方面への要塞建設を急ぐよう指示した」したが、ウクライナ軍は建設が進む防衛ラインを報道陣に公開、ロイターは「新たな防衛ラインはロシア軍のものと類似点がある」「これはウクライナ軍の戦力回復を目的にしている」と報じた。
参考:Ukraine builds barricades, digs trenches as focus shifts to defence
これらの防衛ラインはもっと早く、出来れば2023年の春に建設を開始すべきだった
ゼレンスキー大統領は昨年11月「主要な全方面(ドネツク州、ハルキウ州、スームィ州、チェルニーヒウ州、キーウ州、リウネ州、ヴォルィーニ州、ヘルソン州)への要塞建設を急ぐよう指示した」と述べていたが、ウクライナ軍は建設が進む防衛ラインを報道陣に公開、このツアーに参加したロイターは11日「新たな防衛ラインはロシア軍のものと類似点がある」「この防衛ラインはロシア軍の攻撃を乗り切りながらウクライナ軍の戦力を回復させることを目的にしている」と報じている。
出典:Командування Об’єднаних Сил ЗС України
報道陣に公開された防衛ラインはクピャンスク近郊に建設されたものの1つ(正確な場所は明かせないと記事の中で言及)で、ロイターは「広々とした荒野に白いコンクリートのバリゲードとカミソリワイヤーが1km以上に渡って張り巡らされ、暗闇の中で初歩的な居住区を備えた塹壕が掘られており、そう遠くないところで大砲が鳴り響いている」「この防衛ラインはロシアとの戦いを『より防衛的なもの』に移行させるため、如何にウクライナが要塞建設を強化しているかを示唆するものだ」と指摘。
あるウクライナ軍技術者は報道陣に対して「軍が移動して荒野を横断している間は要塞がなくても大丈夫だ。しかし移動が止まったら直ぐに地面を掘る必要がある」と說明、国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング氏もロイターの取材に「要塞の強化によってロシア軍の前進スピードは低下するだろう」と述べているのが興味深い。
出典:Командування Об’єднаних Сил ЗС України
ワトリング氏は「ロシア軍の攻勢が最高潮に達したためウクライナ軍は守勢に転じている」「戦場の主導権を取り戻したロシア軍はどこ攻撃するか選べるようになった」「ウクライナ軍は砲弾不足に陥っているためロシア軍の死傷率も低下している」「人的損失のスピードが緩やかになったロシア軍は新たな部隊の編成が容易になっている」「ここで生まれた余裕は新たな攻撃の開始に繋がる可能性がある」と指摘。
ウクライナ軍の要塞強化については「ロシア軍の前進スピードを低下させ戦力に余裕をもたらす」「前線の戦いから解放された兵士に訓練を受けさせることも出来る」「ウクライナは自国の犠牲を最小限に抑えつつ戦力の回復を行おうとしている」「この要塞は再び攻勢に転じた際の側面防御にも利用できる」と述べており、ウクライナ軍にとって2024年の目標は「前線を最小限の犠牲で維持すること」「過去2年間で消耗した戦力の回復」「現状を打開する新しいテクノロジーの導入」といったところだろう。
出典:Командування Об’єднаних Сил ЗС України
問題は「ウクライナ側の要塞建設が完了するまでロシア軍が待ってくれない」という点で、ロシア軍も守りを固められる前に少しでも多く前進しようと試みるはずだ。
クピャンスク近郊で要塞建設に従事している別の技術者はロイターの取材に「これらの防衛ラインはもっと早く、出来れば2023年の春に建設を開始すべきだった」と述べており、ウクライナ・プラウダ紙は「適切な防衛ラインや陣地の欠如は今に始まったことではなく、セベロドネツク、リシチャンシク、バフムートでも問題になっていた」と政府や軍を準備不足を非難したことがある。
関連記事:ゼレンスキー大統領、ロシアやベラルーシと接する全地域への要塞建設を指示
関連記事:ウクライナメディア、アウディーイウカの危機は第2防衛ラインの欠如が原因
※アイキャッチ画像の出典:Командування Об’єднаних Сил ЗС України
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 50 』
『 kame
2024年 1月 11日
返信 引用
地続きの戦争において、塹壕の重要性はあまり低下しませんね。歩兵にとっても逃げ場がある事は一定の安心感にも繋がりますし、米中のようなミサイルや空爆による飽和攻撃が出来る国以外では今後も用いられそうです。
日本のような島国では海が最大の要塞になる代わりに、山が多く、大規模な塹壕を作れない、機能しにくそうですし、国ごとの特色が良く出る事項ではありますね。
要塞建設の出遅れについて批判があるのは仕方がないとは思いますが、現在の状況に至ってしまった以上、国家全体で協力するしかないでしょう。どの道、ウクライナ政府が継戦するつもりならスピードの違いはあれど、ロシア軍は攻めてくるわけですし、座して死ぬつもりが無いなら、前線の兵士は黙々と仕事をするだけですから。
29
NHG
2024年 1月 12日
返信 引用
陸上自衛隊は塹壕戦をまじめに考えてたみたいよ
ソ連という最強の敵を米軍がくるまで足止めするにはそれしかないからで、フィンランドも同じみたい
*これ書いてて「柔剣道の突撃訓練を止められない自衛隊は時代遅れ」という趣旨の記事読んだのを思い出したけど、やめない理由はこれかな? 最後に塹壕を攻略するには突撃しかないっていう
5
nachteule
2024年 1月 12日
返信 引用
塹壕攻略を普通に考えたら索敵やカバーをしっかりした上でカービン銃なり取り回しに優れた火器で制圧する方がマシ。FTC富士訓練センターで部隊訓練評価隊をきりきり舞いさせた某部隊の隊長がアクシデントが起きた結果、本能レベルで体に染みついた突撃指示して散々な結果になった事もある。
訓練でこれなら実戦でなら終わっているし、流石にロシア並の突撃なんて実戦を考えるとねぇ。戦争で本当に使える技術を学ばせてあげて欲しいんだが。
1 』
『
Easy
2024年 1月 12日
返信 引用
そもそもスロヴィキンラインが機能したのはウクライナ軍の戦略目的が明確だったからですね。クリミアへの補給線を断つ、と。そこから逆算して、スロヴィキンラインは「突破させない」という目的に最適化されていました。
翻って、現在のウクライナの場合。
問題なのは「ロシアの戦略がそれほど明確ではない」ことですね。
ロシアが目的としているのはキエフ政権の打倒であり。都市や領土の確保は「あれば良いが現状の線でも構わない」というスタンスです。
ロシア軍によるハリコフ攻勢の噂が流れていますが、それとて「戦略的には必須ではない」んですね。
となると、真っ直ぐ防御陣地に突っ込んで来てくれるとは期待出来ず。迂回,空爆,外交や通商破壊などその他もろもろの「別の作戦」でキエフ政権の屈服を狙ってくる選択もあるわけですから,要塞線を作って解決する話ではありません。
結果はこの先の歴史が示してくれるわけですが、あまりポジティブな予感はしませんね。。
20
理想はこの翼では届かない
2024年 1月 12日
返信 引用
ハリコフ攻勢の噂は、ベルゴロドが無差別に砲撃された事を受けてバッファーゾーンを作りたいという政治的な思惑から来ているのだと思います
そのため軍事的にはあまり価値がなく、ご指摘のように「戦略的には必須ではない」事になります
戦場の主導権をロシア側が握っている状態で、かつどこからどのように来るかわからない状況だと、防衛線をどうするかはいくら頭を捻っても結論がでないでしょうね。逆に「ここだけは通さない」という所に決め打ちで要塞戦を作るしかないと思います
5
たむごん
2024年 1月 12日
返信 引用
仰る通りです。
ゼレンスキー大統領が、クルスク戦のヒトラーと、同じような失敗をしたと考えています。 』
『 2024年 1月 12日
返信 引用
劣った東側の教義から脱して先進的な西側の教義を受け入れた精強なウクライナ軍が旧態依然とした弱小ロシア軍の猿真似を始めたことを誇示する光景はなかなかにアイロニックですね
この戦争の縮図のように思えます
まあロシア軍からしてもかなり厄介なものが出来上がることでしょう
今回公開されたような連続線防御陣地を機能させるためには塹壕を満たすだけの多大な戦力を必要とします
例えば1941年冬のドイツ軍は当初連続線防御陣地の準備を進めていましたが、実際には広大な東部戦線をこの方式で防御するには戦力がまるで足りず、ヒトラー総統の介入もあり、拠点防御という新たな防御理論が生まれました
この新方式の防御理論では陣地に配置する兵力は少なく済み、陣地間に進出してきた敵に対して複数陣地が連携することによって連続線防御にも勝る火力を達成出来ましたが、同時に予備の強力な打撃群があって初めて機能するものであるところを突かれて瓦解しました
まあ一長一短あるということですね
スロヴィキンラインもこの2つの防御理論を戦場によって巧みに使い分けており、トクマク戦線には主に連続線防御陣地が構築されましたし、南ドネツク戦線などでは拠点防御陣地主体でした
総力戦というものは規模と同時にリソース配分の勝負でもあり、ウクライナ軍がどのような防御戦略をもってどこにどんな防御陣地を築いたのかは楽しみですね
5 』