「おまえこそ脅威だ」 米大統領選、再戦にらみ亀裂深く

「おまえこそ脅威だ」 米大統領選、再戦にらみ亀裂深く
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『「ジョー・バイデンは民主主義にとって脅威だ」。前米大統領のドナルド・トランプは5日、中西部アイオワ州スーセンターで支持者を前に現大統領のバイデンを攻撃した。

共和党の予備選が15日に開かれるアイオワの党員集会から始まる。米大統領選は各党が大統領候補を一本化する予備選と、11月5日に投開票される本選の2段階方式で実施される。すでにトランプの視線の先にあるのは本選だ。

他の共和候補を歯牙にもかけない…

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『他の共和候補を歯牙にもかけない。アイオワの党員集会が10日後に迫る5日も、100分を超える演説中に共和候補に触れた時間は10分に満たなかった。批判の矛先の大半は民主党の大統領候補への指名が確実視されるバイデンに向いた。

トランプは共和が23年に実施した候補者による討論会を4回とも欠席した。側近のジェイソン・ミラーは「他の共和候補はトランプ(の主張)をまねているだけ。互いを非難する討論会に出ても意味はない」と話す。

バイデンとの再戦を見据えるトランプがやり玉に挙げるのは自らを起訴した検察当局だ。政敵に打撃を与えるため、バイデンが検察当局を「政治利用した」と繰り返す。

トランプの主張は共和支持層に響く。23年3月に初めて起訴された後、支持率を伸ばして他の共和候補を引き離した。

米リアル・クリア・ポリティクスの集計によると、24年1月4日時点の世論調査の平均支持率は前大統領が63%。元国連大使のニッキー・ヘイリーは11%、フロリダ州知事のロン・デサンティスは10.9%にとどまる。

バイデン大統領はトランプ前大統領との再戦に勝機を見いだす

対するバイデンも同じ言葉を使ってトランプを攻め立てる。

23年12月11日、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで「トランプは公民権から投票権、世界における地位に至るまでこの国に多くの脅威を突きつけている」と断言。「最大の脅威は我々の民主主義に対してだ。民主主義を失えばすべてを失う」と訴えた。

フィラデルフィアは1776年に独立宣言が採択された「建国の地」。バイデンが頻繁に訪れるのは、トランプが民主主義や正義といった建国の精神を揺るがしかねない存在だと強調する狙いがある。いまも20年大統領選の敗北を受け入れないトランプが民意という民主主義の根幹を踏みにじったと断じる。

24年1月5日にもフィラデルフィア近郊に出向き「民主主義がいまも米国の神聖な大義かどうか問われている。それが24年の選挙の全てだ」と主張。「トランプは民主主義を犠牲にし、権力の座に就こうとしている」などと唱えた。

バイデンはトランプのスローガン「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の頭文字から「MAGA(マガ)」と呼ばれるトランプ支持者が米国の脅威だと主張する。「MAGAはわが国の歴史上最も偉大な政治運動だ」というトランプとは対照的だ。

23年12月5日には「トランプが出馬していなかったら(自分も)立候補していたか分からない。彼を勝たせるわけにいかない」と語った。

81歳という高齢への不安から支持率は低迷する。77歳のトランプより若い共和候補と本選で向かい合った場合、勝機を見いだすのは難しいとの自覚がある。20年大統領選でトランプの再選を阻んだ自負もある。

二大政党の最有力候補がお互いを呼び捨てにし「民主主義の脅威」と罵り合う光景は「2つの正義」で分断されるいまの米国を象徴する。マラソンレースと呼ばれる長い選挙戦を通して異なる意見を戦わせ、勝ち抜いた候補を国民が指導者と認める。本来の民主主義の姿が失われるなかで超大国は重大な決断を下す。

トランプや支持者を脅威とみなすバイデンの姿勢は「MAGA」を自認するトランプ支持者からも脅威に映る。

西部アリゾナ州で飲食店を営むブラシウス・パリシュさんは、バイデンが大統領選で再び勝って政権が続けば自分たちが「テロリスト」とみなされるのではないかと恐れている。「次に刑務所に入るのは私たちだ。トランプは防波堤なんだ」

米国が決戦の年を迎えた。大統領の座を狙う候補者と一票を投じる有権者を追った。

(敬称略)

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