英郵便の冤罪、富士通批判が再燃 スナク氏「救済新法」
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『2024年1月10日 22:04 (2024年1月11日 9:20更新)
【ロンドン=江渕智弘】英国の郵便局長らが現金を盗んだなどとして起訴された大規模な冤罪(えんざい)事件をめぐり、欠陥のある会計システムを納入した富士通への批判が再燃している。スナク首相は10日、巻き込まれた局長らを救済するため「新たな法律を導入する」と述べた。議員の間では富士通に賠償を求める声も上がる。
事件は1999年から2015年に起きた。窓口の現金が会計システム上の残高よりも少なくなり、700人以上の郵便局長らが横領や不正経理の罪に問われた。局長らは委託元の英ポストオフィスから補塡の要求を受けて借金したり、収監されたりした。
その後、富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥と判明したが、有罪判決が取り消されたのは90人あまりにとどまる。
今月初め、英ITVが事件を題材にしたドラマを放送し、再び関心が高まった。放送後、元局長らが無実の罪を着せられたと新たに名乗り出るケースも相次ぐ。
スナク氏は10日、議会下院で「英国史上最大の誤判の一つだ。地域社会のために懸命に働いていた人々が全く落ち度がないのに人生と名声を破壊された」と強調した。新法によって速やかに冤罪を晴らし、賠償を受けられるようにするという。
下院ビジネス貿易委員会は、富士通幹部らに16日に議会で証言するよう要請した。郵便局のシステムを担う英国子会社の富士通サービシーズは、1990年に富士通が買収した英ICLを母体とする企業だ。
英政府によると、元局長らには政府が賠償金を支払ってきた。議員の間では富士通に支払いを求める声が上がっている。
富士通は、事件後も英国防省などにシステムを納入している。事件が決着するまで英国の政府調達から締め出すべきだという意見もある。同社は10日、日本経済新聞に対し、「起きたことを明らかにするため調査に全面的に協力する」とコメントした。
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浅川直輝
日経BP 編集委員
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ひとこと解説
英富士通サービシーズ(FSL)の前身である英ICLは、富士通が1990年に買収して子会社化し、1998年に100%子会社化、2022年に現在の社名に変更しています。同社は英郵便局との契約のもと、1996年からHorizonの開発を始めましたが、開発費が当初の数倍に膨れ上がるなどプロジェクトは難航、契約解除も取り沙汰されました。契約継続を巡る日英2国をまたがる折衝の実態が、2021年に始まった公聴会で明らかにされつつあり、それが同事案への英国民の関心をさらに高めています。
2024年1月11日 5:59 』