北朝鮮軍、境界線付近に射撃192発 韓国軍は対抗訓練

北朝鮮軍、境界線付近に射撃192発 韓国軍は対抗訓練
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM054H60V00C24A1000000/

『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の朝鮮中央通信は5日、朝鮮人民軍が同日午前9〜11時に、黄海に192発の砲弾射撃をしたと報じた。韓国軍は射撃が軍事境界線に近い海域だったとし、同日午後3時に対抗して海上射撃訓練を実施した。南北の軍事的緊張が高まる可能性がある。

韓国軍によると北朝鮮の砲弾は韓国西側の白翎島(ペンニョンド)と延坪島(ヨンピョンド)付近に向けて撃たれた。韓国が設定する海上の境界線、北方限界線(NLL)の北側に着弾した。韓国軍や住民に被害はないという。

韓国側はNLLの南側の海域に目標を定め、射撃した。申源湜(シン・ウォンシク)国防相は「北朝鮮の射撃は朝鮮半島の平和を脅かし緊張を高める挑発行為だ」と強調した。

これに先立ち、仁川市は韓国軍が海上射撃訓練を実施する予定だとして、白翎島や延坪島などの住民に避難と野外活動の自制を呼びかけた。

朝鮮中央通信は北朝鮮の射撃が韓国の軍事行動に対する訓練だとし、白翎島や延坪島に影響を与えなかったとする軍の立場を伝えた。「敵が挑発になり得る行動を敢行する場合、わが軍は前例のない水準の強力な対応をとるだろう」と強調した。

「民族、同族という概念は既に我々の認識から削除された」として対決姿勢を鮮明にした。

延坪島は北朝鮮からおよそ10キロメートルと近く、偶発的衝突が起こるリスクがかねて指摘されている。

北朝鮮と韓国は2018年、偶発的衝突を避けるため、境界線付近での軍事活動を制限する軍事合意を結んだ。22年には北朝鮮がNLL北側の緩衝地帯への砲撃を繰り返した一方、韓国側は合意を守り自制していた。今回は18年の合意後、初めて韓国側も緩衝地帯内への射撃を断行した。

韓国の大手紙「朝鮮日報」は韓国軍が北朝鮮が撃った砲弾の2倍にあたる400発を射撃したと報じた。

韓国軍が撃ち込んだ海域はNLLの南側だが、北朝鮮はNLLを認めず南側に独自の軍事境界線を主張している。北朝鮮は韓国軍がこの海域に射撃したことを口実に軍事活動をさらに活発化させる可能性もある。

北朝鮮は過去にも境界線付近で砲弾を撃ち緊張を高めた例がある。2010年には延坪島内に砲弾を撃ち込み、韓国軍が応射して砲撃戦になった。14年には延坪島近くで活動していた韓国軍艦艇の近くにNLLを越えて砲弾を撃ち込み、韓国側が応射した。

韓国は23年、北朝鮮の軍事偵察衛星の発射を受けて軍事合意の一部停止を発表した。これを受け、北朝鮮が合意の破棄を宣言し、合意は事実上無効化している。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説 延坪島と言えば、2010年の北朝鮮の発砲により、朝鮮戦争以降初めて、韓国で民間人を巻き込んだ大惨事となったことが思い出される。今回は延坪島に加え、白翎島もターゲットにされている。南北情勢は確実に緊迫化してきている。

日米韓は北朝鮮に対する抑止力を高めているが、他方、北朝鮮とロシアの協力が緊密化している。ロシアが北朝鮮のミサイルを使ってウクライナへの攻撃を行い、北朝鮮はロシアの技術を得て昨年偵察衛星を打ち上げた。米国と中ロが対立するなか、朝鮮半島の情勢のエスカレート化を防ぐ手立てはなく、日本にとって周辺環境はますます厳しくなっている。
2024年1月5日 19:05いいね
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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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貴重な体験談 文中に出てくる延坪島は仁川港からフェリーで2時間半程度の韓国領の離島です。

2010年11月23日に北朝鮮軍が突然、この島にめがけて1時間に計170発を砲撃し、4人の死者と多数の重軽傷者を出す惨事になりました。

私も現地を歩きましたが、北朝鮮領が目と鼻の先の至近距離で、次に南北衝突があるとすれば陸地よりもNLL上ではないかともいわれています。

北朝鮮指導部は昨年末に南北統一をめざす方針からの転換を宣言し、韓国との対決姿勢を鮮明にしました。韓国の尹錫悦政権も一歩も引かない構えのため、今回の射撃は北による威嚇でしょう。次の一手に要警戒です。年明け早々、朝鮮半島情勢が緊迫する可能性がでてきました。

2024年1月5日 14:57いいね
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