ドイツ軍再建における最大の問題は人材確保、国防相が義務的徴兵を検討

ドイツ軍再建における最大の問題は人材確保、国防相が義務的徴兵を検討
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『ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍の再建に乗り出したドイツでは「装備の調達」ではなく「人材の確保」が最大の問題だと言われており、ピストリウス国防相は16日「義務的兵役(徴兵)を検討している」と明かしたが「政治的な合意が必要になる」と付け加えた。

参考:Pistorius prüft Modelle für Dienstpflicht
予備役をどれだけ積み上げているかが長期戦への備えになる

ドイツは2011年に徴兵制から志願制へ移行したため「若い人材」を民間企業と奪い合う格好になり、2018年に獲得した新兵の数は連邦軍史上最低の約2万人を記録。

政府は2025年までに戦力規模を18.1万人から19.8万人に拡張すると約束しているものの肝心の新兵獲得が困難なため、苦肉の策として除隊予定の兵士を再雇用し不足分を補おうとしているが、民間企業との待遇差が激しい部門(IT、医療、人事、物流などの分野)では熟練したスペシャリストの不足が著しく、同分野では2万人分近くのポストが空席のまま放置されてきた。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0

しかしロシアのウクライナ侵攻を受けてショルツ首相はドイツ軍の抜本的な再建に乗り出し、2031年までに戦力規模を18.3万人から20.3万人に拡張することを目指しているものの、多くの若者は「民間と比較して労働条件と賃金が見合わない軍で働きたくない」と考えており、2022年の新兵獲得数は前年比11%減、2023年1月~5月までの獲得数も前年の同時期と比較して7%も減少しており、確保した新兵の約30%は除隊予定の前に軍から去っていくらしい。

ドイツ軍は全国6ヶ所で運営する大規模なキャリアセンターでイベントを毎週開催し、時代に合わせてYouTubeやSNSなどのマーケティングも取り入れ、新たな人材獲得に年間3,400万ドル(2020年)もの資金を投じているものの、もはや軍隊という特殊な労働環境は「仕事と生活のバランスを重視する若い世代」にとって魅力的ではなく、ドイツ軍再建において最大の問題は「装備の調達」ではなく「人材の確保」だと指摘される始末で、このままで18.3万人から20.3万人への拡張すら実現不可能だと言われている。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexandra M. Longfellow

この問題を抜本的に解決するためピストリウス国防相は16日「義務的兵役(徴兵)を検討している」と明かし、検討中の徴兵モデルとして「スウェーデンモデル(徴兵された中から選ばれた者だけが兵役に就く方式)」に言及したが、どのモデルを採用するにしても「政治的な合意が必要になる」と付け加えた。

本当に徴兵制度の再導入に手をつけるのかは今のところ不明だが、新兵確保に頭を抱えているのはドイツに限った話ではなく西側諸国に共通した問題で、さらにウクライナとロシアの戦争で「予備役をどれだけ積み上げているかが長期戦への備えになる」と再確認されたため、もしかすると西側諸国でも徴兵制度の導入が流行るかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Tracy McKithern
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 23  』

『 イメージパース
2023年 12月 18日

返信 引用 

意外にも自衛隊こそ今の時代で貴重な成功例になりつつある
最初から完全な志願制だったため
他国は徴兵制から志願制に切り替えた結果、徴兵制の部隊規模だから維持可能なエコシステムが崩壊
リクルートに莫大な予算を吸い取られて現役部隊も崩壊
再び、徴兵制を施行しようにも民意の反対に遭遇して混乱
5 』

『 歴史と貧困
2023年 12月 18日

返信 引用 

徴兵が、なぜ実戦で役に立たないと言われ続けてきたのか
ベトナム戦争などで特に問題になりましたが、「平和な国内で教育された人権と人道の尊さ」と、「海外の戦場での現実とのギャップ」は、“実戦で役に立つか”の要点になっていると思います。志願兵は精神的な意味での“適性持ち”を抽出しやすいというメリットもあるかと。

机上戦略や国内演習では成果が出せる徴兵組も、“人の命を実際に奪う”実戦では倫理観が破壊されて自己矛盾を起こす。「退役軍人の精神疾患、自殺、収監」の要因にもなるかと。

先進国であり、高度な倫理教育、窃盗や略奪などしなくても生きていける整った福祉があるからこそ、【徴兵されて人を殺す】ことと相性が悪くなっていくのだと思います。古代の共和制ローマもそうした衰退期を経て、マリウスやスッラの改革で志願兵に切り替え、帝政ローマ期には市民権持ちの志願兵を主力に、属州兵を補助にする体制へ移行しました。

ロシアの30万人予備役招集が、“貧困な地域”に偏っているというのは伝わっていますが、“経済的に豊かな地域の人間は、人を殺す兵士には余計な倫理教育を受けていることが多い”という事情もあるのかと。伝統的に、貧しい北ほど兵士が多く、豊かな南は兵士のなり手が少ない。
14 』

『 歴史と貧困
2023年 12月 18日

返信 引用 

自衛隊の待遇、糧食や枕など基本的な生活面、安い給料などの改善

そこも当然ありますが、教育課程における「倫理教育」も重要な要素となるかと。
明治時代での国軍創設期も、『学制・税制・兵制』が連動しており、“血の税”が本質である兵役義務と、そのための「軍国的」な教育と軍隊の組織整備は常に連動していました。(さらに根幹には基本法や憲法整備が必須)

【人を殺すことは絶対悪】、【そんな恐ろしいことは考えるだけで罪人】という倫理教育では、どだい兵士が育つはずもなく、“男女平等の徴兵制”も、国の規模や民族規模が複雑になるほど困難になります。

さらに問題は、『憲法9条を絶対的に守ること』を盲信していた世代が、子や孫を兵士として教育することに同意するかどうか。正直、自分が軍隊に徴兵されることはないとしても、50代以上の多数派は【倫理に反する】という理由で再軍備に反対票を投じると予想します。老いれば老いるほど、人間は時代の変化を認識する機能が衰えます。

ドイツにせよ日本にせよ、『高価な兵器』を買うための資金は一応あっても、『国のための人を殺す覚悟』を持った兵士(それを支える一般国民の意識も含め)を育成をしてこなかったことが、法律整備・予算・投資などとはまた別の大課題としてあるかと。

今の自衛隊はその名の通り、「国民を災害から守る能力」は卓越していますが、「敵兵を罠に嵌めて殺す能力」は皆無に等しいかと。
6 』